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ゼロの青空署 - (2011/05/11 (水) 17:19:47) のソース
「死ねっ! 青空署、死ねーっ!!」 無限に広がる青い空。 世界にはびこる経済大国日本の首都"東諒"(とうりょう)の空を、今日も都民の罵声を浴びながら、一隻の巨大空中戦艦が飛んでいた。 人呼んで、"遊撃警艦パトベセル" この日本の空を守る全国101番目の警際(けいさい)署、青空署です。 配色は警際の象徴の白と黒、デザインはかのナ○シコに似ています。 元々これは多様化する犯罪に対処するために、警偉庁(けいいちょう)があらゆる事件に対応できるよう開発した万能の空飛ぶ警際署でありました。 しかし、今そのもくろみは大きくはずれ、都民の憎しみを一身に受ける存在となっていたのです。それは。 「あーもう、うるさいわねぇ。ちょっと新作の漫画読みたくなったから街中に着陸させたからってぎゃーぎゃーと。ももちー! 税金5割増しで徴収してやるって、いっちょ脅かしてやんなさい」 「えーっ!! そんな署長。あーっ、都民の皆さん、物を投げないでください。お願いですから物を投げないでくださいぃ」 パトベセルに向かって投げつけられるガラクタの山と、それをものともせずに艦長席にぐでーっと腰掛けて買ってきたばかりの漫画を、哀れな通信士をいじりながら読みふけるピンク色の髪の少女。 彼女こそ、この青空署署長にして現警偉総監七瀬光一郎の娘、七瀬ヒカリである。 端的に言うと、極度の親バカである警偉総監からこのパトベセルを貰い受けたヒカリは、その傍若無人天上天下唯我独尊的な性格で、この青空署の本来の目的である 『主力から独立して行動、戦局に応じて臨機応変に対応』を 『なんにでも首を突っ込んで許される』と解釈したために、正義の象徴は今や究極的な独立愚連隊と化していたのです。 警偉庁も黙っていたわけではなく、例えば敏腕の黛玲於奈警偉を監視役として派遣してなんとか青空署をコントロールしようとしたりしましたが、まったく効果なく、黛警偉自身が青空署に染まってしまう始末。 そしてこの日も、駅前で起きた暴走車の事件をかぎつけて、呼ばれもしないのに駆けつけて行っているのです。 「アップルジャーック!!」 ヒカリの声が艦内(署内)に響き渡ります。 アップルジャックとは本来赤色警報のことですが、「ゴロがいいから」という理由でヒカリが使っている青空署の仕事開始の合図です。 「ヒカリ、暴走車はパトクルのバリケードを突破、西方へ逃亡を図っています」 オペレーターの端深空警武の報告を受けてヒカリはニヤリと笑いました。 「おおっし、それじゃもっとでっかいバリケードを作ってやろうじゃないの。クー、暴走車の進行方向にパトベセルを着陸させなさい」 ヒカリの周りの被害を考えない命令に通信士の桃本みつな警武補が悲鳴を上げます。 「ええっ、そんなことしたら首都圏の交通網が麻痺しちゃいますよぉ!!」 「気にしない!!」 ヒカリは意にも介しません。 「いっけー!!」 パトベセルは全速降下していきます。そのとき誰もがこれから起こるであろう災厄を想像しました。 しかし、その予想は裏切られました。 パトベセルが着地しようとした直前、その真下に銀色に輝く何かが出現したように見えた後、その姿は影も形も無く消え去っていたのです。 ところ変わって異世界ハルケギニア。 「宇宙の(以下省略)」 省略しといてなんですが、ずいぶんと贅沢な内容の呪文を唱えたのはご存知[[ゼロのルイズ]]嬢。 それはもちろん使い魔を呼ぶためのサモン・サーヴァントの魔法。 そして何十回目かの爆発の後、「また失敗か?」と、本人や生徒達も含めて思った瞬間、それは起こりました。 「ん? 何だ、急に暗く」 突然、まだ真昼間だというのにあたりを闇が包みました。 雨か? と、何気なく上を向いた瞬間、彼らは例外なく凍りつきました。 なんと彼らの頭上、およそ50メイルほど上空に、突如として全長300メイルを超えるかという巨大な白い船が出現していたのです。 「な、何これ? もしかしてあたしが呼んじゃったの? あたしの責任なの!?」 失敗には慣れているルイズの頭も完全にパニックになります、もはややり直しがどうとか考える余裕もありゃしません。 そして、それはゆっくりと降下を始めたかと思うと。 「えっ、まさか……えーっ!?」 そのまま、目の前に、着陸してきたぁ!! 「おべろーっ!!」 意味不明な叫び声をあげて、ルイズ以下全員30メイルは吹き飛ばされました。けれど何故か全員かすり傷もありません、不思議です。 すると腰が抜けて立てないルイズの目の前で、その船から声が聞こえてきました。 「あー、マイテス、マイテスー。本日は晴天なり、本日は晴天なり、でもところにより警艦が降ってくるでしょー……あれ? おっかしーわねー、今まで確か駅前に居たはずなのに、クー、どこよここ」 「GPSに反応なし、衛星、及び全警際機関との交信もカットされました。結論から申し上げますと、ここは日本の東諒ではないということです」 「ちょっと、あなた達! またパトベセルを市内に着陸させたわね。これ一回で市民からいくつ苦情が来ると思ってるの? あれ、ここどこよ。さてはまた仕事をさぼって郊外に遊びに来たわね!!」 「あーん、黛警偉、違うんですぅ、これはその、えーと状況がしゃくしょうひてて……あーん、また咬んじゃったあ」 多数の声がぎゃーぎゃーぎゃーぎゃールイズ達を無視して好き勝手なことを言ってます。 そのころようやく我に返ったルイズはやり直しを申し込むも、当然却下。 しかしこの場合、どうやって契約すればいいのかわかりません。けどやけくそで適当にキスしたら装甲の一部にルーンが現れました。決してナイフでやまととか刻んだ訳ではありません。 「で、あんた達はこの私の使い魔として召喚したのよ」 途中がめんどくさいんで省きましたが、ルイズはパトベセルのブリッジでヒカリ達にそう宣言しました。 「突如、異世界から巨大戦艦を召喚してしまった魔法少女……その少女を助けて王国のために活躍する巨大戦艦……戦艦アンド魔法の構図……超! 燃えるぅ!!」 普通ならここで怒るか困惑するかのどちらかでしょうが、狂喜するヒカリ嬢、この人の辞書にマイナス思考とかいうものは無い。むしろ辞書自体無い。 こうして、パトベセルの一同はルイズの使い魔として働くことになりました。黛警偉あたりは反対しましたが、「署長命令よ」で黙らされました。扱いやすい人です。 ルイズも特例としてパトベセルの一室に部屋を借りることになりました。 さっそく主人としてパトベセルのクルーを馬車馬のよーに使ってやろうと思っていたルイズですが、その後ルイズの歓迎会という名のドンチャン騒ぎで酔いつぶれさせられてしまいました。つか仮にも警際官が未成年に酒すすめるなよ。 翌日二日酔いの頭で登校したルイズはキュルケの軽口に反論する元気もありません。 なお、ルイズには毎日交代で青空署のクルーの誰かが付き添うことになりました。本日はパトベ本編の主人公赤島殉作君です。 が、ヒカリらの面々に比べたら普通すぎるキャラなので割愛します。 「ひどっ!!」 うるさいです。ちなみにルイズは午前中ずっと爆睡してました。 さて、昼食の時間をへて。 「諸君、決闘だ!」 ことの起こりはギーシュとかいうアカポンタンな男子に言いがかりをつけられていたメイドを殉作がかばったからです。 決してそのシエスタというメイドが可愛かったからだけではありません。正義感だけは褒めてやろう。 「うるさいよ! 大体なんであんたそんなに偉そうなの!?」 作者だからです。文句あっか。 広場で向かい合うふたりの男。 ギーシュは当然得意技のワルキューレを出現させます。 殉作もかまえますが、思い出してください、ここではルイズはパトベセルと契約したために、殉作はガンダールヴなんかじゃありません。 当然、生身の人間がワルキューレに敵うわけも無く、殉作は逃げ回りました。はっきり言って無様です。 「あんた! ちょっとは真面目に戦いなさいよ!!」 観客席からルイズが無茶な命令をしてきます。杖の先はワルキューレではなく殉作に向いてます。殉作二重にピンチです。 が、青空署にフェアプレイなどという言葉はありません。 すぐさま駆けつけてきたパトベセルから、全長およそ7メイルの人型ロボット"パトロール・ジェクト"が投下されます。なんとかレイバーに似ていますが気のせいです。 「さあ、ジュン。おもいっきり蹴散らして……いえ、なぎ払え!!」 ジェクトに乗り込んだ殉作、遠慮なくワルキューレをけちら、なぎ払います。完全に形勢逆転です。 ギーシュは卑怯だとかほざいてますが、青空署に染まった殉作は聞く耳を持ちません。ついでに回る耳も持ちません。 最後は退屈になったヒカリが殉作ごと主砲で残ったワルキューレとギーシュを吹き飛ばして終わりました。 「うーん、やっぱなぎ払うってのはこうよねー(はぁと)」 王蟲の群れといっしょにしないでくれ、殉作は薄れる意識の中でそう思いました。 後日。 「署長、街で面白いもの買いました。しゃべる剣ですよ」 「あー、今眠みーの。めんどーだから物置にでもほーりこんどいて」 「えっ、ちょ、俺の出番これだけ!?」 「じゃあ物干し竿にでもしなさい」 「ええーっ!?」 抗議むなしく、しゃべる剣君は物干し竿としてパトベセル内の"向塚クリーニングハルケギニア支店"の役に立つことになったそうな。 最近、このトリステインを騒がす怪盗がいます。その名は土……。 「おーほっほっほっ!! 闇夜に踊る気高き胡蝶。高く、遠く、美しく、羽ばたく姿は艶美絢爛、ゴージャス&エレガントなそのレディの名は!!」 フーケ、ではないですよこんなの。 「怪盗ロール!! 参上!!」 やたら長ったらしい口上とともに現れたのは、ちまたで噂の芸人、ではなく怪盗ロール。 蝶マスクに素顔を隠し、シルクハットにたなびくマント、異常に短いブリーツスカート(ここ重要)、さらにド派手な金髪の縦ロールと目立つために生まれてきたような姿で、毎夜金品や美術品を華麗に盗むその名を知らない者は、今や誰もいません。 もちろんこのトリステインの人間ではなく、パトベセルに引っ付いてきた日本の洗濯機……いや、人間ですが、場所が変わろうと彼女のやることには変わりありません。 毎回必ず予告状を送りつけ、いかなる警護も突破して、いかなる追撃も堂々かわして姿を消す。 しかも、あくどい商人や貴族からしか決して盗まず、その金を貧しい人々に分け与えるのですから、人気もうなぎのぼりです。 「ロール! ロール! ロール! ロール!」 民衆の大声援を受けながら、ロールは高らかに笑います。 「ほーっほっほっ! ガッツ伯爵、予告のマグネリウムクリスタル、確かに頂戴いたしましたわー、これで夜明けにはセブンが復活しますわよー!」 なんの話だ!? とツッコミたくなりますが本編と関係ないので無視します。 今夜こそはと王国のメイジ達がフライで屋根の上のロールを取り囲みます。 「観念しろ、怪盗ロール、この包囲網からは逃れられんぞ!!」 あーあ、そんなこと言って泥棒を捕まえられた警察はいないのに、こうなっちゃおしまいです。 「やれやれ、この国の方々は華麗さに欠けますわね。こーんなチャチな包囲網でこの私を捕らえられるとお思い? ホーホッホッ、マーベラステッキ、いでよ、カラドボルグ!!」 ロール、どこからか取り出した大剣でメイジ達を蹴散らします。ぶっちゃけザコですから当然ですが。 「おーっと、そこまでよ、このコレステロール!!」 「だぁーれがコレステロールですってぇ!! ……あら、誰かと思えば青空署の皆々様、少しは骨のある方々がお見えになったようですわね」 闇夜から現れるのは、そう、我らがパトベセル。 しかしロールは余裕たっぷりといった表情で、ステッキをクルクルさせながらパトベセルを迎えます。 「今日こそあんたをとっ捕まえてやるから覚悟しなさい!! さあ出番よ、ジュン、れおにゃん、それにルンルン!!」 「誰がルンルンよ!! そのあだ名はやめなさいと言ったでしょうが!!」 パトベセルのハッチから2機のジェクトと竜が一匹飛び出します。もちろんタバサのシルフィードです。 ちなみにルンルンとは、人に勝手にあだ名をつけるのが趣味のヒカリがルイズにつけたあだ名で、はっきり言って恥ずかしいです。え? どこぞの蛇使いと同じ? 気のせいです。 キュルケの爆笑に怒りくるいながらもルイズは爆発魔法をロールに連射します。 「ほーっほっほっ!!」 笑いながら屋根から屋根へと回避していくロール、もはやトリステイン名物となりつつある毎晩の大追跡劇の始まりです。 そのころ、学院では土くれのフーケという名前の盗賊が巨大なゴーレムで宝物庫を攻撃していましたが、攻撃開始から30分はたったというのにだーれも出てきません。 もちろんこれは、街中でのロールの騒ぎにみんな気をとられているせいですが、あまりに静かすぎてフーケはだんだんむなしくなってきました。 実は、このところフーケの人気は低下の一途をたどっています。原因は言うに及ばずロールです。 理由は、片や姿を見せずに書きおきだけを残して去っていく盗賊、片や堂々と現れ、盗んで、去っていく、弱きを助け強きをくじくスーパーヒロイン。どっちの人気が勝るかは考えるまでもありません。 「あたし、もう泥棒やめよ」 なかば愉快犯で怪盗をやっていたフーケは心の中の隙間風に耐えられなくなっていました。 この仕事を最後に足を洗おうと決めたフーケは涙を拭きながらゴーレムの拳を振るいます。 しかし、どうあろうと悪事には報いが来るものです。 ヒュルヒュルヒュル…… 「ん? なんの音?」 後ろから聞こえてきた風切り音に気づいてフーケが振り返った瞬間、彼女の視界は真っ黒く染まりました。 それが目の前にまで迫ってきた砲弾だと悟ったときには、視界は今度は白く染まりました。 「おべろーっ!!」 ギャグっぽい叫び声をあげてフーケは吹っ飛んでいきました。パトベセルの放った主砲の流れ弾です。 そのままきりもみして中庭に人型の穴をこさえたフーケさん。驚いたことに気絶してますがかすり傷ひとつありません。 とっさにギャグっぽく叫んだのが良かったのでしょう。これがもし妹のこととか考えてたらほぼアウトでした。 これ以降、フーケが現れることは無かったそうな。 そんで、使い魔の品評会ではルイズが一番をとりました。 なお、その間パトベセルがずっと主砲の照準を会場に合わせ続けていたのは多分関係ありません。 「ま、当然の結果ね」 思いっきりふんぞりかえるルイズさん。最近誰かに似てきてます。 話は進んで王女様の登場です。 「手紙を取り戻してきてください」 なんともアホくさい理由、しかも内乱中のアルビオンに乗り込んでこいと言います。たかが16歳の女の子に頼む仕事じゃありません。 が、王女様のためなら例え火の中水の中、火星だろうがイスカンダルだろうが行けと言われれば行くのがルイズです。 「アップルジャーック!!」 当然こんな面白そうな話をヒカリが見逃すはずはありません。パトベセル全速前進です。 「え、あのちょっと私も!?」 最初に言いましたが、今ルイズの部屋はパトベセル内にあります。当然王女様もルイズに会うためにはパトベセルに乗り込んでこなければなりません。 アンリエッタ王女、降りる間もなく強制連行です。 誰か忘れてる気がしますが、まあいいでしょう。 途中の街なんかは全部きれいにスルーして洋上に出ます。 アルビオンへの海上で空賊に遭遇しましたが、退屈していたヒカリのいい遊び相手です。 「主砲、発砲準備!!」 容赦なんか最初からゼロです。主砲380スペシャル、空賊船に照準完了。 「死ねーーっ!!」 主砲発射、命中、撃沈確認万々歳。我ら無敵の超戦艦。 空賊船、煙を吹いて墜落していきます。 ヒカリ、大笑い。 んで、無事アルビオンに到着。 目当てのウェールズ皇太子を探しますが、聞くところによると空賊に扮して出かけているとのこと。 「ま、まぁそのうち帰ってくるでしょう。ほ、ほほほほ」 「そ、そうですよね。あはははは」 冷や汗だらだら、隠すのに必死です。 が、噂をすればなんとやら、ほんとにボロボロになりながらも帰ってきました。 なんでも命中する寸前に、突然頭に浮かんだ「ほげーっ!!」という言葉を叫んだら、なんと全員無事で助かったということ。 アンリエッタ王女、愛しのウェールズ皇太子と感動のご対面です。 「ああ、ウェールズ、こんなボロボロの姿になってしまって」 「ごめんよ、僕はひどいやつだ。最後の瞬間には必ず君の姿を思い浮かべようと思っていたのに、いざとなるとできなかった。こんな僕を許してくれ」 いや、それやってたらあんた間違いなく死んでますよ。 最後の晩餐、青空署のおかげでバカ騒ぎに変更です。 なにせパトベセルの炊事長の柚子ちゃんの料理は絶品です。みんな食指が進む進む。 で、全員酔いつぶれた隙にまとめてパトベセルに収容してアルビオンを脱出、レコン・キスタは無人の城に総攻撃をかけて、同士討ちまで演じたあげく、見つけたのは犬2頭だけだったという。 これを指して、アルビオン奇跡の作戦・キスタ脱出、というかどうかはさだかでない。 さて、無事にトリステインに帰還したパトベセルですが、とんでもない罵声で迎えられました。そりゃそうです、一国の王女をかっさらって行ったのですから。 「馬鹿やろー!! 王女様になんてことしてくれてんだー!!」 「死ねっ、青空署死ねーっ!!」 むかついたヒカリがパトベセルの街中への強行着陸とアクセルスピンで黙らせて、王女様の必死のとりなしでなんとか事なきを得ました。 王統派も、ここまで来ては腹をくくるとのこと。 盛大にアンリエッタ王女とウェールズ皇太子の結婚式が開かれました。ちなみに反対派もいましたが主砲で黙らせました。 「汝ら、永遠の愛を誓いますか?」 「「誓います」」 もはやふたりとも吹っ切れた様子でとてもうれしそうです。 強理通れば道理引っ込む、やったもの勝ちです世の中は。 そして一時の平和を経てクライマックスへ。 アルビオン王統派が亡命したためにレコン・キスタの総攻撃が開始されました。 迎え撃つは、我らがルイズとパトベセル!! 「総員、戦闘配備!!」 今回はヒカリもマジモードで始まりました。 地上に降ろしては兵数の少ないこちらが不利と、洋上での艦隊決戦に持ち込みます。 パトベセル主砲発射、さらに殉作と玲於奈もジェクトでドラゴンを迎え撃ちます。もちろんルイズも爆発魔法の連射。 しかし、さすがに数が違いすぎ、3隻を撃沈したもののパトベセルも次第に追い込まれていきます。 「ごめんジュン、今のが最後の一発よ……」 さしものパトベセルも遂に砲弾切れ、しかもジェクトも連戦でガタがきて、ルイズも疲労困憊です。 「もう、これまでなの……」 ルイズの目に浮かぶ一筋の涙、とどめを刺そうと迫るレコン・キスタ艦隊、そのとき!! 「ホーホッホッホッ!! あら、この程度で終わりですの? あたくしがライバルと認めた人たちにしては随分と早い幕ですこと、上演時間はまだ残っていてよ!!」 あれは!? 鳥だ! 飛行機だ!(この世界に無いが) いや、芸人だ!! 「だーぁれが芸人ですってぇ!! こほん、怪盗ロール、参上!! チェーンジ、マーベラステッキ、オーホッホッ、マイザー・スパイラルー!!」 ロールはステッキを巨大なドリルに変形させて戦艦に突撃をかける。 「馬鹿め! そんなものが通用するか!!」 その艦の艦長はあざ笑ったが、ロールは艦首から突撃すると、そのまま船体を貫いて艦尾まで突き抜けた。 「そ、そんなアホな!?」 大破した戦艦は浮力を失って落ちていく。 「見たか、貴族の馬鹿息子どもめ、戦いとはこうしてやるものだ!!」 どっかの疾風の異名を持つ提督みたいなことを言いながらロールはさらにステッキをクルクル回した。 「必ず殺すと書いて、必・殺!!、獲麗巌斗(えれがんと)ハリセーン!!」 ロールは獲麗巌斗と書かれた大きなはりせんにチェンジさせて別の戦艦に向かっていく。 「一撃入魂!!」 ドグワシャとでも書けばいいのか、その戦艦はお空の星となった。 「な、なんだ!? なんなんだあれは!?」 レコン・キスタ艦隊、大パニックである。 そりゃそうだ、戦艦と渡り合う生身の人間などハルケギニアでも規格外だ。 そして、ロールが注意を引き付けているあいだにパトベセルも体勢を立て直していた。 もはや弾丸は無く、搭載機もボロボロだ。しかし、その目にはまだ絶望の色は無い!! 「青空署に、あきらめるって言葉は無いのよ!!」 「オオーッ!!」 ヒカリの叫びに署員だけでなくルイズまでもが腹の底から叫びを返す。 そしてそのとき、最初にルイズに刻まれてから今まで一度も発動することの無かったパトベセルのルーンが輝き始めた。 その光はパトベセル全体を覆い、やがてルイズの体を包んでいく。 「これは……ヒカリ、パトベセルのエネルギーが回復していきます。全システム、オールグリーン」 空が信じられないとつぶやく。 「こりゃおでれーた。この船、虚無の魔力を吸収してやがる」 物置で誰かが解説風につぶやいてくれたので一応お礼を言っておきましょう。 え、ご都合主義? 空さん、いっちょお願いします。 「フィクションです」 そのとき、ようやく我に返った艦隊が一斉にパトベセルに砲門を開きました。 「デ○トーション・フィールド発動!!」 ヒカリが叫ぶと本来パトベセルには無いはずのバリアーが砲弾を全部跳ね返します。 「エクスプロージョン!!」 仕返しの虚無魔法の一撃でまたまた一隻撃沈、いつの間に覚えたかって? ドラクエでもレベルが上がると勝手に魔法覚えるでしょう。 「ハイ○ー放射ミサイル、発射!!」 「ありません」 「ダイダ○ス・アタックよ!!」 「できません」 「なら、超音波○スでも撃ちなさーい!!」 「発射」 できるのかよ!! というツッコミは置いといて、戦艦がまた一隻真っ二つになって落ちていきます。どこから撃ったのかとかは聞かないように。 残るは敵旗艦レキシントン一隻のみ。 ヒカリは攻撃を中止するとおもむろにマイクをとりました。 降伏勧告か? 皆は息を呑みます。 「あえて言おう!! お前らはカスであると!!」 「なんだとーっ!! こうなったら徹底抗戦だーっ!!」 レコン・キスタのクロムウェル卿、大激怒ですが青空署の面々はすっきりした顔をしています。 「さて、そろそろお腹も減ったし終わりにしますか。波動砲、発射用意!!」 ああ、やっぱりそう来るか。 「了解、ターゲット・スコープオープン、電影クロスゲージ、明度20」 「虚無エネルギー、充填120パーセント、安全装置解除、圧力限界へ」 パトベセルの主砲に巨大なエネルギーが収束していく。 「さあて、これでフィナーレよ。盛大にいくわよルンルン!」 「ええ、やってやるわよヒカリ!」 ヒカリとルイズの手がいっしょにトリガーにかかる。 目の前には、死なばもろともと特攻をかけてくるレキシントンの姿が来ている。 そして……。 「「エクスプロージョン波動砲、発射!!」」 ふたりは同時にトリガーを引き絞った。 まばゆい閃光がほとばしる!! 次の瞬間、虚無のエネルギーを収束した超エネルギーが放たれ、目前まで迫っていたレキシントンを飲み込むと、原子の一個にいたるまで分解し、文字通り消し去った。 なお、付け加えておくと、レキシントンが消え去る直前にいくつもの人影が「おべろーっ」「ほげらーっ」とか叫びながらはるかかなたへ飛んで行ったという。ルイズはその中のひとりに見覚えがあるような気がしたが、思い出せないので忘れることにしました。 「勝ったぁ!!」 誰とも無く歓声があがった。 ヒカリとルイズは抱き合って喜んでいる。艦内でも万歳の嵐です。 デッキでも殉作や玲於奈が今回だけはロールといっしょに大笑いしてます。 この後、トリステインに帰還したパトベセルとルイズが英雄として迎えられたのは言うまでもありません。 王子様と王女様主催の大パーティが主催され、身分も何も無く、ただ訪れた平和を喜び合いました。 その後、彼らは元の世界に帰っていきました。 多くの涙が流れましたが、彼らにも元の世界で待っている人ややらねばならないことがあります。 見送った後、キュルケもタバサもルイズの顔をまともに見ることができませんでした。 しかし、まだこの大陸に立ち込めた暗雲は色濃いのです。 まだまだ邪悪な野心を燃やす者は耐えません。 人々が希望を失い、力尽きようとしたそのとき、ルイズは彼女だけの最強の召喚魔法を唱えます。 「アップル・ジャーック!!」 そう、呼べば必ず彼らは答えてくれるのですから。 THE END