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滅殺の使い魔-01 - (2009/03/31 (火) 22:45:53) のソース
#navi(滅殺の使い魔) 「ヤスムコト……ユルサヌ……タダ……ヒタスラ……」 横たわる『鬼』の亡骸に、得体の知れない力が集まっていく。 「ヤスムコト……ユルサヌ……タダ……ヒタスラ……」 やがてその力は渦を成し、『鬼』を覆い、そして―― ――その日、その世界から『鬼』が消えた 「五つの力を司るペンタゴン…我の運命に従いし、使い魔を召喚せよ!」 桃色の髪の少女が、また一度詠唱し、杖を振り、また爆発を起こす。 彼女はもう何度もこの作業を繰り返してはいるが、まだ一度も本来の魔法を発動できないでいた。 『使い魔召喚の儀』―― 学院の生徒が、一年から二年へと進級する為の大事な儀式。 と、同時に、生徒一人一人の専門とする属性をきめる、正に今後のメイジとしての人生を左右するものである。 たった今、その『サモン・[[サーヴァント]]』の詠唱で失敗し、爆発を起こした少女は、もう何度目かもわからなくなるほど失敗し、その全てを爆発に変えた。 「どうして!」 と、これまたもう何度目かもわからない叫びをあげる。 そして、禿げ頭の教師が少女に告げた。 『次に失敗したら、それで終わり』だと。 周りを行きかう少女を蔑む言葉。 それに負けじと、少女は流れそうになる涙をこらえ、『最後』の呪文を唱えた。 「宇宙の果てのどこかにいる,私の僕よ!神聖で美しく、そして強力な使い魔よ!私は心より訴えるわ、我が導きに答えなさい!」 刹那、大爆発。 終わった、と誰もが思った、いや確信した。しかし少女は、まだ諦めては居なかった。 ――その男は、ひたすら強さを求めていた―― あらゆる闘い方をする強者を『殺』し、自分の糧としてきた。 だが、それももう終わった。 『殺』されたのだ、強者に、より強き者たちに。 自らが大阪城で闘い、『殺』した者に、暗黒の力を注入され、不本意な強さを手に入れ、自我は崩壊し、その果ての敗北、そして死。 その男は、それで終わった筈だった。 「あんた、誰?」 煙の中から現れた男に、ルイズは問う。 「ぬぅ……」 男は呻きながら立ち上がった。 やがて煙が晴れ、周りの生徒達や教師にもその姿が見えた。 逆立った赤髪、ボロボロの紫の服、それに屈強な体。 「平民だ!」 「[[ゼロのルイズ]]が平民を召喚したぞ!」 ここぞとばかりにルイズを馬鹿にする生徒達だが、それは禿げ頭の教師によって遮られ、場は静まる。 禿げ頭の教師はそれを確認すると、ルイズと男に歩み寄り、柔和な笑みを浮かべた。 が、言葉を発する前に、ルイズの怒鳴り声が彼を襲った。 「ミスタ・コルベール!再召喚を!」 「それは出来ない。サモン・サーヴァントは神聖な儀式だ。再召喚は認められない」 悲痛な表情でそれを却下するコルベール。 彼自身、ルイズを哀れに思い、同情していたのだが、例外を認めることは出来ない。 「……ここはどこだ」 「っ! ミス・ヴァリエール、下がって!」 男がはじめて言葉を発する。 その言葉に反応するようにコルベールが動いた。 ルイズをかばう様に前に立ち、こともあろうに杖を向けたのである。 コルベール自身、この男に違和感を感じていたものの、やはり平民だと決め付けていた。 それ故に、前代未聞である『人間を召喚』という事態にも危険を感じず、にこやかにしていることが出来たのである。 だが、この男が言葉を発し、コルベールをにらんだ瞬間にコルベールは危険を察知し、戦闘状態になった。 男が殺気を放ったからである。 コルベールとて周りには知られていないが数々の戦闘を経験している。 それゆえ、殺気と言うものには慣れてはいたし、このような状況で、殺気立つのは不思議では無い。 「貴様、何者だ!」 男に対してコルベールが叫ぶ。 コルベールは恐怖していた。 この男は普通ではない。そう本能が叫ぶ。 杖を持つ手が汗ばむ、足が震える。 それを悟られぬように勤めていた。 また、コルベールが叫ぶと同時に、男が構えた。 「くっ……ミス・ヴァリエール、離れるんだ!」 「な、なんでですか!」 「いいから早く!」 ルイズをこの場から下がったことを確認したコルベールは、再び男を睨む。 戦うしか無い。 正直勝てる気はしないが、絶対に生徒を傷つけさせはしないと、必死で自分を奮い立たせていた。 それに対し、男は構えて微動だにせず、コルベールを睨んでいた。 コルベールは決死の覚悟でバックステップで距離をとり、魔法を放つ。 「ファイヤーボール!」 杖の先から放たれた炎の球は、一直線に男へと飛んで行き、男の眼前へと迫る。 だが。 「ふんっ!」 男は飛来した炎の球を、なんと腕を少し動かしただけで手の甲で弾いたのだ。 弾かれた炎はその場で消え、跡形も無くなった。 「なっ!?」 驚きを隠せないコルベール。 対して男は、自ら攻撃をする所か、構えを解いてしまう。 騒然とする場。 平民が魔法を素手で弾いたのだから、驚くのも無理は無い。 「ここはどこだ」 男は再びコルベールに問う。 構えを解いたことは、戦う意思が無いからなのか、それとも油断させようとわざとそうしているのか、コルベールには皆目見当がつかなかった。 「あ、あんた、何者よ!?」 いつのまにか戻ってきていたルイズが、男に背後から問いかける。 男はルイズに視線をやると、こう言った。 「我こそ、拳を極めし者」 その背中に、『神人』の文字を浮かばせて―― #navi(滅殺の使い魔)