「堕天召喚録カイジ 第5話」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る
堕天召喚録カイジ 第5話 - (2009/04/11 (土) 20:14:14) のソース
#navi(堕天召喚録カイジ) 第五話「王国」 ああ……それにしても退屈っ……!! トリステイン魔法学院の学院長室は本塔の最上階にある。 そこにいるのは、トリステインの影の帝王……オールド・オスマンと、学院中の教師たちであった。 ざわ…… ざわ…… 長い白ひげをたくわえたオスマン氏は、重厚なつくりのテーブルに肘をつき、目の前の教師たちを見回した。 「ククク……無論……と言うか…… 言うまでもなく……わしは持っておるっ……! この学院の誰よりも……持っておるっ……! 力をっ……! カネで……コネで……! 魔法力で……権力で……! 持っておるっ……! ククク……! 生徒はいわば人質っ……! トリステイン王家であっても容易には手を出せぬ……! 最近では、ガリア王家へのつながりも手にした…… 簒奪された血筋だが……正統継承権は持っているっ…… 転ばぬ先のなんとやらだ……! 常にリスクの分散は怠らないっ……!」 ざわ…… ざわ…… 学院長の言葉に教師たちがざわめく。やがて一人が手を叩き始めると、すぐにそれは万雷の拍手に変わった。 「学院長っ……! 学院長っ……! 学院長っ……!」 教師たちの声に両手を上げて応えるオールド・オスマン。 「バカがっ……!!!!」 バーンッ!! 突然机に手を叩きつけるオールド・オスマンに、一瞬で学院長室は静まり返る。 「つまらんわっ……まるで……!! わしは……もっともっと……楽しみたいんじゃっ……! 女を……! 賭博を……! 決闘を……! 邁進せよっ……! 掻き集めるんじゃっ……! 世界中の力をっ……!! 貴族とはつまるところ力につきるっ……! それを牛耳る魔法学院こそ……王っ……! 築くんだっ……! 王国をっ……!」 オールド・オスマンの言葉に歓声を上げる教師たち。 ワァー!! ワァー!! ワァー!! 「学院長っ……! オスマン学院長っ……! 学院長っ……!」 「容赦なく勝てっ……! 王国実現のためにっ……!」 「勝ちますっ……! 勝ちますっ……!」 「以上だっ……! フフ……では……解散しよう……!」 昼の訓示を終え、教師たちは各々の授業へと戻っていった。 ……いや、ひとりの教師が、学院長室に残っていた。コルベールである。 「学院長。内密のお話が……ミス・ヴァリエールの呼び出した使い魔のことなのですが……」 「なんだっ……! はっきりと言えっ……!」 イライラとコルベールをにらみつけるオールド・オスマン。コルベールは冷や汗をかきながら続ける。 「はっ……! 珍しいルーンであったので、調べましたところ、伝説の『ヴィンダールヴ』ではないかと……! 『ヴィンダールヴ』といえば、幻獣を自在に操るという使い魔……ご報告をと思いまして……」 コルベールの話を聞き、見る見るオールド・オスマンの表情が変わっていく。 「ククク……カカカ……コココ……! 面白いっ……! 面白いではないかっ……あぁ~んっ……!? 詳しくだっ……もっと詳しく説明しろっ……! 我が右腕っ……! コルベールっ……!」 「はっ……!!」 コルベールはその輝く頭を深々と下げた。 右腕……! これはつまり……事実上…… 学院長に次ぐナンバー2であることの証明……! コルベールはほかの教師をおさえ……ナンバー2……! その地位を確立したっ……! ルイズが爆破した教室の片付けが終わると、使い魔たちは各々の主人のもとに帰っていった。 『覚えていてくれ……! 我らは友人っ……! いつでも、共にあることを……』 別れ際、フレイムの一言がカイジの心にやさしい灯を燈していた。 (やれる……! 一人じゃねぇっ……! 俺は孤独じゃないっ……! 仲間っ……! 友人っ……! 信頼っ……! それこそが本当の力……魔法なんかよりもずっと強力な力っ……! 貴族たちに反撃するナイフっ……小さくとも尖った刃だっ……!) ……やがて、自分のベッドで静かに泣いていたルイズが、教室に戻ってきた。 黙って二人で食堂に向かう。 カイジの昼食は抜きであった。 第五話「王国」終わり ---- #navi(堕天召喚録カイジ)