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#setpagename(ゼロのペルソナ 第2章 皇帝 後半)
「やっと終わった……」
ルイズは自分の失敗魔法による爆発でめちゃくちゃにしてしまった教室の掃除がやっと終わり食堂に来ていた。
魔法も使わず一人で机の片付けをしたのだからくたくただ。
ふらふらと座る場所を探していると声をかけられた。
「あらもう片付け終わったの?」
すでに食事の席に着いているキュルケだ。その対面の席にはタバサが座っていた。
からかうような口調であったが疲れているのでルイズはムキになる気力もない
「もう、じゃないわ。やっとよ……」
憮然と答えながらルイズはキュルケの隣の席に座る。他に席がないからだ。そうでなければキュルケの隣になど座るものか。
と、ルイズは心の中で誰にいうわけでもない言い訳をする。
「ねえねえキュルケチャン?」
朝と同じく使い魔でありながら魔法使いの食事の席に着いていたクマが言った。そのことにルイズは不機嫌そうな顔を見せるが
キュルケはそんなルイズに構う様子もない。それは陽介を自分の隣に座らせているタバサも同じだ。
「なによ、クマ?」
「なんだか、あっちのほうが騒がしくないクマ?」
とクマはルイズが来た方向とは反対側、つまり食堂の奥の方を指差す。いや、親指とそれ以外の指の二つに分かれている手なのだから手差すとか腕差すというべきか。
キュルケ、それと陽介もクマの示す方向を見る。
「ああ、なんか騒いでるな」
「面白そうね、見に行きましょ。行くわよ」
その声に応じてクマはイスからピョンと飛び降り、食事を十分とったであろうタバサ、陽介もキュルケの野次馬に付き合うことにする。
ルイズは構わず食事を始めようとしていたのだが
「ほら、ルイズも行くわよ」
キュルケはぐいと腕を引っ張りルイズを立たせて来る。
「ちょっとあんたらだけで行きなさいよ!私はまだ食事も……」
「ご飯なんて後で食べられるじゃない!さ、クマも手伝って!」
クマに反対の腕を取られ、ルイズは騒ぎの方向へと連れて行かれる。
ルイズは清掃で疲れていたので、抵抗をやめぐったりとしながらキュルケたちになされるがまま歩いていく。とにかく早く終わって食事をとりたい。
5人の中で一番早く歩いていた陽介が人だかりを見つけた。どうやらその人だかりの中に騒ぎの原因があるようだ。陽介は近づいて、中を見て声を上げた。
「げっ!完二が誰かつるし上げてっぞ!」
「何ですって!?」
ルイズは覇気なく両脇から抱えられていた様子から一変して、キュルケとクマの腕を払い人だかりへ駆け寄る。朝から彼女の頭を悩ませていた使い魔の名をこんなところで聞こうとは。
キュルケ、クマ、タバサも続く。
ルイズも陽介と同じ光景を見て驚きの声を上げる。完二が魔法使いの首根っこをつかみ持ち上げているように見える。よく見るとつかんでいたのは首ではシャツであったが。
「何やってるのよ、あのバカは!」
「ぶら下がってるのはギーシュみたいね」
金髪、それに手に持ったバラの杖を持った杖からもそれは明らかだった。キザったらしくうっとおしいヤツだが、今はそんなことを気にしている場合ではなかった
。バラの造花なんて妙な杖を使っているのはギーシュ以外に見たことがないが、彼のセンスも問題ではなく彼がすでに杖を取り出していることが問題だ。
「とにかく止めないとカンジが危ないわ!」
陽介が不思議そうな顔をする。
「完二が?あの金髪のほうじゃなくて?」
「あんたたちは本当に貴族の……魔法使いの怖さがわかってないのね!ギーシュが本気を出す前に……」
ルイズの言葉が言い切られる前にワルキューレが現れた。窮地に追いやられたギーシュが、目の前の無礼で危険な平民を排除するために呼び出した彼の兵である。
土のメイジが得意とする錬金で作り出した青銅のゴーレムだ。それは大人ほどの背丈もあり、決してその攻撃は平民に耐えられるものではない。たとえ人並み以上に体の大きな完二でも。
ワルキューレは青銅の拳を完二へと振りかぶった。
「危ない!!カンジ!!!!」
ルイズは叫んだ。
完二は向かい来る敵意を横目にしながら危険を感じなかった。いや、彼はその自分に向けられた暴力を敵意とすら見なさなかった。
金色のカードが彼の目の前に現れる。それを、ギーシュを掴み上げている左手とは逆の、自由な右手で叩き割る。
「砕け!!ロクテンマオウ!!」
彼の背後に巨体が現れた。
それは真っ赤な体にオレンジがカラーリングされた金属のような体を持つ。上半身が異様に大きく、燃え盛る炎の色をしたボディとあいまって力強さを見せる。
そしてその手にある得物を青銅のゴーレムに叩き付けた。
キルラッシュ――その破壊の打撃がワルキューレに一度、二度と叩き込まれる。
攻撃を終えたロクテンマオウが姿が消すと残ったものはワルキューレの姿の名残すらない金属の塊であった。
ギーシュは目の前に現れた巨大な力も、自分のワルキューレが破壊されたことも信じられないのか、呆然としている。
周りを取り囲んだいた魔法使いの生徒たちも、自分の使い魔が叩きのめされるのを想像した彼の主も、そして彼と同種の力を有する陽介とクマも呆然としていた。
しかし回りのことなど構わず完二はギーシュを怒鳴りつける
「おい、俺は人のことを影であーだこーだ言うやつが嫌いなんだよ!ルイズの陰口をもう二度というんじゃねえぞ!」
呆然としていたギーシュは現状を思い出しコクコクと頷いた。
「つーか、あとでシエスタにもわび入れとけ!わかったな?」
ギーシュは更に早く首を上下に動かした。
ちっ、と言いながら完二はギーシュを話す。ギーシュは無様にケツから落ち、首元を押さえゴホゴホと咳き込んでいた。
「カンジさん……」
その衝撃が流れていた状況下で最初に声をかけたのはシエスタだった。
「よう、大丈夫か……」
「ちょっとカンジ!なんなのアレは!?」
完二が言い切るか、言い切らないかというところにルイズが割り込んできた。
今朝に喧嘩別れした自称完二のご主人さまに、完二はいきなりどう対応したいいかわからず頭をかいた。
「あー……なんだルイズじゃねえか、どうした?」
「どうした?はこっちのセリフよ!?あれは何?魔法使いなの?ゴーレムなの?今まで隠してたの?」
何を言ったらいいかわからない完二に対し、ルイズは言いたいことが多くあるようだ。バケツの水をひっくり返すように質問が飛んでくる。
「んなまくし立てられてもワケわかんねえよ!」
質問の乱発に完二の情報処理能力はすぐに容量がいっぱいになってしまう。
ルイズが更に言葉を並べようとするところへ陽介が割って入る。
「ちょい待ち。ここは人が多すぎる。移動しようぜ」
タバサ、キュルケ、クマが賛成の色を示し、しぶしぶながらルイズも従う。完二も当然彼らと一緒に行く。
再びタバサの部屋に6人が揃った。
「それにしてもまさかペルソナ能力が使えるとはなあ……。よく気付いたな、完二」
「いや、気付いたっつうか、ムカついてて実を言うとペルソナ出したことに気付いたのもついさっきなんスよ」
完二はなんとも間の抜けた答えをす。
「なんだよ、そりゃ……ってぶっちゃけそんな気はしてたけどな」
「完二は考えるより行動派だからクマね」
「おいクマ、テメエ、バカにしてんじゃねえだろうなあ……」
少なくとも行動力の高さを褒めているのではないことを感じ取り、完二はドスの利いた声を出した。
だが完二の迫力ある低い声も、もっと大きな声で消されてしまった。
「ちょっとあんたたち私たち無視してんじゃないわよ!」
どうやらルイズに使い魔たちが主たち抜きで盛り上がっている様子は、沸点を上回るには十分すぎたようだ。
完二はルイズという少女の沸点は高くはないだろうと思っていたので驚く事実でもないが、クマと陽介はひどく驚いたようだ。
「ごめんクマー」
クマはルイズの噴火に脅えキュルケの陰に隠れる。
「ちょ、違うんだよ、情報整理だよ。俺たちも混乱してて……」
「ならささっと説明しなさい!」
ルイズの噛み付くような態度に陽介もおののいて(クマのように主の影に隠れたりはしなかったが)、大人しく説明を始めた。
完二、陽介、クマの三人は世界にはテレビという映像を見る機械があること。
彼らがテレビに入る力を得たこと。
彼らテレビの中でペルソナという力を使えるということ。
ペルソナは外敵に対するための心の仮面だということ。
完二のペルソナは名をロクテンマオウ。赤い金属のような体を持ち、雷属性の力を使いその物理的な力は随一であること。
陽介のペルソナはスサノオ。疾風属性の力を持つこと。
クマのペルソナはカムイ。氷雪属性と回復の力を持つこと。
などを説明した。
説明で一番困ったのはテレビの説明であった。この魔法の世界で、科学技術の結晶の説明をすることは一苦労なうえ、
それを理解されるとテレビの中に入るとは映像の中に入ることとは違うということを説明しないとならなかったからだ。
それらの最難関をなんとかこの世界の少女たちに説明し終え、質問はこの世界にも存在する魔法のことに及ぶ。
「雷属性と疾風属性?雷は風の系統の中にあるんじゃないの?」
キュルケが質問してくる。どうやらあちらとこの世界では魔法のことさえ勝手が異なるようだ。
「いや、雷は雷だろ。俺たちの世界のテレビの中じゃ……ってややこしいな。とりあえず別の属性だった。
ペルソナの力は雷、疾風、氷、炎の4つが基本だな。つっても物理攻撃と闇・光、あとどれにも属さないメギドみたいなものもあったけど」
「分類の仕方が違うのね……」
今まで黙っていたタバサが質問する。
「あなたたちはどれくらい強い?」
ルイズとキュルケもじっと三人を見た。実のところ、それはキュルケとルイズも強く知りたがっていたことかもしれない。
「けっこう強いと思うけどここだと何処まで通用するかな……」
陽介は答えを濁した。あの世界でも相性によっては敵の強さが何倍にもなることはままあった。ならばこの世界ではどうなったものかわからない。
「カンジ、あのゴーレムはどうだったクマか?強かったクマか?弱かったクマか?」
完二はさきほど叩き潰したワルキューレを思い出した。先ほどは武器もなく、また頭に来ていたのでロクテンマオウで破壊した。しかし……
「ザコだよ、あんなもん。キルラッシュ使ったけどよ、武器さえありゃ殴っても簡単にぶっ壊せたぜ」
完二の言葉に少なからずルイズ、キュルケ、タバサの三人は少なからず衝撃を受けたようだった。
話を切り上げることを提案したのはルイズだった。
キュルケはまだまだ聞きたいことはあるし、午後の授業までは時間はあると反対したが、
ルイズはまだ食事を済ませていないと言ってこれ以上は食事の時間もなくなると言った。こうして6人の話は終わりおのおの部屋から出て行った。
「カンジ、ついてきなさい」
完二はしぶしぶと気乗りしない様子でついて行く。
先ほどのケンカ騒ぎで忘れかけていたが二人は朝食時の時にケンカ別れしたのであった。
二人になったとたんそのことが二人にとって強く思い出され、喋りづらい雰囲気になる。
その雰囲気を先に壊したのはルイズだった。
「カンジ、あんたも一緒に食事にしなさい」
「ああ?」
ルイズの顔は真っ赤であった。朝の仕打ちを思いその前言を撤回すること、
そして手ひどく扱ってきた使い魔を認めるのはルイズのとって大きな勇気のいることであった。
「あんた私のためにギーシュに怒ってたんでしょ?」
彼女は完二がギーシュのワルキューレを倒したあと、ギーシュに言い放った言葉を思い出した。
ルイズの陰口をもう二度というんじゃねえぞ!と、彼は確かに言った。
彼女は魔法学院に入ってから一人で戦い、耐え忍んできたと思っている。
誰も彼女をかばってなどしてはくれなかった。だが完二は衆人環視の中で言い放ったのだ。
それがルイズにとっては――絶対に認めたくないが――嬉しかったのだ。
「今からは食事を一緒の席でとることを特別に許可してあげるわ。寛大なご主人様に感謝しなさい。
もちろん怒ってくれたのが嬉しいってわけじゃないからね!
ただあんたがそこそこ力を持ってるならそれに見合うだけのご褒美を与えるのは主人の役目っていうか……」
ルイズは顔の赤みを増やしながら途中からろれつも怪しくなる。
「いや、昼飯ならもう食ったぜ、厨房で」
完二はあっさりと気の利かない一言を言った。
ルイズの顔から一気に朱が引く。
「つか、朝飯もそこでもらったんだけどな。マルトーのおっさんは気のいい奴だしよ……。ってどうしたんだその顔」
完二はやっとルイズの顔に不機嫌の表情が貼り付けられていたことに気付いたようだった。
「なんでもないわよ!」
「なんでもないなら怒鳴んなよ……」
「あんたはこれからずっと使用人たちと一緒にご飯食ってなさい!」
ルイズはご主人さまの気遣いも理解できない使い魔に一瞬でも貴族の食事を許そうとした自分に腹を立てると同時に、
食事を共にするなどこれからも許さないと胸に固く誓う。
完二はもとよりそのつもりであったのかそう言われて特にどうも思ってないように見える。しかしやはりルイズの不機嫌の理由がよくわからないようだ。
「ナニ怒ってんだよ?」
「怒ってない!」
気の利かない使い魔からルイズはぷいっと顔を背ける。
「怒ってるじゃねえか、ったく、これだから女ってのは……」
はあ、と完二はタメ息をこぼした。
ルイズはご機嫌ななめで、完二は文句をこぼす。
それでも二人は並んで歩く。
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