とりあえず結果だけを述べれば――
九郎が勝利し、ギーシュは敗北した。
直前で止められた偃月刀は、造花を焼き散らし、ギーシュの髪をチリチリにした。
そのままギーシュは白目をむいて気絶した。
そして九郎は背を向け、ルイズの元へ走った。
走っている最中、その身体が光り輝き、元の姿へと戻る。
そのままギーシュは白目をむいて気絶した。
そして九郎は背を向け、ルイズの元へ走った。
走っている最中、その身体が光り輝き、元の姿へと戻る。
その瞬間、静寂に包まれていた生徒達が、堰を切ったかのようにざわめきだした。
「ギーシュが負けた!?」
「何なんだ、あいつは……ただの平民じゃなかったのか?」
「そ、それよりも、あいつ杖なしで魔法を使わなかったか?」
「まさか、先住魔法!?」
「何なんだ、あいつは……ただの平民じゃなかったのか?」
「そ、それよりも、あいつ杖なしで魔法を使わなかったか?」
「まさか、先住魔法!?」
あれやこれやと言い合う生徒達からの奇異の視線を無視しながら、倒れているルイズの傍へ向かう。
目を白黒させて呆けているキュルケからルイズを受け取る。
まだ目を覚まさないが、呼吸は安定している。
ホッとする九郎。
途端に右膝が落ちる。
目を白黒させて呆けているキュルケからルイズを受け取る。
まだ目を覚まさないが、呼吸は安定している。
ホッとする九郎。
途端に右膝が落ちる。
「あれ?」
咄嗟に片足でバランスをとる。
無理な変身のせいか、相当疲れているようだ。
しかし、ルイズをこのままにしておくわけにもいかない。
両手でルイズを抱え、
無理な変身のせいか、相当疲れているようだ。
しかし、ルイズをこのままにしておくわけにもいかない。
両手でルイズを抱え、
「危ない!」
思わず倒れそうになったところを、走ってきた少女が身体を支えた。
「だ、大丈夫ですか!?」
「あっと、悪い。えぇと、君はさっきの」
「はい、シエスタと言います」
「そっか、悪い。この子を頼むわ」
「あっと、悪い。えぇと、君はさっきの」
「はい、シエスタと言います」
「そっか、悪い。この子を頼むわ」
力を振り絞ってルイズを渡すと、そのまま膝から倒れた。
周囲からざわめくような声が響くか、今の九郎にはノイズのようにしか聞こえない。
そのまま意識は闇に落ちていった。
周囲からざわめくような声が響くか、今の九郎にはノイズのようにしか聞こえない。
そのまま意識は闇に落ちていった。
倒れたまま動かなくなった九郎を慌てて揺さぶるシエスタ。
「大丈夫ですか!? しっかりしてください――って……寝てる?」
うつ伏せで寝息を立てている九郎。
安堵し、思わず力が抜け、うっかりルイズを離してしまうシエスタ。
あ、と思ったのも束の間、見事にルイズのおでこと九郎の後頭部が激突。
一瞬、星が見えたのは気のせいだろうか?
安堵し、思わず力が抜け、うっかりルイズを離してしまうシエスタ。
あ、と思ったのも束の間、見事にルイズのおでこと九郎の後頭部が激突。
一瞬、星が見えたのは気のせいだろうか?
「あ、ああああ! ごめんなさい! ごめんなさい!」
思わず平謝りするシエスタ。
彼女にとって幸運なのが、九郎もルイズも気絶したままだということと、周囲の生徒達の中に、わざわざそのことを伝えようとする奇特な人間はいなかったということだ。
彼女にとって幸運なのが、九郎もルイズも気絶したままだということと、周囲の生徒達の中に、わざわざそのことを伝えようとする奇特な人間はいなかったということだ。
学院長室。
遠見の鏡で一部始終を見ていたオスマンとコルベール。
震える声でコルベールが呟く。
遠見の鏡で一部始終を見ていたオスマンとコルベール。
震える声でコルベールが呟く。
「勝ちましたな、オールド・オスマン」
しかし返答は無い。
「オールド・オスマン?」
問いかけながら顔を向けて驚いた。
今まで見たこともないほど瞳が見開いており、白い口髭が見て分かるほどに震えていた。
一瞬、硬直していたが、ただ事でないことに気付き慌てて声を上げる。
今まで見たこともないほど瞳が見開いており、白い口髭が見て分かるほどに震えていた。
一瞬、硬直していたが、ただ事でないことに気付き慌てて声を上げる。
「オールド・オスマン!」
「――っ!? お、おお! 何じゃね、コルベール君?」
「何じゃね? じゃないですよ。一体どうしたのですか?」
「ん? あ、いや……お、おおそうじゃ、あの平民が勝ったの!」
「それは私の科白なんですが……」
「ええい、ケチケチするな! で、あの平民はやはり?」
「は、ははっ! 恐らくガンダールヴではないかと。ただ――」
「――っ!? お、おお! 何じゃね、コルベール君?」
「何じゃね? じゃないですよ。一体どうしたのですか?」
「ん? あ、いや……お、おおそうじゃ、あの平民が勝ったの!」
「それは私の科白なんですが……」
「ええい、ケチケチするな! で、あの平民はやはり?」
「は、ははっ! 恐らくガンダールヴではないかと。ただ――」
困ったような顔を見せるコルベール。
重々しくオスマンが口を開く。
重々しくオスマンが口を開く。
「うむ……伝説によればガンダールヴとは始祖ブリミルの用いた使い魔。様々な武器を使いこなし、並みのメイジや軍では手も足も出なかったとある。
しかし、ガンダールヴ自身はメイジではない」
「あのミス・ヴァリエールの使い魔は魔法らしきものを使っておりました。どういうことでしょうか……?」
「……そのことなんじゃがね、ミスタ・コルベール」
「は、何でしょうか?」
しかし、ガンダールヴ自身はメイジではない」
「あのミス・ヴァリエールの使い魔は魔法らしきものを使っておりました。どういうことでしょうか……?」
「……そのことなんじゃがね、ミスタ・コルベール」
「は、何でしょうか?」
突然、名前を呼ばれ顔を引き締めるコルベール。
「あの使い魔の件なんじゃが、このわしが一任する」
「――は? オールド・オスマンが、ですか? 紋章の方はどうするのです?」
「無論、そっちも含めた全てじゃ。
あの使い魔は不確定要素が大きすぎる。もし王室の耳にでも入ってしまったら、連中のことじゃ。ろくなことを思いつかんじゃろう」
「ははあ、なるほど」
「よって、この件はわしに一任させてもらう。他言は無用じゃ」
「はい、かしこまりました!」
「――は? オールド・オスマンが、ですか? 紋章の方はどうするのです?」
「無論、そっちも含めた全てじゃ。
あの使い魔は不確定要素が大きすぎる。もし王室の耳にでも入ってしまったら、連中のことじゃ。ろくなことを思いつかんじゃろう」
「ははあ、なるほど」
「よって、この件はわしに一任させてもらう。他言は無用じゃ」
「はい、かしこまりました!」
オスマンは杖を振り、鏡の映像を消すと、窓際まで歩いていった。
「すまんが少し考えたいことがある。しばらく一人にしてくれんかの?」
「はい、分かりました。では失礼します」
「はい、分かりました。では失礼します」
コルベールは一礼をし、部屋から出た。
一人になったオスマンは、窓から見える景色を眺めながら、目に見えない誰かに語りかけるように呟いた。
一人になったオスマンは、窓から見える景色を眺めながら、目に見えない誰かに語りかけるように呟いた。
「あの青年がそうだというのか……?」
風が吹く。
懐かしさ、哀しさ、様々な感情を含めた瞳が静かに揺れた。
懐かしさ、哀しさ、様々な感情を含めた瞳が静かに揺れた。
「なあ、覇道」