一段ごとにしなる階段を上っていく。
階段の隙間から、闇夜の眼下に、ラ・ロシェールの街の明かりが見えた。
階段の隙間から、闇夜の眼下に、ラ・ロシェールの街の明かりが見えた。
「命のともし火だな。」
「…私はこれを背負っているのね。」
「…私はこれを背負っているのね。」
ワルドとルイズが呟く。
また足を動かす。今度は誰も話さない。
また足を動かす。今度は誰も話さない。
だが、少し変だ。
足音がひとつ…多い。
スネークが後ろを振り返る。
先ほどフーケのゴーレムの上にいた仮面の男が飛び上がり、ルイズの背後に立った。
先ほどフーケのゴーレムの上にいた仮面の男が飛び上がり、ルイズの背後に立った。
「ルイズ!」
「え?」
「え?」
仮面の男がルイズを抱え上げる。
スネークがナイフを引き抜き、切りつける。うまく、仮面の男のみを切りつけた。
しかし、浅い。スネークを蹴り飛ばす仮面の男。
その隙を突いてワルドが風の槌で男を殴りつける。
スネークがナイフを引き抜き、切りつける。うまく、仮面の男のみを切りつけた。
しかし、浅い。スネークを蹴り飛ばす仮面の男。
その隙を突いてワルドが風の槌で男を殴りつける。
全身を強打し、ルイズから手を離す男。
しかし、その手放した位置が悪い。ルイズが空中に投げ出される。
ワルドが飛び上がり、ルイズを抱きとめた。
しかし、その手放した位置が悪い。ルイズが空中に投げ出される。
ワルドが飛び上がり、ルイズを抱きとめた。
「先に行け!」
スネークが叫ぶ。
ワルドはルイズを抱えたまま、階段へ戻って、走り出した。
スネークが男とワルドの間に割り込む。
対峙する二人。
仮面の男が杖を引き抜いた。
詠唱を開始する男。
空気が冷たく感じる。男が呪文を完成させる。
ワルドはルイズを抱えたまま、階段へ戻って、走り出した。
スネークが男とワルドの間に割り込む。
対峙する二人。
仮面の男が杖を引き抜いた。
詠唱を開始する男。
空気が冷たく感じる。男が呪文を完成させる。
「相棒!俺を盾にしろ!」
呪文が来る!
盾になるものはデルフしかない。
デルフを引き抜き、盾のように構えるスネーク。
盾になるものはデルフしかない。
デルフを引き抜き、盾のように構えるスネーク。
「『ライトニング・クラウド』!!!」
呪文の正体に気がついたデルフが叫ぶ。
空気を裂き、男の体から稲妻が走る。
デルフによって捻じ曲げられた稲妻が、スネークの左腕と腰を貫く。
空気を裂き、男の体から稲妻が走る。
デルフによって捻じ曲げられた稲妻が、スネークの左腕と腰を貫く。
「ぐぉおおおおおお!!!!!!!!!」
人体が焼けるにおいがする。
左腕が火傷を負っていた。
左腕が火傷を負っていた。
「『エア・ハンマー』だ!!気をつけろ、相棒!!」
間髪入れずに男が呪文を詠唱する。
詠唱が完成する前に、ソーコムを右腕のみで迎え撃つ。
詠唱が完成する前に、ソーコムを右腕のみで迎え撃つ。
ダンッ!!
発射した一発が男の額を貫く。
力なく倒れ、奈落の底へと落下していった。
力なく倒れ、奈落の底へと落下していった。
膝を突くスネーク。息が荒い。
「よう相棒、まだ生きてるか?」
「もちろんだ。」
「被害は?」
「左腕に火傷。それと、ステルス迷彩が電撃で壊れた。」
「もちろんだ。」
「被害は?」
「左腕に火傷。それと、ステルス迷彩が電撃で壊れた。」
ステルス迷彩を取り出すスネーク。
ステルス迷彩は黒くこげていた。
これでは二度と使えないだろう。
ただ、それのおかげで腰にダメージはない。
ステルス迷彩は黒くこげていた。
これでは二度と使えないだろう。
ただ、それのおかげで腰にダメージはない。
「さっきの電撃は『ライトニング・クラウド』だ。
『風』系統の強力な呪文だ。アイツ、相当の使い手のようだな。」
『風』系統の強力な呪文だ。アイツ、相当の使い手のようだな。」
先ほどの電撃を思い出す。
もう喰らいたくない。
もう喰らいたくない。
「急ぐぞ、デルフ。」
「おうよ。」
「おうよ。」
痛む左腕をかばいながら、階段を上り始めた。
階段を駆け上がり、一本の枝を進むと、一艘の船が停泊していた。
船上ではルイズとワルドが待っていた。
船上ではルイズとワルドが待っていた。
「スネーク、大丈夫!?」
「火傷を負った。」
「火傷を負った。」
左腕を捲り上げる。
傷口の一部が炭化している。
自然回復は望み薄だ。
傷口の一部が炭化している。
自然回復は望み薄だ。
「ふむ、水の治療薬を分けてくれないか?」
ワルドが船長らしき平民に話しかける。
「お安い御用でさ。」
船員が缶を手渡す。
これが治療薬だそうだ。
字が読めないため、言われない限り何なのか分からなかった。
これが治療薬だそうだ。
字が読めないため、言われない限り何なのか分からなかった。
「これを塗れば、一発でさ。」
「すまない。」
「すまない。」
礼をいい、船に乗り込む。
船が『風石』によって浮かび上がる。
帆と羽が風を受けて動き出した。
出港だ。
船が『風石』によって浮かび上がる。
帆と羽が風を受けて動き出した。
出港だ。
船倉でスネークは火傷の治療を行っていた。
その治療薬の効果に驚くスネーク。
その治療薬の効果に驚くスネーク。
「みるみるうちに回復していくな。」
完治はせずとも、動かせるようにはなった。
さすがは魔法、か。
さすがは魔法、か。
「到着は明日の昼だ。寝ておきたまえ。」
「すまない。」
「すまない。」
ワルドの言葉に素直に従う。
疲れきった体を横たえ、眠るスネーク。
ルイズが難しい顔でスネークを見つめる。
疲れきった体を横たえ、眠るスネーク。
ルイズが難しい顔でスネークを見つめる。
「仮眠を取れるときに取る。これは戦士の基本だよ。
君も寝ておきなさい。」
君も寝ておきなさい。」
ルイズもワルドに言われ眠った。
翌朝。
扉の隙間からまばゆい朝日が差し込む。
その光で目を覚ますスネーク。
一緒にルイズも目を覚ます。
ワルドは既に目を覚ましていた。
扉の隙間からまばゆい朝日が差し込む。
その光で目を覚ますスネーク。
一緒にルイズも目を覚ます。
ワルドは既に目を覚ましていた。
「よく眠れたかね、どうだ気分は?」
「振動ベッドで熟睡させてもらった。一人で眠るにはもったいないくらいだ。」
「振動ベッドで熟睡させてもらった。一人で眠るにはもったいないくらいだ。」
もちろん、硬く、揺れる床のベッドなど気持ちのいいものではない。
朝日を浴びに、外へ出る。
天気がいい。下は雲だらけだが、上は抜けるような青空だ。すがすがしい風が顔を撫ぜる。
朝日を浴びに、外へ出る。
天気がいい。下は雲だらけだが、上は抜けるような青空だ。すがすがしい風が顔を撫ぜる。
「そろそろアルビオンが見えるはずだ。。」
「下は雲だらけだぞ。一体何処に大陸がある?」
「何処見てるのよ。アルビオンはあっち。」
「下は雲だらけだぞ。一体何処に大陸がある?」
「何処見てるのよ。アルビオンはあっち。」
ルイズが空中を指差す。指差す方を仰ぐスネーク。
そこには巨大な雲しかないはずだ。
だが、その中にアルビオンは存在した。
そこには巨大な雲しかないはずだ。
だが、その中にアルビオンは存在した。
「大陸が…浮いている…。」
「浮遊大陸アルビオン。その名の通り、宙に浮いた国。
月に何度かハルケギニアの上空に飛来するのよ。
それと、アルビオンは『白の国』とも呼ばれているわ。
大陸から溢れた水が霧のようになって、アルビオンの下半分を覆うから。」
「浮遊大陸アルビオン。その名の通り、宙に浮いた国。
月に何度かハルケギニアの上空に飛来するのよ。
それと、アルビオンは『白の国』とも呼ばれているわ。
大陸から溢れた水が霧のようになって、アルビオンの下半分を覆うから。」
ルイズが平らな胸を張って説明する。
スネークに彼の知らないことを教えるのが嬉しいようだ。
スネークに彼の知らないことを教えるのが嬉しいようだ。
「それにしても驚いた。」
「どうして?」
「大陸が浮いているなんて事、俺の常識からは考えようもなかったもんでね。」
「どうして?」
「大陸が浮いているなんて事、俺の常識からは考えようもなかったもんでね。」
貴重な体験をした。この光景を目に焼き付けておこう。
「右舷上方・雲中より、アンノウン接近中!」
レッドアラート。鐘楼の見張りが叫ぶ。
右舷上方から、この船より一回り大きい黒船が近づいてくる。
舷側の穴からは大砲が顔をのぞかせている。
右舷上方から、この船より一回り大きい黒船が近づいてくる。
舷側の穴からは大砲が顔をのぞかせている。
「大砲なんてあるのか。」
「感心してる場合じゃないわよ!」
「感心してる場合じゃないわよ!」
のんきなスネークと焦るルイズ。
ワルドは表情を変えない。真っ直ぐと黒船を見つめている。
ワルドは表情を変えない。真っ直ぐと黒船を見つめている。
「反乱勢…貴族派の軍艦かも知れないな。」
「旗は掲げていないようだぞ。それでも軍艦と言うのか?」
「旗を掲げていない…、空賊かしら…。」
「旗は掲げていないようだぞ。それでも軍艦と言うのか?」
「旗を掲げていない…、空賊かしら…。」
ルイズがかすかに震える。
ワルドがその肩を抱いた。
ワルドがその肩を抱いた。
ドーンッ!!!
黒船が威嚇射撃をする。
「全員抵抗するな!抵抗したものには容赦しない!」
黒船からメガホンを持った男が大声で怒鳴った。
こちらに向かってフリント・ロック銃や弓が構えられ、鉤つきロープがルイズたちの乗った船の舷縁にひっかかる。
それぞれ獲物をもって、屈強な男たちがロープを伝ってやってくる。
こちらに向かってフリント・ロック銃や弓が構えられ、鉤つきロープがルイズたちの乗った船の舷縁にひっかかる。
それぞれ獲物をもって、屈強な男たちがロープを伝ってやってくる。
「パーレイ…って通じないか?とにかく、勘弁してくれ。」
早速服従するスネーク。
その頭を思いっきりルイズが叩いた。
その頭を思いっきりルイズが叩いた。
「いきなり負けてんじゃないわよ!」
「『匹夫の勇、一人に敵するものなり』」
「『匹夫の勇、一人に敵するものなり』」
文句も言わず、それだけ言うスネーク。
「何それ?」
「無闇に戦いを求める愚か者の勇気は、一人の敵を相手にするのが精いっぱい、と言う意味だ。
まずは数を考えろ。これだけの武装した相手を無傷で倒すなど、不可能な話だ。」
「無闇に戦いを求める愚か者の勇気は、一人の敵を相手にするのが精いっぱい、と言う意味だ。
まずは数を考えろ。これだけの武装した相手を無傷で倒すなど、不可能な話だ。」
正論で返され、ぐうの音も出ないルイズ。
先ほどまで騒いでいたワルドのグリフォンも静かになっている。どうやら魔法で眠らされたようだ。
先ほどまで騒いでいたワルドのグリフォンも静かになっている。どうやら魔法で眠らされたようだ。
「船長は何処だ!?」
派手な格好の一人の空賊が降り立ち言った。
肌は日焼けだろうか、赤銅色で、随分たくましい胸板だ、
シャツは油で黒く、胸をはだけさせていて、左目には眼帯。
どうやら空賊の頭らしい。
肌は日焼けだろうか、赤銅色で、随分たくましい胸板だ、
シャツは油で黒く、胸をはだけさせていて、左目には眼帯。
どうやら空賊の頭らしい。
「わ、私だ。」
声を上ずらせながら船長が手を上げる。
髪の毛から足の指まで小刻みに震えている。
頭が曲刀を船長の喉下に突きつける。
髪の毛から足の指まで小刻みに震えている。
頭が曲刀を船長の喉下に突きつける。
「船の名前と積荷は?」
「ト、トリステインの『マリー・ガラント』号。積荷は硫黄だ。」
「ト、トリステインの『マリー・ガラント』号。積荷は硫黄だ。」
頭がニヤリと笑い、船長の帽子を取り上げ、自分がかぶった。
「この船は俺たちが買った!代金はお前らの命だ!」
今度は屈辱で震える船長。
それから頭は甲板のルイズとワルドに気がついた。
大股で近づく頭。
それから頭は甲板のルイズとワルドに気がついた。
大股で近づく頭。
「貴族まで乗せているのか!こいつぁいい!身代金をたんまりせしめてやる!」
頭がルイズの顎を手で持ち上げる。
「たいした別嬪だな。こいつは俺たちの船で皿洗いかもな!」
男たちが下品に笑う。
ルイズの目が怒りに燃える。
頭の手をぴしゃりと跳ね除け、にらみつけた。
ルイズの目が怒りに燃える。
頭の手をぴしゃりと跳ね除け、にらみつけた。
「生意気な餓鬼だな。少しは立場をわきまえろ。」
「下がれ、下郎。」
「はっ!威勢だけはいいじゃねぇか!気の強い女は嫌いじゃないぜ!」
「下がれ、下郎。」
「はっ!威勢だけはいいじゃねぇか!気の強い女は嫌いじゃないぜ!」
怒りに震えるルイズ。
スネークの手を引き、前に突き出し、命令する。
スネークの手を引き、前に突き出し、命令する。
「スネーク、やっちゃいなさい!」
「あぁ?なんだおめぇは?」
「あー、いや俺はただの平m「私の使い魔よ!」……。」
「あぁ?なんだおめぇは?」
「あー、いや俺はただの平m「私の使い魔よ!」……。」
さらに男たちが笑う。
「人間が使い魔?これは笑える!いいジョークだ!」
「トリステインの貴族はいよいよ人間まで使い魔にしやがった!」
「トリステインの貴族はいよいよ人間まで使い魔にしやがった!」
口々にスネークをののしる。
スネークは空賊を気にしてはいないが、ルイズに呆れていた。
余計な情報を与えた。まったく、厄介な事を…。
スネークは空賊を気にしてはいないが、ルイズに呆れていた。
余計な情報を与えた。まったく、厄介な事を…。
「おい、野郎ども!この使い魔殿は船首の船倉に、こちらの貴族は船尾の船倉にお連れしろ!」