慎一の脳裏にかつての記憶がよぎる。子供の頃見たアニメ。
巨大な悪の組織と戦うスーパーロボット。敵を穿つ未来の兵器・巨大ドリル―。
巨大な悪の組織と戦うスーパーロボット。敵を穿つ未来の兵器・巨大ドリル―。
―まさか! 剣と魔法の世界でお目にかかる事になろうとは!!
郷愁に耽っている暇はない。慎一の倍はあろうかと言うその鉄隗を、間一髪、横っ飛びで避ける。
その眼前に、今度は巨大な足が突っ込んでくる。避けている余裕はない。
両手で受け止め、入り口側の壁をぶち破って、宿の外へと押し出されていく。
その眼前に、今度は巨大な足が突っ込んでくる。避けている余裕はない。
両手で受け止め、入り口側の壁をぶち破って、宿の外へと押し出されていく。
宿の二階部分まで破壊しながら、そのゴーレムの全身象が露わになる。
全長は過去に見たそれと同程度、ただし、大きくくびれた腰部を始め、全身が鋭角的にスリム化している。
特徴的なのは左手のドリル、そして、慎一を押し潰さんと回転する、脚部側面に取り付けられた4つのローラー。
全長は過去に見たそれと同程度、ただし、大きくくびれた腰部を始め、全身が鋭角的にスリム化している。
特徴的なのは左手のドリル、そして、慎一を押し潰さんと回転する、脚部側面に取り付けられた4つのローラー。
敵は、魔力を回転力へと変換する事で、ゴーレムの馬力を飛躍的に高めていた。
的確に状況判断しながらゴーレムを動かす強敵、 だが、真に恐るべきはそこではない。
建物一つを巻き込み、おそらくは仲間であろう賊をも巻き込みながら、一切止まるつもりがない大胆さだ。
的確に状況判断しながらゴーレムを動かす強敵、 だが、真に恐るべきはそこではない。
建物一つを巻き込み、おそらくは仲間であろう賊をも巻き込みながら、一切止まるつもりがない大胆さだ。
「チクショウッ!! やるしかねぇ!!」
慎一が意を決し、足とローラーの間のわずかな空間に身を滑らせる。
ゴオオオウウ、と鼻先を掠めながら巨体が通過する。それに合わせ体内の巨熊を呼び出す。
慎一が意を決し、足とローラーの間のわずかな空間に身を滑らせる。
ゴオオオウウ、と鼻先を掠めながら巨体が通過する。それに合わせ体内の巨熊を呼び出す。
足元が突然大きく盛り上がり、ゴーレムが前へとつんのめる。
その勢いを利用して、巨熊が片足を投げっ放しジャーマンの要領で放り投げる。
加速がついたその巨体は、勢いのままに峡谷の岸壁に強かに激突する・・・ハズだったが、
その勢いを利用して、巨熊が片足を投げっ放しジャーマンの要領で放り投げる。
加速がついたその巨体は、勢いのままに峡谷の岸壁に強かに激突する・・・ハズだったが、
頭部に乗ったメイジの杖にあわせ、ゴーレムが体操選手のようにクルクルと前宙し、
ターンを決める水泳選手のように、華麗に壁面に張り付く。
同時に両足のローラーから瞬時に長いスパイクが生え、壁面を垂直に爆走しだす。
ターンを決める水泳選手のように、華麗に壁面に張り付く。
同時に両足のローラーから瞬時に長いスパイクが生え、壁面を垂直に爆走しだす。
「なんだとおおおッ!?」
吠える慎一の位置を確認しながら、ゴーレムが腰を落とす。同時に、上半身が不気味に回転を始める。
吠える慎一の位置を確認しながら、ゴーレムが腰を落とす。同時に、上半身が不気味に回転を始める。
刹那、放たれた矢の如く、左手を突き出したゴーレムが飛んでくる。
固定された頭部を除いた、首、腰の間接が回転を始め、
通常の三倍の回転を得たゴーレムの全身が、一本のスクリューとなる。
固定された頭部を除いた、首、腰の間接が回転を始め、
通常の三倍の回転を得たゴーレムの全身が、一本のスクリューとなる。
巨熊のパワーを持ってしても、触れれば即ミンチであろう。
変身を解きながら、慎一が大きく飛び退く。
ゴーレムは猛スピードで眼前を通過し、発生した衝撃波の大渦に巻き込まれた慎一は、後方の壁面へと叩き付けられる。
ゴーレムはそのまま前方の岩盤へと突っ込み、勢いのままに掘り進んでいく。
壁面に亀裂が走り、ボゴンボゴンと建物の崩落する音が響く。
変身を解きながら、慎一が大きく飛び退く。
ゴーレムは猛スピードで眼前を通過し、発生した衝撃波の大渦に巻き込まれた慎一は、後方の壁面へと叩き付けられる。
ゴーレムはそのまま前方の岩盤へと突っ込み、勢いのままに掘り進んでいく。
壁面に亀裂が走り、ボゴンボゴンと建物の崩落する音が響く。
「止まる気一切無しかッ! やるじゃねーかッ!! あのアマ!!」
慎一は翼を広げ、大きく上空へと飛び立つ。
どうやってそれを認識しているのか、岩盤を砕く音も次第に上昇していく。
慎一は翼を広げ、大きく上空へと飛び立つ。
どうやってそれを認識しているのか、岩盤を砕く音も次第に上昇していく。
やがて、切り立った岸壁が終点を向かえ、開けた台地が視界に飛び込んでくる。
慎一が緩やかに着地する。 程なく、巨大なドリルが天を突き、ゴーレムがにゅっ、と顔を見せた。
慎一が緩やかに着地する。 程なく、巨大なドリルが天を突き、ゴーレムがにゅっ、と顔を見せた。
「周りの被害が心配かい?
あいかわらず優しいねえ 『真理阿』ちゃんは」
あいかわらず優しいねえ 『真理阿』ちゃんは」
「あんな狭ッ苦しい場所じゃ 思う存分ブン殴れねえからな!
・・・随分と俺好みの女に成りやがったじゃあねえか 『ミス・ロングビル』」
・・・随分と俺好みの女に成りやがったじゃあねえか 『ミス・ロングビル』」
ゴーレムの頭部が月明かりに晒され、メイジの全身が明らかとなる。
フードの下から現れた顔は、間違いなく慎一の良く知る怪盗 『土くれ』のフーケ。
―ただし、その大きく吊り上った三白眼を除けば、だ・・・。
フードの下から現れた顔は、間違いなく慎一の良く知る怪盗 『土くれ』のフーケ。
―ただし、その大きく吊り上った三白眼を除けば、だ・・・。
「俺の知らぬ間に 女を磨いてきやがったみてえだな・・・」
「フフ・・・ 兄さんも一度回って見るがいいさ! 新たな世界が開けるよォ!!」
そう言い終ると、両足のローラーが勢い良く回転を始める。
腰を捻ってタメを作りながら、ゴーレムが突撃する。 慎一が爪を研ぐ
腰を捻ってタメを作りながら、ゴーレムが突撃する。 慎一が爪を研ぐ
―と、
身構えた慎一の頭上を翼竜の影が通過し、その眼前に人影が降り立つ。
男の名前は ギーシュ・ド・グラモン・・・
身構えた慎一の頭上を翼竜の影が通過し、その眼前に人影が降り立つ。
男の名前は ギーシュ・ド・グラモン・・・
「この場は僕に任せてもらおうか」
「下がってろ、ミンチになりてえかッ!!」
「下がってろ、ミンチになりてえかッ!!」
喚く慎一を右手で制しながら、胸元の薔薇を掴む ― 本来なら、ここで花びらを千切るところであるが・・・
「僕だってヴェストリの一件以来、寝ていたわけでは無いさ!」
そう言って、一輪まるごと前方に投げると、『錬金』を開始する。
そう言って、一輪まるごと前方に投げると、『錬金』を開始する。
まばゆい光とともに、直ちに青銅の塊が膨れ上がり・・・
その目の前に、恐らくはワルキューレ7体分の質量を持つのであろう青銅の巨体が、腕組み仁王立ちで出現した。
「構うこたあ無いよ! 丸ごとブッちめなァ!! ゴーレムッ!!」
フーケの指示を受け、鋼鉄の巨体が加速する。
フーケの指示を受け、鋼鉄の巨体が加速する。
「エレガントに受け止めろッ!! ワルキューレェ!!」
ギーシュが造花を振るう、その声を聞き、仮面の下の乙女の瞳が大きく光り、その両腕を鶴翼の如く開いた。
ギーシュが造花を振るう、その声を聞き、仮面の下の乙女の瞳が大きく光り、その両腕を鶴翼の如く開いた。
月光の下、鋼鉄と青銅の巨人が激突した・・・。