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  • あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ
  • ゼロな提督-07

あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロな提督-07

最終更新:2008年03月16日 08:31

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 聖地。

 この言葉を聴いて、ヤンは何を想像するだろうか。
 宇宙暦800年、新帝国暦2年ごろの聖地といえば、地球そのもの。
 貿易国家フェザーンの影の主であり、麻薬を使って信徒を洗脳しテロに利用する狂信的宗教集団『地球教』の本拠地のこと。
 ハルケギニアと同じ文明レベルの時代の地球で言うなら、それはイスラム教徒を中心としたアラビア世界の宗教的中心地。
 かつキリスト教とユダヤ教の聖地であり、長きに渡る泥沼の宗教戦争が行われた悲劇の舞台。
 歴史家としてのヤンならば、中東戦争と呼ばれた20世紀前後の地獄のような戦争をも思い浮かべるだろう。
 そして、テロの嵐が吹き荒れるパレスチナ。
 21世紀のゲットーとも揶揄されるヨルダン川西岸の巨大分離壁【アパルトヘイト・ウォール】。
 エルサレムの嘆きの壁で一心不乱に祈りの言葉をささげるユダヤ教徒達。
 その壁の上にイスラム寺院アル=アクサー・モスクが建ってる図は、かなり悪趣味なジョークとして記憶の中に含んでいることだろう。

 同時に、ハルケギニアの聖地の実情がいかなるものか彼は知らない。始祖ブリミルがらみの地とは知っているが、どんな地なのかまでは分からない。それは大方のハルケギニアの人々も同じことだ。
 何しろハルケギニアの人間と聖地に暮らす亜人「エルフ」とは、極めて険悪な関係にあり、両者の接触は大方が戦争と言う形で行われているのだから。
 それも、侵攻した人間側の度重なる惨敗という結果で。
 ハルケギニアの聖地回復運動は『レコン・キスタ』という名称で現在も行われているようだが、6000年経過した現在に至るまで、一度も聖地を奪還したことはなかった。
 ゆえに、すでに聖地がいかなる場所か、ハルケギニアの誰も知らなかった。

 では、このヤンが召喚されたハルケギニアの聖地とは、いかなる場所なのだろうか?
 ヤンを含め、ハルケギニアの多くの人が、砂漠の中に浮かぶオアシス都市を、耳の長いエルフたちが住む石造りの町を思い浮かべるだろうか。
 始祖ブリミルがらみの遺構や石碑の一つくらい残っていることを期待もしているだろう。
 加えてヤンならモスクや尖塔が並ぶイスラム風の風景も。
 いや、おそらくかつてはそういう姿をしていた時期もあったかもしれない。

 ゆえに、彼らは驚愕とともに、失望するだろう。
 この、聖地の実際を目にすれば。膝を地に付き天を仰ぎ、始祖の福音はハルケギニアから失われたのではないか、と絶望するだろう。ヤンもきっと、涙を滝のように流して悔しがるに違いない。


 なぜなら、そこには、何もないのだから。


 ここは夜の聖地。エルフに蛮人と蔑まれる人間が奪還を目指す場所。
 確かに、何もなかった。
 砂漠ですらなかった。
 双月の下に、ただひたすら荒野が広がっていた。それも、大きく盆地状にえぐられた大地が。半径10リーグ以上の見事な円形の盆地が、赤茶けた土壌をさらしていたのだ。


 そんな盆地の端、盛り上がった土手の上に数人のエルフが立っていた。彼等は盆地の中央を見つめている。
 うち一人が盆地の中央を指さした。薄暗い、だだっぴろい大地の先を。

 盆地の中央で、何かが光った。

 光ると同時に、何かに包まれるように光が阻まれる。
 だが、包もうとする『何か』より、『光』の方が強かったらしい。包もうとした『何か』は『光』に吹き飛ばされた。


 盆地が光に満たされる。

 そして次に盆地中央から、球形に『壁』が放たれた。
 それは月明かりでもハッキリ分かるほどの圧倒的破壊力を持って、『光』を中心として盆地周囲へと広がっていく。
 土煙を巻き上げて…いや、地盤そのものを巻き上げて、盆地の端にいたエルフ達へも襲いかかろうとしていた。
 襲いかかろうとしているのは見えるのに、全てを破壊しながら向かってくるのに、僅かな地響きしか耳には届かない。
 『壁』が音速に近いか、音速を超えているからだ。音より早くとどいた地盤経由の振動が足下から音へ変換されて届いたのだ。

「我と契約せし大地の精霊よ。古の盟約に従い我らに加護を」

 エルフ達が呪文とも独り言ともつかない言葉を発する。とたんに彼等の眼前で大地が盛り上がり、巨大な土と岩の壁となって彼等を包んだ。エルフ達は月明かりも失い、暗黒の中に守られる。
 遙か10リーグ以上彼方から届いた『壁』が、大地の精霊が生み出した壁に衝突する。

 瞬間、中のエルフ達の耳に、いや全身に轟音が届いた。彼等の全身を震わせ、内臓をかき回し、鼓膜を破る程の振動が。
 大地の精霊が加護してすらなお、エルフ達の命を守るのが精一杯だった。
 『壁』が通り過ぎるまで、さほど長い時間ではなかったはずだ。だが彼等にとっては死を覚悟させる永劫の時といってよかった。

 『壁』の名残である細かな振動も去り、静寂が再び闇の中に帰ってくる。
 大地の精霊は契約を守りきり、エルフ達を双月の下へと解放した。
 彼等は盆地を恐る恐る覗き込む。そこには、さっきとおなじ盆地があるだけだ。いや、先ほどより抉られた盆地がある。
 『光』は既に消えていた。

「ビダーシャル!あれをっ!」
 エルフの一人が天を指さした。ビダーシャルと呼ばれたエルフも天を仰ぎ見る。
 星空の中、光が流れていた。
 流れ星ではない。明らかに燃えさかる巨大な何かが放物線を描いて落下しているのだ、彼等の近くへ向けて。

 それは爆発音を上げて大地と衝突した。
 とたんに周囲の大地そのものが触手の如くわき上がり、燃えさかる何かを飲み込む。一瞬にして大地は落下してきた物体を地下深くへ飲み込んでいった。


 カラン


 ビダーシャル達の近くで乾いた金属音がした。
 彼が地面を見ると、先ほどの物体の破片が落ちていた。大地の精霊は無害と判断したのかもしれない。それは大地に飲み込まれはしなかった。
 ヒョイとエルフの一人が金属片を手に取る。何かプレートの様な物が、爆発の衝撃で本体からはがれたようだ。
 黒こげのプレートを袖で拭くと、そこには絵が描かれていた。赤・白・青の三本線、真ん中の白線中央には五稜星

 それが自由惑星同盟の国旗であることは、エルフ達の知らない事だった。ほぼ全てが今夜と同じように地の底へ封じられているのだから。



      第七話   聖地



 ガリア王国。
 トリステインとほぼ同じ文化形式を持つ国で人口約1500万人のハルケギニア一の大国。
魔法先進国ともいえる国で、王宮では様々な魔法人形(ガーゴイル)が使われている。王都の名はリュティス。
 リュティスはトリステインとの国境部から1000リーグ離れた内陸に位置する。大洋に流れるシレ河の沿岸にある。
 人口30万というハルケギニア最大の都市。河の中洲を中心に発展した大都市で、主たる都市機能に加えて魔法学校をはじめ貴族の子弟が通う様々な学校を内包しており、街並みは古いながらも壮麗なものとなっている。
 その郊外には壮麗な大宮殿が見える。王族の居城、ヴェルサルテイル宮殿だ。王家の紋章は2本のラインが入ったねじくれ組み合わされた杖。宮殿中心には、薔薇色の大理石と青いレンガで作られた巨大な王城『グラン・トロワ』。そこから離れた場所に、薄桃色の小宮殿『プチ・トロワ』がある。


「――つまり、虚無が集うのを妨害してほしい、と?ビダーシャルとやら」
「そうだ。お前達が聖地と呼ぶ、忌まわしき『シャタイーン(悪魔)の門』、我らでも封じきれないのだ。
 風と大地の精霊が奴等の生む嵐を聖地内に押さえ込もうと努力はしてくれている。だがもはや追いつかぬ」

 『グラン・トロワ』の一室で椅子に座るガリア王ジョゼフは、異国からの客人を前にしていた。
 当年45歳ながら、30歳前後にしか見えない美貌と逞しい肉体の男性は、薄茶色のローブをまとう長身で耳の長いエルフと相対している。

「ふぅむ…いささか信じがたい話だ。お前達エルフですら太刀打ち出来ない、聖地よりわき出す悪魔、か」
「いや、あれは恐らく悪魔ではない。
 風と大地の精霊が言うには、あれらは湧きだしたとたんに粉々に砕け、火竜のブレスを上回る炎をまとい、風の精霊もかくやというほどの嵐で大地を抉り、そして死ぬ。しかも数十年に渡り消えぬ毒をまき散らしてから、だ。例え湧き出した瞬間に死ななくとも、直後に地面に叩き付けられて粉々になる。
 我らエルフが総力を挙げ、大地の精霊の力を借り、全てを大地の奥底に封じているので、今以上の被害にはなっていない。だが、その毒を一身に受ける大地の嘆きと怒り、もはや収まらぬ。
 しかし思うに、門から飛び出したがために、あれらは死んでしまうのだろう。門を通ったがために悪魔と呼ばれるほどの被害を周囲にまき散らすのだ。彼等とて死にたくはなかったろうにな」
「彼等?」

 ガリア王家の象徴とも言える青い髪が揺れる。

「そう、彼等だ。ごくまれにだが、あれら『悪魔』には人が入っている事があるらしい。それも、お前達と同じ蛮人が」
「ほほう…それは、会ってみたいものだ」
エルフの長い金髪はサラサラと左右にゆらめく。
「無理だ。さっきも言ったとおり、門を通ると同時に、ほぼ全てが死ぬのだ。後に残るのは灰になった蛮人の遺体。それも残っていればの話だ」
「…なぜ死ぬのだ?しかも、そんな派手に」
「分からぬ。全ては地の底に封じてあるのでな。理由は私も知りたいが、そのためには地の底へ潜り、毒に冒される覚悟がいる」

 ジョゼフはふぅ~むと息を吐きつつ、椅子に身を預ける。


「興味深い…実に面白い話だ。それら全てが『虚無』の力、シャタイーンの復活によるものだ、と?」
「うむ。テュリューク統領はじめ、我らネフテスにも懸念が広がっている。この数十年の活発な門の活動とも併せ、世界を滅ぼす大災厄が六千年の時を経て再来するのではないか、
と」
「なるほど、な」

 ジョゼフは、ふと何かを思い出したように首を傾げた。

「待て。さっき『ほぼ全てが死ぬ』と言ったが、これまでに生きて門を越えた者はいないのか?」
 ビダーシャルは、重々しげに答えた。
「うむ…実は無事に門を越えた先例がある」
「ほほう?詳しく話せ」
 とたんにガリア王は身を乗り出す。
「私が知っているのは2例。
 一つは60年程前だ。その時は門から光も嵐も起きなかった。それは門から湧き出すと、大地と風の精霊の手を振り切って、西の彼方へと飛び去ったそうだ。その後の事は分からぬ。
恐らく、お前達蛮人の世界へと向かったのだろう」
「ほう…もう一つは?」
「もう一つは、30年ほど前だ。その時も門から光も嵐も起きなかった。代わりに門から、鉄の馬車が走ってきたのだ。馬も無しに走り、車体全てを鋼に覆われたほろ馬車の様なものだ」
「…悪いが、想像がつかん」
 王は首を傾げつつも、楽しげに口の端を歪ませている。
「すまんが、私にも上手く表現出来ぬ。それ程までに奇妙なものだったのだ。そしてそれは必死に大地と風の精霊の手から逃れようと、土煙を上げて走ってきた――聖地を囲む土手を乗り越え、砂漠を走り、我らエルフの集落に向けて」
「ほほう!それで、どうなった!?」
 ジョゼフは更にエルフに向けて身を乗り出す。
 詰め寄られるビダーシャルは、苦々しげに言葉を繋げた。
「その鉄の馬車は精霊に追われ、恐慌状態だったらしく、我らに向かって突っ込んできた。
我らは身を守るため、精霊の力を借り鉄の馬車を止めようとした。
 すると、その馬車が火を噴いたのだ」
「火を?」
 エルフはゆっくりと頷く。
「荷馬車には大砲が積まれていたのだよ…それも、大地の精霊の加護により築かれた岩の守りを、後ろの同胞ごと貫く脅威の威力を持つ大砲を。反射することも出来ぬほどの、な」
「な!?」

 馬車に大砲を積む――もしハルケギニアでそれを行ったらどうなるか。
 重くて馬車が動かない、という以前に重量で壊れる。
 壊れないほど頑丈な馬車を作っても、重いので地面に沈んで動かない。馬でも引っ張れない。
 よしんば岩で舗装した道を走らせたとしても、発砲した反動で馬車ごとひっくり返る。
 だがそれでもエルフの先住魔法による防壁を貫けはしない程度の威力だ。いや、『反射(カウンター)』によって全て跳ね返されるだろう。
 だが、その鉄の馬車は、全てを易々と実行したということだ。

「結果…その鉄の馬車を止める事は出来た。同時に、その集落は壊滅した」
 ジョゼフの頬に、汗が一筋流れる。
「念のために聞くが…その集落には何人のエルフがいた?」
「500は下らぬ。戦える者は100ほどいた」

 王は、もはや言葉を失った。
 聖地回復運動をいくら行っても、エルフの10倍以上の兵力でもって戦ったとき以外勝てた試しは無い。つまり、その鉄の馬車一台で人間1000人以上の軍勢に匹敵するのだ。


「鉄の馬車を止めた後、数名の同胞がその中を調べてみると、やはり中には蛮人達がいて、その中に一人だけ生存者が気絶していたらしい」
「ほほぅっ!で、今その者はどこにいるのだ!?」
 ジョゼフは椅子をひっくり返して立ち上がる。だが、ビダーシャルは残念そうに首を左右に振った。
「いたらしい、と言ったであろう?その者を見つけた同胞は、既に生きてはいないのだ。全員が、意識を取り戻した生存者に殺された。手負いの蛮人一人に、だ。しかも、止めたはずの馬車は再び動き出したのだ。
 そして生存者は馬車を駆り、どこへともなく逃げ去った。我らには、もはや追う事は出来なかった」
 ジョゼフは座り直し、顎に手を当てて考え込む。
「では、おそらくその者もハルケギニア、いやガリアに向かったやも…」
 その言葉に、ビダーシャルは再び首を横に振った。
「期待はできまい。馬車自体が我らとの戦いでかなり破損した。走り去りはしたが、もはや使い物にはなるまい。そして中の生存者も、ただでは済まなかったろう」
「そう、か・・・」
 エルフは苦しげに天井へ視線を上げる。
「今にして思えば、我らに否があったのだ。馬車を止めるのではなく、精霊達に彼等への追撃をせぬよう頼めばよかったのだから。だが、あの混乱の中ではもはや手遅れだった。
 だからといって、精霊による聖地の封印を解く事も叶わぬ。聖地から湧き出す嵐と毒を最小限に抑えねばならんのだ。
 悲しいが、今も聖地では悪魔達が断末魔をあげている。そしてそれはここ数十年、激しさを増している」

 ガリア王は、眼を閉じて頭を傾け、じっくりと思索にふける。
 しかる後、エルフに向き直った。

「なるほど、卿の話は実に興味深かった。だがまずは、お前達エルフと交渉するとなると、それなりの信用も対価も示してもらわねばならん」
「うむ、それは承知している。まずは交渉の権利を得なければなるまい」

 ジョゼフとビダーシャルの会見は、その後もしばらく続いた。




 所変わって、トリステイン魔法学院。『フリッグの舞踏会』から数日経った。
 ゼッフル粒子発生装置は再び宝物庫で眠りについた…大穴が開いたままだが、もはや秘宝でも何でもないので、別に構わなかった。
 斧は次の日、トリスタニアから飛んできたエレオノールと公爵に引き取られた。公爵はヤンの手柄を率直に讃え、エレオノールは高慢で高飛車ながらも、一応「よくやった、褒めてつかわす」と礼を言った。そして今度は騎士達の大部隊に囲まれて去っていった。
 なぜ『破壊の壷』と『ダイヤの斧』を無事に取り戻せたのか、公爵もエレオノールも城の衛士達も首を傾げた。
 結局、「壷が空と分かったので捨てた。斧はマジックアイテムではないし平民が所有していた物だったので返した」という結論で事件は収束した。




 さて、使い魔を見ればメイジの格が分かるという。では今のヤンを見ると、ルイズの格はどうだろう?

 ダイヤの斧という神話級の逸品と共に、死亡した状態で召喚された。
 公爵から箱一杯の金貨を受け取り、王室からの斧の代金も月々受け取る予定の彼は、もはや一介の平民と言うには裕福すぎた。並の貴族より金回りが良い。
 アルヴィーズの食堂では、貴族の子弟達を前に怖じ気づく事もなく主を擁護した。
 フーケに奪われた『破壊の壷』と『ダイヤの斧』も奪還した。

 これだけ聞けば、伝説の英雄とは言えずとも、何かひとかどの人物が召喚されたかとも感じる。
 にもかかわらず、彼女の魔法の成功率とも関係なく、あんまりルイズの評価は上がっていなかった。

「だーかーら!あんたはなんで毎朝毎朝主人と一緒に起きてるのよー!たまにはあたしを起こしなさいよー!」
「ルイズ…他力本願は良くないよ。人間、自らの努力を忘れては」
「あんたが努力しろーっ!」
「んじゃ、デル君に頼もうか」
「あ・ん・た・が!努力しろっつってんのよーーっ!!」
 二人はそんな会話をしつつ、食堂へと走っていた。

 こんな光景を毎朝見せる主人と使い魔では、どんなに上がった評価も次の瞬間には地の底まで落ちるだろう。
 ルイズはこんなに寝坊する生徒ではなかったはずなのだが、すっかりヤンに毒されたらしい。
 それでなくても、いつももダラダラしているとしか見えない態度で、半分寝ている目で、ちょっと猫背なのだ。見た目はもう、ホントに、冴えない中年男なのだから。
 そんなヤンは一ついつもと異なる所がある。両手に白い薄手の手袋をはめている。オスマンから左手のルーンが『ガンダールヴ、伝説の使い魔の印』と知らされたヤンは、すぐルーンを隠す事にした。



 さて、その日の午前。
 本塔最上階の学院長室では、今日もオスマンが重厚な造りのセコイアのテーブルに肘をつき、鼻毛を抜いていた。
 おもむろに「うむ」とつぶやいて引き出しを引き、中から水ギセルを取り出した。
 すると部屋の隅に置かれた机に座ってデスクの上の書物を鞄に収めていた秘書が杖を振る。水ギセルが宙を飛び、秘書の手元までやってきた。
 つまらなそうにオスマン氏がつぶやく。
「年寄りの楽しみを取り上げて、楽しいかね?ミス・ロングビル」
「オールド・オスマン。あなたの健康を管理するのも、私の仕事なのですわ」
 秘書は鞄を手にして立ち上がり、部屋を出ようとする。だがその前に机の下へ杖を向けようとした。
 オスマン氏は、顔を伏せた。悲しそうな顔で、呟いた。
「モートソグニル」
 秘書の机の下から、小さなハツカネズミが現れた。オスマン氏の足を上がり、肩にちょこんと乗っかって、首をかしげる。
 オスマン氏はネズミにナッツを与えつつ、ネズミに耳を寄せた。
「そうか…見えなかったか。残念じゃ」
 秘書は鞄を自分のデスクに置き直し、しかるのち、無言で上司を蹴りまわした。

「ごめん、やめて、痛い、というか、最近老人いびりが、きついぞい」
「学院長には、ほとほと愛想が尽きそうですわ!ヤンの件で分かりました。老人といえど、甘い顔をしてはならないと!セクハラが全女性に対する侮辱であり犯罪だという事を、身を持って教えて差し上げますわっ!」
 ロングビルにしてみれば、『破壊の壷』が単なるガラクタと分かった以上、もう学院に無理にいる必要はない。単にフーケ騒ぎのほとぼりが冷めるのを待っているだけだ。なので、学院長のセクハラに我慢する必要は無かった。

 ゼーゼーと息をつきながら、改めて本を収めた鞄を手にする。
「それでは、私は図書館でヤンに講義をしてきます。学院長はちゃんと仕事をしてて下さい!」
「そ、その、ミス・ロングビルや…秘書の仕事は?」
 ギロリ、と釣り上がった眼で睨まれた学院長が、ヘビに睨まれたカエルの如く縮こまる。
「今朝は急ぎの用はありません!全部、午後に済ませますわ」
 ドカンッと盛大な音を響かせて扉を閉めたロングビルは、図書館に向かっていった。


 ロングビルは図書館に向かう前に、女子トイレに入った。
 手洗い場の鏡を前にして、学院長を蹴り回して乱れた髪を直す。そして口に紅をひく。
 服装も正して、鏡の前で自分の姿を最終チェック。
 そして改めて、鼻歌交じりに図書館へ向かった。


 その姿を、朝食を片付ける二人のメイドが見かけた。
「あらー?あれってミス・ロングビルよね。鼻歌歌ってるなんて、珍しいわねぇ」
「ああ、あれよカミーユ。図書館でヤンさんにぃ…こ・じ・ん・じゅ・ぎょ・う!」
「ええー!マジマジ!?ドミニック、マジなのー!?」
「そーなのよぉ!ヤンさんったら、あんなぼんやりしてても、ホントはすっごいのねー」
「そうねー、ヤンさんって不思議な人よねぇ~。おまけに今や並の貧乏貴族より、よっぽどお金持ちだしねぇ」
 二人のうわさ話は留まる所を知らない。更に通りがかった他のメイドも加わり、益々話は盛り上がる。
 そんな感じで、ヤンは実力以外の所で評価、というか話のネタにされていた。


 鼻歌交じりに図書館へやって来たロングビル。窓際のテーブルにヤンの姿を見つけるや、笑顔が僅かに引きつった。
 なぜならヤンはお茶を片手に、お盆を手にして立ってるシエスタと楽しげに談笑していたからだ。
「へぇ~、タルブのワインって美味しそうなんだねぇ」
「そうなんですよ!とっても良質なブドウが沢山採れるんです。是非一度来て下さいな、ヤンさんも絶対気に入りますよ!」
 こほん、とロングビルがわざとらしく咳をする。
 慌ててシエスタが事務的なメイドの顔に戻り、秘書に向けて一礼した。
「それじゃ、ヤンさん。ミス・ヴァリエールのお部屋の掃除と洗濯はお任せ下さい」
「あ、いや、それは僕が後で」
 いいんですよー、と一声残してシエスタは去っていった。

 ロングビルは、周囲に誰もいなくなったのを確認してから、ヤンの前にどっかと腰を降ろした。
「さすが将軍様。英雄色を好む…てやつかい?」
 睨まれたヤンは慌てて首を振る。
「おいおい、ちょっと世間話をしていただけだよ。第一、僕には妻も子もいるからね」
「どーだかねぇ…ま、気をつけな。あんたの手に入れた金を目当てに近寄ってくるヤツは、ゾロゾロ湧いてでるだろうからねぇ。この国に関しちゃ世間知らずなのを良い事に付け入ろうとするやつらが、ね」
「そうだね、気をつけるよ。ところで、その鞄の中身は頼んでおいた物かな?」
 ヤンの視線は彼女がもつ鞄の方へと向いている。
「ああ。始祖ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリと、ガンダールヴ伝説についてさ。といっても、おとぎ話程度くらいしか伝承が残ってないけどさ」
「それで構わないよ。簡単にでも教えてくれればいいから」

 そんな感じで、二人はお昼まで授業を続けた。




 お昼になり、ヤンは厨房で食事を取る。
 ヤンは普段、食事の時間も惜しいくらいに図書館の本が読みたかった。なので昼食はほとんどサンドイッチのような軽食を頼んでいた。
 パンに挟まれた食事を見てると、サンドイッチ、ハンバーガー、クレープと挟むものだけは得意と言っていた妻のフレデリカを思い出す。ハルケギニア召喚前になって、ようやくまともな食事を出してくれた気がするが、さて今頃はどうしているのだろう、と郷愁に囚われる。


 その郷愁を生む原因になったアルジサマはどうしているのか、と気になって厨房から食堂を覗き込む。そこにはテーブルに座って昼食をとるルイズの姿があった。
 テラスに教師はおらず、生徒達は皆、気楽に歓談しながら優雅な貴族の昼食を楽しんでいる。だがルイズは誰とも言葉を交わすことなく、黙々と食事をしている。そして食べ終わると、すぐに食堂を一人で去っていった。
 後には学生達の談笑の輪が残る。

 ヤンはかつて養子のユリアンに「運命は年老いた魔女のように意地の悪い顔をしている」と語った事がある。ハルケギニアの年老いた女性メイジ達は、普通に年をとった顔をしていたので、この点は間違っていたようだ。
 だが運命がヤンに望みもしない軍人生活を10年以上強いたのは事実だ。そしてルイズにも『ゼロ』と蔑まれる生活を強いた。有力貴族に生まれた出来損ないメイジ。その苦痛はいかほどか、考えるだけでもヤンの心にさざ波が広がる。

「戦争孤児だったユリアンはトラバース法(軍人子女福祉戦時特例法)で僕の所に養子として来てくれて、色々僕の面倒を見てくれたっけ…というか、僕の面倒を押しつけられたという感じかもしれないなぁ」  
 そんな独り言をいいつつ、彼は一旦ルイズの部屋へ向かった。




「よー、お前さんの勉強は終わりかい?」
 シエスタに掃除されて綺麗になったルイズの部屋。壁に立てかけられたデルフリンガーが鞘からピョコッと飛び出す。
「うん。ガンダールヴについて色々聞いてきたよ。それじゃ、改めて『使い手』について教えてもらおうかな?」

 ヤンはロングビルから聞いた事をデルフリンガーに語って聞かせる。そして最後に「何か思い出さないか」と尋ねる。
 剣の回答はいつもと同じだった。

「ぜーんぜん思いださねー!」

 カクッとヤンの頭が垂れる。
「そんなこと言っても、君は六千年生きているんだろ?つまり、始祖と同時代。そして僕のルーンを懐かしいって感じるんだろ?だったら『伝説の使い魔ガンダールヴ』を知ってるってことじゃあないのかい?」
「いや、そうは言われてもなぁ…六千年前のことだぜ、覚えてるわけがないわな」
 今度は溜め息をついてしまう。
「君って無駄に人間並のAI組まれてるんだねぇ」
「それ、褒めてんのか?」
「うん、褒めてる」
「嘘つけ」
「ばれたか」
 コンピューターなら外付けの記憶装置をいくらでも付けれるが、この剣にはどう見ても端末だの端子だの付けれそうにない。なら、トコロテン方式で古い記憶を忘れていかないと新しい記憶を入れる容量が出来ない。
 なにもそんな所だけ科学的にしなくても、と肩を落とすヤン。結局この日の午後は徒労で時間を潰したのだった。




 そして放課後。
 デルフリンガー片手のヤンは、また厩舎の前でルイズと落ち合った。
「おっそいわよ!さぁ、今日もみっちり特訓するからね!」
 ルイズの持つ乗馬用のムチが、鬼教官の教鞭に見えたのは、多分、気のせいではない。


「ゲルマニアについて知りたい!?」
 ヤンの馬と並走しながら、ルイズは素っ頓狂な声を上げた。
「バカ言わないでっ!なんであんな成り上がりの国の事なんか知りたいのよ!?」
 相変わらずおっかなびっくり馬に乗りながら、ヤンは頑張って答えた。
「うん、そろそろ他の国の事も知りたいと思ってね。それに、今度お姫様が嫁ぐんだろ?お隣の国ってこともあるし、ヴァリエール家のすぐ隣がゲルマニアなんだってね」
 ジロリ、とルイズがヤンを睨み付ける。
「そうよ…あのツェルプストーよ。先祖代々の仇敵よ」
「なら話は簡単だよ。孫子曰く『敵を知り、己を知れば、百戦危うからずや』。ああ、孫子というのは僕の国の兵法学者ね。敵の情報を集める事は政戦両略の基本だよ」
 むぅ~、と不服げな声を上げるルイズ。渋い顔で手綱をさばいている。
「あんたの言いたい事は分かるけど、私はそれほどゲルマニアに詳しくないわよ」
 待ってましたとばかりにヤンは声を上げた。
「んじゃ、講師を呼ぼうかな!」
 ルイズの顔は、ますます渋くなった。




「なーるほどねぇ!よぉく分かってるじゃないのぉ。ま、ゲルマニアの事なら私にまっかせなさーい♪」
「では、よろしくお願い致します。ミス・ツェルプストー」
 というわけで、日が暮れてからルイズの部屋にはキュルケが来てくれた。もちろんルイズは非常にイヤそうな顔だ。
 そんなルイズの顔とは裏腹に、キュルケは満面の笑みを浮かべている。そして当然のように、キュルケの後ろにはタバサが付いてきている。
「全く、なんでキュルケなんかを私の部屋に入れなきゃいけないのよ!ご先祖様になんてお詫びすればいいの!?」
 肩を震わせるルイズだが、キュルケはケロリとしたものだ。
「だぁってぇ~、今度うちの皇帝のアルブレヒト三世とトリステインのアンリエッタ姫が結婚するんでしょ?軍事同盟のために。
 だったらぁ、私達も過去の怨恨は水に流さなきゃいけない、とは思わなぁい?」
 むぐぐーっとルイズも反論出来ずに口を閉ざしてしまう。
「んじゃ、ヤンの要望通りゲルマニアについて教えてあげるわね。ありがたくよーっく聞きなさいよ!」
 壁に立てかけられたデルフリンガーがいきなり声を上げる。
「おうおうヤンよ!若い娘に囲まれて、鼻の下伸ばしてんじゃねぇぞ!」
「デル君!バカな事を言わないでくれよ」
 と言いつつもヤンは顔が赤くなる。

 と言うわけでテーブルを囲み、キュルケのゲルマニア講座が開かれた。
 タバサも黙って椅子に座る。キュルケの話を聞くつもりのようだ。


「・・・というわけで、あの皇帝ったら自分が戴冠するため、政敵の親族をぜーんぶ塔に幽閉しちゃったのよ!
 頑丈な扉の付いた部屋に閉じこめて、食事はパン一枚に水一杯。薪の暖炉は週に二本っていう有様よ!」
「うわぁ、酷い事するわねぇ」
「相変わらず王族のやるこたぁえげつねぇなぁ」
 キュルケの口から語られるのは、勢力争いの果てに皇帝の座を勝ち取った野心の塊のような男の悪事。デルフリンガーがうんざりした感想をつぶやく。聞かされるルイズも恐れ呆れるが、ついつい話にのめり込む。
 タバサは相変わらず無表情。でもちゃんと聞いているらしい。
「どーお?ヤンもこーんな酷い皇帝は、なかなかお目にかからないでしょ」
 キュルケに話を振られたヤンは、うーんと唸って天井を向いた。
「えーっと、僕の隣の国では、それと似たような事をして皇帝になった人がいるんだ」
 ルイズが隣に座るヤンをチラリと見る。
「ふーん、それって例のフリー・プラネッツでの事?」
「いや、フリー・プラネッツは僕の国の名前。その皇帝は、えーっと、ローエングラム王朝を建てた、初代皇帝ラインハルト1世って言ってね」

 ふとヤンは、こんな遠い異国の話なんて興味あるかな、と気になり3人に視線を戻す。
だが意外にも3人とも興味ありそうな視線を投げかけてくる。
 なので、なるべくハルケギニアと共通する言葉を使って話を続けることにした。

――帝国軍三長官を一身に集めた帝国軍最高司令官となり門閥貴族勢力を打倒。
  帝国宰相を排除し、自らが帝国宰相を兼任。幼い皇帝の元で事実上の支配者となる。
  門閥貴族の残党に幼帝を誘拐させ、同盟に亡命させる事で、戦端を開く口実とする。
  ゴールデンバウム朝から皇帝位の禅譲を受ける。実態は簒奪であったが。
  23歳にしてローエングラム王朝を建て、初代皇帝ラインハルト1世として即位する。
  なお帝国宰相一族の女子供は辺境に流刑。10歳以上の男子は全て死刑――

 ここまで話した所で、女性陣の反応は・・・

 ルイズは、かなり嘘臭そうに顔をしかめていた。特に23歳の皇帝という辺りで。
 キュルケは、素直に感心したような感じに見える。
 タバサは、やっぱり無表情。でもちゃんと聞いているのだろう。
 デルフリンガーは、さらにえげつねぇニーチャンだなぁ、と呆れた。
 とりあえず最後まで聞いてもらえたので、ヤンは満足した。

「まぁそんなわけで、僕の国は最初から最後まで、その皇帝に負けっぱなしだったんだ」
 最後まで聞いてもらえたのはいいけど情けない話だなぁ…と気が滅入りそうになる。
 で、改めて女性達を見ると、ヤンの顔を真っ直ぐ見つめ、そして何かを納得したようにそろって頷いた。
 何について全員頷いたのか、ヤンは聞く気にはなれなかった。

「へぇ~、凄い皇帝なのねぇ。ねぇねぇ!あなたのお国の話、もっと聞かせてくれないかしらぁ?」
 そう言ってキュルケがヤンにずずずいと近寄り、胸をすり寄せる。
「いや、あの、僕はゲルマニアの話を・・・」
 寄られるヤンはタジタジだ。自分の半分くらいの年齢の女性に戦略的撤退を余儀なくされてしまう――つまり、後ずさる。
 ヤンを挟んで反対側にいたルイズがグイッとヤンを引っ張り寄せる。
「何してんのよあんたは!真面目にやんなさいよ!」
「あーら、いいじゃないのよぉ~。あたしの国ばっかりじゃなくてぇ、ヤンの国の事だって知りたいじゃないのぉ」
 二人の若い女性に引っ張り合いをされるという、彼の人生で滅多に無かった体験。ヤンも大汗を流して困り果てる。その有様にデルフリンガーの笑い声が重なる。
 タバサは講義が終了した物と判断し、鞄から本を取り出して読み始めた。

 そんなこんなで、ルイズの部屋からは深夜まで黄色い声が響いていた。




 夜も更けて、皆がアクビを出し始める。
「ふわぁ~。ありがとうございました、ミス・ツェルプストー」
「ああんもぉ~、いい加減キュルケって呼んでよねぇ~」
「呼ばせないわよ!さぁさぁ、もう帰りなさいよ!」
「はいはい、それじゃ、また明日ぁ~」
 キュルケとタバサは自分の部屋に戻っていった。


「ふわぁ~…それじゃ、ルイズ。僕はトイレに行ってくるよ」
「…はふぅ…すぐ帰ってくるのよぉ」
 ヤンは部屋を出て、寮塔からも出る。女子寮塔は女子だけなので、女子トイレしかない。
だから使用人用のトイレへと向かった。


「よぉ、見てたわよ」

 トイレから帰る途中、ヤンは女性の声に呼び止められた。
 寮塔の前に立っていたのはロングビル。
「おや、どうしたんだい、こんな夜更けに。新しい獲物の品定めかい?」
「よしとくれ。職業柄、夜型なのさ。だから軽く夜の散歩でもと思ってね。そしたら寮塔の窓にあんた達の姿が見えてねぇ」
 そういってロングビルはヤンに歩み寄る。
「それにしても、意外だねぇ。あんた、あのアルジが嫌いだと思ってたよ」
「うん?何の事だい?」

 とぼけたように肩をすくめるヤン。
 だがロングビルは真面目な顔でヤンを見つめている。
 しばし沈黙した後、ヤンは諦めたように息を吐き、月を見上げた。

「僕には息子がいたんだ。戦争孤児でね、ユリアンっていうんだ」

 ロングビルは黙ったままヤンの話を聞く。

「あの子は国の政策で、僕の所に養子として来てくれてね。色々僕の面倒を見てくれたんだ…というか、僕の面倒を押しつけられたという感じだね」
「あんた、手間がかかりそうだもんねぇ」
「まぁね。無駄飯食いと呼ばれたのは伊達じゃないよ」
「いばッて言う事かい?」
 クスクスと緑の髪を揺らして笑う。
 ヤンも笑い出す。
「あの子は、政府に僕の所へ行けと命じられて、僕の息子という立場を押しつけられた。でも、あの子は文句を言うどころか、本当に僕の面倒をよく見てくれたよ。掃除も、洗濯も、食事に茶の入れ方まで、本当に完璧に家事をこなしてくれた。
 それどころか、軍にまで入って、僕を必ず守ると言ってくれたんだ」

 ロングビルは笑うのを止める。ヤンの瞳に寂寥が含まれているのが分かったから。

「で、自分を見てどうなんだろうって思ってね。
 使い魔という立場を押しつけられた時、僕は即座にルイズの下を出て行こうとした。当然家事なんて出来やしない。ルイズを守ると言っても、彼女がこのハルケギニアの貴族制度の中で生きていくのを守るなんて、僕には難しいよ」
「…で、せめて、あの子に友達の一人でも…てか?」
「う、ん…まぁ、ね。我ながら、傲慢で身勝手な考えだと思うんだけど」
「あんたを奴隷にしようとした娘だよ?」
「でも僕は奴隷にならなかった。なら、その事は水に流していいんじゃないかな」

 ヤンは恥ずかしげに頭をかく。
 そして笑われるか、呆れられるかと思ってロングビルを見直した。
 だが、彼女は微笑んでいた。

「あんた、本当に軍人らしくないねぇ」
 感心したように、嬉しそうに言うロングビル。
「うん、自分でも向いてないと思う」
 ヤンはロングビルの端正で知的な眼を見る。月明かりに照らされた緑の髪がキラキラと輝いている。
 思わず赤面して、顔を下に向けて更に頭をかいてしまった。

 そんなヤンの丸まった背を、ロングビルはバシッと叩いた。
「なーに縮こまってンだ!そんなんで、あの子を守れると思ってるのかい!?」
「ごふっ!い、いや。守るッて言われてもなぁ…僕はいつまでハルケギニアにいるかも分からない身だし」
「だったら!いる間はあの子を守ってやんなよ。どーせ迎えが来るかどうかさえ分からないんだろ?」
「うん、まぁ、そうだね」
「んじゃ、早くあの娘ンとこに帰りなよ。きっと寂しくて泣いてるぜ」
「それは無いと思うけど。それじゃ、おやすみ」

 ヤンとロングビルは手を振ってそれぞれの寝床へ帰って行った。
 二つの月は夜の闇の中でも学院を明るく照らし出している。
 それは、何か聖なる場所のようにも見えた。

      第七話   聖地   END

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