ゲーム&ウオッチがひしっとルイズに抱きつく。
比較的背の低いルイズだったが、さらに一回り小さいぺらぺらの体は丁度ヘソ辺りに擦り寄った。
比較的背の低いルイズだったが、さらに一回り小さいぺらぺらの体は丁度ヘソ辺りに擦り寄った。
「ちょっとキュルケ! 人の使い魔に何してくれるのよ!?」
ルイズが辺り気にせず声を荒立てた。
といっても、今は朝食の時間。
皆食堂に集まっていて人が居ないため
特に周りに気を使う必要も無いといえば無いのだが。
といっても、今は朝食の時間。
皆食堂に集まっていて人が居ないため
特に周りに気を使う必要も無いといえば無いのだが。
「誤解しないで頂戴。私はただこの使い魔くんと仲良くお話してただけよ」
「何がお話よ、何が。……大体こいつ、『ビ――ッ』ってしかしゃべれないのに何がわかったって言うのよ?」
「何がお話よ、何が。……大体こいつ、『ビ――ッ』ってしかしゃべれないのに何がわかったって言うのよ?」
全く悪びれた様子も無く、髪を掻きあげて余裕の態度を見せるキュルケに対し、
ルイズは額にデフォルメで血管が浮き出るほど怒っていた。
ルイズは額にデフォルメで血管が浮き出るほど怒っていた。
~ゼロの平面3~
「とにかく、こんなのでも私の使い魔なのよ。金輪際こいつには近寄らないで!」
猫のように毛を逆立てる気迫のルイズに、キュルケは肩をすくめてけだるげに答えた。
毛頭、そんな約束を守る気などないのだろう。
毛頭、そんな約束を守る気などないのだろう。
「じゃあさ、ルイズ。それ守ってあげるけど、代わりに一つ、教えてくれない?」
「…………何よ?」
「…………何よ?」
あくまで妖艶に微笑むキュルケになんとなくに苛立ちを感じた。
ルイズはこの、いつでも余裕を保って人(特に自分)の揚げ足をとるとき態度が
少し嫌いだった。
だからつい、口が強くなって怒りっぽくなってしまう。
ルイズはこの、いつでも余裕を保って人(特に自分)の揚げ足をとるとき態度が
少し嫌いだった。
だからつい、口が強くなって怒りっぽくなってしまう。
「彼の……あの使い魔くんの名前、なんて言うの?」
「…………えっ!?」
「…………えっ!?」
反射的に戸惑い、素の声が漏れた。
「あ、あいつの名前? 名前…………」
正直、考えたことが無かった。
恥ずかしい限りだが、今のルイズは自分の使い魔の名前すら知らないのだ。
そりゃああいつが使い魔として現れたことのショックや、
あいつ自体に時折見える、ある種の不気味さを無意識に感じ取ってたからなのか、
まともに考えたことが無かった。ふと気づけば、『あいつ』『こんなの』扱いしていた。
恥ずかしい限りだが、今のルイズは自分の使い魔の名前すら知らないのだ。
そりゃああいつが使い魔として現れたことのショックや、
あいつ自体に時折見える、ある種の不気味さを無意識に感じ取ってたからなのか、
まともに考えたことが無かった。ふと気づけば、『あいつ』『こんなの』扱いしていた。
「知らないのかしら、まさか? いくら『ゼロ』のアナタでも、使い魔の名前ぐらいは把握してるわよね?」
「あ、あたりまえよっ! ……でも、あ、アンタなんかに教えてやるもんですかっ!!」
「あ、あたりまえよっ! ……でも、あ、アンタなんかに教えてやるもんですかっ!!」
負けん気だけで支えた言葉はしどろもどろだ、動揺丸出しである。
ふん反り返る様に背を向けるが、実際には顔に浮き出た焦りを
キュルケに悟られないようにするための、ささやかな抵抗だ。
ふん反り返る様に背を向けるが、実際には顔に浮き出た焦りを
キュルケに悟られないようにするための、ささやかな抵抗だ。
当たり前のことを、よりにもよってあの“ツェルプストー”に教えられたのだ。
“ヴァリエール家”の人間ルイズにとって、これほど屈辱的なことは無い。
“ヴァリエール家”の人間ルイズにとって、これほど屈辱的なことは無い。
「そ、なら別にいいわ」
すかしたように息をつくなり、彼女にしては珍しくやけにあっさりと身を引いた。
意外なほど、あっさりとだ。
ルイズが思わず呆けた顔になってしまうのも無理はない。
意外なほど、あっさりとだ。
ルイズが思わず呆けた顔になってしまうのも無理はない。
ゲーム&ウオッチはとっくにルイズの腰から離れていた。
「ほんとは私の使い魔を紹介してあげようかと思ったんだけど……気が変わったからまた今度にするわね」
「丁重にお断りするわ。紹介と名ばっかりで、人の自慢話なんて聞いてるほど暇じゃないから」
「丁重にお断りするわ。紹介と名ばっかりで、人の自慢話なんて聞いてるほど暇じゃないから」
言い終わると同時に背を向けたまま来た道を辿る。
まだ朝食を食べてない、いろいろ考えていると、おなかも空いてきた。
まだ朝食を食べてない、いろいろ考えていると、おなかも空いてきた。
「あ! 待って、ルイズ」
「今度は何? ……ってあいつはどこ行ったの!?」
「今度は何? ……ってあいつはどこ行ったの!?」
ようやく気づいて見れば、いつの間にやらあのぺらぺらの姿がどこへなりと消えていた。
また縦になっているかもしれないと目を細めて辺りを見回すも、
それらしい者は一つとして無かった。
また縦になっているかもしれないと目を細めて辺りを見回すも、
それらしい者は一つとして無かった。
「また……、あんのバカ―――――ッ!」
二度目の叫び、
今度は『ビ――ッ』と言う音(声)は、聞こえてこなかった。
今度は『ビ――ッ』と言う音(声)は、聞こえてこなかった。