第七話
『土くれ』のフーケ
ルイズたちが町から帰った後、こんなやり取りがあった。
ルイズはメデンがなぜデルフリンガーをほしがったのか聞いたところ、
「こやつが言った『使い手』という言葉が気になりました。デルフリンガー、『使い手』とはなんです?」
「忘れた」
一言そっけなくメデンに返すデルフリンガー。
「これでも長生きしててな。昔のことは忘れちまうんだよ」
「しかし、『使い手』という言葉は覚えてるのでしょう?」
「それでも中身は忘れちまったんだよ」
忘れたと繰り返すデルフリンガーにしつこく聞くメデン。そんなやり取りをしてるうちに、デルフリンガーが
「だああああああああ!忘れたもんは忘れたんだよ!たとえ溶かされたって思い出せねえって!」
それを聞いたメデンはすうっ、と目を細めるとこう言った。
「では試してみましょう」
「へ?」
ルイズはメデンがなぜデルフリンガーをほしがったのか聞いたところ、
「こやつが言った『使い手』という言葉が気になりました。デルフリンガー、『使い手』とはなんです?」
「忘れた」
一言そっけなくメデンに返すデルフリンガー。
「これでも長生きしててな。昔のことは忘れちまうんだよ」
「しかし、『使い手』という言葉は覚えてるのでしょう?」
「それでも中身は忘れちまったんだよ」
忘れたと繰り返すデルフリンガーにしつこく聞くメデン。そんなやり取りをしてるうちに、デルフリンガーが
「だああああああああ!忘れたもんは忘れたんだよ!たとえ溶かされたって思い出せねえって!」
それを聞いたメデンはすうっ、と目を細めるとこう言った。
「では試してみましょう」
「へ?」
と、言う訳で
「うぎゃああああああああああ!やめろおおおおおお!!」
「さあさあとっとと言わなければ、とけてしまいますよ!」
そこはパタポン砦の中、熱気が充満するそこに鎮座するのは巨大な鍛冶用の金床。
その金床の下部は窯になっていて轟轟と大きな音で火を滾らせながら口をあけている。
デルフリンガーはその火の中に放り込まれる寸前の形で握られていた。
「メデン殿…いささか無体ではござらんか?」
「お黙り!トン・カン・ポン!」
金床の横、そこに据えられた台の上には、メデン、ルイズ、そして大きなハンマーを持ち頭巾をまいた大きなパタポンが一体。
彼の名はトン・カン・ポン。パタポン族最高の鍛冶師である。彼がこの部屋の持ち主…ではない。
「しかしのう、これはちとかわいそうじゃぞう?」
「あなたもです!ブッシュ・シュシュ!口出し無用!!」
デルフを救うかもしれないしぶい老人のような声がすれどもその声の持ち主の姿が見えない…いや、最初から見えていた。
「だがのう…」
「さあ!ブッシュ・シュシュ!もっと熱を!炎を!あはははは!」
「ううむ、デルの字。すまんのう、これも命じゃてのう、そおうりゃあああ!」
そういうと金床、それ自体から生えた足が、ふいごを踏む。よくみればデルフリンガーを握るその手も、金床から生えており、そしてその炎を滾らせる窯それ自体が大きな口であった。
彼の名はブッシュ・シュシュ。パタポン族の精霊パタポーナであり、その身を用いトン・カン・ポンに手伝わせてパタポン族に武器と、合金を与えているのである。
「いやああああああああああああ!」
一層燃え盛る炎に泣き叫ぶデルフリンガー。しかしそれを命ずるほうは、
「あははあははあはは!!!」
くるくると狂ったように回るメデン。目にはすでに狂気が宿っていた。
「ねえ、メデン、さすがにもういいんじゃない?本当に溶けちゃうわよ、それ」
デルフリンガーがかわいそうになった、というより、メデンがやばすぎると感じたルイズが声をかける。
「そうだああ!いいこといううねえええ!ぺちゃぱいのじょうちゃああああああん!よ!ないすひんにゅううう!」
「ブッシュ・シュシュ、最大火力で放り込んで」
ルイズの目にも狂気が宿った。
「いいいやあああああああああ!」
「おぬし、実は溶けたいのじゃろ?」
ブッシュ・シュシュがあきれた様子で言いながら、口の中に放り込もうとした瞬間、
ズン!
地響き、パタポン砦の中にいるにもかかわらず響くほどの大きな地響きがした。
「な、なによこれ?外から?」
あわてて外に駆け出すルイズ
「は!炎に浮かれて自分を見失うとは何たる不覚!おまちくださーい!ルイズ様ー!」
パタパタとあわててついていくメデン。そして残ったのは三体。
「…俺助かった?ねえ?助かった?たすかったよおおおおおお!」
喜びにむせび泣くデルフリンガー。その上でものすごい残念そうな顔をするブッシュ・シュシュ。
しかし彼は少し考えた後、こう言った。
「のう、デルの字」
「なんだい?おっさん?」
「さびたままじゃあかわいそうじゃから打ち直してやろう」
そういって再び口にデルフリンガーを近づける。
「え?いや、ちょおかまいなくってやめろやめろやめてええええええええ」
デルフリンガーの断末魔の叫びが響き渡るパタポン砦であった。
「さあさあとっとと言わなければ、とけてしまいますよ!」
そこはパタポン砦の中、熱気が充満するそこに鎮座するのは巨大な鍛冶用の金床。
その金床の下部は窯になっていて轟轟と大きな音で火を滾らせながら口をあけている。
デルフリンガーはその火の中に放り込まれる寸前の形で握られていた。
「メデン殿…いささか無体ではござらんか?」
「お黙り!トン・カン・ポン!」
金床の横、そこに据えられた台の上には、メデン、ルイズ、そして大きなハンマーを持ち頭巾をまいた大きなパタポンが一体。
彼の名はトン・カン・ポン。パタポン族最高の鍛冶師である。彼がこの部屋の持ち主…ではない。
「しかしのう、これはちとかわいそうじゃぞう?」
「あなたもです!ブッシュ・シュシュ!口出し無用!!」
デルフを救うかもしれないしぶい老人のような声がすれどもその声の持ち主の姿が見えない…いや、最初から見えていた。
「だがのう…」
「さあ!ブッシュ・シュシュ!もっと熱を!炎を!あはははは!」
「ううむ、デルの字。すまんのう、これも命じゃてのう、そおうりゃあああ!」
そういうと金床、それ自体から生えた足が、ふいごを踏む。よくみればデルフリンガーを握るその手も、金床から生えており、そしてその炎を滾らせる窯それ自体が大きな口であった。
彼の名はブッシュ・シュシュ。パタポン族の精霊パタポーナであり、その身を用いトン・カン・ポンに手伝わせてパタポン族に武器と、合金を与えているのである。
「いやああああああああああああ!」
一層燃え盛る炎に泣き叫ぶデルフリンガー。しかしそれを命ずるほうは、
「あははあははあはは!!!」
くるくると狂ったように回るメデン。目にはすでに狂気が宿っていた。
「ねえ、メデン、さすがにもういいんじゃない?本当に溶けちゃうわよ、それ」
デルフリンガーがかわいそうになった、というより、メデンがやばすぎると感じたルイズが声をかける。
「そうだああ!いいこといううねえええ!ぺちゃぱいのじょうちゃああああああん!よ!ないすひんにゅううう!」
「ブッシュ・シュシュ、最大火力で放り込んで」
ルイズの目にも狂気が宿った。
「いいいやあああああああああ!」
「おぬし、実は溶けたいのじゃろ?」
ブッシュ・シュシュがあきれた様子で言いながら、口の中に放り込もうとした瞬間、
ズン!
地響き、パタポン砦の中にいるにもかかわらず響くほどの大きな地響きがした。
「な、なによこれ?外から?」
あわてて外に駆け出すルイズ
「は!炎に浮かれて自分を見失うとは何たる不覚!おまちくださーい!ルイズ様ー!」
パタパタとあわててついていくメデン。そして残ったのは三体。
「…俺助かった?ねえ?助かった?たすかったよおおおおおお!」
喜びにむせび泣くデルフリンガー。その上でものすごい残念そうな顔をするブッシュ・シュシュ。
しかし彼は少し考えた後、こう言った。
「のう、デルの字」
「なんだい?おっさん?」
「さびたままじゃあかわいそうじゃから打ち直してやろう」
そういって再び口にデルフリンガーを近づける。
「え?いや、ちょおかまいなくってやめろやめろやめてええええええええ」
デルフリンガーの断末魔の叫びが響き渡るパタポン砦であった。
「なによ、あれ…」
ルイズは地響きの発生源をみて愕然とする。そこにいたのは高さ三十メイルはあろうかという巨大なゴーレム。
それが学院の一角の塔をその巨大な拳で殴りつけているのだ。後ろからあわててついてきたメデンも驚く。
「高さ三十メイルのゴーレム…あれが武器屋の言っていたフーケという盗賊でしょう。ルイズ様、危のうございますので後ろにさがりま」
「錬金!」
「ルイズ様!?」
メデンの忠告を一切聞かず、ルイズはいつもどうりの失敗魔法、しかし今回はそれを目的とした上で、ゴーレムに放つ。
どん!
しかしその爆発はゴーレムを打ち崩すどころか、塔のほうが爆発、その塔にひびを入れる。
そしてこれ幸いと再び、拳を振るうゴーレム。轟音と共に開いた穴にフードを被った人影が入り込む。
人影がいなくなると共にゴーレムの動きはぴたりと止まった。
「さあ!ルイズ様!今です!今なら安全に逃げられ」
「錬金!錬金!れんきいいいいいんん!!」
「ルイズサマーーーー!?」
メデンの叫びにルイズは雄たけびで返す。
「メデン!私は引くわけにいかないのよ!あいつを倒せば『ゼロ』なんて名前を二度と呼ばれない!呼ばれないの!」
「ルイズ様…ですが!このままでは!」
ルイズの爆発でもゴーレムの欠片がぱらぱらと落ちるだけ。質量が桁外れなのだ。そうこうするうちに塔の壁の穴から人影が再び現れ、ゴーレムの肩に降りる。そして再び動き出したゴーレムはゆっくりとルイズたちに向き直る。目撃者は消すつもりらしい。
「あああああ!錬金錬金錬金錬金錬金!」
どん!どん!どん!どん!
ルイズの錬金もむなしく大きく拳を振り上げるゴーレム。そしてすさまじい勢いで振り下ろされたそれは、ルイズとメデンに一瞬黒い影を落とし、地面ごと二人を叩き潰した。轟音と土煙が舞い上がる中、ゴーレムの肩にのった影はにやりと笑う。しかしその土煙をつきやぶって現れる三つの影。
それは大きな翼を羽ばたかせると、その身をゴーレムより遥かに高く舞い上げる。
それは二メイルはある大きな鳥、そしてそれに乗るパタポンとメデン、ルイズであった。
「だいじょうぶですかー?ルイズさまー」
「たすかった…の?」
鳥の手綱を握るパタポンの言葉に安堵したルイズはばっさばっさと空中でホバリングする鳥の上にぺたりとしりもちをついた。
「とりポン達!間に合いましたか!!」
メデンが別の鳥の上でぴょんぴょん跳ねながら言う。若干手綱を握るパタポン、鳥共に迷惑そうだ。
「ルイズさまー、少し揺れますのでつかまっててくださいねー」
ある程度危機的な状況でもあるにかかわらず呑気な声で注意を促すパタポン。
「え?こ、こう?ってきゃああああああああ?!」
パタポンが手綱を引くと、乗鳥?が翼を一瞬にして折りたたみ急降下、次の瞬間、轟っと言う音と共に今までいた空間をゴーレムの腕が薙いでいった。
「あぶな…いいいいいい!!??」
かわした、と思った瞬間、もう一本の腕がルイズたちに迫る、しかしそれもくるりと、横になったとりポンが紙一重でさけ、ばさりと、一はばたき。勢いのままゴーレムの頭の横を通り過ぎる。フーケの横を通るがその表情はフードで見えない、しかし挙動に驚愕が伺える。
そのフーケの横に、どすり、と何かが突き刺さった。それはモリ。狩りに使われるような三叉のモリが突き刺さっている。
どす、どす
ふたたびフーケの横を通りゴーレムに突き刺さる。それは上空から。フーケが上を見上げると、そこには自分の頭の上を廻る二羽の鳥。
そして夜の闇に紛れる降ってくる何か。空気を切り裂く音共に、無数のモリの雨が降ってきた。
慌てたフーケはゴーレムの腕を頭上に掲げ防ぐ。流石に土の塊を貫通するほどの威力は無いものの、間断なく振りそそぐそれに、フーケは反撃もできない。
「れええええええええんんんきいいいいいいいいいんん!!!!」
ルイズが鳥から飛び出さんばかりに身を乗り出しながら叫ぶ。その裾をあわててパタポンは掴んでいる、鳥も必死だ。
すさまじい音と共にゴーレムの腕にルイズの失敗魔法が炸裂、しかし今度はモリによって脆くなっていたのか大きく抉れていた。
いける!と思ったルイズは再び大きく杖を振ろう、とした時。急にゴーレムが動き出した。
このままではいけないと、慌てたフーケが逃げ出したのである。
「逃がさないわよ!!」
ルイズがパタポンをべしべし叩きながら必死に(とりポン)が追うが、ずんずんと進むゴーレムにルイズや、メデンを乗せたままでは思うように追いつけない。
そしてフーケのゴーレムが学園の外れの森に差し掛かった時に突如崩れだし、その姿をフーケもろとも消してしまった。
ルイズは地響きの発生源をみて愕然とする。そこにいたのは高さ三十メイルはあろうかという巨大なゴーレム。
それが学院の一角の塔をその巨大な拳で殴りつけているのだ。後ろからあわててついてきたメデンも驚く。
「高さ三十メイルのゴーレム…あれが武器屋の言っていたフーケという盗賊でしょう。ルイズ様、危のうございますので後ろにさがりま」
「錬金!」
「ルイズ様!?」
メデンの忠告を一切聞かず、ルイズはいつもどうりの失敗魔法、しかし今回はそれを目的とした上で、ゴーレムに放つ。
どん!
しかしその爆発はゴーレムを打ち崩すどころか、塔のほうが爆発、その塔にひびを入れる。
そしてこれ幸いと再び、拳を振るうゴーレム。轟音と共に開いた穴にフードを被った人影が入り込む。
人影がいなくなると共にゴーレムの動きはぴたりと止まった。
「さあ!ルイズ様!今です!今なら安全に逃げられ」
「錬金!錬金!れんきいいいいいんん!!」
「ルイズサマーーーー!?」
メデンの叫びにルイズは雄たけびで返す。
「メデン!私は引くわけにいかないのよ!あいつを倒せば『ゼロ』なんて名前を二度と呼ばれない!呼ばれないの!」
「ルイズ様…ですが!このままでは!」
ルイズの爆発でもゴーレムの欠片がぱらぱらと落ちるだけ。質量が桁外れなのだ。そうこうするうちに塔の壁の穴から人影が再び現れ、ゴーレムの肩に降りる。そして再び動き出したゴーレムはゆっくりとルイズたちに向き直る。目撃者は消すつもりらしい。
「あああああ!錬金錬金錬金錬金錬金!」
どん!どん!どん!どん!
ルイズの錬金もむなしく大きく拳を振り上げるゴーレム。そしてすさまじい勢いで振り下ろされたそれは、ルイズとメデンに一瞬黒い影を落とし、地面ごと二人を叩き潰した。轟音と土煙が舞い上がる中、ゴーレムの肩にのった影はにやりと笑う。しかしその土煙をつきやぶって現れる三つの影。
それは大きな翼を羽ばたかせると、その身をゴーレムより遥かに高く舞い上げる。
それは二メイルはある大きな鳥、そしてそれに乗るパタポンとメデン、ルイズであった。
「だいじょうぶですかー?ルイズさまー」
「たすかった…の?」
鳥の手綱を握るパタポンの言葉に安堵したルイズはばっさばっさと空中でホバリングする鳥の上にぺたりとしりもちをついた。
「とりポン達!間に合いましたか!!」
メデンが別の鳥の上でぴょんぴょん跳ねながら言う。若干手綱を握るパタポン、鳥共に迷惑そうだ。
「ルイズさまー、少し揺れますのでつかまっててくださいねー」
ある程度危機的な状況でもあるにかかわらず呑気な声で注意を促すパタポン。
「え?こ、こう?ってきゃああああああああ?!」
パタポンが手綱を引くと、乗鳥?が翼を一瞬にして折りたたみ急降下、次の瞬間、轟っと言う音と共に今までいた空間をゴーレムの腕が薙いでいった。
「あぶな…いいいいいい!!??」
かわした、と思った瞬間、もう一本の腕がルイズたちに迫る、しかしそれもくるりと、横になったとりポンが紙一重でさけ、ばさりと、一はばたき。勢いのままゴーレムの頭の横を通り過ぎる。フーケの横を通るがその表情はフードで見えない、しかし挙動に驚愕が伺える。
そのフーケの横に、どすり、と何かが突き刺さった。それはモリ。狩りに使われるような三叉のモリが突き刺さっている。
どす、どす
ふたたびフーケの横を通りゴーレムに突き刺さる。それは上空から。フーケが上を見上げると、そこには自分の頭の上を廻る二羽の鳥。
そして夜の闇に紛れる降ってくる何か。空気を切り裂く音共に、無数のモリの雨が降ってきた。
慌てたフーケはゴーレムの腕を頭上に掲げ防ぐ。流石に土の塊を貫通するほどの威力は無いものの、間断なく振りそそぐそれに、フーケは反撃もできない。
「れええええええええんんんきいいいいいいいいいんん!!!!」
ルイズが鳥から飛び出さんばかりに身を乗り出しながら叫ぶ。その裾をあわててパタポンは掴んでいる、鳥も必死だ。
すさまじい音と共にゴーレムの腕にルイズの失敗魔法が炸裂、しかし今度はモリによって脆くなっていたのか大きく抉れていた。
いける!と思ったルイズは再び大きく杖を振ろう、とした時。急にゴーレムが動き出した。
このままではいけないと、慌てたフーケが逃げ出したのである。
「逃がさないわよ!!」
ルイズがパタポンをべしべし叩きながら必死に(とりポン)が追うが、ずんずんと進むゴーレムにルイズや、メデンを乗せたままでは思うように追いつけない。
そしてフーケのゴーレムが学園の外れの森に差し掛かった時に突如崩れだし、その姿をフーケもろとも消してしまった。