トリステイン魔法学院を臨む、草原の一角――祈る金髪の少女を遠巻きにして、桃色髪の少女と前頭部の禿げ上がった中年男とが見守っていた。
「世界のどこかにいる、私と相性の良い御方。
どうか私の声に応え、この場に姿を現してくださいな」
どうか私の声に応え、この場に姿を現してくださいな」
両掌を合わせ、まるで、恋呪いのような祈りを捧げる少女の名は、アネメア・グレンデル。
ゼロのルイズによって、トリステインに召喚されてから、一週間後の事である。
ゼロのルイズによって、トリステインに召喚されてから、一週間後の事である。
「……アネメアお姉さま、本当に大丈夫なのかしら?」
まだ、こっちの魔法を学び始めてから一週間しかたっていないのに……心配そうな顔でそんな事を呟くルイズに、コルベールは少女を安心させるように笑みを浮かべた。
「ミス・グレンデルは、既にコモンマジックなら充分に使いこなせる。
能力的には問題……ふむ、どうやら成功したようだね」
能力的には問題……ふむ、どうやら成功したようだね」
アネメアの祈りに応えるように、現れた銀色の円盤……それを見て、ほうと感心した様な言葉を放つコルベールに、その傍らのルイズも顔を綻ばせて胸をなでおろす。
『どうやら、成功のようですわね』
そして、目の前に現れた鏡に近付き、アネメアはほうと息を吐いた。
どうやら、自分のような者にも、契約に答えてくれるモノがいるらしい。
ならば、自分はそれをできるだけ暖かく迎えよう……期待を胸に抱きながら待つアネメアの、しかし目の前にまず現れたのは、彼女の使い魔となる生き物ではなく、飛び込んで来た二つ三つの小石であった。
それをひょいと交わしつつ、アネメアは考える。
どうやら、自分のような者にも、契約に答えてくれるモノがいるらしい。
ならば、自分はそれをできるだけ暖かく迎えよう……期待を胸に抱きながら待つアネメアの、しかし目の前にまず現れたのは、彼女の使い魔となる生き物ではなく、飛び込んで来た二つ三つの小石であった。
それをひょいと交わしつつ、アネメアは考える。
『何か、向こうにいますわよね?』
なかなかこちらに姿を見せない彼女の使い魔に、アネメアは可愛らしく小首を傾げた。
『これがなんだかわからなくて、警戒しているのでしょうか?
そうすると、向こうにいるのはある程度高い知能を持っている動物――小猿か何かでしょうか?』
そうすると、向こうにいるのはある程度高い知能を持っている動物――小猿か何かでしょうか?』
そんな彼女の目の前、キラと輝く何かが、ちょっとだけ頭を覗かせ、消える。
明かに知性を感じさせる動きに少しだけ違和感を感じながらも、アネメアは向こうに向かって呼びかけてみることにした。
あの過酷な戦いから色々経験を重ねてきたアネメアだったが、なんと言うか、天然入っているところはあまり変わっていない。
明かに知性を感じさせる動きに少しだけ違和感を感じながらも、アネメアは向こうに向かって呼びかけてみることにした。
あの過酷な戦いから色々経験を重ねてきたアネメアだったが、なんと言うか、天然入っているところはあまり変わっていない。
「あの、そちら側におられる御方、私はアネメア・グレンデルと申します。
敵意はありませんので、出来ましたらこちらに姿を現していただけないでしょうか?」
敵意はありませんので、出来ましたらこちらに姿を現していただけないでしょうか?」
そんなずれた言葉を鏡の向こうに放ち……そして、次の瞬間アネメアは、出てくるものを押し戻そうとするように鏡に駆け寄りながら、血相を変えて叫んだ。
「……いっいけません!」
鏡の中からまず姿を現した、彼女の使い魔となるべき存在の一部――それが、人間の指であるに気付いたのだ。
「戻ってくださいッ!」
アネメアは突き出された手に手を重ね、それを向こうに押し込もうと……
「!?」
……した瞬間、彼女が握った手から、一切の力が失われる。
するり
そんな擬音が似合いそうな動作で、銀色の鏡から黒髪の少年の頭が覗いた。
恐らくは、何らかの要因で気絶したのだろう、目を瞑り、口を半開きにした少年の顔は、そのまま万有引力の法則に従い、アネメアのふくよかな胸に飛び込む。
恐らくは、何らかの要因で気絶したのだろう、目を瞑り、口を半開きにした少年の顔は、そのまま万有引力の法則に従い、アネメアのふくよかな胸に飛び込む。
「あ、あ、あ、アネメア姉さまになんて事をするのよ、このエロイヌゥゥゥゥゥゥ!!!」
一瞬の沈黙、草原に少女の雑巾を引き裂いた様な金切り声が走った。
そしてルイズは、あたかも先行した声を追うように、すさまじい勢いで走り出す。
そしてルイズは、あたかも先行した声を追うように、すさまじい勢いで走り出す。
……平賀才人、死亡確認。