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  • ルイズと夜闇の魔法使い-07

あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ルイズと夜闇の魔法使い-07

最終更新:2009年11月11日 03:02

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  • ルイズと夜闇の魔法使い


 遠ざかっていく青髪の少女を、ルイズは呆然と見つめている事しかできなかった。
 そして柊とエリスも、そんなルイズを言葉なく見守っている事しかできない。
 もはや力一杯声を出しても届かない程に離れてしまった小さな背中に、ルイズは隣にいても聞き逃してしまいそうなほど小さな声で、呟く。
「……なんなのよ……ワケわかんない事言って……」
 顔を俯けて、肩を震わせる。
 声を漏らした事で、心の裡に留めていたモノがぼろぼろと零れ出してくる。
 それが一日前のこの場所から始まったことと、回りにほとんど人がいないこともあったのだろう、彼女は誰に言うでもなく叫んだ。
「ワケ分かんない事言わないでよっ!! あの子も、あんた達も、誰も彼も!! 知った風な顔で勝手な事言ってっ!!」
 流れるようなピンクブロンドの髪を苛立たしげにかきむしり、子供のように地面を蹴りつける。
「わたしが何したって言うの!? 禁則を犯したワケじゃない、禁呪を使ったワケじゃない、ただ普通に『サモン・サーヴァント』を使っただけじゃない!
 なのになんでこんな事になるのよ! なんでこんな、なんでわたしだけが、なんっ……!」

 ――ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは別に『特別』を望んでいた訳ではない。
 もちろん、物心が付き始め魔法の事を理解しはじめた頃には、子供らしくそんな夢想を抱いていた事はあった。
 だが今となっては、もはや彼女が望んでいるのはこの世界ではごく当たり前の事――メイジらしく普通に魔法を使う事だけだった。
 母のようなスクエアでなくともいい。キュルケのようなトライアングルでなくとも構わない。
 ギーシュのようなドットでも……いや、極論すればドットでさえようやく使える程度の『おちこぼれ』でもよかった。
 『できそこない』――『ゼロ』でさえなければ、どうでもよかったのだ。
 根本的に魔法を使えない平民ならまだしも、メイジの血脈を継ぐ貴族であるなら、それはどれほど譲っても高望みとはいえない願望だった。
 なのに、そんなことでさえ彼女には届き得ない。

「ルイズさん……」
「――あんた達もそう!」
 エリスが小さく漏らすと、ルイズは振り返って二人をにらみつけた。
 今にも零れそうなほどに涙を浮かべた鳶色の瞳は、柊達を見ているようで、その実別のものを見ているような気がする。
「ワケのわからない事ばっかり言って、好き勝手な事ばっかり言って!
 異世界から来た? 元の世界に戻る? だから契約はしない!?
 だったらファー・ジ・アースでも何処でも帰りなさいよ! どっか行って!
 ちゃんと契約してくれる、普通の奴を連れてきてよ!!」
「帰れるもんなら帰ってるっつうんだよ……」
 感情を叩きつけるルイズに柊は小さく溜息を吐き出すことしかできなかった。
 元の世界に帰る方法がないからこそ柊達は学院に留まり、こんな厄介ごとに巻き込まれることになってしまったのだ。
 とはいえ、そんな理屈が今の彼女に通じるはずもなかった。
「だったら今すぐわたしと契約しなさい! あんた達は私の使い魔なんだから! わたしが召喚したんだから!!」
「それは嫌だ」
 胸倉を掴まんとするほどに詰め寄って叫ぶルイズに、柊は断固としてそれを拒絶した。
「……なん……っ」
 にべもなく言い放った――少なくともルイズにはそう見えた――柊の言葉にルイズは絶句し、ややあって呻くように声を上げる。
「なんでそんなに嫌がるのよ……わたしがゼロだから!? わたしが主人としてふさわしくないから!?」
「いや、魔法が使えるの使えないのはどうでもいい」
「どう……っ!?」
 搾り出すように吐いた台詞を切り捨てられ、ルイズは言葉を失ってしまった。
 メイジ――貴族達にとっての象徴であり、寄って立つ精神である魔法。
 平民達にとって畏敬の対象であり、畏怖の対象でもある魔法。
 ハルケギニアに生きる以上魔法はあらゆる意味で切り離せない概念だ。
 それを『どうでもいい』。
 学院の生徒達からも教師からも、貴族にも平民にも、親からでさえも言われ続けてきた魔法の事を、『どうでもいい』と言い切った。
 僅かに息を呑んだルイズの視線を受けて、柊はどこか遠い眼をして言った。
「魔法が使えるってんなら隕石降らせるだの戦艦ブチ抜くだのできる奴知ってっからなあ……」

「な、なんなのそれ……また訳のわかんない事言って……!」
「凄ぇ魔法が使えるってのはそれはそれで認めるが、契約するしないとは別の話ってことだよ」
「っ……じゃあ、わたしの何がダメだっていうの!! 魔法が関係ないなら、なんでわたしと契約するのが嫌なの!?」
 柊が契約を拒絶する理由はただ一点だ。
 望まずに召喚されたことに関して不満はないでもないが、彼女にも召喚の魔法にも何ら憤りや不快は感じてはいない。
 登校中に黒服の男に迫られリムジンに押し込められたとか、
 登校中に空から鉄格子が降ってきて閉じ込められ連れ去られたとか、
 登校して靴箱を空けたら腕が伸びてきて引きずり込まれたとか、
 登校すると教室に世界の守護者が優雅に紅茶を飲んでいて連行されたとか、
 登校中に異空間からキャッチャーが伸びてきて捕獲されたとか、
 昼休みエリス達と弁当を食べてたらヘリから伸びたフックに引っ掛けられて連れて行かれたとか、
 卒業式直後にトラクタービームに捉えられ誘拐されたとか、
 これらの拉致っぷりにくらべれば『たまたま開いたゲートに運悪く突っ込んでしまった』などは極めて平和的な分類であり、事故以外の何者でもない。
「……思い返すによくもまあ色々とやってくれるじゃねえかあの女っ!?」
 思わず柊は怒りに震えた拳を手のひらに叩きつけていた。
 何となく別の方向に向きかけた雰囲気にルイズは気勢を殺がれ、ぽかんと彼を見ることしかできなかった。
 彼女の視線に気付いて柊は咳払いすると、改めてルイズに向き直って表情を引き締めた。
「すまねえ、俺が契約しない理由だったな」
 空気に呑まれたまま小さく頷く彼女に、柊はその顔を真っ向からみつめたまま、口を開く。
「わからねえ。……『わからねえ』から、嫌だ」
 真顔で断言されたその言葉の意味を理解できず、ルイズは言葉を失ってしまった。
 柊はそんな彼女に向かって更に言葉を続ける。
「使い魔ってのはメイジにとって大事な存在なんだろ?」
「そ……そうよ。使い魔は一心同体のパートナー。だからわたしは――」
「俺は昨日会ったばっかりのお前のこと、何も知らねえ。
 何も知らない奴のパートナーになって信頼を預けるなんて事はできねえ。……そんな大事な契約って奴をするならなおさらだ」
 心底から信頼を預けられる相手であるなら、パートナーとして力を貸したり助けたりすることに何ら迷いはない。
 というより、使い魔だの契約だのと言った面倒なものさえも柊には必要がなかった。
「ルイズは違うのか? 昨日会ったばっかで、しかも異世界の人間とか訳のわからねえ事ばっかり言う俺達をパートナーとして信頼してくれんのか?」
「そんなの……っ」
 問われてルイズは小さく呟き、視線をそらした。
 そして彼女は身体を震わせて、搾り出すように声を上げる。
「そんなの……できる訳ないじゃない!! わたしだっていやよ、こんなの!!
 凄い力なんて持ってなくったって、ちゃんと契約してちゃんと使い魔になってくれる奴のほうがずっといい!!」
 柊達を喚び出す以前は強大な使い魔が召喚されればいいとも思っていた。
 だが実際にそうなってみれば自分の心に沸くのは満足感ではなく劣等感でしかなかった。
 相手が力を持っていれば持っているほど、魔法一つ満足に使えないゼロの自分が酷く惨めになる。
 『メイジの力量を測るには使い魔を見ろ』などという格言を自信を持って掲げられるほど、彼女は自らに築いたモノが何もなかった。
 それならいっそゼロらしく、毒にも薬にもならないような生物が召喚されていた方がずっと良かった。
「だからって、わたしにどうしろって言うのよ!
 先生達はあんた達を使い魔にしろって言って、でもあんた達は使い魔にはなりたくないって言って……わたしはどうすればいいのよっ!?」
 お互いに契約が嫌だというなら、召喚をやりなおす事もできるのかもしれない。幸いにして立会いのメイジもここにはいない。
 だが、柊達は何度も失敗した上でようやく召喚できた相手なのだ。
 しかも『サモン・サーヴァント』のゲートをくぐってきた相手を目の前にして、他の相手が召喚されるかどうかもわからない。
 それに何より、万が一他の相手を使い魔にできたとしても、教師達を巻き込んでこんな事態になった以上『やっぱり別の使い魔にしました』では通らないだろう。
 結局、ルイズには選択肢などなかったのだ。

「……どうしたらいいのよ……」
「……」
 力なくうな垂れた彼女に、柊は答えを返すことができなかった。
 とりあえず『元の世界に戻る方法が見つかるまで』という条件で契約を呑むという方法を思いつかないわけではない。
 だが、後にその方法が見つかったとして契約を解除できるのか、あるいはファー・ジ・アースの技術でそれが解除できるのか判別ができない。
 それに『使い魔との契約』はこの世界では神聖なものであることは既に知っている。
 であれば、そんな一時しのぎで場を誤魔化し、ルイズを誤魔化すなどという事は、柊にとっては普通に契約を拒絶する以上に選択肢としてありえなかった。
「……あの」
 沈黙が降りた二人の間に、おずおずと小さな声が漏れた。
 声の主――今まで沈黙を保っていたエリスは二人の視線を受け止めて、静かに口を開く。
「私と契約するのは、いけませんか?」
「え……」
「エリス!?」
 わずかな驚きと共に、嫌な予感が柊の脳裏を掠める。
 ひどく温厚で献身的な側面のある彼女の事であるから、ルイズを見かねて契約に応じるのかと思ったのだ。
 そんな柊の懸念を察してか、エリスは彼に視線を移してから言葉を続ける。
「私、柊先輩を信頼しています。柊先輩も、私を信頼してくれてる……と思います。
 でも、柊先輩が最初に私の護衛を引き受けたとき、柊先輩は私の事知りませんでしたよね?」
「……いや、そりゃそうだけど……」
 柊がエリスの事を知ったのはアンゼロットによる依頼が始まりだ。
 時間が押しているとの事で一切の詳細を伝えられないまま彼女の保護を命じられ、その任務の達成後そのまま続けて護衛の任を与えられたのである。
 志宝 エリスはその任務の直前に輝明学園に転校してきたということもあって、写真で見せられた容姿以外何一つ知らなかった。
 柊がエリスのことを知り始めたのは彼が彼女や赤羽くれはと同居し始めてからのことだ。
「ちょ、ちょっと待った。それとこれとは――」
「あんまり関係ないのかもしれません。でも、形から入るのもいいんじゃないですか?
 護衛のことだって、私、柊先輩のこと何も知らなかったけどそれでもいいって思ったから受け入れたんです。
 だから……ルイズさんとなら、契約してもいいです」
 柊は完全に納得することはできなかったが、エリスがそう言う以上はもう何も口出しできない。
 柊が契約を拒絶するのも信念とか信条とかそういった大層なものではなく『なんとなく』なのだ。
 賢しらにエリスを諭すことはできなかった。
 エリスはとりあえずは引き下がった形になった柊からルイズに向き直った。
 ルイズにとっては望んでいた状況のはずなのだが、彼女は喜びよりも疑惑と不安の方が勝った表情でエリスを窺っている。
「……本当に、いいの?」
「はい、いいですよ。でも、その代わりに――」
 言いながらエリスはルイズの手を取り、不安に揺れるルイズの瞳を真っ直ぐに見据える。
「貴女のこと、教えてください。魔法が使えるとか使えないとかじゃなくって、いいところもわるいところもひっくるめて『ルイズさん』のことを知りたいんです。
 貴女の使い魔になってよかったって、思わせてください」
「わたしのこと……」 
 エリスを見つめるルイズの視線が僅かに揺れた。
 魔法ではない、自分の何か。
 貴族だという事? ヴァリエール家の生まれだと言う事?
 それは違う。それは確かに自分ではあるが、身に纏っている装束でしかない。
 それがわかっているから、学院で謗りを受けても決して振りかざす事はしなかった。
 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが目の前の少女に見せるべきモノ。
 それを信頼とでも言うのだろうか。
 ……信頼と祝福を刻みに行く、と言っていた青髪の少女を思い出した。
 彼女はきっと、パートナーに示すべきモノを見つけたのだろう。
 しかし今のルイズは、それを見つけることができなかった。
「……大丈夫です。そんな難しいことじゃないですから」
 黙り込んでしまったルイズにエリスは優しく微笑みかけた。
 そして彼女は微笑を称えたまま、信頼を込めた調子で言葉を継いだ。
「――柊先輩だって魔法使い(ウィザード)なのに魔法が使えませんけど、私はちゃんと信頼してますから」
「そこで俺を引き合いに出すのおっ!?」
 至って真面目な表情で放ったエリスの言葉に柊が素っ頓狂な声を上げた。
 その声でエリスは我に返り、慌てて柊を振り返って釈明するように手をぶんぶんと振る。
「あ、ああっ!? 違っ、違うんですっ! そういう意味じゃなくってっ!?」
「い、いや、いいんだ……」
 『ウィザード』とは超常的な力を持つ者達の総称の事であって、別に魔法を使えるからウィザードと呼ぶ訳ではない。
 柊も魔法を使えない訳ではなく、装備魔法――『魔装』という新しい魔法形態に転換する際に、その適性の薄さから自分で魔法を刻む事をしなかっただけなのである。
 とはいえ、今ここでエリスにそれを詳しく解説するような場面ではなかった。
「ご、ごめんなさいっ! 私はただ魔法なんて使えなくても大丈夫だって、別に特別なことなんてしなくていいって……!」
「うん、わかった、わかってっから……」
 わたわたと釈明するエリスを柊はどことなく生暖かい表情で宥める。
 そんな二人を、ルイズはじっと見つめていた。

 仕草や態度で二人が互いに信頼し合っているのが見て取れる。
 それが彼女にはひどく眩しかった。
 ルイズがああいう風に付き合える相手は学院には存在しない。
 それどころか、これまで生きてきた中で無条件に心を開けたのは実家にいる姉ただ一人だけだ。
 使い魔が主人と一心同体のパートナーだというなら、自分とエリスもああいう風になれるのだろうか――

「と、とにかく、そういうことです! だから安心してください!」
 誤魔化すようにしてエリスが叫んで、改めてルイズに向かい直った。
 その背後で柊はやはり生暖かい目線で呟く。
「エリス……」
 そういうことってどういうことなのか安心とはなんなのか突っ込みたかったがあえて口を噤んだ。
 ルイズは意気込んで見やってくるエリスをしばし見つめると、一度瞑目して背筋を伸ばした。
「本当にわたしと契約するのね?」
「はい。私はいいです」
 エリスは向けられた鳶色の目線を反らす事なく受け止め、翠色の瞳で応えた。
「……。わかった」
 言ってルイズは自らの杖を取り出し、軽く振った後言霊を紡ぐ。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
 謳い上げて彼女はエリスの額に杖を添えた。
 静かに眼を閉じたエリスに、ルイズはそっと顔を寄せて――彼女だけに聞こえるよう、小さく呟いた。
「――そして誓う。我は使い魔に祝福を与うる主とならんことを」
「――」
 契約と誓約の言葉と共に、少女は唇を重ねた。


「ルイズさん……」
 契約を終えた後の余韻の中で、エリスはルイズの囁きを反芻して彼女を見やった。
 すると彼女は僅かに頬を染めながら慌てて顔を反らす。
「な、なによ。もう契約はしちゃったんだから。神聖な儀式なんだから、やり直しなんてないし虚偽なんて許されないわよ」
「――」
 何故か怒ったように言うルイズの表情がなんとなく可笑しくて、エリスは思わず笑みを漏らしてしまった。
 するとルイズは眉を吊り上げて更に声を荒らげる。
「なに笑ってるのよ! とにかくこれでアンタは私の使い魔なんだから! 契約した以上ちゃんと使い魔として働いてもらうんだからね!」
「……はい」
 どうにか答える事はできたが、笑いを抑えることができない。
 それが気に食わないのか、ルイズは頬を膨らませて完全にエリスから身体を背けてしまった。
 エリスは肩を怒らせたルイズの背中を少し見やったあと、少し離れて契約を見守っていた柊に向き直る。
「あ、あの……先輩。勝手にこんな事になっちゃって――」
「ん? あー、いや。俺が契約しないのは俺の問題だから、エリスがそうしたいっていうんなら俺がとやかく言う事じゃねえよ」
 どこか申し訳なさそうに言ってくるエリスに軽く返して、柊は腕を組んだ。
「けど、元の世界に戻る方法は探すぞ。俺は向こうに帰るつもりだし、お前がこっちに残るにしてもくれはとかに連絡入れなきゃな」
「……ぁ」
 柊の言葉でエリスの表情が僅かに曇る。
 契約をして使い魔になれば、ルイズと共にこの世界で生きる事になる――ということに今更ながらに気付いたのだろう。
 視線をルイズに向けると、柊の言葉を聴いていたのか彼女もまた複雑そうな表情を浮かべていた。
 使い魔になったとはいえエリスはちゃんとした人間なのだ。
 彼女にも元の世界(だか場所だか)での生活があり、家族や友人がいるのだという事にルイズはようやく気付いた。
 何を言うべきかに窮してルイズは視線だけをさまよわせ、そんな態度を見てエリスも更に表情を曇らせる。
 だが二人の様子とは対照的に軽く声を上げたのは、柊だった。
「そんな深刻になる必要ねえよ。ファー・ジ・アースと連絡が取れればハルケギニアの場所……場所?
 とにかくこの世界の存在がわかるんだから、行き来は難しくても連絡くらいはどうにかなるだろ。海外に移住するのと同じようなもんだ」
「は、はあ……そんなものなんですか……」
「またそんなこと言って……あらかじめ言っとくけど、これからは他の奴にそんな妄言吐かないでよ。本気で頭を疑われかねないから」
「……」
 呆れ顔で嘆息交じりの息を吐き出すルイズを、エリスと柊はまじまじと見やった。
 二つの視線を向けられて彼女は軽く身を引いてから呻くように言う。
「な、なによ」
「いや……俺達の話、ちっとは信じる気になったのか?」
 柊の言葉にルイズはうっと言葉を詰まらせた。
 そして彼女は二・三度何事かを言おうと口を開きかけ、眉根を寄せてそっぽを向いてしまった。
「そりゃ、昨日見せてもらった魔法とか授業の時に見せてもらった奴とかあるし……そ、それに、エリスはわたしの使い魔なんだから、主人のわたしくらいは信じてやらなきゃ可哀想でしょ!」
「現金だな、おい……」
 つい先程までは頭ごなしに否定していたはずなのに、契約した途端に態度を翻したルイズの態度に柊は嘆息した。
 とはいえ、頭ごなしに否定され続けるよりは幾分マシだ。
 ルイズにしてもどちらかといえば信じざるを得なかったものを信用する理由が欲しかっただけなのだろう。
 なんとなくそれを察してエリスは小さく笑みを漏らし――

「――っ」
 不意に身体に痛みが走って表情を歪め、膝から崩れ落ちた。
「エリス!?」
 唐突にうずくまったエリスに柊は慌てて駆け寄ろうとしたが、それを制したのはルイズだった。
「……使い魔のルーンが刻まれてるのよ。すぐに終わるわ」
「そ、そうなのか」
 ルイズに別段驚いた様子はなかったので異常事態ということはないのだろう、柊は足を止めてエリスを見やった。
 苦しそうに胸に手を当てて震えるエリスを二人は見守る。
 ……が、エリスは顔を俯けたままで一向に震えが収まる気配がない。
「お、おい。本当に大丈夫なのか?」
「ちょ、ちょっと……」
 怪訝そうに柊が声を上げると、ルイズも不安になってエリスに駆け寄った。
 もしかしたら失敗したのかもしれない。
 サモン・サーヴァントも何度も失敗していたし、契約の時にも本来の詠唱にはない余計な文言を含めてしまった。
「エリス、大丈夫なの?」
 ルイズが膝を突いてうずくまったエリスの肩に手を添えると、彼女はそれに応えるようにルイズの腕を掴んだ。
 様子を窺うように俯いたエリスの顔を覗き込む。
 僅かにエリスの顔が持ち上がり、『眼』が合った。

「っ!?」
 ルイズは思わず悲鳴を上げかけ、しかしそれを声にすることができなかった。
 エメラルドのようだったエリスの翠色の瞳。その左眼が青く青く染まっている。
 それは蒼穹の青というより、深海の青。
 引き込まれそうなほどに澄み渡っていて、それでいて引き摺り込まれそうなほどに深い。
 目つきと表情は普段のエリスそのままに、得体が知れないほどに深く冷たい瞳がルイズを貫いている。

「――エ、」
「エリス!」
 割って入るような柊の声で、二人の少女は同時に時間を取り戻した。
 腕を掴むエリスの手の力が抜け、表情が柔らかくなる。
 そして彼女は小さく息を吐くと、ぺたんとその場に座り込んで柊へ顔を向けた。
「先輩……」
「エリス、大丈夫なのか?」
「はい。少し身体……と、頭が痛かっただけで」
「……そっか」
 柊は大きく安堵の息を漏らした。
 それを見届けるとエリスはすぐ傍で固まっているルイズに目を向けた。
「ごめんなさい、心配かけちゃって」
「……いえ、別に……こっちも説明しなかったし……」
 呆然と応えながら、ルイズはエリスをじっと見つめる。
 目の前に映っているエリスの瞳は、いつもと同じ翠色だった。その表情も、今までと何一つ変わらない。
(見間違い? でも……)
「えっと……ちゃんとルーンは刻まれてるの?」
「あ、はい。多分……」
 言いながらエリスは僅かに頬を染め、自分の胸に手を当てた。おそらくはそこに刻まれているのだろう。
 エリスの瞳の事は気になるが、とりあえず契約の儀式が無事に終わったのは確かだ。
「とりあえず、学院に戻りましょう。先生方に報告しないと」
 気を取り直すようにしてルイズは言い、立ち上がった。
 そしてエリスに向かって手を差し出す。
「いくわよ、エリス」
「あ……はい」
 エリスは答えてルイズの手を取り、立ち上がる。
 別になにか特別なことをしたという訳でもなかったが、ルイズは何故かそんなやりとりが嬉しかった。


 ※ ※ ※


 約一時間後、学院に戻ったルイズ達三人を待っていたのは――特に何事もない、普通の学院だった。
 戻るなり教師達に囲まれて杖を突きつけられる事を危惧していたのだがそのような事はなく、授業中ということもあって学院内はむしろ静かだった。
 というのも、ギトー達は追っ手を出すと騒いでいたが学院全体の授業を中止してまで生徒一人の問題に教師を割くことなどできようはずもなく、
更に集めた教師達も柊がギトー――スクエアメイジの杖を斬った事を知って及び腰になってしまっていたのである。
 無論、ルイズ達が一向に結論を見ない教師達の会議の場に顔を出した時は騒然となった。
 だがルイズが事態を解決した旨をするとその場の全員が安堵の息を漏らした……ただ一名、メイジとしての矜持を傷つけられたギトーを除いて、ではあるが。
 ともかく、ルイズはその場で議長を務めていた(半分眠っていたが)オスマンにその経過を報告すべく学院長室に場所を移したのである。
 そうして今現在。
 ルイズ達は正面の机を挟んで椅子に腰掛けたオールド・オスマン、その脇に侍るトライアングルメイジ(おそらく護衛だろう)のコルベール、
そして入り口の脇に立つ秘書のロングビルに囲まれる形で立ち尽くしていた。
「……では単刀直入に聞こうかの」
 机に両肘を突き、組んだ拳で口元を隠したオスマンが厳かに口を開いた。
 眠そうにしながらも、その奥からは心を覗き見るような鋭さで正面に立つルイズを見据える。
「ちゃんと『コントラクト・サーヴァント』はできたのかね?」
 オスマンの言葉にルイズは僅かに口を結んだ。
 両脇から感じる柊とエリスの視線を感じながら、ルイズは毅然とした口調で返した。
「はい。両方……とまではいきませんが、こちらの少女――エリスをわたしの使い魔にしました」
 はっきりと言い切ったルイズをじっと見つめながらオスマンはふむ、と呟いた。
 彼はちらりと柊に目線を移した後、ルイズに向かって口を開く。
「立会いもなしに契約を行ったことはまあ置くとしよう。じゃが、これだけの騒ぎになった経緯を踏まえれば『契約しました』と言うだけでは収まるまい。それはわかるな?」
「……はい」
「契約を交わして使い魔としたなら、そちらの少女にはその証たるルーンが身体の何処かに刻まれておるはず。それを確認させてもらおう」
 オスマンの言葉にルイズは黙り込んでしまった。
 そんな彼女を見てオスマンは僅かに眉を持ち上げたが、何も言わずにただ彼女の返答を待つ。
 ルイズは顔を俯けて少しの間沈黙すると、覚悟を決めたように顔を挙げ真っ直ぐにオスマンを見据えた。
「わかりました。ただ……」
「ただ?」
 言ってルイズは再び口ごもる。
 努めて気まずそうな表情を浮かべながらエリスに視線をやり、
「その。殿方に見せるには少々憚られる所に刻まれてて……エリスは使い魔とはいえれっきとした人間で、女の子ですし……」
「ほほぅ……!」
 途端、オスマンの眼がぎらりと輝いてその身を乗り出した。
『なんだよその反応はっ!?』
 と反射的に柊はつっこみかけたが、場が場だけにその言葉を必死に飲み込んだ。
 柊の代わりに隣にいたコルベールが冷ややかな調子で言った。
「犯罪ですぞ、オールド・オスマン」
「なぁにを言っとるのかねェ!? わしはただこの学院を預かるものとしての責任をだねえ……!!」
「ミス・ロングビル。お願いできますか?」
「わかりました」
 裏返った声で喚くオスマンを華麗に無視してコルベールが言うと、ロングビルがやはり何事もなかったかのように頷いてエリスを促した。
 エリスは不安そうにルイズと柊を見やる。
 二人が小さく頷くのを見て彼女も頷いて返すと、ロングビルと共に学院長室から退室した。

「服を脱がなければいけないなら、別室まで案内しますが?」
「え、あ……いえ、そこまで大げさな場所では……」
 部屋を辞してすぐ、尋ねてきたロングビルにエリスはおずおずと返した。
 するとロングビルは廊下を一瞥した後、再びエリスを見て口を開く。
「では、ここでも?」
「えっ……」
 そう言われてエリスは慌てて周囲を見やった。
 人通りは全くないが、それでも廊下のど真ん中である。
 服を脱ぐ訳ではないとはいえ、こんな場所でするのは流石に戸惑う。
 そんなエリスの不安を見て取ったか、ロングビルは軽く笑って彼女に声をかけた。
「ここは塔の最上階ですから、生徒はまず通りませんよ。教師もよほどの用事がなければ来ませんから」
「は、はあ……」
 とりあえず納得する事にしてエリスは大きく深呼吸した。
 眼鏡ごしにじっと見つめてくるロングビルの視線は冷たくはなかったが、これから『それ』を見せる事にはやはり緊張してしまう。
 意を決してエリスはブラウスのボタンをはずすと、服を少しだけはだけて見せた。
「それでは」
 そう言ってロングビルが身を僅かに屈め覗き込むと、彼女の年相応――と言うには少々物足りない程度に隆起した胸元に、ルーンが刻まれているのが確認できた。
 それを見てロングビルの眼が細まる。
 彼女はしばしそのルーンを観察した後、小さく首を傾げた。
「あ……あの……何か変でしたか?」
「……あぁ、お気になさらず。少々見慣れないルーンだったもので」
 ロングビルの様子に不安になったエリスが尋ねると彼女はそう答え、顎に手を添える。
 基本、使い魔に刻まれるルーンはその動物の系統……つまりは主人たるメイジが先天的に相性の良い系統に関するルーンが刻まれる。
 例えばサラマンダーなら火に関する意味合いのルーンが刻まれるし、風竜ならば風に類する意味合いのルーンが……といった具合だ。
 だが、エリスに刻まれたルーンはそれに該当しない見慣れないものだった。
 ルーンには違いないが、蛇がのたくったような文字で形も意味合いも漠然として読み取れない。
 もっともロングビル自身その手の知識が豊富という訳でもないので単に知らないだけなのかもしれない。
 だが、彼女の知識で強いて言うのなら――
「あの……もういいですか?」
「あ、もう結構ですよ」
 エリスの声にロングビルは思考を中断して答えた。
 別に誰か通りかかったという訳ではないが慌てて衣服を正したエリスを見つめながら、ロングビルはふと思い立って彼女に声をかける。
「よかったの?」
「え?」

 エリスは言われたことの意味がいまいち理解できずに首を傾げてロングビルを見やった。
 すると彼女は普段の冷淡な表情を僅かに崩し、針のような視線でエリスを見据えている。
「契約のこと。流石にあの子が貴女を犬猫のそれと同じように扱うとは思わないけど……それでも、人間が使い魔になるなんて常識ではありえない。……本当に良かったの?」
 エリスは今までと違う態度、今までと違う口調で――しかしはっきりと感情の篭った声で問うてくるロングビルをまじまじと見やった。
 そこでロングビルの方も自分の態度に気付いたのか、眉を顰めて視線をさまよわせ、気まずそうに顔を逸らしてしまう。
 エリスは彼女に投げられた言葉を反芻するように僅かに顔を俯けると、呟くように言った。
「……私、誰かの役に立ちたいんです。『向こう』では世界に生きる皆のために頑張って……頑張ったけど、結局皆や柊先輩達に迷惑どころの話じゃない事をしちゃって」
 『向こう』――ファー・ジ・アースの事など知る由もないロングビルとしては彼女の言葉に眉を潜めるしかなかった。
 だが、相手にというよりは自分に向かって語るような調子にロングビルは口を噤んでエリスを見守る。
「力を失った私には、もう柊先輩や皆の役には立てません。でも、ルイズさんの役には立てるかもしれないんじゃないかって。
 私がこの世界に来た意味があるんじゃないかって。自分でもよくわかりませんけど……たぶん、だから契約したんだと思います」
「そう……ですか」
 話の中身はさっぱりわからなかったが、ともかく彼女なりにちゃんと思うところがあって契約をしたのは確かなようだ。
 エリスの表情を見て取ったロングビルは諦めたように吐息を漏らした。
「貴女がちゃんと決めたというのなら、私からはもう何も。頑張ってくださいね」
「はい。心配してくれてありがとうございます」
 口調と態度を元に戻してそう言ったロングビルにエリスは屈託のない笑みを返し、深く頭を下げた。
 そして様子を窺うように彼女を見上げると、おずおずと尋ねる。
「あの……さっきの口調……」
「……。さっきのが私の素なんですよ。あまり学がありませんので、それらしく見えるように普段は"作って"るんです」
「そ、そうなんですか?」
「そうなんです。恥ずかしいので内緒にしておいて下さいね」
「わかりました」
 くすりと笑みを零すエリスを見て、ロングビルはとりあえずは取り繕えた事に安堵の息を吐き出した。
 端的に言って可愛げなど微塵もない貴族やその卵達に囲まれていたこともあって、エリスの柔らかい物腰に釣られて迂闊にも口を滑らせてしまった。
 顔立ちは全く似ていないが、なんとなく遠い地にいる『あの子』を思い出したのだ。
 だからだろう、柄にもなくあんなことを聞いてしまった。
 それは別に彼女を心配していた訳ではなく、契約を拒絶した柊や自分で契約を選んだエリスを見て――
「身につまされた、ってトコかね」
「はい?」
「いえ、なんでも。とにかくルーンの確認は終わりましたから、部屋に戻りましょう」
 首を傾げたエリスを努めて平静に受け流し、ロングビルは彼女を学院長室に促した。

 部屋に戻った二人を待ち受けていたのは、四人四種の視線だった。
 自分達に集中してくる眼にエリスは少し萎縮してしまうが、ロングビルは委細構わぬ様子で歩を進め、退室した時と変わらぬ姿勢を保ったオスマンの元へと歩み寄った。
「確認しました。彼女の身体にはちゃんと使い魔のルーンが刻まれています」
「確かかね?」
「はい。少々見慣れない珍しいルーンでしたが……」
「見慣れないルーンですと?」
 ロングビルの言葉を耳にしたコルベールが眼と頭を輝かせて身を乗り出した。
 しかし彼女は至って平静に、しかし僅かに冷たい口調でコルベールに告げる。
「犯罪ですよ、ミスタ・コルベール?」
「な、なァにを言っておるのです!? 私はただ学術的な好奇心からですなあ……!!」
「とにかく、彼女がミス・ヴァリエールの使い魔であることは間違いありません」
「ふむ」
 裏返った声で喚くコルベールを華麗に無視してロングビルが言うと、オスマンは一つ頷いてから改めてルイズ達を見やった。
「まあよかろう。ともかく、キミの『使い魔召喚の儀式』に関してはこれで完了とする」
「おめでとうございます、ミス・ヴァリエール」
「ありがとうございます」
 コルベールから向けられた賛辞の言葉にルイズは恭しく頭を垂れる。
 彼はそんな彼女を喜色も露にして大きく頷くと、次いで隣にいる柊に眼を向けた。
「ときにミス・ヴァリエール。契約を交わした彼女はいいとして、そちらの彼はどうするのです。後ほど使い魔に?」
 話を振られて柊は思わず身を硬くしてしまった。
 集中する視線に軽く首を掻くと、彼はおずおずとコルベールに向かって言う。
「いや、俺は契約はしません。とりあえず元のせ……あー。元いた場所に戻ろうかと」
「元いた場所……そういえば召喚された時に何か言っておりましたな。元の世界がどうとか」
「え、ええと! か、彼等はとても遠い場所……そう、ロバ・アル・カリイエから来たんです!」
 首を捻って自問しかけたコルベールに、ルイズは慌てて口を挟んだ。
「ロバ……何?」
 聞いた事のない単語が出てきて柊が首を傾げると、ルイズがギラリと突き刺すように睨みつけた。
 どうやら黙っていろという事らしい。
 ともあれ、ルイズの言葉でコルベールは納得したらしく大きく頷いた。
「なるほど。あそこはサハラを挟んでいて交流などあってなきのごとしですからな。別の世界と言ってもあながち間違いではないかもしれません」
「と、とにかくそういう事なのでどうにか帰る方法を探してあげようと思います」
 取り繕うようにルイズは身振りを加えて訴えると、オスマンは唸るように声を漏らした。
「ふぅむ……しかし、契約せぬというのであれば彼は部外者、という事になってしまう。
 仮にもここは由緒正しき貴族の子弟を預かる魔法学院……来歴も定かではない平民を置いておくのは少々憚られるが」
「しかしですな、オールド・オスマン」
「無論わしとしてはやぶさかではない。
 だが生徒達は勿論彼等を学院に預けておる諸氏もいい顔をせんじゃろうし、教師達にもあまり受けは良くなかろう。特にスクエアの名を折られた約一名などはな」
「それは……」
 もっともと言えばもっともと言えるオスマンの主張に、コルベールだけではなく柊も返す言葉がなくなってしまった。
 雇われてこの学院にいる者たちは別にして、柊達はこの学院に来てから様々な意味で生徒達から注目を集め、また様々な意味の視線を受けている。
 成り行き上仕方ないとはいえギトーとかいう教師の面目を潰してしまった事もあった。
 見通しが甘かったか……と心中で柊が唸っていると、ルイズがオスマン達に一歩踏み寄った。 
 彼女はオスマン達を真っ直ぐに見つめると、胸を張って毅然と言う。
「彼を喚び出したのはわたしです。契約をしない以上、彼を元の場所に戻すのはわたしが負うべき責任。
 それを放り出すつもりはありません」
「……お前」
 柊はわずかに驚いてルイズに見入った。
 彼女はちらりと彼に視線を返すと、ふんと小さく鼻を鳴らして眼をきった。
 そして自分を見つめてくるオスマンやコルベールの視線を正面から受け、それでもゆるぎない態度で受け止めた。
 コルベールはルイズを見つめて眩しそうに眼を細め、オスマンは満足気に息を吐いた。
「よろしい、ならば彼はキミの預かりとしよう。名目上はそこの彼女とともにミス・ヴァリエールの使い魔という扱いにするが……よろしいかね?」
「……まあ、形だけってんならそれでいいっす」
 向けられたオスマンの視線に柊は頭を掻きながら頷いた。
 形だけであるならばその環境は願ったりといったところなので何も問題はない。
 隣のエリスもしっかりと頷いた。
 そしてルイズは――
「いえ。わたしが使い魔にしたのはエリスですから、ヒイラギは使い魔としては扱いません」
 はっきりとそう言った。
 弛緩した空気が微妙に張り詰めた。
 オスマンの片眉が僅かに持ち上がり、コルベールは息を呑んだ。
 柊とエリスはここにきてのルイズの発言に驚いたように彼女を凝視した。
 ルイズはそれらの視線を動じる事なく受け止め、ピンクブロンドの髪を轟然とかき上げて、言った。

「ですので、ヒイラギはわたしとエリスの――ゲボク、ということで」

「おいコラァ! なんでそこでオトすんだよ!?」
「オトす? 何言ってんの? わたしは正真正銘本気よ?」
「これはアレじゃないのかよ! 俺がお前をちょっと見直して、いい話で終わるんじゃないのかよ!?」
「いい話じゃない。本来なら放逐されるところを面倒見てあげるっていうんだから」
「お前……っ!」
 慌てて食って掛かる柊に、ルイズは聞く耳持たないと顔を背けた。
 二人の様子を見やっていたオスマンが鋭い視線をルイズに向け、厳かに口を開く。
「ゲボク、とな」
「そうです。コイツはゲボク」
「それでよいのかね?」
「いいです」
「じゃあそれで」
「よくねえだろ!! 俺を無視してあっさり認めてんじゃねえよじじぃーっ!?」
 柊が叫ぶとルイズは煩わしそうに顔を顰めた。
「うるっさいわね、アンタわたしと契約しないんでしょ!? でもここには残りたいんでしょ!?
 だったらそれくらい当然じゃない! わたしが主人、エリスが使い魔!」
 彼女は自分とエリスを順繰りに指差し、そして最後にびしりと柊を指差した。
「アンタはその下! ゲボクよ!!」
「ふざけんなーっ!?」

 絶叫が学院長室に響き渡る。
 こうして使い魔とゲボクの新しい生活が始まった。



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