幕間 ――ある少女の渇望
驚いた。
少女はただ、親友である少女に付き合ってここに来ただけだ。決闘にも騒動にも大した興味も無かった。
だが。
「紹介するわ、これが私の『使い魔』よ」
『ゼロ』と呼ばれた少女の『使い魔』。
『彼女』はあっという間にゴーレムとの距離を詰め、破壊した。
目で追うのがやっとの凄まじいスピード。青銅のゴーレムを容易く砕いたパワー。
彼女はその力を振るって、次々とゴーレムを破壊していく。
少女はただ、親友である少女に付き合ってここに来ただけだ。決闘にも騒動にも大した興味も無かった。
だが。
「紹介するわ、これが私の『使い魔』よ」
『ゼロ』と呼ばれた少女の『使い魔』。
『彼女』はあっという間にゴーレムとの距離を詰め、破壊した。
目で追うのがやっとの凄まじいスピード。青銅のゴーレムを容易く砕いたパワー。
彼女はその力を振るって、次々とゴーレムを破壊していく。
――あんな『力』が欲しい。
少女は優れたメイジだ。風と水のトライアングルクラスで、実戦経験も豊富。
それでも足りない。
力が足りない。だから憧れる。種類を問わず、善悪も問わず、強大な力を。
それがあれば、守れた人がいた。それさえあれば、守れた大切な人がいた。
これ以上、大切な人が傷つかない為に力が必要だ。
そして復讐を遂げる為に。少女の大切な人を傷つけた報いを受けさせる為に。
力が必要だ。強大な力が必要だ。
それでも足りない。
力が足りない。だから憧れる。種類を問わず、善悪も問わず、強大な力を。
それがあれば、守れた人がいた。それさえあれば、守れた大切な人がいた。
これ以上、大切な人が傷つかない為に力が必要だ。
そして復讐を遂げる為に。少女の大切な人を傷つけた報いを受けさせる為に。
力が必要だ。強大な力が必要だ。
彼女が何かを『錬金』で作り出し、『使い魔』に取り付ける。
次の瞬間、彼女の『使い魔』が青い火を噴出し、何かを打ち出す。
ジャベリン。打ち出されたそれは、あっという間にゴーレムの形を変える。
空気が震えるほどの轟音の中に立つ彼女は紛れも無い『強者』だ。
もしも、もしも少女にもあれほどの力があれば、大切な人を守れただろうか。
決闘は終わりだ。どう足掻いても結末は変わらないだろう。
彼女は勝ち、彼は負けた。それだけだ。
そのはずなのに、結末は少女が想像していたものと少し違ったものになった。
次の瞬間、彼女の『使い魔』が青い火を噴出し、何かを打ち出す。
ジャベリン。打ち出されたそれは、あっという間にゴーレムの形を変える。
空気が震えるほどの轟音の中に立つ彼女は紛れも無い『強者』だ。
もしも、もしも少女にもあれほどの力があれば、大切な人を守れただろうか。
決闘は終わりだ。どう足掻いても結末は変わらないだろう。
彼女は勝ち、彼は負けた。それだけだ。
そのはずなのに、結末は少女が想像していたものと少し違ったものになった。
「『力』は・・・・・・貴族の誇りである杖は、守る為にある。傷つける為では無いわ。私の目指す『貴族』はそんなものでは、決して無い! だから大切な人が傷つこうというのならば、私は守る為に戦うわ! それが『力』を持つ者の義務であり、責任よ。・・・・・・貴方はどう思う? 『貴族』を、『力』を、『誇り』を、貴方はどう思う? 『青銅』のギーシュ、ギーシュ・ド・グラモン。考えるのは貴方で、答えを出すのも貴方よ」
驚いた。彼女は今まで『ゼロ』と呼ばれ蔑まれていた。そして今は力を手に入れたのに、彼女はそれに溺れることなく、誇り高かった。
驚いた。彼女は今まで『ゼロ』と呼ばれ蔑まれていた。そして今は力を手に入れたのに、彼女はそれに溺れることなく、誇り高かった。
「僕は・・・・・・僕は誰かを守れる貴族になりたい。手に届く範囲なんてことは言わない。大切な全てを守る、そんな貴族を僕は目指そう」
彼女の問いかけに、決闘の相手である彼はそう答えた。まるで誓いを立てる騎士のような姿だ。
彼女の問いかけに、決闘の相手である彼はそう答えた。まるで誓いを立てる騎士のような姿だ。
――彼女たちはどうしてあそこまで誇り高く在れるのだろう。
少女にはわからなかった。少女はただ、今まで生きる為に幾度の戦いを生き抜いてきた。
不意を打ち、騙して生きてきた。そうするしか、なかった。
ふと、見下ろした本は赤い色に染まっている。
もちろん、錯覚だ。本は汚れてなどいない。
でも、あの赤は、血の色だ。何度も見たその色は間違えようがない。
少女の杖は傷つけるためにあった。そこにあるのは、憎しみと虚しさだ。それでも、少女は杖を振るのを止めるわけにはいかない。
傷つけるために、傷つかぬために。少女は杖を振り続ける。
不意を打ち、騙して生きてきた。そうするしか、なかった。
ふと、見下ろした本は赤い色に染まっている。
もちろん、錯覚だ。本は汚れてなどいない。
でも、あの赤は、血の色だ。何度も見たその色は間違えようがない。
少女の杖は傷つけるためにあった。そこにあるのは、憎しみと虚しさだ。それでも、少女は杖を振るのを止めるわけにはいかない。
傷つけるために、傷つかぬために。少女は杖を振り続ける。
――ああ、力が欲しい。