「こ……、こいつ!? 化け物か!?」
「1つの人格に数多い肉体!! 切り換えはチャンネル方式!! 俺は多重体格者バリー!!」
そう言っている間にバリーの頭部は胴体に埋もれてしまい、言葉の続きは肩の上に新しく生えた頭部の口が述べていた。
「業務は暗殺者!! 仕事をしくじった事は1度も無いっ!! 必要とあれば誰でも殺す!! 確実に!! 就労時間内に!! このハルケギニア最強殺人鬼決定戦で優勝の座に就くのは……、『殺しのプロ』である、このバリーだ!!」
言い終える頃には、バリーの体は才人を上回る巨大なものに変化を遂げていた。
「ひ……、ひえ……!!」
思わずか細い悲鳴を上げたシエスタの隣では、女性スタッフも表情を引きつらせている。
「へ……、変身しやがったよ」
「しかも……、体が20倍くらいに膨らんでない、あいつ……?」
観客席で酒瓶片手に試合の行方を見守っていたナックルスター・ルイズも、驚愕を隠せない。
「死ねいっ、サイトとやら~っ!!」
「ぬうっ!!」
拳を振り上げ猛然と才人めがけて突進するバリー。
『バリーが向かったあ~っ!! どう出る、サイト!! ここは引くのが得策ではないのか~っ!?』
「うおおおおーっ!!」
『いや、打って出る気だあ~っ!!』
叫びと共に才人も拳を振り上げ、自分に接近してくるバリーの巨大な拳を殴りつける。
「優勝なんぞどうでもいい~っ!! 俺の目的はなあ、バリーよ!! コルベールさんを殺(や)ってくれたてめえをぶっ倒す事だけだ~っ!!」
力が拮抗していた両者だったが、やがてバリーの拳の各所が避けて血が噴出し始める。
『バリーが力負けしている~っ!! 拳が滑る!! あっ!! バリーがつかんだ!! サイトの襟首を!!』
「お前の事情など興味は無い。死ね、小僧」
そう言い捨て、空いている手でチャンネルを回すバリー。
次の瞬間、バリーの口から銃器を手にした腕が生えてきた。
『マ……、マシンガンだあ~っ!! 口からマシンガン!!』
「うぐおおおっ!」
口からせり出した上半身による機銃掃射を受け、才人が苦悶の叫びを上げた。
――バリーCh(チャンネル)切り換え バーバリアンCh→コンバットCh――
『バリーの口から新たなる肉体が!! 体格的には劣る代わりに今度は武器を手にしている!! マシンガンと……、あれは……』
(実況担当)はそこまで言って、バリーがくわえている握り拳大の物体の正体に思い当たる。
『ま……、まさかっ!?』
その考えを肯定するかのように、バリーは物体に刺さっていたピンを引き抜いて才人の口に放り込むと、壁まで蹴り飛ばす。
「後ろの観客に告ぐ!! そこら一帯吹っ飛ぶぞお~!!」
大声で警告しつつ、バリーはまたもチャンネルを回す。
「う……、うわああ!」
才人が叩きつけられた場所の付近にいた観客達が、クモの子を散らすように逃げていく。
「手……、手榴弾か!!(投げ返してやる!! 間に合うか!?)」
慌てて口から手榴弾を取り出した才人だったが、その時バリーの頭部の右半分から弓を持ち矢筒を背負った人間の上半身が生え、才人めがけて矢を放った。
――バリーCh(チャンネル)切り換え コンバットCh→アーチェリーCh――
その矢は正確に才人の手榴弾を持っている方の腕を射抜いて、壁に縫い止めた。
「嘘だろ!?」
次の瞬間、才人は周囲諸共爆炎に飲み込まれた。
「………!!」
「サイトさん!!」
ルイズは息を呑み、シエスタは声を上げた。
「『Bully』とは、『いじめ]』意味。サイト……、お前は1対1で戦っているつもりだったのだろうが、それは少し違うな。お前はいじめられていたのだよ、何人もの『俺』を相手にな。ちなみに俺は自分の戦い方を卑怯とは思わん。なぜなら俺は殺しのプロだからだ。プロを名乗るからには、結果は必ず出す……!! 過程や手段などどうでもいいし、人格的評価もくそくらえだ……!!」
そう話すバリーを眺めつつ、ナックルスター・ルイズはその恐るべき実力に戦慄する。
(バリーって奴……、戦い方は滅茶苦茶だが、言ってる事は殺しのプロとしては芯が通ってやがる……!!)
(そして奴の首にあるチャンネル……!! 不気味なのは未使用のチャンネルが幾つもある事……!! つまり、奴は手の内を半分も見せていない……!!)
『こ……、この勝負……、勝者バリー!! 試合時間は58秒――』
「――おい!!」
バリーの勝利を告げようとした(実況担当)を、突然の声が遮った。
「待ちな……、まだ全然終わっちゃいねえぞお……!!」
『何いい~っ!!』
そう言いつつ炎の中から這い出した才人に、(実況担当)は大声を上げた。
右腕が無残に吹き飛び、目に相当する部分のガラスにも亀裂が入っていたが、それをまったく気にした様子は無い。
「バリーよ……、てめえはプロを自称するわりには、仕事の終わらせ方が随分甘いんじゃねえのかあ!?」
「貴様……!!」
「1つの人格に数多い肉体!! 切り換えはチャンネル方式!! 俺は多重体格者バリー!!」
そう言っている間にバリーの頭部は胴体に埋もれてしまい、言葉の続きは肩の上に新しく生えた頭部の口が述べていた。
「業務は暗殺者!! 仕事をしくじった事は1度も無いっ!! 必要とあれば誰でも殺す!! 確実に!! 就労時間内に!! このハルケギニア最強殺人鬼決定戦で優勝の座に就くのは……、『殺しのプロ』である、このバリーだ!!」
言い終える頃には、バリーの体は才人を上回る巨大なものに変化を遂げていた。
「ひ……、ひえ……!!」
思わずか細い悲鳴を上げたシエスタの隣では、女性スタッフも表情を引きつらせている。
「へ……、変身しやがったよ」
「しかも……、体が20倍くらいに膨らんでない、あいつ……?」
観客席で酒瓶片手に試合の行方を見守っていたナックルスター・ルイズも、驚愕を隠せない。
「死ねいっ、サイトとやら~っ!!」
「ぬうっ!!」
拳を振り上げ猛然と才人めがけて突進するバリー。
『バリーが向かったあ~っ!! どう出る、サイト!! ここは引くのが得策ではないのか~っ!?』
「うおおおおーっ!!」
『いや、打って出る気だあ~っ!!』
叫びと共に才人も拳を振り上げ、自分に接近してくるバリーの巨大な拳を殴りつける。
「優勝なんぞどうでもいい~っ!! 俺の目的はなあ、バリーよ!! コルベールさんを殺(や)ってくれたてめえをぶっ倒す事だけだ~っ!!」
力が拮抗していた両者だったが、やがてバリーの拳の各所が避けて血が噴出し始める。
『バリーが力負けしている~っ!! 拳が滑る!! あっ!! バリーがつかんだ!! サイトの襟首を!!』
「お前の事情など興味は無い。死ね、小僧」
そう言い捨て、空いている手でチャンネルを回すバリー。
次の瞬間、バリーの口から銃器を手にした腕が生えてきた。
『マ……、マシンガンだあ~っ!! 口からマシンガン!!』
「うぐおおおっ!」
口からせり出した上半身による機銃掃射を受け、才人が苦悶の叫びを上げた。
――バリーCh(チャンネル)切り換え バーバリアンCh→コンバットCh――
『バリーの口から新たなる肉体が!! 体格的には劣る代わりに今度は武器を手にしている!! マシンガンと……、あれは……』
(実況担当)はそこまで言って、バリーがくわえている握り拳大の物体の正体に思い当たる。
『ま……、まさかっ!?』
その考えを肯定するかのように、バリーは物体に刺さっていたピンを引き抜いて才人の口に放り込むと、壁まで蹴り飛ばす。
「後ろの観客に告ぐ!! そこら一帯吹っ飛ぶぞお~!!」
大声で警告しつつ、バリーはまたもチャンネルを回す。
「う……、うわああ!」
才人が叩きつけられた場所の付近にいた観客達が、クモの子を散らすように逃げていく。
「手……、手榴弾か!!(投げ返してやる!! 間に合うか!?)」
慌てて口から手榴弾を取り出した才人だったが、その時バリーの頭部の右半分から弓を持ち矢筒を背負った人間の上半身が生え、才人めがけて矢を放った。
――バリーCh(チャンネル)切り換え コンバットCh→アーチェリーCh――
その矢は正確に才人の手榴弾を持っている方の腕を射抜いて、壁に縫い止めた。
「嘘だろ!?」
次の瞬間、才人は周囲諸共爆炎に飲み込まれた。
「………!!」
「サイトさん!!」
ルイズは息を呑み、シエスタは声を上げた。
「『Bully』とは、『いじめ]』意味。サイト……、お前は1対1で戦っているつもりだったのだろうが、それは少し違うな。お前はいじめられていたのだよ、何人もの『俺』を相手にな。ちなみに俺は自分の戦い方を卑怯とは思わん。なぜなら俺は殺しのプロだからだ。プロを名乗るからには、結果は必ず出す……!! 過程や手段などどうでもいいし、人格的評価もくそくらえだ……!!」
そう話すバリーを眺めつつ、ナックルスター・ルイズはその恐るべき実力に戦慄する。
(バリーって奴……、戦い方は滅茶苦茶だが、言ってる事は殺しのプロとしては芯が通ってやがる……!!)
(そして奴の首にあるチャンネル……!! 不気味なのは未使用のチャンネルが幾つもある事……!! つまり、奴は手の内を半分も見せていない……!!)
『こ……、この勝負……、勝者バリー!! 試合時間は58秒――』
「――おい!!」
バリーの勝利を告げようとした(実況担当)を、突然の声が遮った。
「待ちな……、まだ全然終わっちゃいねえぞお……!!」
『何いい~っ!!』
そう言いつつ炎の中から這い出した才人に、(実況担当)は大声を上げた。
右腕が無残に吹き飛び、目に相当する部分のガラスにも亀裂が入っていたが、それをまったく気にした様子は無い。
「バリーよ……、てめえはプロを自称するわりには、仕事の終わらせ方が随分甘いんじゃねえのかあ!?」
「貴様……!!」
一方その頃、舞台裏では車椅子に乗った中年男性と複数の女性スタッフが特大の遠見の鏡で観戦していた。
『立った!! サイトが立ちました!! 右腕が欠損したものの、戦意にはわずかの衰えも無い様子!! 続行!! 試合は続行です!!』
するとそこに、1人の女性スタッフが紙を手にしてやって来た。
「クロムウェル様、先程入手した情報です」
「何だ?」
「選手の中で1名だけ……、本大会への参加資格を満たしていない者が混ざっている事が判明しました」
「どういう事だ……?」
「その者には『殺人歴』が無いのです。にもかかわらず、個人的な目的のため『ハルケギニア最強殺人鬼決定戦』に参戦しているのです。もしこの者が優勝するような事があれば……、大会の趣向そのものが意味を失ってしまう恐れが……」
女性スタッフの報告が耳に入り、車椅子の中年男性が視線だけをそちらに向ける。
「その者とは……、あいつだな? メイドの……。サタニスター達が連れてきた、『シエスタ』ではないか?」
「いえ!! 彼女は予選で石牙のマリコルヌを殺害しているので、ギリギリで本線参加資格を得た形になっております」
「となると……」
「クロムウェル」
その時、車椅子の中年男性が首を傾げるクロムウェルを制した。
「!!」
「どうしました、ボス?」
「その者がだれであろうが構わん。私が見たいのは殺人鬼の死闘……。集まった客人達もそれを望んでおる。排除せよ。その者を……、今すぐ!!」
と握り拳の親指を下に向けた車椅子の中年男性――「虚無壺の会」ボスの指示に、クロムウェルは指を鳴らして合図する。
「イエス・サー!! ……ウラヌス!! ネプチューン!! プルート!! 仕事だ!!」
そのクロムウェルの視線の先には、服装こそ他の女性スタッフと同様だが一際剣呑な雰囲気を纏う3人の女性が立っていた。
『立った!! サイトが立ちました!! 右腕が欠損したものの、戦意にはわずかの衰えも無い様子!! 続行!! 試合は続行です!!』
するとそこに、1人の女性スタッフが紙を手にしてやって来た。
「クロムウェル様、先程入手した情報です」
「何だ?」
「選手の中で1名だけ……、本大会への参加資格を満たしていない者が混ざっている事が判明しました」
「どういう事だ……?」
「その者には『殺人歴』が無いのです。にもかかわらず、個人的な目的のため『ハルケギニア最強殺人鬼決定戦』に参戦しているのです。もしこの者が優勝するような事があれば……、大会の趣向そのものが意味を失ってしまう恐れが……」
女性スタッフの報告が耳に入り、車椅子の中年男性が視線だけをそちらに向ける。
「その者とは……、あいつだな? メイドの……。サタニスター達が連れてきた、『シエスタ』ではないか?」
「いえ!! 彼女は予選で石牙のマリコルヌを殺害しているので、ギリギリで本線参加資格を得た形になっております」
「となると……」
「クロムウェル」
その時、車椅子の中年男性が首を傾げるクロムウェルを制した。
「!!」
「どうしました、ボス?」
「その者がだれであろうが構わん。私が見たいのは殺人鬼の死闘……。集まった客人達もそれを望んでおる。排除せよ。その者を……、今すぐ!!」
と握り拳の親指を下に向けた車椅子の中年男性――「虚無壺の会」ボスの指示に、クロムウェルは指を鳴らして合図する。
「イエス・サー!! ……ウラヌス!! ネプチューン!! プルート!! 仕事だ!!」
そのクロムウェルの視線の先には、服装こそ他の女性スタッフと同様だが一際剣呑な雰囲気を纏う3人の女性が立っていた。
「バリイイーっ!!」
左腕を振りかぶって猛然と突進していく才人に、バリーは慌ててチャンネルを操作する。
『才人が向かったあ~!! 迎え撃つバリーはチャンネルを切り換える!! 変身だ!!』
次の瞬間、バリーの胸部から大槌を握った腕が生え始める。
「サイトーっ! 今度こそくたばらせてや――」
――バリーCh(チャンネル)切り換え アーチェリーCh→解体屋(クラッシャー)Ch――
そのバリーの言葉を途中で遮り、才人は強烈な拳の一撃を顔面に浴びせる。
『しかし間に合わないーっ!! サイトの方が早かったあーっ!!』
回転しつつ吹き飛び地面に叩きつけられたバリーは、か細く痙攣するばかりで全く身動きしない。
『バリーは変身が中途半端まま動けないーっ!! これは!? 意識が混濁しているのか!? バリー、変身が途中で止まったままです!!』
「てめーは技に頼りすぎなんだよ!! まともな喧嘩はした事あるのか!? 殺し屋さんよーっ!!」
左腕を振りかぶって猛然と突進していく才人に、バリーは慌ててチャンネルを操作する。
『才人が向かったあ~!! 迎え撃つバリーはチャンネルを切り換える!! 変身だ!!』
次の瞬間、バリーの胸部から大槌を握った腕が生え始める。
「サイトーっ! 今度こそくたばらせてや――」
――バリーCh(チャンネル)切り換え アーチェリーCh→解体屋(クラッシャー)Ch――
そのバリーの言葉を途中で遮り、才人は強烈な拳の一撃を顔面に浴びせる。
『しかし間に合わないーっ!! サイトの方が早かったあーっ!!』
回転しつつ吹き飛び地面に叩きつけられたバリーは、か細く痙攣するばかりで全く身動きしない。
『バリーは変身が中途半端まま動けないーっ!! これは!? 意識が混濁しているのか!? バリー、変身が途中で止まったままです!!』
「てめーは技に頼りすぎなんだよ!! まともな喧嘩はした事あるのか!? 殺し屋さんよーっ!!」
「す……、凄い……!!」
思わず感嘆の声を上げたシエスタ。ルイズも内心、
(サイトの野郎……、やる時はやるわね……!!)
と感心していた。
その時、突然観客席に座っていたルイズ・ナックルスターの横を3つの影が駆け抜けていった。
「!?」
思わず感嘆の声を上げたシエスタ。ルイズも内心、
(サイトの野郎……、やる時はやるわね……!!)
と感心していた。
その時、突然観客席に座っていたルイズ・ナックルスターの横を3つの影が駆け抜けていった。
「!?」
「とどめは刺させてもらうぜ。それがお前に殺されたコルベールさんに対するけじめ……!!」
才人がそう言いつつ1歩踏み出した時、先程の3つの影が彼に接近してきた。
「あいつらはっ!?」
「虚無壺ガールズ・『ウラヌス』!!」
「『ネプチューン』!!」
「『プルート』!! 我ら3人、ただ今より……」
『ヒラガサイト!! 貴様の選手資格を剥奪するっ!!』
その言葉と共に、電光を纏った杖を才人の体に叩きつけた。
「ぐあああああっ!」
才人の眼からも叫びを上げる口からも火花が噴出する。
『何い~っ!?』
「サイトさん!!」
「………!?」
「選手資格の剥奪……!?」
突然の展開にシエスタは才人の名を叫び、バリー・ルイズ・ナックルスターは首を傾げた。
「どうなってんだーっ!!」
「意味がわからんぞ!!」
騒然となった観客達に答えるべく、ゼイシが声を張り上げる。
『静粛に!! ヒラガサイトは本大気への参加にあたり、主催者「虚無壺の会」に対する重大な虚偽があった事をここに発表する!! すなわち……、サイトは元より主人「コルベール」殺害の容疑がかけられており、それが参加資格の根拠であったが、サイトは試合前にバリーの犯行である事を主張した!! つまり殺人鬼ではない事を今になって露呈した事になる!! 本大会はあくまでハルケギニア最強の殺人鬼決定戦!! サイトはせめて予選で誰か1人を殺害するべきだった!! よってサイトは「失格」とする!! 勝者はバリー!!』
(サイトさんは……、殺人鬼ではなかったのですね……!!)
ようやく立ち上がったバリーに実況担当が声をかける。
「おめでとうございます、ミスタ・バリー。次の対戦相手は『シエスタ』でございます……が、その前に私どもの方で傷の手当てを致しますが?」
「今は手当など不要……!!」
バリーはそう拒絶すると、おもむろにチャンネルを回す。
「別の肉体を選択すれば済む話だ……。やらねばならん事は他にある……」
「!!」
倒れ伏した才人の傍に立ったバリーは、耐火服を身に纏い油壺を手にしていた。
――バリーCh(チャンネル)切り換え 解体屋(クラッシャー)Ch→放火狂(パイロマニア)Ch――
「サイト……、お前はさっき……、『俺の仕事の終わらせ方が甘い』と言っていたが、俺は仕事をしくじった事は1度も無い。1度もな……!!」
そう言いつつ才人の体に油をかけ始めるバリー。
『バリーが油をかけ始めたーっ!! サイトは電撃のショックで動けない!! 燃やす気だあーっ!!』
「こいつはいいぞ!! 火葬ショーだ!!」
「燃やせ!! 燃やせ!!」
「スクラップにしちまえーっ!!」
観客達の野次も一層剣呑なものになっていくのを見て、シエスタは慌てて実況担当に詰め寄る。
「と……、止めてください!! もう勝負はついているのに!!」
「敗者の安全について、我々は一切保証しない事は説明済みでございます。ましてやサイトは、第1試合でいきなり大会に水を差した者。彼が無事では我々としても観客に示しがつきません。それよりもご自分の事をお考えくださいませ。次にバリーと戦うのは貴女なのですから」
2人がそんな会話を交わしている間に、バリーは手にした松明を高々と振りかざす。
「死ねいっ、サイトおお!!」
次の瞬間、シエスタの後ろ回し蹴りがバリーを盛大に吹き飛ばした。
「………!! お……、おお……」
完全に不意を突かれたバリーは、鼻血を垂らしつつうずくまる。
「……シエスタ!!」
この行動にはルイズ・ナックルスターも目を丸くした。
「あなた、少し失礼ではありませんか? 私は早く第2試合を始めたいのですよ。自分勝手な理由で待たせないでくださいよ!!」
バリーを見下ろしつつそう言い捨てたシエスタは、続いてウラヌス・ネプチューン・プルートに視線を向ける。
「あ、それからそこのスタッフさん達。サイトさんがここにいると邪魔ですから、隅の方に運んでおいてください」
狼狽する3人にシエスタはさらに、
「早くしてくださいよ。メダル10枚のシード選手でも無理なお願いですか?」
と急かした。
「くそっ!!」
「お……、重い~っ!!」
3人が才人を引きずってその場から離れた事を確認して、実況担当が第2試合開始を宣言する。
『そ……、それでは、第2試合……、始めーっ!!』
そう言い終えるが早いか、バリーはチャンネルを切り換える。
一方のシエスタは、その様子を見据えつつ自分自身に言い聞かせる。
(やるしかありません……、こうなった以上……!! 負けても……、降参しても……、絶対殺されます……!!)
才人がそう言いつつ1歩踏み出した時、先程の3つの影が彼に接近してきた。
「あいつらはっ!?」
「虚無壺ガールズ・『ウラヌス』!!」
「『ネプチューン』!!」
「『プルート』!! 我ら3人、ただ今より……」
『ヒラガサイト!! 貴様の選手資格を剥奪するっ!!』
その言葉と共に、電光を纏った杖を才人の体に叩きつけた。
「ぐあああああっ!」
才人の眼からも叫びを上げる口からも火花が噴出する。
『何い~っ!?』
「サイトさん!!」
「………!?」
「選手資格の剥奪……!?」
突然の展開にシエスタは才人の名を叫び、バリー・ルイズ・ナックルスターは首を傾げた。
「どうなってんだーっ!!」
「意味がわからんぞ!!」
騒然となった観客達に答えるべく、ゼイシが声を張り上げる。
『静粛に!! ヒラガサイトは本大気への参加にあたり、主催者「虚無壺の会」に対する重大な虚偽があった事をここに発表する!! すなわち……、サイトは元より主人「コルベール」殺害の容疑がかけられており、それが参加資格の根拠であったが、サイトは試合前にバリーの犯行である事を主張した!! つまり殺人鬼ではない事を今になって露呈した事になる!! 本大会はあくまでハルケギニア最強の殺人鬼決定戦!! サイトはせめて予選で誰か1人を殺害するべきだった!! よってサイトは「失格」とする!! 勝者はバリー!!』
(サイトさんは……、殺人鬼ではなかったのですね……!!)
ようやく立ち上がったバリーに実況担当が声をかける。
「おめでとうございます、ミスタ・バリー。次の対戦相手は『シエスタ』でございます……が、その前に私どもの方で傷の手当てを致しますが?」
「今は手当など不要……!!」
バリーはそう拒絶すると、おもむろにチャンネルを回す。
「別の肉体を選択すれば済む話だ……。やらねばならん事は他にある……」
「!!」
倒れ伏した才人の傍に立ったバリーは、耐火服を身に纏い油壺を手にしていた。
――バリーCh(チャンネル)切り換え 解体屋(クラッシャー)Ch→放火狂(パイロマニア)Ch――
「サイト……、お前はさっき……、『俺の仕事の終わらせ方が甘い』と言っていたが、俺は仕事をしくじった事は1度も無い。1度もな……!!」
そう言いつつ才人の体に油をかけ始めるバリー。
『バリーが油をかけ始めたーっ!! サイトは電撃のショックで動けない!! 燃やす気だあーっ!!』
「こいつはいいぞ!! 火葬ショーだ!!」
「燃やせ!! 燃やせ!!」
「スクラップにしちまえーっ!!」
観客達の野次も一層剣呑なものになっていくのを見て、シエスタは慌てて実況担当に詰め寄る。
「と……、止めてください!! もう勝負はついているのに!!」
「敗者の安全について、我々は一切保証しない事は説明済みでございます。ましてやサイトは、第1試合でいきなり大会に水を差した者。彼が無事では我々としても観客に示しがつきません。それよりもご自分の事をお考えくださいませ。次にバリーと戦うのは貴女なのですから」
2人がそんな会話を交わしている間に、バリーは手にした松明を高々と振りかざす。
「死ねいっ、サイトおお!!」
次の瞬間、シエスタの後ろ回し蹴りがバリーを盛大に吹き飛ばした。
「………!! お……、おお……」
完全に不意を突かれたバリーは、鼻血を垂らしつつうずくまる。
「……シエスタ!!」
この行動にはルイズ・ナックルスターも目を丸くした。
「あなた、少し失礼ではありませんか? 私は早く第2試合を始めたいのですよ。自分勝手な理由で待たせないでくださいよ!!」
バリーを見下ろしつつそう言い捨てたシエスタは、続いてウラヌス・ネプチューン・プルートに視線を向ける。
「あ、それからそこのスタッフさん達。サイトさんがここにいると邪魔ですから、隅の方に運んでおいてください」
狼狽する3人にシエスタはさらに、
「早くしてくださいよ。メダル10枚のシード選手でも無理なお願いですか?」
と急かした。
「くそっ!!」
「お……、重い~っ!!」
3人が才人を引きずってその場から離れた事を確認して、実況担当が第2試合開始を宣言する。
『そ……、それでは、第2試合……、始めーっ!!』
そう言い終えるが早いか、バリーはチャンネルを切り換える。
一方のシエスタは、その様子を見据えつつ自分自身に言い聞かせる。
(やるしかありません……、こうなった以上……!! 負けても……、降参しても……、絶対殺されます……!!)