救いは無いんですか

43話 救いは無いんですか

数年前。
とある警察署の資料保管室。

「やっ、やあ、ああっ……あっ……」
「ハッ、ハッ、ハッ……あぁ~たまんね……」

若い人間の婦警と灰色の警察犬が睦み合っていた。

「あっ、あっ、もう駄目、荒津さん、もう、わたしっ」
「俺もだ……いいぜ、一緒にイこうぜ」
「あっ、いやっ、だめっ! あっ、あああぁああっ」
「ウッ、グルルルルッ……ウッ……!」
「はぁ……はぁ、あ、熱い……のいっぱい……」
「あぁ~……すげぇ出る……気持ち良い~」

快楽を楽しむ二人。
周りの事など全く見えていない。

「おい、何してるんだ」

二人の背後からかかる男の声。
二人は一気に現実へ引き戻され、そして、血の気の引いた顔で恐る恐る後ろを振り向くと。

引きつった顔の署長が仁王立ちしていた。

程無く、荒津文護は警察を懲戒免職される事になる。
文護は署長に見付かった時だけで無く相当以前より多数の婦警と淫らな行為を行っていた。
その事も芋蔓式に露見し、懲戒免職と言う結果になった。
それに対し行為の相手をした婦警達は軽い謹慎処分や減給処分で済んだ、と、文護は風の便りで耳にした。
自分は解雇されてどうして婦警は、と不満に思ったが、そう言うものなのだろうと早々に諦める。
元々警察犬になったのも大した理由など無かったので警察にも未練は無かった。
運良く次の就職先――獣姦喫茶店――も見付かり、文護は元通り快楽を愉しむ生活を送るようになった。

そして現在。

荒津文護は殺し合いゲームの真っ只中にいた。

「痛ぇ……」

左目は潰れ、失禁及び脱糞した状態で、薄暗いトンネルの中を歩く文護。
その傷と粗相は、数十分前にその時同行していた少女と歩いていた時に襲撃を受けた際に生じたもの。
同行していた少女はその襲撃者によって負わされた傷が元で落命した。
文護は少女を看取った場所のすぐ近くにあったトンネルに入り東を目指していた。
特に宛は無かった、だが、立ち止まっている訳にもいかないと思い、文護は歩く。

「ん……あれは」

血の臭いに、文護が前方を見据える。
人間の中年男性が倒れていた。
腹部が酷く損傷し内臓が飛び出し、生きていないと言う事は良く調べなくても分かった。
殺されてからそれなりの時間が経過しているようなので恐らく第一回放送で名前を呼ばれた内の一人だろう。
少し気が引けるが男の所持品を漁る文護。
しかし武器になりそうな物は何も見当たらない。

「行くか」

特に知り合いでも無い男の死体にこれ以上構う必要も無い。
文護は再び歩き始める。
やがてトンネルの東側出口の光が見えてきた。
ずっと薄暗いトンネルの中にいたためかやけに眩しく感じた。

「救いの光だったら良いのに……ハッ……何言ってんだ俺、訳わかんね……」

自分でも良く分からない妙な発言をしながら、文護はトンネルの出口へと歩いて行く。



【朝/D-3/トンネル内東口付近】

【荒津文護】
[状態]左目失明、精神的ショック(大)、失禁及び脱糞
[装備]無し
[持物]基本支給品一式、新聞エロ記事スクラップノート
[思考]1:三矢……。
    2:これからどうしようか……。
[備考]※上神田ための容姿のみを記憶しました。



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最終更新:2014年02月02日 17:24