56話 己の居場所は己で作るものなり
E-6、南部集落東端部、変電所付近、二階建ての古い民家。
寝室として使っていると思われる二階の洋間に、バーテンダーの青年
七塚史雄は身を潜めていた。
その表情は疲労の色が滲み、着ている制服は皺だらけ、土汚れだらけになっている。
(仕事の服だってのに……しょうがねぇか。自分の命掛かってんだから、服なんて気にしてられねぇよ)
自分の服の状態を見て、史雄は思う。
ここまで汚れてしまうと最早代わりの服を買わなければならないだろうが、
今は数秒先の自分の命すら危うい殺し合いの場、命と服、天秤にかけるまでも無い。
(もうここから動かないようにしよう……)
今居る民家に可能な限り隠れている事を決心する史雄。
当たり前かもしれないが一箇所に留まって動かない方が安全なのである。
動かなければ殺し合いに乗っている者と遭遇する可能性もぐんと低くなる。
向こうが自分の隠れる家に侵入でもしない限りは。だがこの近辺、民家など幾らでも有る為、その中から、
自身が隠れる家に相手が巡り合う確率はかなり低い筈――――史雄はそう考える。
「今は何時だ?」
ふと、壁に掛けられた時計に目をやる史雄。
現在の時刻は午前11時を回った所だ。
殺し合いゲームが始まって丁度11時間が経過したと言う事になる。
後一時間もすれば二回目の放送が始まる。
現在自分を含めて何人が生き残っているのだろうかと史雄は思った。
「ああ、帰りてぇ」
日常に戻りたいと、史雄は切に願う。
先輩に注意されながらも何気無く働いていたあの日常が、今となってはとても懐かしく、恋しい物に思えた。
【昼/E-6/南部集落変電所付近・寺内家】
【七塚史雄】
[状態]疲労(中)、衣服が土で汚れている
[装備]S&W M1(5/7)
[持物]基本支給品一式、.22ショート弾(14)
[思考]1:死にたくない。
2:今居る民家に出来る限り隠れている。
3:殺し合いに乗っている奴とは会いたくない。
[備考]※
劉恵晶を危険人物だと判断しました。
※第一回放送の情報を劉恵晶の地図と名簿より得ました。
最終更新:2014年03月07日 11:52