57話 燻る思いは憂い募らせる
島役場には現在、五人の生存者が居る。
その内四人、犬狼獣人少女の
原小宮巴、狐獣人少女の都賀悠里、犬型モンスターの
リクハルド、ツインテール少女
舘山瑠夏は、
殺し合いには乗っておらず、残る一人、ツンツン頭の小柄な少年の
下斗米規介は殺し合いに乗ってはいるが、
巴ら四人を襲おうとして捕縛され役場一階の柱に拘束されていた。
「おい、何してんだ」
規介が目の前でぐつぐつ煮え滾るおでんをお椀によそう巴と瑠夏を睨み付けながら言う。
おでん云々はどこから用意したのか知らないが見るからに熱そうであった。
規介は最早嫌な予感しかしなかった。
「何って、お腹空いてるでしょ下斗米君? でもそのままじゃ物食べられないだろうから、私が食べさせてあげる」
「その大根とか凄い汁染みてるよ巴ちゃん」
「イイねぇ」
「やめろ……やめろ……」
「何が? おでん食べさせてあげようとしてるだけじゃん、遠慮なんかしなくて良いんだよ?
ほぉら、こんなに煮えて……美味しそうでしょぉ?」
「やめてくれよ……(絶望)」
規介に逃れる術は無かった。
巴と瑠夏の笑顔は、まさに悪魔の微笑みに思えた。
「ハッ…ハッ…アッー! アーツィ! アーツ! アーツェ! アツゥイ!
ヒュゥー、アッツ! アツウィー、アツーウィ! アツー、アツーェ! すいませへぇぇ~ん!
アッアッアッ、アツェ! アツェ! アッー、熱いっす! 熱いっす! ーアッ! 熱いっす! 熱いっす!
アツェ! アツイ! アツイ! アツイ! アツイ! アツイ! アー・・・アツイ!」
おでんを美少女二人に食べさせて貰えている少年の悦びの声が役場に木霊した。
◆◆◆
第二回放送時刻である正午12時まで一時間を切った頃。
島役場に新たに三人の生存者が現れた。
ツナギ姿の虎獣人の青年、黒い学生服姿の人間の少年、紺色の毛皮を持ったブレザー姿の狼獣人の少年。
「おにーさん達も、殺し合いには乗ってないの?」
散弾銃を三人に突き付け威圧しながら巴が尋問する。
他にも悠里が同じく散弾銃、瑠夏が突撃銃、リクハルドが長い舌を垂らしながら巴と同じく三人を警戒していた。
「俺達三人共乗ってない。だから、その、銃を下ろしてくれ。
そんな物向けられたんじゃまともに話も出来ないだろ」
「……そ。分かった」
虎の青年に請われ、巴は向けていた銃口を下ろす。
他の三人も警戒態勢を解いた。
来訪者三人はそれぞれ島役場に居た四人に自己紹介を行う。
それに四人も自己紹介で返すが、柱に縛り付けられている規介は巴からその名前が語られた。
「何で彼は縛られてるんだ?」
明治が巴に規介が縛られている理由を訊く。
口の周りに痛々しい火傷の痕が出来た規介の方へ視線を方に向けながら、巴が答える。
「ああ、下斗米君はね、私達を襲って殺そうとしたから、とっ捕まえてふん縛ってあるって訳。
何かもう二人殺してるらしいよ?」
「「「!」」」
顔色が変わった明治ら三人が規介の方を見る。
規介は無言だが、反抗的な視線を明治達や巴達に送っていた。
「殺しちゃっても良いんだけどね、汚れるし。後片付けがめんどいし。
野放しにする訳にも行かないから、こうやって縛りプレイさせてるんだ。分かったかな?」
「お、おう……所で口に火傷してるようだけど」
「私と舘山さんとでおでん食べさせてあげたんだけど下斗米君ったら遠慮するんだもん。
折角食べさせてあげるって言ってるのに」
「あっ……(察し)」
明治は規介の身に何が起きたのか、十分に察する事が出来た。
……
……
明治は自分が首輪を手に入れてそれを分解して調べた事、そして分解して分かった事を、
紙に書いて巴達四人に伝える。
首輪には盗聴器が仕掛けられており、参加者の会話は全て運営側に筒抜けになっているらしい事。
故にこうして筆談を行っている事。
更に首輪を解除するには精密機械に詳しい者の力が必要不可欠である事。
〈ここに精密機械に詳しい奴はいないか?〉
そう書いて明治は四人に見せるが四人共首を横に振った。
念の為規介にも見せるがやはり返事は否定。
〈もしかしたらと思ったんだがやっぱりそう甘くはないか〉
人が集まり易い場所ならばもしやと思ったがやはり現実はそう上手く行かないと明治は肩を落とす。
それならば島役場以外の他の生き残りに賭けるしか無い、が、果たして今自分達を除き何人が生き残っているのか。
と言うより、広い会場でいるかどうかも分からない「殺し合いに乗っていない精密機械に詳しい参加者」を捜索するなど、
はっきり言って現実的では無い。
だがここまで来て諦めたくは無いと明治は思う。
脱出の糸口が見えるのに、諦めて殺し合いを受け入れる事などしたくない。
「もうすぐ放送だな」
リクハルドが言う。
皆がロビーの壁に掛けられた古い時計に目をやる。
第二回目の放送の時間がすぐそこまで迫っていた。
取り敢えずは総員、役場にて放送を聞く事となった。
【昼/D-6/島役場】
【原小宮巴】
[状態]健康
[装備]ウィンチェスターM1912(4/6)
[持物]基本支給品一式(食糧少量消費)、12ゲージショットシェル(12)、イングラムM11(15/32)、
イングラムM11の弾倉(5)、シグザウエルP226(13/15)、シグザウエルP226の弾倉(3)
[思考]1:殺し合いを潰す。
2:危険人物は容赦無く排除(但し状況にも依る)
3:おねーさん(都賀悠里)、舘山さん、リクハルドさんと行動。島役場に留まる。放送を聞く。
4:下斗米規介は後始末が面倒なので取り敢えず殺さないでおく。但し変な真似をしたら即処刑する。
[備考]※リクハルドから島役場にて起こった事の顛末を聞きました。
※島役場裏口付近に特製の警報装置を仕掛けました。
【都賀悠里】
[状態]健康
[装備]フランキ スパス12(7/7)
[持物]基本支給品一式(食糧少量消費)、12ゲージショットシェル(14)
[思考]1:死にたくない。
2:巴、リクハルドさんと舘山さんと行動。島役場に留まる。放送を聞く。
3:下斗米君は放っておいて大丈夫かな?
[備考]※リクハルドから島役場にて起こった事の顛末を聞きました。
【リクハルド】
[状態]健康
[装備]無し
[持物]基本支給品一式、暗視ゴーグル、脇差
[思考]1:殺し合う気は無いが襲い掛かってくる者には容赦しない。
3:ルカ、巴、悠里と行動。放送を聞く。
4:襲い掛かってきたのが良い女だったら犯して食う(食わない場合もある)。
[備考]※特に無し。
【舘山瑠夏】
[状態]健康
[装備]56式自動歩槍(20/20)
[持物]基本支給品一式、56式自動歩槍の弾倉(5)、H&K VP70(13/18)、H&K VP70の弾倉(3)、
ダン・ウェッソンM715(6/6)、.357マグナム弾(12)、壊れたゲームキューブ本体、除草剤、1メートル定規
[思考]1:殺し合いはしない。
2:リクハルド、原小宮さん、都賀さんと行動。放送を聞く。
3:暇を見付けてリクハルドと、する。
[備考]※特に無し。
【下斗米規介】
[状態]右腕に噛み傷、柱に縛り付けられている、口元に火傷
[装備]無し
[持物]基本支給品一式
[思考]1:何とか逃げられねぇかな……。
[備考]※おでんを食わされ火傷を負いました。
【深谷明治】
[状態]健康
[装備]ハンティングナイフ
[持物]基本支給品一式、スチールパイプ、分解した首輪(
神室さつき、
更級亜矢)、工具一式(調達品)
[思考]1:精密機械が理解出来、かつ殺し合いに乗っていない参加者を探す。
2:島役場に留まって放送を聞く。
[備考]※首輪を分解しましたが内部構造の完全な把握には至っていません。
※首輪からの盗聴に気付きました。
【長沼陽平】
[状態]健康
[装備]ステアーAUG(18/30)
[持物]基本支給品一式、ステアーAUGの弾倉(5)、トンファーバトン、村田刀、M67破片手榴弾(1)、
キャップ火薬鉄砲、キャップ火薬(8発×12)
[思考]1:殺し合いはしたくない。
2:勝隆、深谷さんと行動。島役場に留まって放送を聞く。
3:殺し合いに乗っていない参加者(精密機械に詳しい人優先)を探す。
[備考]※勝隆が変態であると認識しました。
※首輪からの盗聴に気付きました。
【舩田勝隆】
[状態]興奮
[装備]ベネリM1スーパー90(3/3)、
[持物]基本支給品一式、12ゲージショットシェル(4)、M67破片手榴弾(1)、災害個人用救急セット、
長軸ドライバー、カップラーメン詰め合わせ
[思考]1:殺し合いをする気は無い。
2:陽平、深谷さんと行動。島役場に留まって放送を聞く。
3:適度に自慰をする、出来れば犯されたい。
3:殺し合いに乗っていない参加者(精密機械に詳しい人優先)を探す。
[備考]※性的な行動は控えようと考えています。やめようとはしません。
最終更新:2014年03月07日 11:51