55話 行き着く果てまで色の無い枯れた未来に水をあげよう
田園地帯での悲劇の後、
レオノーレと
白峰守矢は東へ進み、南部集落の商店街を訪れていた。
そこで一つの惨状を発見する。
まず、路上に作業着姿の犬系獣人の男性が、頭を潰され血を流して倒れていた。
そしてすぐ近くの肉屋の店先には灰色の大きな犬が首を吊ってぶら下がっている。
「これは酷いわね……何が有ったの?」
「相討ち、って訳では無さそうだけど……うっぷ」
「大丈夫? 守矢君」
二つの死体の凄惨な様を見て気分を悪くする守矢と、それを気遣うレオノーレ。
気分が悪くなるような死体を見たのは島の西のトンネルを通った時以来である。
「何とか大丈夫……でも、ここから早く離れたい」
「そうね……」
二つの死体は形容し難い異臭を漂わせ、この手の死体に守矢よりは慣れているレオノーレでさえも参りそうな程。
とても死体の所持品を漁る気にもなれないため二人は早々に先へ進もうとする。
「ねぇ」
「「!」」
その時、女性の声が聞こえ、二人は声の方向へ顔を向ける。
そこには裸にマフラーと言う出で立ちの、白い毛皮を持った狐獣人の女性が立っていた。
右手には大きなリボルバーを持っている。
「なぜ裸マフラーなのか」と二人共面食らったがすぐに気を取り直し、狐の女性と向き合う。
「私は殺し合いには乗ってないよ」
白狐女性は戦意が無いと二人に告げる。しかしおいそれと信じるのは危険である。
レオノーレと守矢は警戒した。
「本当に乗ってないの?」
レオノーレが白狐女性に尋ねる。
「本当だよ。うーんどうやったら信じてくれるかな……これで良い?」
白狐女性は持っていたデイパックと銃を地面に置き両手を上げる動作をする。
彼女なりの殺し合いに乗っていないと言うアピールだと言う事は二人にもすぐ理解出来た。
「……分かったわ。信じる。良いかな? 守矢君」
「大丈夫だと思う」
正直な所、まだ信じても良いかどうか迷う部分は有ったが、疑ってばかりいてもきりが無い。
二人は白狐女性を信じる事にした。
「私は
保土原真耶って言うの」
「私はレオノーレ、こっちが一緒に行動してる守矢君」
「どうも」
「しかし、これは酷いね……何が有ったの二人共?」
真耶が二つの死体を交互に見て二人に尋ねる。
「ここで話すのも何だから、取り敢えずそこの店の中に入ろう」
死体が二つ放置され、しかも目に付き易い場所で長くなりそうな話をするのは危険と判断し、
レオノーレはすぐ近くに有ったパン屋に入ろうと指差す。
真耶は承諾し、三人はパン屋へと入る。
美味しそうなパンが陳列されていたが三人は特に腹は減っていない。
「さっきの死体だけど、私達が来た時にはもうあんな状態だったわ」
「そうなんだ……本当、この殺し合いは地獄だね……。
田園地帯の爆発してた家と言い……」
「「……!」」
「ん? どうしたの? 二人共」
明らかに二人の顔色が変わり、真耶が少し戸惑う。
「その家、母屋と納屋に分かれてて『松林』って表札が掲げられてなかった?」
「ああ、うん」
「その家、僕達も行ったんです。それで、僕達が行った時に爆発しました」
「ええ? どう言う事?」
「元々僕達は四人で行動してたんです。僕とレオノーレさんと、東員さん、伊神さんって言う二人と。
それで、四人でその家に立ち寄って、僕とレオノーレさんが納屋、東員さんと伊神さんが母屋の方を調べようって事になって。
それで……僕達が納屋を調べてる時に、母屋が爆発したんです」
「突然爆発したの?」
「分からないわ……誰かに爆弾を放り込まれたのかもしれないし、爆弾が仕掛けられてたのかもしれないし。
何が起きたのかは知る由も無いけど、確かなのは、家が爆発して、東員さんと伊神君は死んだって事」
「……」
この二人も自分と同じように仲間を失っているのか、と、心の中で真耶は思った。
そして、真耶は自身がしようと思っている事を二人に話し始める。
「私、首輪を解析して外そうと思ってるの」
「「!」」
「首輪のサンプルも有るよ、ほら」
自分のデイパックから首輪を取り出し二人に見せる真耶。
二人は確かにそれが参加者の首に取り付けられている首輪だと言う事を確認する。
しかし確認すると同時にどうやってこれを手に入れたのか、と言う疑問を二人は抱く。
レオノーレがそれを真耶に尋ねる。
「それ、どうやって……?」
「……死んだ仲間から取った」
「……」
辛そうな表情を浮かべる真耶を見て聞くべきでは無かったかと後悔するレオノーレ。
そもそも首輪を入手すると言う時点で誰か他の参加者が落命していると言う事は予想出来るのだから。
首輪を取るには、その参加者の首を切断でもしない限り不可能。外せないのだから。
「言い訳するけど、私が殺した訳じゃないよ」
「あ、うん、分かってる。真耶さん疑ってる訳じゃないから」
「なら良いんだけど……」
「あの、保土原さんはこれからどこに行く予定なんですか?」
守矢が真耶に尋ねた。
「取り敢えず工具でも調達して……その後は……特に決めてないなぁ」
「なら私達と一緒に行きましょうよ。首輪を解析するって事は、他の参加者の首輪も外そうとしてるんでしょ?」
「まあ、そう言う事になるかな」
「私達、島役場に行こうと思ってるの。目立つ建物だから、人が集まりやすそうでしょ」
レオノーレが真耶に提案する。守矢もレオノーレと同じ意見のようだった。
真耶はしばし考え、そして返答する。
「そうだね……私も一人で生き残ろうなんて思わないし、良いよ。一緒に行こう」
返答は、レオノーレの提案を受け入れる物だった。
レオノーレと守矢の二人は喜ぶ。
まだ不確定では有るが脱出の糸口になり得る人物と出会えたのだから。
三人は商店街で工具を探した後、島役場へ向かう事にした。
【昼/E-5/南部集落商店街】
【白峰守矢】
[状態]健康
[装備]サバイバルナイフ
[持物]基本支給品一式、ピアノ線
[思考]1:殺し合いはしない。
2:レオノーレさん、保土原さんと行動する。商店街にて工具を探した後島役場へ向かう。
[備考]※樊欽の外見のみ記憶しました。
※
油谷眞人の存在には気付いていません。
【レオノーレ】
[状態]健康
[装備]62式7.62mm機関銃(200/200)
[持物]基本支給品一式、7.62mm×51ベルトリンク(200)
[思考]1:殺し合いはしない。
2:守矢君、保土原さんと行動する。商店街にて工具を探した後島役場へ向かう。
[備考]※樊欽の外見のみ記憶しました。
※油谷眞人の存在には気付いていません。
【保土原真耶】
[状態]右脇腹に擦過銃創
[装備]タウルスレイジングブル.500S&Wマグナムモデル(4/5)
[持物]基本支給品一式、.500S&Wマグナム弾(10)、スパタ、十八年式村田銃(1/1)、11.15mm×60R弾(7)、
コルト ジュニア(6/6)、コルト ジュニアの弾倉(3)、
コンラートの首輪
[思考]1:殺し合いをする気は無い。
2:首輪を解析したい。
3:レオノーレさん、守矢君と行動。商店街にて工具を探した後島役場へ向かう。
[備考]※特に無し。
最終更新:2014年03月07日 11:51