2話 RUN,RUN,RUN
川の水は月明かりを反射しキラキラと輝いている。
茶色の喋るアラブ馬のアルジャーノンは、C-5エリアの川辺にて自分の今の状況を整理する。
「俺は死んだ筈じゃないのか……?」
彼は以前にも殺し合いに巻き込まれ、そこで頭を撃ち抜かれて死んだ筈であった。
だが今こうして生きている、何故か?
「あいつらが、主催の連中が俺を生き返らせたってのか?
死者の蘇生も出来るとか言っていたしな……でも、まさか……」
「うーん……」
「ん?」
声が聞こえ、その方向を目を凝らして見てみるアルジャーノン。
するとすぐ近くに帽子を被った太った少年が倒れているのを発見した。
既に襲われたのかと思ったが目立った傷は見当たらないのでどうやら目覚めていないだけのようだ。
この少年とは別に知り合いでも何でも無かったが、小さい子供をこの殺し合いの場に一人放置しておくのは気が引ける。
「おい、起きろ坊主」
アルジャーノンは右前足を使って少年を揺する。
すると少年はすぐに目を覚ました。
「ふああ……おはようキャプー……あれ? ここはどこプー?」
「気が付いたか」
「お馬さんが喋ってるキャプチュ」
「(変な語尾だな……)おう、俺はアルジャーノンって言うんだ。見ての通り喋れる馬だな。
安心してくれ、俺は殺し合う気は無ぇ。名前、何てんだ?」
「鈴木フグオ……殺し合い、そうキャプ、僕達殺し合いをしろって言われて……」
自分が置かれている状況を思い出したフグオは不安そうな表情になる。
無理も無いとアルジャーノンは思った。
見ればまだ小学校低学年か中学年程の子供に見える。
そんな子供が命のやり取りを迫られる殺し合いなどと言う異常状況に放り込まれて平然としている方がおかしい。
「フグオ、お前、この殺し合いに友達は居たりすんのか?」
「うん。小鉄っちゃん、のり子、仁、金子先生、春巻先生」
「そうか……お前は殺し合う気は無いのか?」
「そんなの無いプー、殺し合いなんて出来ないキャプ」
「だよなぁ。それなら俺と一緒に行動しないか? 一人じゃ不安だろ。俺もだけど。友達も探したいだろ?」
「良いの?」
「ああ、ここで会ったのも、何かの縁だろ」
「分かったキャプ……宜しくキャプリコーン」
アルジャーノンの申し出をフグオは快諾した。
二人は取り敢えず落ち着ける場所を探そうと言う事になり、アルジャーノンは自分の背中にフグオを乗せる。
「……!」
その直後、アルジャーノンは異様な殺気を感じた。
考えて見れば、見晴らしの良い場所で長い間留まっていれば狙われる危険は当然高くなる。
その事を失念してしまっていた。
「フグオ、しっかり掴まってろ」
「え?」
「狙われてる、逃げるぞ!!」
「うわっ!」
駆け出すアルジャーノン。
そしてアルジャーノンとフグオ目掛けて草むらから飛び出す大きな黒い影。
全身を黒い生体外殻で覆われ、両肩に犬の頭部を模した飾りが有り、一本一本がサバイバルナイフの如き鋭さを持つ爪を持った、巨躯の犬。
その風貌は地獄の番犬「ケルベロス」を彷彿とさせた。
「ガアアアアアアッ!!」
咆哮しながら、その黒い獣はアルジャーノンとフグオ目掛けて爪を振り下ろす。
「ぬおおおおおお!!!」
間一髪でその斬撃を回避する事に成功するアルジャーノン。背中のフグオも無事だった。
もし当たっていれば二人共容易に引き裂かれ命は無かったであろう。
急いで逃げなければ、確実に殺される。
黒い獣は明確な殺意を持っている。
「しっかり捕まってろォォォオオ!!」
「ギャブリィイイ!!」
全速力で走るアルジャーノン、その背中に必死にしがみつくフグオ。
かつて競走馬であったアルジャーノンはここまで全力で走る事など怪我をして以来無かったが、
彼自身が驚く程、往時の足の速さは衰えてはいないようだった。
……
……
どれぐらい走っただろうか、もう黒い獣の姿は見当たらなかった。
息を切らしふらつくアルジャーノン。
疲れてはいたが、生きている事を確かめる。
「アルジャーノンさん、大丈夫プー?」
「あ、ああ……久々だなこんなに走ったのは。昔競走馬だった頃を思い出す」
「あっ、アルジャーノンさん、あそこに建物があるキャプ」
フグオが指差す先には時計塔と思しき建造物が存在していた。
「時計塔か……あそこなら一息つけるかもな。ずっと外彷徨いている訳にもいかないし行ってみよう」
「キャプチュ」
二人は時計塔へ向かって歩いて行く。
【深夜/B-5、B-6境界線付近道路】
【アルジャーノン@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター】
[状態]肉体疲労(中)
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
1:フグオと行動する。時計塔へ向かう。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
【鈴木フグオ@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]健康
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:殺し合いなんてしたくない。小鉄っちゃん達に会いたい。
1:アルジャーノンさんと行動。時計塔へ向かう。
[備考]※少なくとも金子翼登場から彼と親しくなった後からの参戦です。
◆◆◆
「逃げられたか……くそっ」
ケルベロモンは悔しがった。
馬と太った人間の子供、楽勝かと思っていたら逃げられてしまった。
自分の油断、慢心が有ったかと反省する。
「逃げられたものは仕方無い、次の獲物を探そう……」
気持ちを切り替え、ケルベロモンは索敵を始める。
彼は「狩り」と称して殺戮を行う事にこの上無い悦びを感じ、時には性的興奮まで覚える程の異常性を持っていた。
余りに節操の無い殺戮ぶりに、同種からも忌避されていた。
今回の殺し合い存分に暴れられる良い機会をくれたと主催側に感謝の念を抱く程である。
「狩りってとっても愉しいし気持ち良いのになあ、何でみんな分からないんだろうか」
自分の感性を理解してくれない同種への愚痴を呟きながら、ケルベロモンは獲物を探す。
その行先にはガソリンスタンドが有った。
【深夜/C-5、C-6境界線付近道路】
【ケルベロモン@ゲーム/デジタルモンスターシリーズ】
[状態]健康
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:狩りを愉しむ。
1:獲物を探す。
[備考]※性格は作者のオリジナルです。
最終更新:2014年05月28日 16:48