20話 地獄の番犬の爪は闇を切り裂いた
C-6エリアのガソリンスタンド。
事務所内にて、鈴木正一郎の「二回目」のバトルロワイアルはスタートした。
「まさか、また殺し合いをやる事になるなんてな……」
正一郎は一度目の――クラスメイト同士の殺し合いにおいて、
主催に反抗し、ゲームに乗ったクラスメイトを倒すスタンスを取っていた。
これだけを聞けば聞こえは良い。
しかしその実、彼は偏った自分の正義感に基付き、殺し合いに乗っていないクラスメイトまでをもその手に掛けていた。
そうして己の正義を信じ行動していたが、次第にその自信も揺らぎ始め、
そして最期には散弾銃で頭を吹き飛ばされると言う凄惨な死に様を遂げた。
しかし今、彼は何らかの方法によりこの世に再び生を受け、別の殺し合いの場に立っている。
名簿を見ればクラスメイトの名前も数人確認出来る。
自分が殺したシルヴィア、自分に麻倉美意子を殺させた貝町ト子、
若狭に首輪を爆破され殺されたラト、自分を殺した太田太郎丸忠信、他にも何人か居る。
ランダム支給品はチェーンソー。
以前の殺し合いでも似たような物を武器として使っていた。
シルヴィアと麻倉はそれで殺害したのだから、記憶に新しい。
「今回は間違えない、絶対に……」
固い決意の表情で正一郎は言う。
以前の殺し合いでの自分は倒すべき相手を見誤っていた。
最初の宍戸亮太郎はともかく、他に自分が殺した者達は、よくよく顧みれば、
皆改心しようとしていたり、殺し合いに乗ってすらいなかった者ばかりでは無かったか。
自分は間違っていたと認めざるをえない。
謝した所で到底許されはしないだろうが、正一郎は心から申し訳無く思った。
二度目の生で、自分が為すべき事。
殺し合いを潰す事――――正一郎は判断する。
しかし以前のように、曖昧な材料で相手を殺し合いに乗っていると断じるような安易な真似はやめるべきと己に課す。
本当の正義は、その先にある筈だ――正一郎は思う。
ならば、早速行動を起こさなければ。
正一郎は事務所から待合所へ向かう扉を開けた。
薄暗い非常灯の灯った待合所の、大きなガラス窓の向こうには幾つか並ぶ給油機。
「……?」
給油機の向こうで何かが動いたような気がして、
正一郎がその辺りを注視する。
夜の闇にすっかり溶け込んではいたが、それはかなり大きな四足の獣のようだった。
「!?」
そしてその獣は次の瞬間には正一郎目掛けて猛烈な勢いで迫ってきた。
ガシャアアン!!!
分厚い強化ガラスが粉々に砕け散り、正一郎は抵抗する間も無く黒い巨大な獣に床に押し倒される。
待合所のテーブルや椅子、観葉植物が獣とぶつかり吹き飛ばされる。
「一人目」
獣の口から青年の声で言葉が発せられた直後、鋭い爪を持った前足が薙ぎ払われ、正一郎の首が飛んだ。
正一郎の頭部はバスケットボールのように跳ね、部屋の片隅の自動販売機にぶつかり床に転がった。
こうして、鈴木正一郎の二回目の生、及びバトルロワイアルは、いとも呆気無く、その幕を閉じた。
【鈴木正一郎@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル 死亡】
【残り 43人】
◆◆◆
「んっ……はぁぁっ……これこれぇ」
身を震わせ恍惚とした表情を浮かべる黒い巨犬、ケルベロモン。
ガソリンスタンドに居た人間の少年の首を飛ばして殺害し、彼は己の欲求を満たし、痺れるような快感を感じていた。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、あっ、はぁぁぁあああああっ、いくっ、いくぅぅぅうううぅぅううっ……」
ビクン、ビクンと更に大きく身体を震わせた後、大きく口を開けだらしなく舌と涎を垂らし、
ケルベロモンは、床に白く濁った液を撒き散らした。
それは紛れも無くケルベロモンの体液――殺戮により彼は性的絶頂に達したのだ。
「んんっ……気持ち良い~……これだから殺しはやめられないんだよぉ。
ふふっ、一杯出た出た……」
怒張した己のモノと、床に大量に飛び散った汁を愛おしげに見詰めるケルベロモン。
「もっともっと気持ち良くなりたい……まだまだ獲物は沢山居る筈だ。
まだまだ楽しめるね……ん、これ、チェーンソー? ……貰っておこう」
少年が持っていたチェーンソーを拾い自分のデイパックに入れ、
その後ケルベロモンは次の獲物を探す為にガソリンスタンドを後にした。
【深夜/F-2病院】
【ケルベロモン@ゲーム/デジタルモンスターシリーズ】
[状態]快感
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???、チェーンソー@現実
[思考・行動]基本:狩りを愉しむ。
1:獲物を探す。
[備考]※性格は作者のオリジナルです。
《支給品紹介》
【チェーンソー@現実】
木の伐採に使用される電動式の大型鋸。パロロワでの支給頻度は恐らく高いと思われる。
自作ロワに登場した「チップカットソー」はどうやらこれらしい。
最終更新:2014年07月22日 23:59