それぞれの思い出映し出す

37話 それぞれの思い出映し出す

「おい、テトのねーちゃん」
「ん……ん」

少年の声と揺り起こされる感覚で、猫獣人の少女テトは目を覚ます。
熟睡していたようで、口からは涎が垂れ落ち、座卓をべっとりと汚してしまっていた。

「ああ、小鉄君……」
「良く寝てたみてぇだな……すげぇ涎垂れてるぞ、拭けよ」
「え? あらら……」

小鉄に指摘されてテトは備え付けの布巾で己の口元と座卓の上を拭く。

「一通りこの旅館の中を見て回ってみたけど、どうやら俺達以外は誰も居ねぇみてぇだ」
「そう……あ、そうだ、小鉄君」
「ん?」
「さっき獣人の事、知らないって言ってたけど……」

テトは気になっていた事を小鉄に尋ねる。
小鉄は獣人の存在を知らないと言っていたが、テトの生きる世界においては獣人は人間にとって最早身近な存在になっており、
少なくとも小鉄のような小学生の年齢で「獣人を知らない」と言うのは考え難かった。

しかし、しばらく小鉄から話を聞いていく内、段々とその理由が分かってくる。

小鉄から聞かされた西暦、歴史、文化――――同じ所も有るが違う所の方が多い。多過ぎる。

それらの事から導き出される答えは。

「……これは……でも、そう考えるしか」
「どうしたんだ?」
「……私と小鉄君……住んでいる『世界』が違うのかも」
「?? どう言う事だ?」

テトが言い出した事が理解出来ず聞き返す小鉄。

「つまり、私の居る世界と小鉄君の居る世界は全く違う異世界だって事……パラレルワールドって言えば良いのかな」
「……」

やはり理解出来ない小鉄。
彼の思考能力ではテトの言いたい事を推し量るのは困難のようだった。
テト自身も荒唐無稽な事を言っているかもしれないと思ったが、小鉄が虚言を吐いているようにも思えず、
それ以外に説明する手立てが見付からなかった。

「悪い、俺には難し過ぎて良く分かんねーや」
「無理も無いわ……自分でも訳分からないと思うし……でも、
それ以外に上手く説明出来ないもの」
「まあ、でも、今はそんな事どうでも良いんじゃね?
世界がどうのこうのってよりもさ、この殺し合いで生き残る事を考えた方が良いと思うぜ」
「そうね……」

小鉄の言う通り、彼の世界と自分の世界の違いを追求した所で答えなど出ないであろうし意味も無いだろうから、
殺し合いの中で生き延びる為に思考した方が自分達の為になるだろうとテトは思う。

「俺はこれから友達ののり子達を捜しに行こうと思ってるけど、ねーちゃんはこれからどーすんだ?」
「私は……特に決まってないや。どうしようかなあ」
「ねーちゃんはこの殺し合いに友達は呼ばれてねぇのか?」
「……」

小鉄の問いにテトは少し間を置いてから答えた。
その表情は微かに険しくなっていた。

「クラスメイトは何人か居るけど、特別仲の良い人は居ないから、進んで捜そうとは思ってない」

太田やト子達、自分を辱めた連中や裏切った友は殺してやりたいとは思えど進んで捜し出そうとも思わなかった。
ラトに関しては未だに複雑な想いでどうするか決めかねていたが、結局は捜す気になれない。
その辺りの事情を詳しく説明するのは小学生である小鉄には重過ぎるとテトは思い、簡潔に言うに留めた。
小鉄も特に問い詰めるような事はしなかったが、テトの表情や声の様子から何か事情はあるであろう事は察した。

「そうなのか……けど、ねーちゃん一人だろ?」
「うん」
「じゃあ、俺と一緒に行かねぇか?」
「え?」

急な申し出に少し驚くテト。
小鉄からすれば、テトはこの殺し合いにおいて初めて出会った、
殺し合いに乗っていない(テト本人は一度もそう言っていないが彼女の言動から小鉄はそう判断した)参加者であり、
また、どことなく放っておけない気がしていた、それ故に共に行かないかと提案した。

「良いの?」
「ねーちゃんが良ければ俺は全然構わねぇんだけど……」
「……」

しばしテトは考える。
別段仲間が欲しい訳では無いが、断る理由も無い。
一瞬、仲間に誘う振りをして隙を突いて襲おうとしているのではとも邪推したが、
それならば自分が熟睡している所をわざわざ起こしたりはしないだろう。

「……分かった。小鉄君、一緒に行っても良いかな」
「よし決まりだな。宜しくなねーちゃん」
「うん、こちらこそ」

テトは小鉄の言葉を信じ、提案を呑む事にした。

(取り敢えずテトねーちゃんを連れて行くとして……のり子達はどこにいんだろうな)

心の中で小鉄は今どうしているか分からない友達や担任教師の事を思う。
西川のり子、鈴木フグオ、土井津仁、金子翼、春巻龍。
自分と同じくらいタフなのり子、仁はまだ大丈夫だとは思うが、フグオや金子先生、春巻はどうか。
今まで、命の危機に瀕した事は何度か有った、だが結局は生き延び、すぐに元通りの生活に戻った。
だが、今回ばかりは生きて帰れるかどうか分からない。

(畜生……今度ばかりは、今までと違う……早くのり子達を捜さねぇと)

こんな不安は、今まで生きてきて初めてではないか、と、小鉄は思った。



【黎明/E-6温泉旅館客室】
【テト@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:今の所は殺し合う気は無い。
       1:小鉄君と行動する。
       2:太田達及び貝町ト子は殺してやりたい。ラトは複雑。他のクラスメイトについては保留。
[備考]※本編終了後からの参戦です。
    ※超能力の制限については今の所不明です。
    ※参加者のラトが自分が蘇らせたラトでは無い事に直感的に気付いています。
    ※大沢木小鉄が自分とは別世界の人間だと判断しました。

【大沢木小鉄@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]健康
[装備]無し
[所持品]基本支給品一式、ローバーR9(6/6)@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター、ローバーR9の弾倉(3)
[思考・行動]基本:殺し合いには乗らない。のり子達を捜す。
       1:テトのねーちゃんと行動。
       2:俺達、生きて帰れるのか?
[備考]※少なくとも「元祖!」にて金子翼登場後、彼と親しくなった後からの参戦です。
    ※テトが別世界の人間だと言う事を、余り理解出来ていませんが、何となくは分かったようです。



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最終更新:2014年09月14日 23:04