しょくしゅ注意報

27話 しょくしゅ注意報

レナモンは診察室前で見張りをしていた。
診察室内では同行者の少女、西川のり子が休んでいる。

「ん?」

懐中電灯と思しき光を認めたレナモン。
光の元が有ると思しき方を振り向けば、のり子より幾分年上と見られる少女の姿が見えた。

「誰だ?」
「待って、私は殺し合いには乗っていない」

少女――柏木寛子は殺し合いに乗っている事を否定する。

「本当か?」
「本当!」
「……分かった、信じよう。私はレナモン。お前は?」
「私は柏木寛子よ」
「お前一人か?」
「うん、私一人。他には居ない」
「分かった。こっちはもう一人仲間が居るんだ。診察室の中に……」

レナモンが寛子を診察室の中へ通そうとしたその時。

ガシャアアアアアン!!

「ひゃあああああ!?」

診察室の中からガラスが砕け散る大きな音とのり子の悲鳴が聞こえた。
何事かとレナモンと寛子の二人は診察室の中へと突入する。
そこで二人が見た物は。

「何だこいつは!?」
「うわっ……!?」
「あ、ああ……レナモンねーちゃん……!」

腰を抜かして床にへたり込むのり子、そして、身体のあちこちから触手らしき物を生やした、
リカオン獣人の少年の姿であった。
少年――小崎史哉は、寛子が使っていた懐中電灯の光を追って病院までやってきた。
悪く言えば寛子が彼を連れて来たような物だったが、そのような事を寛子が知る由など無く、
そもそもそれは言い掛かりと言う物だろう。

「アァァァア゛ァァア……」
「こいつは話が通じそうな奴じゃないな、のり子! 早くこっちに来い!」

本能的に危険を察知したレナモンはのり子に向かって指示するが、
のり子は恐怖で腰が完全に抜けてしまって上手く動けない。

「ウウウヴァッ!!」

史哉が唸り声を上げ、のり子に襲い掛かろうとした。
まずいと思ったレナモンは、自分の周りに複数の木の葉を出現させ、それをリカオン獣人に向け勢い良く飛ばす。
レナモン種の必殺技「狐葉楔」である。

「ガアアアアアッ!!」

鋭利な刃のような木の葉が胴体に突き刺さり、仰け反る史哉。
その隙にレナモンはのり子の元へ駆け寄り、その手を掴んで立ち上がらせた。

「ね、ねーちゃん!」
「早く!」

そして急いで診察室から出ようとした。
だが、レナモンの左足首に史哉の触手が巻き付き、床に引き倒した。

「うぐっ!」
「! ねーちゃん!!」
「レナモンさん!?」
「寛子! のり子を連れて逃げろ!」
「え!? でも……」
「こいつは私が何とかする。早く!!」

逡巡する寛子に向かってレナモンが必死に叫んだ。

「……っ、行こう!」
「何するん! 待って! レナモンのねーちゃん……っ!」

寛子はのり子の手を掴むと病院玄関の方へと走り出した。
のり子は同行していたレナモンを放っていく事に抵抗を感じていたが、寛子に手を掴まれている以上、
一緒に走るしか無かった。

「くそぉっ!」

レナモンもこのまま黙って殺される気は無かった。
再び狐葉楔を打ち込もうとした、だが、それよりも早く数本の触手がレナモンの腹部を貫いた。

「がっ……あ」

レナモンの口から大量の赤い液体が溢れる。
腹回りの白い毛皮も今や真っ赤に染まっていた。
自分の死を、最期を、レナモンは悟った。

「のり子、寛子、どうか……無事、に」

ブチッ

上半身と下半身に分断され、その意識が消えるまで、レナモンは二人の身を案じていた。


【レナモン@ゲーム/デジタルモンスターシリーズ  死亡】

【残り  42人】



歪んだ窓枠、砕けたガラスや医療器具が散乱、そして辺り一面にレナモンの血肉が飛び散った診察室は、
見るも無残な凄惨な有様と化していた。
尤も史哉はそんな事は気にも留めなかったが。

「……い……ない」

廊下に出るが先程の二人の姿はもう見えない。
まだ病院内に居るのか、外に逃げたのかは史哉には分からない。
だがどちらでも構わない、探すだけだ。追うだけだ。
史哉は血塗れの触手を引き摺って歩き出した。


【黎明/F-2病院】
【小崎史哉@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター】
[状態]身体のあちこちに木の葉が刺さっている(行動に支障無し)、身体中から触手が生えている
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:皆……殺し……。
        1:さがす……。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※身体を特殊な寄生虫に乗っ取られています。乗っ取られる前の記憶は殆ど有りません。
    ※本能的にある程度言葉を発しますが意思疎通は不可能に近いです。
    ※柏木寛子、西川のり子が外に向かって逃げた事は知りません。


◆◆◆


病院から南に離れた、F-2エリアに流れる川の北側の川原。

「うう……レナモンねーちゃん」

悲嘆に暮れるのり子。寛子もまた沈痛な面持ちを浮かべる。
二人共、レナモンの生存については諦観していた。

(そうだ、私、銃を持っていたんだった……使えば良かった……)

自分が拳銃を持っていた事を思い出し、これを使えばレナモンも助かったかもしれないと寛子は後悔する。

「ねーちゃん」
「え?」
「ねーちゃんも、殺し合いには乗ってないんか?」

目の涙を拭いながらのり子が寛子に尋ねる。
のり子にとっては寛子は初対面で名前もまだ知らない。

「うん、乗ってないよ。私、柏木寛子って言うの」
「ウチは、西川のり子や……」
「……病院に来て、見張りをしていたレナモンさんに会ったのよ。
それで、お互いに殺し合いはしてない事を確認して、中に同行者が居るって言われて診察室の中に入ろうとした時に、
あなたの悲鳴が聞こえたの」
「そうなんや……あいつ、ガラスぶち破っていきなり入ってきたんや。
何なんあれ!? あんなん見た事無いわ……」

獣人等の人外が普通に存在する世界に住んでいる寛子も身体中から触手の生えた獣人など見た事が無かった。

「これからどうしよう」

のり子が言う。
明るくなるまでレナモンと共に病院に留まる予定だったがそれも破綻してしまった。

「私と一緒に行く? のり子」
「ええの?」
「一人で放っておく事なんて出来ないよ」

寛子はのり子を連れて行こうと思った。
自分よりかなり年下の、恐らく小学校低学年位と思われるのり子を放っておく気にはなれなかった。
彼女が知らない所で、母性が働いていたのかもしれない。

「分かった、一緒に行くわ。よろしゅうな、寛子ねーちゃん」
「こちらこそ。それじゃ、一先ず隠れられそうな場所探そうか……」

共に行動する事となった寛子とのり子は、
身を潜められそうな場所を探す為、歩き始めた。


【黎明/F-3北側川原】
【西川のり子@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]悲しみ
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:殺し合いはしたくない。死にたくない。
        1:寛子ねーちゃんと行動する。小鉄達を捜したい。
        2:レナモンねーちゃん……。
[備考]※少なくとも金子翼登場から彼と親しくなった後からの参戦です。
    ※小崎史哉の外見のみ記憶し、彼を危険人物と判断しました。

【柏木寛子@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター】
[状態]健康
[装備]TNOKの拳銃(6/6)@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ
[所持品]基本支給品一式、.38SP弾(12)
[思考・行動]基本:殺し合いをするつもりは無い。憲悦とは会いたくない。
        1:のり子と行動する。
        2:どこか隠れられそうな場所を探す。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※小崎史哉の外見のみ記憶し、彼を危険人物と判断しました。


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最終更新:2014年09月16日 22:54