暫く身を潜め、睦み合っていた民家を後にしたノーチラスと君塚沙也の二人は北方向へ向かい、警察署を訪れた。
そこで二人は、一階宿直室にて、小学生ぐらいの少年が息絶えているのを発見した。
何が有ったのか、右手の手首から先が千切れ飛んでおり、
傷口から噴き出したと思われる大量の血液で宿直室は赤く染まっていた。
「可哀想にな……」
「随分強面だけどまだ小学生ぐらいなのにねぇ……にしても随分散らかってるわね」
宿直室は血塗れとなっていたが、お菓子の袋や空のジュースの缶やペットボトル等で散らかっていたり、
今は少年の死体が横たわり血で汚れてしまっているが、布団が敷かれていたりと、誰かが寛いでいた形跡が有った。
この少年がこの部屋で身を潜めながら過ごしていた所を襲撃されこうなったのか、
それともこの部屋を使っていた人物は別に居るのか、それを判断する証左は二人には示せなかった。
その後、署内を一通り探索し、少年の死体以外には誰も人は居ない事を確認し、
ノーチラスと沙也は放送まで警察署で過ごす事となる。
それまでに二回程行為を行った。
そして午前6時となり第一回目の定時放送が始まる。
放送を行ったのは開催式の時の二人組の片割れ、じゅんぺい。
相変わらず滑舌の悪い声で、咳払いをしながらじゅんぺいは放送内容を読み上げた。
『えー、ン゛ン゛ッ、現在生き残ってる方々、どうも、お久しぶりです。じゅんぺいです。
えー、午前6時となりましたので、第一回放送を開始したいと思います。 まず、禁止エリアから、発表します。
午前7時より、A-6、B-3、C-1、F-5。 繰り返します。午前7時より、A-6、B-3、C-1、F-5の四つのエリアが、禁止エリアとなります』
「さっきまで俺達が居た住宅街が入っているな」
「危なかったね」
ノーチラスと沙也が居た民家の有るF-5エリアが禁止エリアの一つに指定された。
図らずも禁止エリアから退避した形になったが、例えF-5エリアに残っていたとしても、
実際に禁止エリアになるのは一時間後なので放送を聞いてからでも退避する余裕は有っただろうとも二人は思う。
他の禁止エリアはいずれも現在位置からは遠く離れているので今の所は気にする必要は無さそうだ。
『では続いて、現時点での死亡者を発表します』
いよいよ死亡者の発表が始まる。
一層耳を澄ませるノーチラスと沙也。
特にノーチラスはクラスメイトが複数人居る為尚更であった。
『愛餓夫』
「いきなりか」
一番最初に呼ばれた名前はノーチラスのクラスメイトの一人、愛餓夫。
仲が良かった訳では無かったが、それでもクラスメイトの死が伝えられれば思う所は有る。
『AOK』
『青砥日花里』
『アルジャーノン』
『壱里塚徳人』
ノーチラスのクラスメイト二人目である。
愛餓夫同様、仲が良かった訳では無くノーチラスは少し溜息をついた程度で次の名前を聞く。
『一般通過爺』
「これはどう見ても名前じゃないよな……」
「私もそう思う」
『INUE』
『ガオガモン』
『吉良邑子』
『倉沢ほのか』
今度は二人連続でノーチラスのクラスメイトの名前が呼ばれる。
そう言えば自分は一度死んだが、他のクラスメイトはどうなのだろうか。
ノーチラスが思案する間も無く死亡者の発表はまだ続く。
『グリフォモン』
『ケルベロモン』
『シロ』
『鈴木正一郎』
ノーチラスのクラスメイト五人目。
『土井津仁』
『西川のり子』
『野原しんのすけ』
『フーゴ』
『レナモン』
『以上、19人です。 残りは33人となっております』
死亡者の発表が終わった。
最初の六時間の内に19人が脱落した。内、五人がノーチラスのクラスメイトであった。
更に、開催式の時に見せしめで殺された赤子の家族の内、赤子の兄と飼い犬も命を落としたらしい。
(そういや俺、前の時は一回目の放送前に死んじまったな……)
そう思うと、感慨深い物が有るとノーチラスは思った。
『それでは、次の放送は昼の12時になります。 これにて、第一回目の放送を終了致します』
第一回定時放送が終了する。
「ノーチラス、クラスメイト何人か呼ばれたの?」
「仲の良い奴らじゃなかったけどな……そうだとしても、クラスメイトが死んだって聞かされるのは嫌な気分になる」
「まあ気持ちは察するけどねぇ……にしても19人……結構死んでるね……私とノーチラスがエッチしてた間にね」
「あ、ああ、そうだな……」
「でも私の時も最初の放送までに17人ぐらい死んでたしこんな物なのかな」
「そういやお前も二回目だったか……」
ノーチラスと沙也はお互いが一度殺し合いに巻き込まれ、命を落とした身であると言う事は互いの口から既に聞いていた。
嫌々ながらノーチラスが自分の死に様を沙也に話した時、沙也に笑われ赤面する羽目となったが、
同じ殺し合いを経験した者同士と言う事で親近感が強くなった。
それと比例し行為も激しく快楽も強まったとか。
「前の時は同行してた人が堅物で一回も出来なかったから今回は前よりはマシだと思ってるよ」
「そんな理由でか……」
「そんな理由って何よ! 立派な理由でしょ!
……まあ良いけどさ、そう言う訳だから、エッチについては自重はしないからね? 宜しく」
妖しく微笑みながら、沙也はノーチラスを見て言った。
ノーチラスは苦笑いを浮かべつつも、満更でも無いといった様子であった。
◆◆◆
警察署に裏手から近付く一人の影。
全身から触手を生やしたリカオンの少年、小崎史哉。
彼はその身体がずぶ濡れで、水を滴らせていたが、何故か。
警察署の対岸に有る病院にてレナモンを惨殺した後、史哉は獲物を求め病院及びその周辺を徘徊していた。
明るくなり放送の直前ぐらいになった時、彼は唐突に渡河を始めた。
川の向こう岸に獲物を求めた、本能的な行動であり、廻り道をして橋を利用すると言う思考力はもう彼には無かった。
川は中程でも腰まで浸かるぐらいの深さで、史哉はずぶ濡れ、足元を泥だらけにしながらも渡り切る事に成功する。
そもそも今の彼にとって、身体が濡れようが汚れようが関係無かったのだが。
渡河の最中に放送が有ったものの、前述の通り知能が殆ど失われている彼は、放送など全く意に介さなかった。
「ウ……ウウ……」
唸り声を発しながら、史哉は警察署の小さな裏口へと歩いて行く。
◆◆◆
ガシャアアン!!
突然、静かだった警察署内に派手な音が響き渡った。
驚くノーチラスと沙也。
「何だ!?」
「裏の方から聞こえたけど……」
「今の音はただ事じゃないぞ……行ってみよう」
二人は裏手へ様子を見に行く事にする。
ノーチラスは十八年式村田銃、沙也は日本刀とそれぞれの支給武器を装備し戦闘になった時に備える。
そして二人が目にしたのは。
「何だ、こいつ!?」
「うわっ、キモッ……!」
無残に破壊され床に転がった裏口の扉と、全身から触手らしき物が生えたリカオン獣人の少年だった。
「ヴヴヴヴ……」
唸り声を発しながら、少年が二人に向けるその双眸は獣そのもので全く友好的な雰囲気は感じ取れない。
そもそも意思疎通が出来るかどうかも分からなかったが、ノーチラスは村田銃を構えて警告した。
「止まれ! 動くな!」
「ガアアア!」
しかしリカオン少年はノーチラスの威嚇など全く意に介さず、物凄い速度で右手の触手を伸ばし襲い掛かる。
その触手はノーチラスを狙っていた。
「!!」
身を屈め、紙一重でノーチラスは触手を避ける事に成功した。
触手はノーチラスと沙也の背後の壁に深々と突き刺さり、大きなひび割れが広がった。
その破壊力が如何程の物か思い知るには十分過ぎる有様で、ノーチラスと沙也はこのリカオン少年が、
とんでもない危険人物であると再確認する。
「こいつ!」
迷ってはいられない、こいつは間違い無く自分達を殺そうとしている。
ノーチラスは村田銃を構え直し、引き金を引いた。
ダァン!!
11.15ミリの銃弾が、黒色火薬による激しい硝煙と共に銃口から放たれる。
旧い時代の、現在主流の無煙火薬より威力の弱い黒色火薬使用とは言え、小銃弾には変わり無い。
急所に当たれば勿論、急所を逸れたとしても命の保証は無い。
そして銃弾はリカオン少年の右肩を貫通した。
「グゥッ」
少年は呻いた、だが、それだけであり動きを止める様子は無かった。
「駄目だ効いてない! 逃げるぞ沙也!」
「わ、分かった!」
沙也の手を引いてノーチラスは退却する事を選択した。
触手を伸ばして遠距離からも攻撃する上に小銃弾も物ともしない頑丈さ、まともに相手するには危険過ぎる。
「ア゛ァァアアア゛アァアア!!!」
走る二人の背後から、少年の雄叫びが響いた。
必死に走った末、ノーチラスと沙也は警察署正面玄関を潜り外へ飛び出した。
二人は振り向くが、まだリカオン少年の姿は見えない。
しかし署内から壁か何かを壊すような音や、咆哮が響いておりしかも近くなってきている事から追跡するのを諦めてはいないようだ。
「なるべく遠くに逃げた方が良いな、良し、町の方へ行こう沙也。隠れ場所も曲がり角も多いだろうし撒けるだろ」
「分かった!」
二人はリカオン少年を振り切るべく、遠くに見える市街地へ向かい始めた。
【朝/F-4警察署周辺】
【君塚沙也@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター】
[状態]健康
[装備]又兵衛の刀@アニメ/クレヨンしんちゃん
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。生き残りたい。
1:ノーチラス君と行動。市街地方面へ逃げる。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
※ノーチラスのクラスメイトの情報、及び彼がリピーターである事を本人から聞いています。
※小崎史哉の外見のみ記憶、彼を危険人物と判断しました。
※警察署にて土井津仁の死体(名前未確認)を発見しています。
【ノーチラス@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]十八年式村田銃(0/1)@オリキャラ/
俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター
[所持品]基本支給品一式、11.15mm×60R弾(10)
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
1:沙也と行動。市街地方面へ逃げる。
2:殺し合いに乗っていない参加者、クラスメイトの捜索。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
※超能力の制限に関しては今の所不明です。
※君塚沙也がリピーターであり事を本人から聞いています。
※小崎史哉の外見のみ記憶、彼を危険人物と判断しました。
※警察署にて土井津仁の死体(名前未確認)を発見しています。
◆◆◆
小崎史哉の身体の内部は、彼に巣食う触手の正体である寄生虫がその体積を増大させており、
見かけには分からないがかなり体重が増している上、重心のバランスも狂っていた。
それ故に動きは緩慢であり、素早く走る事は出来ず、
獲物に全力で走り去られたら触手を伸ばして捕縛でもしない限りはそのまま逃げられてしまう可能性が非常に大きい。
病院の時もそうだったが、今回も標的にした狼と猫の少年少女に逃走を許してしまう。
署内の壁や天井、備品を手当たり次第に壊しながら史哉は玄関へと向かった。
八つ当たりしている訳では無い。そのような感情は彼にはもう残っていない。
寄生虫の力により破壊衝動が増幅されている為であった。
玄関の扉も束にした触手でぶち壊し、史哉は外へと出る。
「……」
遠方に見える市街地。そこへ向かって走って行く先程の二人の姿を史哉は捉えた。
病院の時とは違い、今度は逃げた相手の行き先を掴んだのだ。
それに、市街地ならば、あの二人を見失ったとしても他の参加者が居るだろう。
「ウゥウウ……」
発した唸り声を誰か聞く者が居れば、微かに歓喜の色が滲んでいるように聞こえただろうか。
史哉もまた、二人のように市街地に向けて歩き出した。
【朝/F-4警察署玄関前】
【小崎史哉@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター】
[状態]ずぶ濡れ、右肩に貫通銃創、身体中から触手が生えている
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:皆……殺し……。
1:市街地……。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
※身体を特殊な寄生虫に乗っ取られています。乗っ取られる前の記憶は殆ど有りません。
※本能的にある程度言葉を発しますが意思疎通は不可能に近いです。
※ノーチラス、君塚沙也と同じく市街地方面へ向かいます。
《支給品紹介》
【十八年式村田銃@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター】
1880年(明治13年)開発の単発ボルトアクション小銃「十三年式村田銃」の改良型。
明治時代の日本陸軍が制式としていた。
元ロワにおいて
丹羽三矢に支給されるが、
上神田ための手に渡り内水直之と
コンラートの殺害に使われる。
最終更新:2014年11月06日 04:31