行き着く運命の最終形

54話 行き着く運命の最終形

放送を聞いた呂車は、死者として呼ばれた19人の中に、
ガソリンスタンドにて交戦した野原みさえの息子、しんのすけと飼い犬のシロが入っていた事が少し気掛かりだった。

(飼い犬ならまだしも、息子まで喪ってしまった事になるな……あの女はどうするのだろう)

みさえは精神に異常を来している様子で、優勝して娘や、死ぬ事になるであろう自分の家族を生き返らせて、
また家族一緒で暮らすのだ、などと言う世迷い言を吐いていた。
どうするのか、と呂車は思ったが、どうもしないだろう。
死んだ息子や犬も一緒に生き返らせれば良い位にしか思わないに違い無い。

(あんな女の事など俺にはもう関係無いだろう。これ以上気にするのはよそう……)

みさえやその家族の事を自分が考える必要は無いと思考を切り替え、
呂車は前方に見える建物を見据えた。
地図によればそれは図書館のようだった。


◆◆◆


穴が空いた本やそこから千切れ飛んだらしいページの紙が散乱し雑然とした図書館内。
空の薬莢が幾つも転がっている事から銃撃戦でも有ったのだろう。
しかし人狼の青年、コーディはそれらの事は大して気に留めず、読書スペースの椅子に座りながら、
放送で得られた情報を一通り書いた地図と名簿を見る。
禁止エリアはどれも現在位置からは離れており今の所は気にする必要は無さそうだ。

「飯でも食うか……」

小腹が空いたのでコーディはデイパックの中から基本支給品の食料と水を取り出し軽い朝食を始める。

「……あんまり美味くねぇな」

渋い顔をするコーディ。
基本支給品の食料は安物なのか、余り美味しいとは言えない代物であった。
しかし空腹は否定出来ない為、我慢してコーディは食料を口の中に放り込む。
取り敢えずは空腹を満たせたので、椅子の背もたれに体重を掛けて一息付くコーディ。

「ん……」

しかし、入口の方から聞こえてきた音に彼の耳がピクリと動く。

その音は入口の扉が開いた音であり、要するに誰かが訪れてきたと言う事だ。

「誰か来たな……」

コーディは傍に立てかけてある、廃村にて少女を殺害し奪った56式自動歩槍を手に取り、本棚の陰に移動して様子を伺い始めた。
そしてしばらくして、彼の視界に灰色の身体を持った竜人種と思しき男の姿が映る。


◆◆◆


図書館に入った呂車だったが、目に入った光景は図書館とは思えない位に荒れていた。
椅子がひっくり返っていたり、穴の空いた本や破れたページ、大量の空薬莢が床に散らばっていたり、
本棚や壁に無数の穴が空いていたりしている。
どうやら今さっきでは無いようだが銃撃戦が有ったらしい。

(もしかしたら死体が転がっているかもな……もしくは他に誰か居るかもしれん)

戦闘が有ったのなら、犠牲者の死体が転がっている可能性が有る。
それでなくても、誰かが身を潜めているかもしれない。
先刻みさえから没収したサーベルを片手に呂車は奥へと進む。

「誰か居るカ?」

一応、日本語で声を掛けてみるが返事は無い。
誰も居ないのか、警戒して隠れているのか、こちらの隙を窺っているのか。

ダァン!!

答えは三つ目のようだった。
銃声が響き、呂車の左頬を銃弾が掠める。

「くっ!」

即座に身を屈めてテーブルの下に隠れる呂車。

(クソッ、乗っている奴か……まずいな)

テーブルの下に隠れたとは言え、テーブルの木製の板程度では銃弾など防げまい。
向こうはこちらの位置をある程度把握しているだろうから一刻も早く移動しなければ。
呂車はハイハイをするような形でテーブルの下を這う。
不格好であったがそんな事を気にしている場合では無かった。

ダァン! ダァン! ダァン!

狙撃手は攻撃の手を緩めず呂車に向けて発砲を続ける。
呂車が危惧した通りテーブルの板など簡単に貫通してしまい、固い床にヒビを入れて深々と食い込む銃弾。

「ぐぅ!」

銃弾の一発が呂車の尻尾を抉った。
苦痛に顔を歪ませながらも、どうにか呂車は狙撃手が居る位置から離れた場所の本棚の陰に移動する事に成功した。

「〈くそっ……〉」

尻尾の傷を見て呂車はぞっとする。
肉が抉れ真っ赤な血に混じり白い骨らしき物まで見えた。
傷口から流れ出た血液が床に跡を作っている。

(さて、これからどうする……)

傷の痛みを堪えながら呂車は狙撃手への対抗策を何とか打ち出そうと必死で頭を働かせる。
しかしその思考は中断させられた。
本棚が倒れてきたのだ。

「なっ――――!?」

突然の事になすすべも無く、呂車はうつ伏せの状態で本棚に胸から下を圧し潰される状態となってしまった。

「グアアァアッ!! う゛っ……ぐぅうう!」

本棚は木製、とは言え大量の本が収められている上に本棚自体も大きくその重量はかなりの物だ。
苦しさにもがき必死に本棚をどかそうとする呂車だったがビクともしない。
倒れた本棚は呂車を潰している物だけでなく何列もの本棚がドミノ倒しのように重なって倒れていたのだ。
誰が本棚を倒したのか、それは明白。
呂車の元に、突撃銃を手にした雄の人狼が近付いてくる。

「思い切って本棚ドミノ仕掛けてみたけど、大成功したな……」

人狼の青年は呂車が完全に動けなくなっていると見ると、突撃銃に付属しているスパイク型銃剣を起こした。

「弾は節約しないとねぇ」
「……っ」

もはや、ここまで。
呂車にもう対抗手段は何一つ残されていない。
何の因果か再びこの世に生を受けたと言うのに、結局何も出来なかった事が口惜しい。
そして人狼の青年は、銃剣を呂車の後頭部に突き刺した。

ザクッ

「げっ、ア! ア゛ッァア!!」
「暴れると痛いぞ~」

コーディがふざけ半分で忠告するが暴れなくても十二分に痛い。
なまじ高い生命力のせいで呂車はすぐには死ねずそれが余計に苦しみを長引かせる結果となった。
何度も、何度も人狼は呂車の首を銃剣で刺した。
血がドクドクと溢れ、呼吸もままならず意識も遠のき、完全に致命傷となる。
間も無く自分は死ぬだろう、呂車は思った。

(……神が、居るのなら……何の為、に……俺に、再び……命……を、与えた……の……だろ……う……)

消え失せていく自意識の中、自分の二回目の人生の意味を、誰にとも知れず呂車は問うた。
その答えは返ってくる事は無く、彼の再び与えられた命は消える事となった。


【呂車@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター  死亡】

【残り  32人】



◆◆◆


突発的に思い付いた、本棚をドミノのように倒して灰色の竜人を潰してしまおうと言う作戦は見事成功した。
竜人(実際はガーゴイルの獣人だがそんな事はコーディは分からない)は死にはしなかったものの、
本棚の下敷きとなり完全に動きを封じられ、それによってコーディは容易く仕留める事が出来た。

その辺に落ちていた紙――書かれている内容から元は家庭の医学関係の本のページだったらしい――で、
56式自動歩槍の銃剣に付着した血を拭き取り、竜人が持っていたサーベルを回収する。
鞘や、他の所持品も有るだろうが、恐らくデイパックごと本棚の下と思われる。
本棚をどかして回収するのは面倒な事この上無いので、コーディは竜人の荷物を漁るのは諦め、
抜き身のままサーベルを自分のデイパックへ突っ込んだ。

「あーあもう滅茶苦茶だよ」

図書館内の惨状を見て思わずコーディは呟いた。
元々散らかっていたがそこへ自分のやった本棚ドミノ倒し、更に竜人の男の死体、そこから流れ出た血液も加わり、
下手をすれば閉館に追い込まれかねないレベルにまで荒れ果ててしまっている。

「まあ別に良いか、移動しよ」

とは言っても、今は図書館の職員も居ない殺し合いの真っ只中、
自分の命の保証も無いのに所詮は他人事の図書館の心配をする必要など全く無い。
コーディはこれ以上図書館には用は無くなった為、他の場所へ向かうべく玄関へと歩いて行く。


【朝/D-3図書館】
【コーディ@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター】
[状態]健康
[装備]56式自動歩槍(8/30)@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター
[所持品]基本支給品一式、56式自動歩槍の弾倉(5)、バール(調達品)、ステーキナイフ@自由奔放俺オリロワリピーター、
     サーベル@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル
[思考・行動]基本:殺し合いに乗り、優勝を目指す。
       1:どこへ行こうか……。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※北沢樹里と野原しんのすけの容姿を大まかに記憶しました。


※D-3図書館の中、本棚の下に呂車の死体及びデイパック
(基本支給品一式、サーベルの鞘、S&W M56オート(11/15)@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル、S&W M56オートの弾倉(3))が有る


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最終更新:2014年11月17日 16:22