SCANNER

73話 SCANNER

貝町ト子が首輪の解析を始めてから、およそ四時間程が経過した。
ト子の目の前、机の上には首輪の部品達が広がっている。

「……」

頬杖を突いて考え込むト子。
四時間程かけてどうにか首輪の内部構造はおおよそ理解する事が出来た。
しかし、それ故に、自力での首輪解除は非常に難しい事も理解出来てしまう。
無理矢理外そうとすれば首輪は起爆する、どのようにしてそれをさせずに安全に首輪を外すか。
その方法を考えなければならない。

「むぅぅ……」

ト子は思わず唸り声を発する。
解除法が分かれば、自分やMUR、フグオのみならず、先刻会ったラトや野原ひろしのような、
殺し合いに反抗している他の生存者達の首輪も外して運営に反乱を起こす事も可能になる筈。
それだけに自分の責務は非常に重い物だと、ト子は思っていた。
今更「やっぱり無理だった」などと言う結果には出来ない。

「ト子ちゃん、少し休んだらどうだゾ?」
「MURさん」

ト子が疲労の色を顔に滲ませていると見たMURが心配して声を掛ける。

「ああ、そうだな……」

そう返事しつつ、ト子は手元のノートに鉛筆を走らせた。
金色の文字で「HB」とだけ印刷された緑色の軸に、銀色の金具、白いぐにゃりとした消しゴムの付いた、
恐らく100円均一ショップで12本入り100円で売られている中国製と思われる、いかにも安物と言う感じの鉛筆は、
これまた安っぽい作りのノートの上にざりざりと音を立ててト子の言葉の代わりとなる文章を綴る。

〈首輪の構造は大体分かったが、解除方法を探すのは骨が折れそうだ〉

ト子の首輪への所見を読み、MURもノートに筆記する。

〈分かった。でも、ト子ちゃん、あまり思い詰めないで欲しい〉

「……?」

書かれた文章を見て、ト子は意外な表情を浮かべMURの顔を見た。
MURやフグオに自分が気負っている事を打ち明けた覚えは無いのだが、どうやらMURにはお見通しだったらしい。
MURはノートに続けて書く。

〈もし無理だったとしても別の方法を考えれば良いゾ。ト子ちゃん一人に背負わせる真似はしない〉

それを読んで、ト子はふふっ、と微笑み「ありがとう」と返事を書く。
どことなく池沼(失礼だが)な印象を受けるMURだが、とても優しく、思いやりの有る人間の鑑だとト子は感じる。

(とは言っても、首輪が外せなかったら恐らく万事休すなんだが)

と言う突っ込みも心の中で入れはしたものの、それでもMURの気遣いには痛み入った。

「少し休むよ」
「そうした方が良いゾ」

ト子は机の上の工具類や首輪の部品達に布を被せ、少し休憩する事にした。

「そう言えばフグオは?」
「控え室で寝てるゾ」


……

……


控え室、畳敷きになっている所で、鈴木フグオは横になり眠っていた。
死と隣り合わせの殺し合いに巻き込まれ、死を目の前でまざまざと見せ付けられ、友達二人が死んだと聞かされ、
彼の精神は疲れ切り、いつしか睡魔が襲い、眠ってしまったのである。

フグオは夢を見ていた。

小鉄と、仁と、のり子と公園で遊んでいた。

でも、気付けば三人とも居なくなった。

広い公園に、フグオただ一人が取り残される。

いくら大声で三人を呼んでも、返事は返ってこず、姿も見付からない。

一人ぼっち。

一人ぼっち。

一人ぼっち。

フグオは、涙を流した。

夢の中でも、そして現でも。


【昼/D-5イベントホール】
【MUR@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]全身にダメージ(行動に支障は無し、ほぼ回復)
[装備]ハーネルStg44(26/30)@現実
[所持品]基本支給品一式、ハーネルStg44の弾倉(5)、肉切り包丁@現実
[思考・行動]基本:殺し合いには乗らない。クラスメイトと合流したい。
       1:ト子ちゃん、フグオ君と行動。
       2:フグオ君が心配だゾ……。
       3:野原さんとラト君、また会えると良いんだが……。
[備考]※動画本編、バスの中で眠らされた直後からの参戦です。
    ※貝町ト子のクラスメイト、鈴木フグオの知人の情報を得ました。
    ※首輪からの盗聴の可能性に気付きました。
    ※銀鏖院水晶が危険人物である事を野原ひろしとラトから聞いています。

【貝町ト子@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]疲労(中)
[装備]トンファーバトン@現実
[所持品]基本支給品一式、工具箱(調達品)、ケルベロモンの首輪(分解)
[思考・行動]基本:殺し合いはしないが、必要な時は戦うつもりでいる。
       1:MURさん、フグオと行動。少し休もう。
       2:テトと会ったらどうする……?
       3:太田には会いたくない。他のクラスメイトとも余り会いたくない。
       4:首輪を解析する。
       5:私が死んだら……。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※薬物中毒は消えています。
    ※MURのクラスメイト、鈴木フグオの知人の情報を得ました。
    ※首輪からの盗聴の可能性に気付きました。
    ※銀鏖院水晶が危険人物である事を野原ひろしとラトから聞いています。
    ※首輪の内部構造をほぼ理解しましたが解除方法はまだ模索中です。

【鈴木フグオ@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]精神的ショック(大)、睡眠中
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:殺し合いなんてしたくない。小鉄っちゃん達に会いたい。
       1:(睡眠中)
       2:……死にたくない。誰かが死ぬ所も見たくない。
[備考]※少なくとも金子翼登場から彼と親しくなった後からの参戦です。
    ※MURのクラスメイト、貝町ト子のクラスメイトの情報を得ました。
    ※首輪からの盗聴の可能性に気付きました。
    ※銀鏖院水晶が危険人物である事を野原ひろしとラトから聞いています。
    ※「死」に対して敏感になっています。
    ※イベントホール内の控え室で寝ています。



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最終更新:2015年03月08日 22:50