83話 「閉ざされたドア叩き壊したい」
「野獣、KMR、嘘だよ……あいつら死んでしまったのか」
「……」
「春巻先生まで……」
D-5エリアイベントホール内にて、
第二放送を聞いたMUR、貝町ト子、鈴木フグオの三人。
死者の発表ではそれぞれの知っている名前が何人も呼ばれた。
MURはクラスメイトで、仲が良かった野獣先輩こと田所浩二、KMR、
仲が良かった訳では無いが交流はそれなりに有った虐待おじさんこと葛城蓮の三人、
フグオは担任教師の春巻龍、ト子は三人の中では最も多い、太田太郎丸忠信、銀鏖院水晶、シルヴィア、テト、フラウの五人が呼ばれた。
また、四、五時間程前に出会い、また会う約束をして別れた野原ひろしも、その妻と共に名を呼ばれている。
反対に彼と一緒に居たト子のクラスメイト、ラトは呼ばれなかった。
「野原さんも……また会おうって言ったのに、奥さんの方も呼ばれていたゾ……」
「おじちゃん、奥さんに会えたのかなキャプ……」
「分からない……会えていれば良いんだけどな、いや、良いと言えるかどうかは分からないけど」
野原ひろしについて話し合うMURとフグオを尻目に、ト子は個人的な思考を巡らせていた。
(太田め、ざまあみろ……)
今まで自分を良いようにしてきた鬼畜男、太田の死を心の中で喜ぶト子。
自身もその死を喜ばれるような屑だと言うのは理解していたが、それでも喜ばずには居られない。
(……テトも死んだのか)
一方で、テトの死について複雑な感情を抱く。
会わなくて良かったと思う反面、やはり許されなくても、会って謝りたかったと言う気持ちもわき起こった。
(会わなくて良かったのか、それとも……)
「ト子ちゃん?」
「え?」
物思いに耽るト子の様子を心配したMURがト子に声を掛けた。
不意を突かれる形となったト子は驚く。
「考え込んでるのかゾ? 大丈夫か?」
「あ、ああ、大丈夫だ」
「確かト子ちゃんのクラスメイトも何人か呼ばれていたけど、親しい人が居たのか……?」
「気にしないでくれ」
「……なら、良いんだが……」
「……生き残りは、私達を入れて15人。だいぶ減ってしまったな。
今もどんどん減っているかもしれない」
「そうだな」
「禁止エリアは四つともここからは離れている、が、その内のE-4は、会場中央の市街地の半分を覆う。
このイベントホールに生き残りがやってくる可能性も高まるだろうな」
ト子が指摘するのは、新たに指定された禁止エリアによる生存者達の移動。
人が集まりやすいと思われる会場中央部の市街地、それの地図から見て右半分、つまりE-4エリアが禁止エリアの一つに指定されている。
その為、今居るイベントホールへ生存者が訪れる可能性も今まで以上に高くなると思われた。
無論、殺し合いに乗っている、乗っていないに関わらず。
ここで、三人は筆談を始める。
〈時にト子ちゃん、首輪の方はどうなってるゾ?〉
〈ぼくも気になるキャプ〉
MURとフグオが一番知りたいのは何と言っても首輪についてであった。
ト子は二人の顔を交互に見た上で、返事を書き綴る。
〈解除方法は大方算段が付いた。だが、実際に、生存者の、稼働している状態の首輪で試さなければ、
方法が合っているかどうか分からない〉
ト子の書いた内容は、二人に希望と緊迫を半々に与える。
長時間に渡って首輪の解析を行い、ト子は起爆させずに首輪を解除出来るであろう方法をどうにか編み出した。
しかし、それは今現在理論上の話でしか無い。
彼女が書き綴ったように、生きている参加者の首輪でその方法を試さなければ、方法が本当に合っているかどうかはまだ分からないのだ。
故に、一番最初に解除方法を試す事になる参加者は、死の危険性を孕む「実験台」と言えた。
〈最初に解除を希望する奴は、死ぬ事を覚悟する他無い、と言う事だなゾ?〉
〈察しが良いなMURさん。そう言う事だ〉
「?」
すぐにト子の伝えたい事を察せられたMURとは違い、クエスチョンマークを浮かべるフグオ。
しかし、かなり深刻な事を二人は議論していると言う事は理解していた。
フグオの様子を見て取ったMURは、流石にそのまま伝える事を憚り柔らかく誤魔化してフグオに書き伝えた。
〈首輪を外すのは危ない事には変わらないから、注意しないといけないって事だゾ〉
それを読んで、納得したのか否かは不明だったが、フグオは頷いた。
MURはト子との筆談に戻る。
〈でも、運営の奴らがあれだけ外せないって言っていた首輪を外そうとするんだから、それなりの覚悟はして貰わないといけないと思うゾ〉
〈だが、解除希望者がそれを理解してくれるかどうか〉
首輪の解除を最初に志願する者は相応のリスクを背負って貰う必要が有る。
無論、ト子も解除方法については、何度も吟味を重ねてきたつもりだったが、それでも確実とは言えない。
その辺りを志願者に理解して貰うのは時として難しい、最悪揉め事に発展する恐れも有る。
〈いざと言う時は、俺の首輪で試してくれ〉
〈MURさん?〉
唐突なMURの申し出にト子は戸惑う。
〈勘違いしないでくれ、決して自分の命が最優先って訳じゃない。
俺の首輪でト子ちゃんの編み出した方法が正しいって事を証明してくれって事だゾ。そうすれば信用を得られるだルルォ?〉
MURは、ト子の首輪解除法の有効性を示す為の「実験台」を自ら願い出たのだ。
勿論、志願者がト子の方法に不信を表したらの話ではあるが。
〈危ないプリ……そんなの〉
フグオが心配するが、MURは穏やかに笑い、返事を書いた。
〈心配してくれてありがとうだゾ、フグオ君。でも、ト子のおねえさんはとっても頭が良いからきっと大丈夫だゾ。俺はト子ちゃんを信じているゾ。
あー、こう書くとト子ちゃんに凄くプレッシャーを与えてしまうかもしれない……〉
〈いや、気にしなくて良いMURさん〉
「自分を信じる」そうMURから伝えられ、ト子は勇気付けられた。
尻込みしていても何も始まらないのは分かっているし、MURの思いを無駄にする訳にもいかない。
自分は一度、友人の信頼を裏切って、結果、自分の身を滅ぼす遠因となった。
再び、信頼を裏切るような真似は、ト子としても御免であった。
〈いざと言う時は、頼むよMURさん〉
〈当たり前だよなぁ? 任せてくれだゾ〉
そこまで協議した所で、三人は筆談を切り上げた。
「腹減ったなぁ」
「そうだな、昼だし、何か食べよう。と言っても支給品の食糧しか無いが」
「僕もお腹空いたキャプ……」
一先ず、三人共空腹を感じていたので、適当に何か食べる事にした。
【日中/D-5イベントホール】
【MUR@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]健康(全身のダメージはほぼ回復)
[装備]ハーネルStg44(26/30)@現実
[所持品]基本支給品一式、ハーネルStg44の弾倉(5)、肉切り包丁@現実
[思考・行動]基本:殺し合いには乗らない。
1:ト子ちゃん、フグオ君と行動。取り敢えず食事を摂る。
2:野獣、KMR、野原さん……。
[備考]※動画本編、バスの中で眠らされた直後からの参戦です。
※貝町ト子のクラスメイト、鈴木フグオの知人の情報を得ました。
※首輪からの盗聴の可能性に気付きました。
【貝町ト子@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]疲労(中)
[装備]トンファーバトン@現実
[所持品]基本支給品一式、工具箱(調達品)、ケルベロモンの首輪(分解)
[思考・行動]基本:殺し合いはしないが、必要な時は戦うつもりでいる。
1:MURさん、フグオと行動。少し休もう。
2:他のクラスメイトとも余り会いたくない。
4:首輪の解除方法を誰かで実践しなくてはならないが……。
5:私が死んだら……。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
※薬物中毒は消えています。
※MURのクラスメイト、鈴木フグオの知人の情報を得ました。
※首輪からの盗聴の可能性に気付きました。
※首輪の解除方法を編み出しましたが、あだ確実では有りません。
【鈴木フグオ@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]精神疲労(大)
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:殺し合いなんてしたくない。小鉄っちゃん達に会いたい。
1:春巻先生……。
2:……死にたくない。誰かが死ぬ所も見たくない。
[備考]※少なくとも金子翼登場から彼と親しくなった後からの参戦です。
※MURのクラスメイト、貝町ト子のクラスメイトの情報を得ました。
※首輪からの盗聴の可能性に気付きました。
※「死」に対して敏感になっています。
最終更新:2015年03月19日 13:53