第三放送

89話 第三放送

バトルロワイアルの舞台の日が暮れる。
ゲーム開始から18時間が経過した午後6時、第三回目の定刻放送が始まる。
放送者は第一放送と同じ、じゅんぺいであった。

『えー、ン゛ン゛ッ、皆様お久しぶりでございます、じゅんぺいでございます。
ン゛ッ、皆様と言っても、もう生存者の方は数える人数、しか残っておりませんねぇ……。
それでは、第三回目の定時放送を始めます。

まず禁止エリアからです。
午後7時より、A-4、C-2、D-2、E-5。
午後7時より、A-4、C-2、D-2、E-5です。

それでは、脱落者のン゛ッ、発表をします。

大沢木小鉄
金子翼
君塚沙也
KBTIT
鈴木フグオ
遠野
ひで
油谷眞人
ラト

以上、9人。残りは6人となりました。
確認の為に、生存者の方の名前も発表します。

貝町ト子
北沢樹里
サーシャ
ノーチラス
原小宮巴
MUR

残り6人となり、ン゛ッ、いよいよ大詰めかと存じます。
最後まで、全力で、えー、戦い抜いて下さい。

では、次の放送は、夜の0時となります。
とは言っても、それまでに決着が着いてしまうかもしれませんが……それでは、第三回定時放送を、ン゛ン゛ッ、終わります』

相変わらず酷い滑舌の放送が終わりを告げた。

◆◆◆

「お疲れだった、じゅんぺい君」
「うーい」

定時放送を終えたじゅんぺいを労う平野源五郎と、それに対し気怠そうに返事をするじゅんぺい。
大抵の人間ならそんな反応をされれば不快感を感じるであろうが、平野は特にそういった様子も無かった。

「平野さん、少し気になる事が有るのですが」

じゅんぺいが休憩に行った後、まひろが平野に深刻そうな面持ちで話し掛ける。

「どうしたんだね?」
「生存者6人についてですが、少々不審な点がございまして」

まひろが懸念を示しているのは、生存者6人の行動。
首輪からの特殊な電波、及び盗聴器によって運営本部は参加者の動向を把握する。
生存者6人は現在一つのチームとなり一緒に居るのだが、
時折、不自然な程誰も喋らなくなり、筆記音らしき音のみが響く時が有る、とまひろが平野に伝える。

「筆記音……無言……筆談か?」
「恐らくそれではないかと思います」
「ふむ……」

平野は思考する。
筆談を行っているとすれば、声に出してはまずい話題を仲間内で交わしていると言う事であろう。
しかし、まひろによれば、筆談と思われる行動を取っていた時に彼らの周囲には敵は居なかったと言う。
そもそももう彼ら6人しか残っていない。
それでも筆談する理由とは何か――――そこまで考えた時、平野はある事を思い出した。

確か生存者の内、MURと貝町ト子の二人組は首輪を手に入れていた。
ト子は解析するとも言っていた――――分解したとしても首輪の構造など理解出来まいとたかをくくっていたが、
もしや筆談内容と言うのは、首輪についてではないだろうか。
もしそうなら、首輪から盗聴されていると言う事実に気付いていると言う事になる。
いや、下手をすれば、内部構造も隅々まで把握され解除の方法まで探られているのでは。

「平野さん?」
「ああ、すまないまひろ君。じゅんぺい君を呼んできてくれないか。ちょっと話し合いたい事が有るんだ」
「ハイ」

平野に指示され、まひろはじゅんぺいを呼びに向かう。

「参加者達を甘く見過ぎていたかな……」

万一の事態になった時の事を思案しながら、モニタールームで平野は佇んでいた。


【残り  6人】



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最終更新:2015年05月24日 23:28