【25】幸福な死

酒場に立ち寄る金髪白猫獣人少女、レイチェル。
まだ酒の飲める年齢では無いし酒にも興味は無いのだが立ち寄った。
果たして巫女服姿の狐耳女性が酒を飲んでいる。

「おや、お客かの」
「ここ、貴方の店?」
「いや違うがな。気分じゃ気分」
「ふぅん……」

レイチェルは冷蔵庫から適当にジュースを取り出し狐巫女の隣に座って飲む。

「わしは稀衣じゃ。こう見えても結構生きてるぞ」
「私はレイチェル」
「そうか、レイチェル……お主は殺し合いに乗ってるのか?」
「……乗ってるって答えたら?」
「別に何もせん」
「……乗ってる」
「そうか。ならわしも殺すか?」
「……うーん、今の所は……」
「おやおや、まだ誰も殺しとらんのか」
「うん」
「人を殺すと言うのは、かなり覚悟が要るぞ。罪悪感に押し潰されるなんてものでは無いかもしれんが。
まだ誰も殺しておらんなら、まだ戻れるんじゃないか?」

説教じみた事を言う稀衣。別に本人にそのつもりは無いが。
しばらく間を置いてレイチェルが答える。

「無理」
「何故?」
「友達を見殺しにした」
「おや……」
「遊園地でね、私の友達が、九尾の雄狐にレイプされた末に焼き殺されたのよ。私に気付いていたかどうか知らないけど、
私の名前を呼んで泣き叫んで助けを求めてた。私はそれを見ているだけだった。
殺し合いに乗る気で居たから。助けなかったの」
「ほう」
「……ともかく、もう、戻る気は無いわ」
「……そうか……なら、まず人を殺す練習をしとかないとな……わしを使え」
「え?」

突然の提案に、レイチェルも流石に少し驚く。
数分後。
稀衣は巫女服を全て脱ぎ捨て、綺麗に畳み、全裸になって床の上に正座する。
レイチェルに帯を持たせ、支給品のノートに遺書を認めていた。

「うーむ、あやつにはこんなものかのう」
「あのー」
「よし、これで良い。ほい、レイチェル」
「え」
「このノートにわしの住所と、遺書が書いてある。もしこの殺し合いから生き残れたら遺書の宛先に届けて欲しい。
あ、わしの支給品の匕首もやろう」
「あー」
「ふぅ、もう少し長く生きたかったが、しょうがないのう。さあレイチェル、その帯でわしを縊り殺すのじゃ。遠慮はいらんぞ」

レイチェルに自分を殺せと促す稀衣。ふざけている様子は無い。

「えー、本当にいいの? それに何で全裸になるの?」
「全裸は気にするな。それに、良いのじゃ。あんなわけの分からん男の言いなりになるのも癪じゃしのう。
かと言って黙って死ぬのも嫌じゃし」
「むー……」
「あっ」
「ん?」
「最後に一回だけ、慰めてからにしてもらってもいいか?」
「……お好きに」

最後の快楽を味わおうと、稀衣は己の秘部と豊満な乳房をまさぐり、数分もしない内に絶頂し床を液塗れにする。

「はぁはぁはぁ……これで、もう思い残す事は無い。さあ、レイチェル」
「はーい」

レイチェルは稀衣の細い首に帯を巻き付け、思い切り絞め上げた。
絞め上げたつもりなのだが。

「うぎぃ……あんまり苦しくないのう……」
「……力が余り無いから私」
「そうじゃ、そこに良い感じの柱が有る、わしの首に巻いた帯の片方をその柱に結び、お主はもう片方から引っ張れば良いのじゃ!」
「おお」

このままでは上手く行かぬと判断し、作戦変更。
店のカウンター付近に有る細い柱に、稀衣の首に巻いた帯の片側を結び、もう片側をレイチェルが引っ張り縊死させる方法に転換した。

「これでよし……さあ、レイチェル。この経験を糧にして殺し合いを生き抜け」
「何か先生みたいになってる……まあ、頑張るよ。ありがとう。それじゃ、お別れよ」

レイチェルが両手で帯を掴み、そして思い切り後ろへと全体重をかけた。

「ぎぃ!!」

稀衣の濁った悲鳴が響く。
今度は完全に彼女の気道と血流を遮断し、稀衣は意思に反してじたばたともがき苦しみ、泡を吹いて小水を漏らして、やがて動かなくなった。

「あ、死んだ……うわ、酷い死に方になってる……あーでも案外平気……ありがとう稀衣さん、私頑張れそう」

口から泡を吹き全裸で汚物塗れになり縊死した狐耳女性に、レイチェルはお礼を言った。


【稀衣  死亡】


【午前/D-6酒場】
【レイチェル・マクナイト】
[状態]健康
[所持品]基本支給品一式、不明支給品、稀衣のノート、匕首
[行動指針]殺し合いに乗る。稀衣さんありがとう。


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最終更新:2016年10月11日 21:10