「―――小僧。いい度胸だ」
スコルピオスが剣を構え、城之内と向き合う。
「我ら全員で貴様を殺すのは簡単だが、ここは一つ、私と一騎打ちといこうではないか」
「へえ…意外と立派なことを言うじゃねえか。どういう風の吹き回しだ?」
「さあ、何故かな…強いて言えば、敬意を払いたくなったというところかな。貴様のその、身を挺して巫女を守ろう
という心意気にな…」
「…………」
「貴様が勝ったなら、我らは大人しく引き揚げ、二度とこの島には足を踏み入れまい―――それでよいな?」
「ああ、それで文句はねえよ。いくぜ、決闘(デュエル)!」
城之内は大地を強く踏み締め、力強く叫ぶ。
(相手は一人だ…ならいけるぜ!まずはこいつで様子見だ!)
ディスクに新たなモンスターカードをセットする。召喚されたのは、黒き鎧を纏う騎士。
「鋼鉄の騎士―――ギア・フリード!」
「ぬ…!貴様、あの札のような物から怪物を呼び出せるというのか!?」
「札のような物じゃねえ、デュエルモンスターズだ!いけ、ギア・フリード―――攻撃だ!」
手にした刃で、鋼鉄の騎士が斬りかかる。だが。
「ぶるぁぁぁぁぁぁっ!」
気合いと共に繰り出された剣撃が一閃する。ギア・フリードは、頭から股下まで真っ二つにされ、消滅した。
「なっ…ぐうっ!」
城之内は全身に走る痛みに、顔を歪める。
(ギア・フリードがやられたからか…?召喚したカードがやられたら、こっちもダメージを喰らっちまうのか!
しかしなんてヤローだ。鋼鉄の鎧を軽くぶった斬りやがった!この世界にゃこんな人間がいるってのかよ!?)
「くく…どうした?あの程度で倒せるなどと、まさか本気で思っていたんじゃあないだろうな?」
「ちっ!バカ言え。こっからが本番だぜ!頼むぜ、レッドアイズ!」
レッドアイズが地を蹴り、スコルピオスに飛びかかった。
「ぬうっ!」
振り下ろされたレッドアイズのカギ爪を剣で受け流す。と同時に、滑らかな動きでレッドアイズの懐に入り込み、
腹部を横薙ぎにする。
レッドアイズは苦鳴を洩らしつつ飛び退く。斬り裂かれた腹部からは、ダラダラと赤い血が流れ出していた。
「くっ…!」
「どうした、小僧!貴様ご自慢らしい黒竜も大したことはないな!」
嘲るように叫び、レッドアイズの首に向けて追撃―――
「なら、ここは罠(トラップ)カード―――<悪魔のサイコロ>だ!このカードは、出た目に従って敵の攻撃力を
数分の一に下げるぜ!」
新たにセットされたカードが、即座にその効力を発揮する。子供のような姿をした悪魔が、スコルピオスの頭上で
サイコロを振る。出目は、4。
「蠍頭!テメエの攻撃力は四分の一に落ちるぜ!」
「ぬうぅっ!?」
急激に腕の力が抜けていく感覚に、スコルピオスは狼狽する。本来のおよそ四分の一にまで威力が落ちた斬撃は、
レッドアイズが鞭のように振り回した尻尾によってあっさり防がれ、その衝撃でスコルピオスは剣を取り落とす。
「よっしゃあ!レッドアイズ、止めだ!」
黒竜の顎が大きく開かれ、そこから灼熱の火球が放たれる―――はずだった。しかし城之内は見た。スコルピオス
の口元に、歪んだ笑みが浮かぶのを。
「者共…矢を放て!」
「な…!?」
兵士達が手にした弓が一斉に撓り、雨のように矢が射られた。それはレッドアイズ、そして城之内にも命中する。
「がはっ…!」
運よく急所には当たらなかったものの、肩や腕に容赦なく矢が食い込み、激痛に気が遠くなる。そして、歪む視界
の中で、レッドアイズが無数の矢に貫かれるのを見てしまった。
「グァァァアアーーーッ!」
断末魔の絶叫と共に―――レッドアイズが消え失せた。城之内はそれを悲痛な思いで見届けると、スコルピオスを
睨み付けた。
「て…テメエ…汚ぇぞ…!一騎打ちのはずだろうが…!」
だが、彼は剣を拾いつつ、そんな城之内を鼻で笑う。
「フン!くだらんなぁ~~~~~~~一騎打ちの決闘だなんてなぁ~~~~~~~~!このスコルピオスの目的は
あくまでも星女神の巫女を生贄に捧げること!あくまでも神の力を得ること!!貴様のような決闘者になるつもり
もなければロマンチストでもない…どんな手を使おうが…最終的に…勝てばよかろうなのだァァァァっ!!」
そしてサッカーボールでも扱うかのように、城之内の顔面を思い切り蹴飛ばす。城之内は血反吐を吐きながら地面
を転がり、苦痛に呻く。スコルピオスはそれを見下ろし、ゆっくりと剣を振りかぶる―――
「もう…やめて!」
ミーシャがたまらずに、スコルピオスに向けて叫んだ。
「私なら、もういい…生贄にでも、何でもなるから…だから、もう…」
ミーシャの目から、涙が零れ落ちた。
「もう…誰も、傷つけないで…お願いだから…」
「ふん―――いいともさ。元々この小僧などどうでもいい。我らの目的は、何度も言った通りだ」
スコルピオスの剣が、月の光を受けて鈍く輝く。
「この小僧も可哀想にな?貴様が大人しく死んでいれば、こんな痛い目に遭うこともなかったろうに。その上で、
全てが徒労に終わったのだからな―――はっはっは!哀れなことだ!はーっはっはっはっは!」
「…………」
ミーシャは顔を伏せる。全ての感情が凍りついたかのように、表情に精気がなかった。
「神に祈れ…残酷な、運命(めがみ)にな…」
そしてスコルピオスが足を踏み出したその時―――
「ま…待て…」
城之内は歯を食い縛って激痛を堪え、ふらつきながらも立ち上がった。
「誰が、ミーシャに近づいていいなんて、言ったよ…ええ…クソ野郎…!」
「城之内…!やめて!もう…立たないで!」
「ミーシャ…黙ってろ…まだ、オレの闘いは、終わって、ねえ…」
「もう…やめて、城之内…私のためなら、もう、いいから…」
「うるせえって言ってるんだ!」
城之内は一喝し、ミーシャの言葉を遮る。
「あんたのためだけじゃねえ。オレ自身のためだ!オレは必ずあんたを守ると誓った。誰に誓ったわけじゃねえ
…オレ自身の魂と、誇りに誓ったんだ!」
「…城之内…本当に、もう、いいのよ…これもまた、運命なのよ…運命(かみ)はきっと、私にここで死ねと、
そう定められたのよ。だから―――」
「ざけんじゃねえ!運命運命って、お前らみんなバカか!?そんなモンに寄りかかって諦めて従って―――
んなもんが運命だっつーんなら…運命なんざ、クソっ喰らえだ!」
もはや身体はまともに動くこともままならないというのに、城之内はその苦痛すら忘れたかのように吼える。
それは、叫びだった。魂の奥底から搾り出すような、城之内の全てを込めた咆哮だった。
「だから…邪魔すんじゃねえ…!これは、オレの闘いだ。運命が決めた闘いなんかじゃねえ。オレ自身が選び、
そして挑んだ闘いだ!これだけは、他の誰にも、運命の女神様とやらにも邪魔させねえ―――
運命(かみさま)の意志なんざよりも―――オレは、オレの意地に従う!だから…そこで、見てろ。あんたを、
絶対に死なせやしねえ」
城之内のその姿に、もはやミーシャは何も言えない。そして城之内は再び、スコルピオスに向き直る。
「城之内…とかいったな?」
スコルピオスは、ゆっくりと口を開いた。
「最後に一応訊いておこう―――私の部下になる気はないか?それほどの力と気概があれば、すぐにでも英雄と
称えられようぞ。なあ?私はこれでもお前を評価しているのだよ?こんな辺鄙な島の田舎娘を庇っての犬死と、
英雄としての栄光、どちらを選ぶかなど、考えるまでもあるまい。地位も名誉も金も女も思いのままだ―――」
「ああ…そうだな…」
城之内はそれに対し、言われた通りに、考えるまでもなく答えた。
「寝言もいい加減にしやがれ―――毒蟲野郎」
「そうか。なら、死ね」
スコルピオスが兵士達に合図を送る。同時に放たれた無数の矢が一斉に城之内に襲い掛かる―――城之内には、
その一つ一つの軌跡まで、正確に見えた。
(ああ…こりゃあれか?死ぬ前には時間がゆっくり流れるとか…そうか。オレ…ここで終わっちまうのか…
ごめんな、ミーシャ…守るっていったのに…遊戯…すまねえ…オレは…ここまでだ…)
その刹那―――
スコルピオスが剣を構え、城之内と向き合う。
「我ら全員で貴様を殺すのは簡単だが、ここは一つ、私と一騎打ちといこうではないか」
「へえ…意外と立派なことを言うじゃねえか。どういう風の吹き回しだ?」
「さあ、何故かな…強いて言えば、敬意を払いたくなったというところかな。貴様のその、身を挺して巫女を守ろう
という心意気にな…」
「…………」
「貴様が勝ったなら、我らは大人しく引き揚げ、二度とこの島には足を踏み入れまい―――それでよいな?」
「ああ、それで文句はねえよ。いくぜ、決闘(デュエル)!」
城之内は大地を強く踏み締め、力強く叫ぶ。
(相手は一人だ…ならいけるぜ!まずはこいつで様子見だ!)
ディスクに新たなモンスターカードをセットする。召喚されたのは、黒き鎧を纏う騎士。
「鋼鉄の騎士―――ギア・フリード!」
「ぬ…!貴様、あの札のような物から怪物を呼び出せるというのか!?」
「札のような物じゃねえ、デュエルモンスターズだ!いけ、ギア・フリード―――攻撃だ!」
手にした刃で、鋼鉄の騎士が斬りかかる。だが。
「ぶるぁぁぁぁぁぁっ!」
気合いと共に繰り出された剣撃が一閃する。ギア・フリードは、頭から股下まで真っ二つにされ、消滅した。
「なっ…ぐうっ!」
城之内は全身に走る痛みに、顔を歪める。
(ギア・フリードがやられたからか…?召喚したカードがやられたら、こっちもダメージを喰らっちまうのか!
しかしなんてヤローだ。鋼鉄の鎧を軽くぶった斬りやがった!この世界にゃこんな人間がいるってのかよ!?)
「くく…どうした?あの程度で倒せるなどと、まさか本気で思っていたんじゃあないだろうな?」
「ちっ!バカ言え。こっからが本番だぜ!頼むぜ、レッドアイズ!」
レッドアイズが地を蹴り、スコルピオスに飛びかかった。
「ぬうっ!」
振り下ろされたレッドアイズのカギ爪を剣で受け流す。と同時に、滑らかな動きでレッドアイズの懐に入り込み、
腹部を横薙ぎにする。
レッドアイズは苦鳴を洩らしつつ飛び退く。斬り裂かれた腹部からは、ダラダラと赤い血が流れ出していた。
「くっ…!」
「どうした、小僧!貴様ご自慢らしい黒竜も大したことはないな!」
嘲るように叫び、レッドアイズの首に向けて追撃―――
「なら、ここは罠(トラップ)カード―――<悪魔のサイコロ>だ!このカードは、出た目に従って敵の攻撃力を
数分の一に下げるぜ!」
新たにセットされたカードが、即座にその効力を発揮する。子供のような姿をした悪魔が、スコルピオスの頭上で
サイコロを振る。出目は、4。
「蠍頭!テメエの攻撃力は四分の一に落ちるぜ!」
「ぬうぅっ!?」
急激に腕の力が抜けていく感覚に、スコルピオスは狼狽する。本来のおよそ四分の一にまで威力が落ちた斬撃は、
レッドアイズが鞭のように振り回した尻尾によってあっさり防がれ、その衝撃でスコルピオスは剣を取り落とす。
「よっしゃあ!レッドアイズ、止めだ!」
黒竜の顎が大きく開かれ、そこから灼熱の火球が放たれる―――はずだった。しかし城之内は見た。スコルピオス
の口元に、歪んだ笑みが浮かぶのを。
「者共…矢を放て!」
「な…!?」
兵士達が手にした弓が一斉に撓り、雨のように矢が射られた。それはレッドアイズ、そして城之内にも命中する。
「がはっ…!」
運よく急所には当たらなかったものの、肩や腕に容赦なく矢が食い込み、激痛に気が遠くなる。そして、歪む視界
の中で、レッドアイズが無数の矢に貫かれるのを見てしまった。
「グァァァアアーーーッ!」
断末魔の絶叫と共に―――レッドアイズが消え失せた。城之内はそれを悲痛な思いで見届けると、スコルピオスを
睨み付けた。
「て…テメエ…汚ぇぞ…!一騎打ちのはずだろうが…!」
だが、彼は剣を拾いつつ、そんな城之内を鼻で笑う。
「フン!くだらんなぁ~~~~~~~一騎打ちの決闘だなんてなぁ~~~~~~~~!このスコルピオスの目的は
あくまでも星女神の巫女を生贄に捧げること!あくまでも神の力を得ること!!貴様のような決闘者になるつもり
もなければロマンチストでもない…どんな手を使おうが…最終的に…勝てばよかろうなのだァァァァっ!!」
そしてサッカーボールでも扱うかのように、城之内の顔面を思い切り蹴飛ばす。城之内は血反吐を吐きながら地面
を転がり、苦痛に呻く。スコルピオスはそれを見下ろし、ゆっくりと剣を振りかぶる―――
「もう…やめて!」
ミーシャがたまらずに、スコルピオスに向けて叫んだ。
「私なら、もういい…生贄にでも、何でもなるから…だから、もう…」
ミーシャの目から、涙が零れ落ちた。
「もう…誰も、傷つけないで…お願いだから…」
「ふん―――いいともさ。元々この小僧などどうでもいい。我らの目的は、何度も言った通りだ」
スコルピオスの剣が、月の光を受けて鈍く輝く。
「この小僧も可哀想にな?貴様が大人しく死んでいれば、こんな痛い目に遭うこともなかったろうに。その上で、
全てが徒労に終わったのだからな―――はっはっは!哀れなことだ!はーっはっはっはっは!」
「…………」
ミーシャは顔を伏せる。全ての感情が凍りついたかのように、表情に精気がなかった。
「神に祈れ…残酷な、運命(めがみ)にな…」
そしてスコルピオスが足を踏み出したその時―――
「ま…待て…」
城之内は歯を食い縛って激痛を堪え、ふらつきながらも立ち上がった。
「誰が、ミーシャに近づいていいなんて、言ったよ…ええ…クソ野郎…!」
「城之内…!やめて!もう…立たないで!」
「ミーシャ…黙ってろ…まだ、オレの闘いは、終わって、ねえ…」
「もう…やめて、城之内…私のためなら、もう、いいから…」
「うるせえって言ってるんだ!」
城之内は一喝し、ミーシャの言葉を遮る。
「あんたのためだけじゃねえ。オレ自身のためだ!オレは必ずあんたを守ると誓った。誰に誓ったわけじゃねえ
…オレ自身の魂と、誇りに誓ったんだ!」
「…城之内…本当に、もう、いいのよ…これもまた、運命なのよ…運命(かみ)はきっと、私にここで死ねと、
そう定められたのよ。だから―――」
「ざけんじゃねえ!運命運命って、お前らみんなバカか!?そんなモンに寄りかかって諦めて従って―――
んなもんが運命だっつーんなら…運命なんざ、クソっ喰らえだ!」
もはや身体はまともに動くこともままならないというのに、城之内はその苦痛すら忘れたかのように吼える。
それは、叫びだった。魂の奥底から搾り出すような、城之内の全てを込めた咆哮だった。
「だから…邪魔すんじゃねえ…!これは、オレの闘いだ。運命が決めた闘いなんかじゃねえ。オレ自身が選び、
そして挑んだ闘いだ!これだけは、他の誰にも、運命の女神様とやらにも邪魔させねえ―――
運命(かみさま)の意志なんざよりも―――オレは、オレの意地に従う!だから…そこで、見てろ。あんたを、
絶対に死なせやしねえ」
城之内のその姿に、もはやミーシャは何も言えない。そして城之内は再び、スコルピオスに向き直る。
「城之内…とかいったな?」
スコルピオスは、ゆっくりと口を開いた。
「最後に一応訊いておこう―――私の部下になる気はないか?それほどの力と気概があれば、すぐにでも英雄と
称えられようぞ。なあ?私はこれでもお前を評価しているのだよ?こんな辺鄙な島の田舎娘を庇っての犬死と、
英雄としての栄光、どちらを選ぶかなど、考えるまでもあるまい。地位も名誉も金も女も思いのままだ―――」
「ああ…そうだな…」
城之内はそれに対し、言われた通りに、考えるまでもなく答えた。
「寝言もいい加減にしやがれ―――毒蟲野郎」
「そうか。なら、死ね」
スコルピオスが兵士達に合図を送る。同時に放たれた無数の矢が一斉に城之内に襲い掛かる―――城之内には、
その一つ一つの軌跡まで、正確に見えた。
(ああ…こりゃあれか?死ぬ前には時間がゆっくり流れるとか…そうか。オレ…ここで終わっちまうのか…
ごめんな、ミーシャ…守るっていったのに…遊戯…すまねえ…オレは…ここまでだ…)
その刹那―――
「―――<クリボー>を召喚!そして魔法カード<増殖>を発動!」
城之内とミーシャの周囲に突如、無数の丸い物体が出現した。放たれた矢はそれに阻まれ、同時に機雷に当たった
かのように弾け飛んだ。
「え…?」
「これは…なに…?」
城之内とミーシャは呆然としながら、自分たちの危機を救ってくれたそれを見やる。それは、まるで風船のように
ふわふわ宙を漂う、毛むくじゃらのヘンテコな動物だった。
「クリ~?」
どこからか山盛りに現れたその生き物は、愛敬たっぷりのまんまるい目で、二人を不思議そうに見ていた。そして。
カツ、カツ、カツ、カツ…
足音が響き渡り、<彼>が姿を現した。
大人しそうだったその顔が、ガラリと印象を変えていた。威厳すら感じさせる鋭い眼光が、居並ぶ兵士たちを威圧
する。フニャフニャしていた髪型が、刺々しく天を衝くように逆立っていた。
「へっ…おいしいとこ、持っていきやがって…」
城之内は、にやりと笑った。<彼>もまた、笑い返す。
「城之内くん…キミは、立派に闘った。だから、後は―――」
笑いを消して、<彼>は、その瞳に闘志の炎を滾らせる。
「―――オレに、全て任せてくれ!」
「…ああ。頼んだ…ぜ…」
城之内は安心しきったかのように頷いて―――地面に崩れ落ちた。ミーシャが慌てて駆け寄り、その身体を支える。
「城之内!しっかりして…!」
「へへ…心配、すんな…」
城之内は息苦しそうに、しかし、しっかりした声色で答えた。
「これから遊戯が…あの毒蟲野郎をぶっ飛ばす、愉快痛快な場面なんだからな…見逃してなるものかよ…」
そして―――<彼>と<蠍>が向かい合う。
「くく…今度は貴様のようなチビが相手か?全く私も舐められたものだ…しかしなんだ、あの男をボロ雑巾にして
やったのが、そんなにお気に召さなかったかね?もう少し念入りにいたぶってやるべきだったか―――しかしまあ、
無様なものだ。あれだけ大口を叩いておいて女一人守れんのだからな…はぁーっはっはっはっはっは!」
「全くですなぁ。弱いくせに粋がるからああなるということですかねぇ?」
「負け犬とは、まさにああいうザマを言うのでしょうなぁ、はっはっは…」
スコルピオスに追従するように、兵士達からも嘲笑が沸き起こる。<彼>は怒りを漲らせ、ただ一言。
「黙れ。クソ野郎共…!」
短い、だが恐ろしいほど冷たい言葉に、その場の全員が凍りついた。
「御託はいい…死にたい奴から、かかってきな!」
―――そう、<彼>こそはもう一人の遊戯にして、千年パズルに宿る、古の王(ファラオ)。
闇の知恵と力を持ちて、闇のゲームの審判者として君臨する存在。
即ち―――闇遊戯!
その怒りが、今まさに、天地を震わせていた―――!
かのように弾け飛んだ。
「え…?」
「これは…なに…?」
城之内とミーシャは呆然としながら、自分たちの危機を救ってくれたそれを見やる。それは、まるで風船のように
ふわふわ宙を漂う、毛むくじゃらのヘンテコな動物だった。
「クリ~?」
どこからか山盛りに現れたその生き物は、愛敬たっぷりのまんまるい目で、二人を不思議そうに見ていた。そして。
カツ、カツ、カツ、カツ…
足音が響き渡り、<彼>が姿を現した。
大人しそうだったその顔が、ガラリと印象を変えていた。威厳すら感じさせる鋭い眼光が、居並ぶ兵士たちを威圧
する。フニャフニャしていた髪型が、刺々しく天を衝くように逆立っていた。
「へっ…おいしいとこ、持っていきやがって…」
城之内は、にやりと笑った。<彼>もまた、笑い返す。
「城之内くん…キミは、立派に闘った。だから、後は―――」
笑いを消して、<彼>は、その瞳に闘志の炎を滾らせる。
「―――オレに、全て任せてくれ!」
「…ああ。頼んだ…ぜ…」
城之内は安心しきったかのように頷いて―――地面に崩れ落ちた。ミーシャが慌てて駆け寄り、その身体を支える。
「城之内!しっかりして…!」
「へへ…心配、すんな…」
城之内は息苦しそうに、しかし、しっかりした声色で答えた。
「これから遊戯が…あの毒蟲野郎をぶっ飛ばす、愉快痛快な場面なんだからな…見逃してなるものかよ…」
そして―――<彼>と<蠍>が向かい合う。
「くく…今度は貴様のようなチビが相手か?全く私も舐められたものだ…しかしなんだ、あの男をボロ雑巾にして
やったのが、そんなにお気に召さなかったかね?もう少し念入りにいたぶってやるべきだったか―――しかしまあ、
無様なものだ。あれだけ大口を叩いておいて女一人守れんのだからな…はぁーっはっはっはっはっは!」
「全くですなぁ。弱いくせに粋がるからああなるということですかねぇ?」
「負け犬とは、まさにああいうザマを言うのでしょうなぁ、はっはっは…」
スコルピオスに追従するように、兵士達からも嘲笑が沸き起こる。<彼>は怒りを漲らせ、ただ一言。
「黙れ。クソ野郎共…!」
短い、だが恐ろしいほど冷たい言葉に、その場の全員が凍りついた。
「御託はいい…死にたい奴から、かかってきな!」
―――そう、<彼>こそはもう一人の遊戯にして、千年パズルに宿る、古の王(ファラオ)。
闇の知恵と力を持ちて、闇のゲームの審判者として君臨する存在。
即ち―――闇遊戯!
その怒りが、今まさに、天地を震わせていた―――!