(――こいつは、前に進むことしかできない火だ)
フィーアから繰り出される鋭い蹴りを回避しながら、優はそう思った。
優の目の前には、赤い暴風があった。
そういう形容が許されるだけの荒々しさと力強さが、いまのフィーアにはあった。
彼女の戦い方を見た誰もが、人間とはこうも自由自在に動けるのかと感嘆し、また、重力の存在を忘れるだろう。
優の目の前には、赤い暴風があった。
そういう形容が許されるだけの荒々しさと力強さが、いまのフィーアにはあった。
彼女の戦い方を見た誰もが、人間とはこうも自由自在に動けるのかと感嘆し、また、重力の存在を忘れるだろう。
まず、回転蹴りから始まり、それが二回。続けて、地面に両手をついて、腰をねじり、大きく回転を加える。
そしてフィーアは一個の駒となり、その両足は凶器と化す。さらに、旋回する両足に宿った遠心力を利用し、絶妙なタイミングで
地面から離れ、空中蹴りの二連撃。
その一つ一つの蹴りは、それだけで完結せず、次の動作へつながり、大きな流れを形成している。一連の流れに澱みはない。
その上、"赤い靴"による、超スピードがその蹴りに付加されるのだ。もはや人間のくびきを超え、化物の域にまで達している。
そしてフィーアは一個の駒となり、その両足は凶器と化す。さらに、旋回する両足に宿った遠心力を利用し、絶妙なタイミングで
地面から離れ、空中蹴りの二連撃。
その一つ一つの蹴りは、それだけで完結せず、次の動作へつながり、大きな流れを形成している。一連の流れに澱みはない。
その上、"赤い靴"による、超スピードがその蹴りに付加されるのだ。もはや人間のくびきを超え、化物の域にまで達している。
――そのフィーアの攻撃を、最小限度の動きでかわし、いまだ傷を負っていない優もまた、化物と言って差し支えないだろう。
なぜ、人間でしかない優が、動体視力の限界を超えるフィーアの蹴りについていけるのか――
なぜ、人間でしかない優が、動体視力の限界を超えるフィーアの蹴りについていけるのか――
(――はっきりと、見えてるぜ。お前の殺気がな)
ある高名な合気道の達人の逸話に、拳銃の弾をかわしたという信じられないものがある。
その達人は、弟子になぜその芸当が出来たのかを尋ねられたときに、こんな言葉を残した。
『拳銃の引き金を引こうとすると、黄金の玉のような光が飛んでくる。弾はそのあとからくるから、避けるのはなんでもない』
一般人からすれば理解不能な論理であるが、武道には余人には計り知れない神秘的な領域が存在する。
その達人は、弟子になぜその芸当が出来たのかを尋ねられたときに、こんな言葉を残した。
『拳銃の引き金を引こうとすると、黄金の玉のような光が飛んでくる。弾はそのあとからくるから、避けるのはなんでもない』
一般人からすれば理解不能な論理であるが、武道には余人には計り知れない神秘的な領域が存在する。
中国の内家拳法では、身体よりも精神の修練に重きを置く。その技量が極限に達した拳法家は、意を自由自在に操り、
銃弾を見切るなどの絶技が可能となる。このように、精神を鍛えさえすれば、現代科学の範疇を超えた現象を引き起こせる、
というのが武道家達の主張だ。事実、そのような達人が幾人か存在している。
が、誰もがその境地に至れるわけではない。
常に戦いに身を置き、熾烈な鍛錬を重ね、何もかもを差し出す覚悟がある者にだけ――"明鏡止水"、あるいは"水の心"――を獲得する
資格があるのだ。
優は、その資格を有していた。
スプリガンとして世界中の戦場に赴き、各国の特殊部隊や人ならざるもの、そして師であったある仙術師との死闘を経て――
優は、その"水の心"を得ることが出来た。
優の視界には、黄金の玉のかわりに、火が見えている。それが、優のイメージするフィーアの殺気の形だ。
その火の軌道から身体をずらせば、自然にフィーアの攻撃を回避することになる、という寸法だ。
自分の心の中に"水"を作り、相手の思考を投影させる。
その"水の心"は、あらゆるものを映し、あらゆるものを呑み込む……
そして、わずかな隙を見つけ、優は、裏拳をフィーアに叩き込んだ。
銃弾を見切るなどの絶技が可能となる。このように、精神を鍛えさえすれば、現代科学の範疇を超えた現象を引き起こせる、
というのが武道家達の主張だ。事実、そのような達人が幾人か存在している。
が、誰もがその境地に至れるわけではない。
常に戦いに身を置き、熾烈な鍛錬を重ね、何もかもを差し出す覚悟がある者にだけ――"明鏡止水"、あるいは"水の心"――を獲得する
資格があるのだ。
優は、その資格を有していた。
スプリガンとして世界中の戦場に赴き、各国の特殊部隊や人ならざるもの、そして師であったある仙術師との死闘を経て――
優は、その"水の心"を得ることが出来た。
優の視界には、黄金の玉のかわりに、火が見えている。それが、優のイメージするフィーアの殺気の形だ。
その火の軌道から身体をずらせば、自然にフィーアの攻撃を回避することになる、という寸法だ。
自分の心の中に"水"を作り、相手の思考を投影させる。
その"水の心"は、あらゆるものを映し、あらゆるものを呑み込む……
そして、わずかな隙を見つけ、優は、裏拳をフィーアに叩き込んだ。
「ぐッ!」
リズムを崩されたフィーアに向けて、すかさず優はオリハルコンナイフを突き出す。が、フィーアは"赤い靴"の超スピードで
それを回避。わずかに距離をとる。
フィーアの顔には、驚愕の色がある。なぜ、超高速で動く自分の蹴りをかわせるのか。
その心の隙をつけば勝利を手にすることもできたのだろうが、
それを回避。わずかに距離をとる。
フィーアの顔には、驚愕の色がある。なぜ、超高速で動く自分の蹴りをかわせるのか。
その心の隙をつけば勝利を手にすることもできたのだろうが、
(だが……敵はこいつだけじゃねえ!)
そう、優の敵は、フィーアだけではない。もう一人の御伽噺部隊――
「さて、今度は私の番だな」
その声とともに、優のこめかみに、ごり、と何かが押し付けられた。その鋼鉄の感触に、優の心胆は一気に冷えた。
MG42機関銃から、銃弾が吐き出される。
MG42機関銃から、銃弾が吐き出される。
「うお……!」
優は頭を抱えて伏せた。きわどいところだったが、何とか銃撃を回避する。が、それを察知していたのか、すかさずツヴァイは
蹴りで追い討ちをかけた。
「ぐ……!」
蹴りで追い討ちをかけた。
「ぐ……!」
今度は避けきれないと判断した優は、咄嗟に後方へ飛んだ。相対距離を稼いで緩和させた衝撃を、両腕で受ける。
重い一撃――だが、AMスーツの高い耐久性もあって、ダメージはそれほどでもない。
重い一撃――だが、AMスーツの高い耐久性もあって、ダメージはそれほどでもない。
「ツヴァイ!」
「フィーア、一人で戦うな。いくら高い能力を持っていたとしても、一人では、一人分の力しかだせん。……二人がかりでいくぞ」
「……わかった」
不敵に笑って優を見るツヴァイ(狼顔の表情の変化を見慣れていない優には、わずかに頬が歪んだようにしか見えなかった)、
そして鋭い眼光で優を睨みつけるフィーア。
「フィーア、一人で戦うな。いくら高い能力を持っていたとしても、一人では、一人分の力しかだせん。……二人がかりでいくぞ」
「……わかった」
不敵に笑って優を見るツヴァイ(狼顔の表情の変化を見慣れていない優には、わずかに頬が歪んだようにしか見えなかった)、
そして鋭い眼光で優を睨みつけるフィーア。
「そういうわけだ、スプリガン。……まさか、卑怯などとは言うまいな」
「へ、上等だよ。何人がかりでも、俺は負けないぜ」
「いい答えだ。では、ゆくぞ!」
「へ、上等だよ。何人がかりでも、俺は負けないぜ」
「いい答えだ。では、ゆくぞ!」
電動ノコギリに似た唸り声が上がり、無数の銃弾が優に襲い掛かる。"水の心"でツヴァイの殺気を察知し、優はそれを回避していく。
フィーアのときと同じく、銃弾は一発も優に当たらない。二人の戦闘を観察していたツヴァイにとっては、それは予測の範疇だった。
だから、MG42機関銃とは別の手段で、彼女は攻めることにした。
フィーアのときと同じく、銃弾は一発も優に当たらない。二人の戦闘を観察していたツヴァイにとっては、それは予測の範疇だった。
だから、MG42機関銃とは別の手段で、彼女は攻めることにした。
ツヴァイは――あぎとを大きく開けた。太く、鋭い牙が、ずらりと並んでいる。
そしてMG42機関銃を乱射しながら、優に向かって突撃した。彼女は"噛み付き"を仕掛けようとしているのだ。
そしてMG42機関銃を乱射しながら、優に向かって突撃した。彼女は"噛み付き"を仕掛けようとしているのだ。
戦場格闘技において、"噛み付き"は基本の一つとされているが、留意点がいくつかある。
狙いは頚動脈に絞る、前歯を根こそぎ引く抜かれる恐れがあるため、衣類の種類を吟味すべし。
が、これらのことは、ツヴァイにとって何の意味も持たない。
彼女の持つ狼の牙と顎は、防弾服の上からでも肉を噛み千切ることが出来る。
狙いは頚動脈に絞る、前歯を根こそぎ引く抜かれる恐れがあるため、衣類の種類を吟味すべし。
が、これらのことは、ツヴァイにとって何の意味も持たない。
彼女の持つ狼の牙と顎は、防弾服の上からでも肉を噛み千切ることが出来る。
銃弾の波状攻撃が、優から徐々に逃げ道を奪っていく。緻密に、狡猾に、ゆっくりと回避の方策を潰していく。
これでは、水の心があっても逃げ切れない。
猛烈な勢いで迫るツヴァイに対して、優は覚悟を決めた。片手で頭をかばいながら、オリハルコンナイフを構える。
そして、両者は交錯して――
これでは、水の心があっても逃げ切れない。
猛烈な勢いで迫るツヴァイに対して、優は覚悟を決めた。片手で頭をかばいながら、オリハルコンナイフを構える。
そして、両者は交錯して――
「ぐぶっ……」
ツヴァイの喉笛に、ぱっくりと傷口が開き、血飛沫が盛大にあがった。がくり、と膝をつく。
しかし――
しかし――
「グルアッ!」
獣の咆哮を上げ、ツヴァイは立ち上がった。そして、仕留めたはずの敵が再び向かってきたことに驚く優の肩に、喰らいついた。
「ぐあ!」
みしみしと肩が悲鳴をあげる。
AMスーツの耐久性のおかげで、牙の貫通は免れていたが、肩が外れるかと思われるほど強い力が優を苛める。
「くッ、離しやがれ!」
蹴り、肘打ちを見舞う。が、肩にかかる力は緩まない。一度喰らいついたまま、離れない。
そして、優は見た。血の噴水が止まり、ツヴァイの喉笛の傷が、見る見るうちに塞がっていくのを――
獣の咆哮を上げ、ツヴァイは立ち上がった。そして、仕留めたはずの敵が再び向かってきたことに驚く優の肩に、喰らいついた。
「ぐあ!」
みしみしと肩が悲鳴をあげる。
AMスーツの耐久性のおかげで、牙の貫通は免れていたが、肩が外れるかと思われるほど強い力が優を苛める。
「くッ、離しやがれ!」
蹴り、肘打ちを見舞う。が、肩にかかる力は緩まない。一度喰らいついたまま、離れない。
そして、優は見た。血の噴水が止まり、ツヴァイの喉笛の傷が、見る見るうちに塞がっていくのを――
(こいつ、なりでただの人間じゃあねえと思ってたが、ライカンスロープかなにかか!?)
ライカンスロープ――超古代文明が生み出した生物兵器だ。
彼らは人間を遥かに凌駕する反射神経と身体能力を持っていたが、ここまでの再生能力は有していなかった。
あるいはツヴァイは、ライカンスロープではなく、伝承に出現する本物の人狼であるのかもしれない。
ともあれ、このままでは満足に戦えない。どうにかして脱出を試みようとする優の耳に、
彼らは人間を遥かに凌駕する反射神経と身体能力を持っていたが、ここまでの再生能力は有していなかった。
あるいはツヴァイは、ライカンスロープではなく、伝承に出現する本物の人狼であるのかもしれない。
ともあれ、このままでは満足に戦えない。どうにかして脱出を試みようとする優の耳に、
「お前のその動きの種は知らないが!」
という声が届いた。ツヴァイの背後から、フィーアが躍り出る。
「身体の自由さえ奪えば、関係ない!」
フィーアの蹴りが、優の首を刈り取るべく、振るわれる――
その刹那、本能が、理性より先に、最適解を導き出した。
AMスーツの出力を最大にする。そして、怪力が宿った両腕で、ツヴァイの身体を掴み、持ち上げ――
という声が届いた。ツヴァイの背後から、フィーアが躍り出る。
「身体の自由さえ奪えば、関係ない!」
フィーアの蹴りが、優の首を刈り取るべく、振るわれる――
その刹那、本能が、理性より先に、最適解を導き出した。
AMスーツの出力を最大にする。そして、怪力が宿った両腕で、ツヴァイの身体を掴み、持ち上げ――
「おおおおおおおおッ!!」
迫り来るフィーアに、ぶつけた。
「な!?」
「くッ!」
ツヴァイと激突したフィーアは、態勢を崩される。蹴りは空振りになり、そしてツヴァイとフィーアは二人いっしょに、地面に落下した。
「な!?」
「くッ!」
ツヴァイと激突したフィーアは、態勢を崩される。蹴りは空振りになり、そしてツヴァイとフィーアは二人いっしょに、地面に落下した。
「ぐ……」
肩を押さえながら、優はうめいた。AMスーツに突き刺さったままの牙が、ツヴァイの顎の力のすさまじさを物語っている。
痛みは残っている。だが、まだ戦える。そしてそれは、ツヴァイとフィーアも同じことだった。
ツヴァイは無言で立ち上がり、べっ、と血と牙が混じった液体を吐き出した。
フィーアはその背後で赤い靴を起動させ、いつでも戦闘を再開できるよう待っていた。
肩を押さえながら、優はうめいた。AMスーツに突き刺さったままの牙が、ツヴァイの顎の力のすさまじさを物語っている。
痛みは残っている。だが、まだ戦える。そしてそれは、ツヴァイとフィーアも同じことだった。
ツヴァイは無言で立ち上がり、べっ、と血と牙が混じった液体を吐き出した。
フィーアはその背後で赤い靴を起動させ、いつでも戦闘を再開できるよう待っていた。
「まったく」
ツヴァイが口を開いた。もう再生が完了したのか、牙が元に状態に戻っている。
「スプリガンというのは、みなこれほど厄介な奴らばかりなのか?」
「厄介ってんなら、あんたらも同じだぜ。そっちの金髪の……」
「フィーアだ」
「そして、私はツヴァイという」
「あ、ご親切にどうも。んで、フィーア……てめえの動きは、俺が戦ってきた奴らの中でも、五指に入るほど速い。
そして、ツヴァイ。知り合いに人狼が一人いるんだが、あんたみたいな反則的な再生能力は持ってなかったぜ」
「ジャン・ジャックモンドのことか。かつて彼のデータを見たことがあるが、あまり相手にしたくない手合いだな。君と同じく」
「俺も同じ気持ちだぜ。でもま、人狼の弱点はたくさんあるからな」
「残念だが、銀器も、聖別された刃物も、私に致命傷を負わすことはできない。私の身体は、れっきとした科学技術で造られている」
「サイボーグってわけか」
「似たようなものだが、少し違う。彼らは機械で構成されているが、私は強化細胞で構成されている。まあ、それはいい。
――さすがはスプリガンだ。二人がかりでも、足止めが関の山とは。これでは抹殺はおろか、時間稼ぎも難しいな」
「……なんだって?」
「グルマルキン大佐はお前達を抹殺しろと仰った。が、それ以上に、私達がウィーンに来たのは、足止めの意味合いが強いのだよ。
ロンギヌスを使った儀式――まだ、その準備が整っていない。そのための時間を、お前達と戦って稼げ、ということだ」
ツヴァイが口を開いた。もう再生が完了したのか、牙が元に状態に戻っている。
「スプリガンというのは、みなこれほど厄介な奴らばかりなのか?」
「厄介ってんなら、あんたらも同じだぜ。そっちの金髪の……」
「フィーアだ」
「そして、私はツヴァイという」
「あ、ご親切にどうも。んで、フィーア……てめえの動きは、俺が戦ってきた奴らの中でも、五指に入るほど速い。
そして、ツヴァイ。知り合いに人狼が一人いるんだが、あんたみたいな反則的な再生能力は持ってなかったぜ」
「ジャン・ジャックモンドのことか。かつて彼のデータを見たことがあるが、あまり相手にしたくない手合いだな。君と同じく」
「俺も同じ気持ちだぜ。でもま、人狼の弱点はたくさんあるからな」
「残念だが、銀器も、聖別された刃物も、私に致命傷を負わすことはできない。私の身体は、れっきとした科学技術で造られている」
「サイボーグってわけか」
「似たようなものだが、少し違う。彼らは機械で構成されているが、私は強化細胞で構成されている。まあ、それはいい。
――さすがはスプリガンだ。二人がかりでも、足止めが関の山とは。これでは抹殺はおろか、時間稼ぎも難しいな」
「……なんだって?」
「グルマルキン大佐はお前達を抹殺しろと仰った。が、それ以上に、私達がウィーンに来たのは、足止めの意味合いが強いのだよ。
ロンギヌスを使った儀式――まだ、その準備が整っていない。そのための時間を、お前達と戦って稼げ、ということだ」
「そうか。なら、とっととお前達を倒して、あの魔女のところへ行かないとな」
「ふ、それを許しては、私達としては立つ瀬がない。容易く勝ちを得られると思うなよ。では、フィーア、いくぞ!」
「ああ! スプリガン、確かにお前は強い。このまま生かしておけば必ず大佐を脅かす。だからこそ、ここで殺す!」
「やってみやがれ!」
「ふ、それを許しては、私達としては立つ瀬がない。容易く勝ちを得られると思うなよ。では、フィーア、いくぞ!」
「ああ! スプリガン、確かにお前は強い。このまま生かしておけば必ず大佐を脅かす。だからこそ、ここで殺す!」
「やってみやがれ!」
そして、死闘が再開される――
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
──その死闘を見つめる影がある。
「なんだよ、苦戦してるどころか、十分渡りあってんじゃん」
「こりゃあ、あたしたちの出る幕、ないかもね。どうしようか」
「こりゃあ、あたしたちの出る幕、ないかもね。どうしようか」
イスカリオテ所属――ハインケル・ウーフーと高木由美江。そして、
「ともかく、戦闘に介入するのは、まだ控えておきましょう」
埋葬機関所属――シエル。
教会が有する暴力の象徴である彼女らもまた、ロンギヌスを巡る戦いに、本格的に参加しようとしていた。
が、その前に、いくつか片付けて置かなければならないことがあった。
教会が有する暴力の象徴である彼女らもまた、ロンギヌスを巡る戦いに、本格的に参加しようとしていた。
が、その前に、いくつか片付けて置かなければならないことがあった。
「――私達以外にも、この戦闘を見ている人間がいるようですし」
「あー、オーストリア憲兵隊?」
「いえ、憲兵隊に私達の存在がばれても、後々ナルバレック達がオーストリア政府に圧力をかけてくれるでしょうから、大丈夫なのですが。
問題なのは、<トライデント>です。おそらく、ここ一帯に、彼らの監視がかかっています。その監視があるままで動くと、
<トライデント>経由で、教会がロンギヌス奪取のために動いたと各国に知られるおそれがあります。
……いくら教会でも、世界中を敵に回すことは出来ません」
「なるほどね。で、そいつらを始末してくればいいんだな?」
「お願いします」
「了解。んじゃ、行くよ、由美江」
「あいよ」
「あー、オーストリア憲兵隊?」
「いえ、憲兵隊に私達の存在がばれても、後々ナルバレック達がオーストリア政府に圧力をかけてくれるでしょうから、大丈夫なのですが。
問題なのは、<トライデント>です。おそらく、ここ一帯に、彼らの監視がかかっています。その監視があるままで動くと、
<トライデント>経由で、教会がロンギヌス奪取のために動いたと各国に知られるおそれがあります。
……いくら教会でも、世界中を敵に回すことは出来ません」
「なるほどね。で、そいつらを始末してくればいいんだな?」
「お願いします」
「了解。んじゃ、行くよ、由美江」
「あいよ」
そういって、ハインケルと由美江は姿を消した。
一人残されたシエルは黒鍵を構え、
一人残されたシエルは黒鍵を構え、
「さて……うまく立ち回らなければ」
静かに、そう言うのだった。