069.黒馬
遠く聞いた剣戟の音の下へ
そして辿り着いたそこには、勝者はおろか敗者すらいなかった
あるのは戦闘の跡、残骸ばかり
地面に突き立った大槍、折れた剣先、恐らくは鎧だろう破片、そして
「……!?あの帽子は深淵の騎士の!しかし完全装備の
深淵の騎士をここまで痛めつけるとは、いったい誰が……」
そもそも最初の集合場所に深淵の騎士はいなかったはずだ
誰かが枝を折り、呼び出されたか?
何にしろ完全なイレギュラーなのだろう
だからGM秋菜が直々に手を下したのではないか
「死体がここに無いという事は、生かされている…?」
大槍を拾い周囲の捜索を開始する
そして見つけたはただ1頭、瀕死の黒馬
「くそっ、まだ息はあるか?!ヒール!! こ、これは…!?
まだ駆け出しのプリーストの方が強力だぞっ
同朋1人救えなくて、何がゲフェニアの王か!!」
長時間の、魔力の大半を投じての必死の治療により、戦闘行為は
無理でも単純に走る程度が出来るまで回復する事が出来た
だが、それだけ
黒馬の主は遂に見つからず、もうじき日も沈む
「お前が生きていたんだ。お前の主も生きているだろうよ
槍はお前が持て。主に自ら返すといいだろう」
GMの打倒、間接的にだがその道筋の困難さを実感する
だがこの身はゲフェニアに君臨する魔王
絶望という奈落に落とされようと、どんなに力を封じられようとも
魔王としての誇りを誰が封じる事が出来ようか
「何を犠牲にしようともこの報いを受けてもらおう
たとえ我が身が朽ち果てようと、必ずだ……っ!」
誓いの言葉を残し、1人と1頭はこの場を去った
<ドッペルゲンガー 所持:ツヴァイハンダー、箱1>
<深淵の馬 所持:深淵の槍(ランス?) 備考:負傷中>
戻る | 目次 | 進む |
068 | 目次 | 070 |