あくあのたび:そうさくめも04
アクアの旅:創作メモ04
「それで、君は人を守ることを止めた、って事かい」
ザムの言葉を無言で肯定する。
ふうん、と声を零しながら、ザムは身近な岩石に腰掛ける。
「でもね、君。それはちょっと間違っていないかな」
「………なにが」
「君がマリーを操れるというのはともかくとして。君が村を守ることと他人が君を信
じないということは別物じゃないかな? 君は元々なんのためにマリーを操っていた
んだい」
「それは………」
「君の話を聞いていると。報酬の為じゃないよね、金が欲しいならマリーを操って村
を襲わせればいい。けれど君はしなかった、君は元々良い人間なんだ。だからこそ、
人から傷つけられることに耐えられなかった」
ザムの言葉に、女は見るからに不快そうな顔をした。
「勝手な憶測で私を語るな」
「黙れ。大体君は弱すぎるんだ。万人に受け入れられる存在というのはそもそも有り
得ないんだ。君のような技術を持ってる人がいると、必ず嫉まれる、妬まれる。君の
弱さは、その一部の声だけを受け取ってしまった器の狭さにある」
「………黙れ」
「断る。こういうふうに
冒険者をしているとどこかしらで人の恨みを買うものさ。だか
らといって、ぼくはぼくの歩みを止めるつもりは無いし変えるつもりもないよ。人か
ら感謝されようが、蔑まれようが、ぼくが選んだ道だ、誰にも文句は言わせない」
「うるさい………うるさい……黙れ……っ」
「いやだね。君は君の生き方を、人に少し叩かれただけで変えてしまったんだ。そし
て、マリーから人を守るという、君しかできない事を、自らの手で放棄してしまっ
た」
「うるさいうるさいうるさい。私がしなくてもお前たちみたいな奴が退治すればいい
だろうっ!」
「それでもぼくらは後手さ。マリーは狡猾だ。ぼくらみたいな冒険者の居ない田舎を
狙う。田舎から連絡があって、ぼくらが向かったとしても手遅れになっている事も多
い……」
そう言ってザムは俯く。
バラバラに食いちぎられた人の部品。動く物の無くなった冷え切った集落。
そんな物は、今まで何度と無く見てきた。
「いいかい。君はとても素晴らしい技術を持っている。ぼくらでは到底及ばない技術
だ。その力を持ってすれば、ひょっとしたらこの大陸のマリー全てを駆逐することも
可能かも知れない………いや、全ては無理だとしてもマリーの犠牲を可能な限り無く
すことが出来るだろう」
女は、沈黙する。
「人の意見なんて気にすることはなかったんだ。君は君の信じるように人を守ってい
けばよかったんだ。君にしかできないことだったんだ。君は人を見捨てるべきじゃな
かったんだ。君は君を裏切るべきではなかったんだ」
「うるさいっ、うるさいっ、うるさいっ、うるさいっ、うるさいっ!」
「勘違いをするな。他人の評価なんてどうだって良いんだ。ただ一つの評価で君の偉
業が汚されることはないんだから!」
「うるさっ、うるさい………うるさいっ、うるさ……あぁっぁあああああぁあぁ」
やがて、女は大声で泣き出した。
まるで子供のように、涙を拭えず、地面に幾つも涙のシミを零しながら。
最終更新:2021年07月18日 14:39