きしんえるべら:そうさくめも7
機神エルベラ:創作メモ7




「――女将。こどもが読むような御伽噺(おとぎばなし)は好きか?」
「…う?」
「ポスター。貼ってあっただろ。絵本の挿絵かなんかじゃなのか、あれ」
「え、あのっ、はい、そ…うです…っ」

好きです、おとぎ話。

絶え間なく続く攻撃に怯えながら震えながら、不思議そうに僕を見て、たどたどしくそう答える。
「ははっ、ガキっぽい奴め。もう社会人になったんだからそういうのは早く卒業しろよ」
「!!」
うさみみがまさにダブル・エクスクラメーション・マークのようにピンと伸びて、たぶん彼女はムッとした。
綺麗に赤いお目を白黒させて反論しようとする。

「う、うーうー!こどもっ、しゃ、社会人とかっ、かんけ……だって!……だって…」

ふふん。急にはうまくは喋れないみたいだけど、僕はこの女将の憤りを嬉しく思う。
「…だって」と力なく呟いて消えた言葉の続きはおそらく『好きなものは好きなんだもん』だ。

大丈夫、わかってるさ。
馬鹿にしたような態度をとってしまったけれど、僕だって決して嫌いじゃあないのだ。勧善懲悪のヒーローものは――。


~は、少しだけ大人になった。
ジュスペルは現実を知って。
アイスは誰かを守ることを知って。
放浪者は……

アイスとの寸劇。鎧になってすごすご戻る。《オカミ、ジェラートヲヒトツタノム》

己の気持ちより誰かの夢を優先することで、彼もまたちょっぴり大人になった。

ゴージャスだっ!何も着てないのになんだかゴージャスなバカが現れたっ!
貴女…髪は三角巾で、体は可愛いエプロンで、お手々は料理手袋で、顔はメガネで、口元はマフラーで武装(オシャレ)してるのに…
「貧相」
「……っ!?……っ!!!」

(ひ、貧相じゃないもん……)
「おとなだもん……」
いや、さすがにそれは無理があるが。

大人と子供、熱がりと寒がり、ゴージャスと貧相、笑顔と怯え。

放浪者殺し――その1、観測する情報を与えない!
あなたのヨロイは体験し研究し観測することで進化するサバイバルマシンだ。
なら攻撃する一瞬だけ戦闘力を高め、あなたが反射的に観測しようとした瞬間にはもうただの丸腰の女の子に戻っている――
そんな敵ならばどうなる?
進化の進みを遅くすることが出来るんじゃないか?

その2!敵対しない!
敵より強くなるヨロイ!ならばあなたを攻撃対象としない、という方法もある!
あなたの周りを攻撃し、あなた本人には特にダメージを期待しないノックバックだけを与える…
そもそも障害にならない、という対処法!

そしてその3――人質、だ。

こーんな魔女はあたしだけでしょ?肉弾戦が得意だなんて
「殺人ハンマーを振り回す魔女を知ってるよ」
く、で、でもあたしほど奇抜なスタイルをした魔女なんて
「左右で別のコスプレをした猛者もいる」
…あたし、みえない妖精さんとお話できるし
「武器と話す幼女を知ってるからそれくらいじゃあ」

結局、君の世界は狭いんだよ。
それじゃ何年生きても、何万年生きても大人にはなれない。
おれだってつい先日それに気付かされたところだ――
最終更新:2017年08月16日 15:21