とあるまおうのにちじょうきろく01
とある魔王の日常記録01




ヒノマルからの刀剣が目に付いた。
古びた様子だが装飾は見事で、鞘には竹をモチーフにした細工。柄には光輪の模様。
「なにこれ」
「おそらくヒノマル由来の刀剣だが、錆びているのか抜けやしない。置物にしかならんよ」
「ふーん、抜いてみていい?」
「いいけど今抜けないと」
すらっ。
「言っただろ……」
尻すぼみになるおっちゃんの発言、姿を現すまるで鏡面のような刀身。
それを見ていた周囲の人が息を呑んだその瞬間、刀がしゃべった。
「貴殿!拙者を抜刀するとはなかなかの強者と見受ける!我が名は日出国の珠玉の刀剣が1つ、『竹光』と申す。我らは強大な力を持つ刀剣ゆえに相応の力量を持つものにしか所有を認めないことになっている。我を抜刀することができたそれすなわち心技体全ての面において我を所有するに相応しいということが証明され」カチャッ。
「ありがと、よくわかんないけど返す」
と、ゴロゴロお店のおっちゃんに返した。
刀剣を抜刀できたことにも、刀剣がインテリジェンスウエポンだったことも、あんまり興味なさそうなゴロゴロにおっちゃんびっくり。
おっちゃんもう一度抜いてみようとするがびくともしない。
「なあゴロゴロ。おっちゃんもよくわかんねーがなんかすごい刀剣らしいじゃねーか。もっぺん話を聞いてやってはくれねーか」
「えー?持つとお菓子食べられないし……」
「それくらいならおっちゃんが持っててやるから、ほれ」
「それならいいけど」(もぐもぐ)
刀を受け取り、すらっ。
「てやんでい!人がしゃべってるときに何てことしやがるこのクソガキャァ!我を何だと思っていやがる!不変抜刀の『竹光』様だぞ!折れず曲がらず良く切れる。我1つ巡って小国が戦になったことも一度や二度じゃないのだぞ!そのような戦が二度と起こらないようよう所有者を厳選するのが『我ら』の努め。抜くことができたお前には相応の義務が発生するのだぞ!わかっているの」
「えい」(めきょ)
「のあいええええ!?なんで!?我が『竹光』の刀身が何故曲がる!?いや、それ以前に何故折れん!?これほどの力が込められたのに折れずに曲がるとは一体どのような力を込めたらこんなことができると」
「えい」(めきょ)
「治った!?なおった!やった、わーい、治ったぞ、『竹光』は元通りになりました。やっりました親方様、『竹光』はまだがんばれます!お国で私の活躍を見守っていてくださあああああいい」
「……」(もぐもぐ)
「……インテリジェンスウエポンってのもいろいろあるんだな」
とりあえず刀を納め、おっちゃんに返してその場を後にする。
「おっちゃんごめんね、さっきつい曲げちゃった。ボク買い取るよ」
「見たところ破損はないし構わんよ。買い手はこっちも探してみるから、もしいなかったら声かけるがいいかね」
「うん、いいよ」
そしてゴロゴロは市場を後にする。
「さあ、日出国の珠玉の刀剣、銘は『竹光』。その品質は不変抜刀、折れず曲がらず良く切れる。だがそれ故に所有者を刀剣自らが選ぶ。その所有者たる権利は心技体そなえた実力者のみ。我こそはというものはいるか」
ざわざわ
「さっき普通に曲がってたじゃん」「なぁ?」「んだ」
「シャーラップ!」
しかし、インテリジェンスウエポンが珍しいのか、周囲の人が寄ってきて『竹光』を見る。
そこでおっちゃん、竹光抜刀チャレンジ、1回銅貨10枚という商売を始める。
ゴロゴロみたいな子供に抜けたんなら楽勝だろと、大人達が抜こうとするが、全然抜けない。
「ぬおおおおおお!」「ふんぬううああ!」「ひぎいいいいい!」
「あ、抜くときに柄と鞘以外掴むのは禁止。何かにぶつけたり叩いたりも禁止だからね」
という言葉を後ろに聞きながら、ゴロゴロは市場を後にする。
最終更新:2017年08月20日 10:05