量子論入門講義第1回
物理の20世紀の2大革命の一つ、量子論について簡単に解説します。
普通の常識とは相容れない不思議な世界が実感出来るハズです。
数式はテキストで可能な限り使う事にします。
対象者はすべての人です。予備知識はそのつど説明するので不要ですが、物理や数学の経験があったほうがいいかも知れません。
では、早速講義に入ります。
量子論とは何か?なぜ出来たのか?そもそも
物理学って何?
そういう人のためにも古典力学の簡単な説明をしたいと思います。
どんな学問でも公理、原理、要請は存在します。
古典力学の基本要請は
- 系に2つの共役な変数が存在する。普通は一般化座標qと一般化運動量pに取る。
一般化座標というのは、デカルト座標に限らない座標たとえば曲座標で言えば角度φやθなどです。
一般化運動量というのは、角運動量なども含めた一般の運動量のことです。
解析力学を知っている人ならラグランジアンを一般化速度で微分したものが一般化運動量になるすなわち
p=∂L/∂qdot
も知っているかと思います。
ちょっと、始めてみる言葉があるという人もいるかも知れませんが、大切な事は
「これらの変数{p,q}の組をいくつか用いれば系の状態を記述できる」
この点に尽きると思います。
量子論入門講義第2回
前回のポイントは
「古典系の”状態”は{p,q}で与えられる」
という事でした。
ここから、任意の物理量を考えます。
物理量とは、たとえばエネルギーや角運動量などのことです。位置や運動量も同様です。
ここで、任意の物理量はやはりpとqの関数として与えられるとします。逆にそのような量を物理量といってもいいでしょう。
つまり
A=A(q,p)
さらに、A,p,qの時間発展を考えます。
時間発展とは、物理量が時々刻々と変化する事です。
よって、古典物理学の極めて一般的な指針は
1、系の状態を特徴づける変数{p,q}を導入する。
2、任意の物理量A=A(p,q)ど導入する。
3、A,p,qの任意の時刻における量を与える方程式を導入する。
以上が、古典論の目標とするところです。
具体的には、良く知られているNewtonの第2法則
F=dp/dt
や、ラグランジュ方程式があげられますが、極めて一般的に形式論を展開できるのはハミルトン形式でしょう。
すなわち、系のHamiltonian、H(これは、系の全エネルギーに等しい事がわかる)を与えるとp,qの時間発展が
dq/dt=∂H/∂p (1)
dp/dt=-∂H/∂q (2)
1,2より任意の物理量の時間微分について
dA(q,p)/dt=∂A/∂q×∂q/∂t+∂A/∂p×∂p/∂t
=∂A/∂q×∂H/∂p +∂A/∂p×(-∂H/∂q)
={A,H}
改めて
dA(q,p)/dt={A,H}(3)
ここで、{A,H}とはポアソン括弧といい
{A,H}≡∂A/∂q×∂H/∂p -∂A/∂p×∂H/∂q
で定義されます。
1,2,3
より、p,q,Aの時間発展を追う式が求められました。
これにより古典力学の形式論は一段落します。
次回はいよいよ量子論に入りたいと思います。
量子論入門講義第3回
前回の最後はいきなりハミルトン形式とか出てきて何だ~?と思った方もいるでしょうが、気にする事はありません。
要するに、古典論でわれわれの目指していたことは
「任意の時間の状態を決定する」
という事なのです。
ハミルトン方程式は、系のハミルトニアンHが与えられれば、微分方程式を解くことにより、そこから任意の時間の状態が決定されます。もちろん、現実問題を扱うとなると、方程式は非常に複雑になるので、厳密に解ける場合は限られています。それでも、”原理的には”
「ある時間の状態が与えられば、任意の時間の状態も決定可能である」
という事が、微分方程式の解の一意性から結論付けられます。
系のハミルトニアンを与えれば、未来永劫状態が決定できるのです。
つまり、古典論においては、宇宙は決定論的なのです。
ラプラスの悪魔とは、まさにこのことを言っているのです。
さて、では早速この講義のメインとなる量子論に入りたいと思います。最初に、なぜ量子論が必要になったのか話す必要がありますね。上で話した古典論は、完成された理論で、閉じています。もし、現実の世界がうまく作られていれば、古典論だけで話は済んだかもしれません。しかし、今世紀の始めごろ、古典論では説明のつかない現象がいろいろ発見されて、量子論が作られるに至ったのです。ここでは、いくつか問題を提示するだけにとどめておきます。興味のある方は量子力学の本を参照してください。
- ダブルスリットによる干渉実験
- 原子になぜ電子が落ち込まないのか
そして、古典論の敗北を決定付けたのが”ベルの不等式”というものです。
いずれにせよ、ここでわかってもらいたいのは
「古典論では説明のできない現象が”実験結果として”発見された」
という事です。
「古典論では説明できない」とはどういうことかというと、
それは、古典系の状態が定まらないということです。ただし、ミクロな現象の場合に限られます。
ミクロな現象では、系の状態を記述する変数pとqが同時に定まらない、と言う事もできます。
そして、量子論を決める基本仮定の枠組みではこれを原理にもってきます。
実は、量子力学といっても、色々な理論があるのですが、ここでは演算子形式で、量子化(古典系から量子系に移行する手法)には正準量子化を使います。他に良く使われるのはファインマンの経路積分というのがあるのですが、この講義では正準量子化で話をすすめます。
ですが、これから記述することは、量子論一般について述べることです。将来、どんな量子化の手法が現れたとしても、この原則に従うはずです。
量子論の仮定(1)
系を記述する変数{p,q}が同時に確定した値を取る事はない。
よって、”数値ではない”何か別なもの(演算子形式では演算子で)表す。
演算子というのは、関数やベクトルに作用して別の関数やベクトルを作るものです。
たとえば、量子論で重に使うのは、微分演算子(d/dx)、行列、普通の数、などです。
量子論の仮定(2)
物理量とは、pとqの関数すなわちA(p,q)のことである。
演算子形式では、pとqを演算子に置き換えます。
今回はとりあえずここまでです。
量子論入門講義第4回
前回のところまでは、割と容易に納得できたと思います。
次の仮定は”測定”に関する事です。
量子論の仮定(3)
物理量Aの測定とは、観測者が測定値aをひとつ得ることである。
ある物理系の状態にψという名前を付ける。
- aの値は同じψでも、測定のたびにバラつく
- しかし、その確率分布{P(a)}は、Aの関数形とψから一意的に定まる。
確率分布{P(a)}というのは、確率P(a)の各aに対する一覧表のことを言います。確率P(a)とはたとえば、サイコロだったら
P(1)=1/6
P(2)=1/6
などです。
物理量は定まらなくても、確率分布は決まるというわけです。
次に行きたいと思います。
量子論の仮定(4)
物理状態ψとは、物理量から確率分布への写像である。
すなわち
ψ:A(p,q) → {P(a)}
物理状態の違いとは、この写像の違いのことである。
物理量と状態を与えると、確率分布が決定するというわけです。
具体的に、演算子形式の量子論では、ψはヒルベルト空間上のベクトル |ψ> で与えられます。これについては詳しく後述します。
次回は、時間発展について話した後、演算子形式の量子論を具体的に話したいと思います。
量子論の理解のポイント
記事がなんとなく続きを書くモチベーションが起きないので、軽くポイントだけまとめとこう。
- 状態ベクトル|ψ>または、波動関数ψとは、系の情報を含むものである。って言っても抽象的だけど、コイツが量子論のカギ。
- 物理量の期待値を引き出したいなら、量子化した物理量A(p,q)をケットとブラでサンドイッチにしてやる。
Aの期待値≡<ψ|A|ψ>≡∫ψ*Aψdv
- 調和振動子とか、水素原子なんかの特殊関数は計算がめんどいから、結果だけ覚えててもおk。
ただし、生成消滅演算子による解法はエレガントかつ重要なのでやっておくべし。
関数とベクトルを同一視できることを理解することも大切。
最終更新:2008年04月28日 21:29