アルメリア王国領内に存在する遺跡。
都市と名が付いてはいるが、住民は存在しない。
しかし遺跡を訪れればそこには街並みがあり、そこを行きかう人々の姿が見られる。
住民と話をすることもできるが、夜明けと共に彼らは話した内容を忘れてしまう。
日が昇るごとに、まるで初対面のように話しかけてくるのである。
また、街中では『毎日同じことが起きる』。
井戸端で交わされる会話も、店舗の品ぞろえも、表通りで発生する事故さえも、
毎日毎日判を押したように何も変わらない。
怪我した子供は翌朝無傷で家を飛び出し、まったく同じ時刻に同じ場所で怪我をする。
カルペディエムは同じ一日をひたすら繰り返す街であり、
荷届け人が毎朝各戸に配る新聞は何年も前の日付を指し続けている。
今はもう王国地図に存在しない街の、かつての一日を永久にループしている。
繰り返すが、カルペディエムは都市ではない。
当時の様子を正体不明の特殊な魔法で保存し、再現し続ける、遺跡なのである。
シナリオ上の設定
遺跡を管理運営しているのは例によって
霊銀結社だが、
どのような術式が発動してどのように街を再構築しているのかは明らかになっていない。
結社に出来ることは魔法陣と地脈の流れを整備し、術式を維持し続けることのみである。
また本来この地にあった街の住人たちは、現在をもってなお行方不明という扱いになっている。
実際にはカルペディエムの街中で同じ一日を繰り返しているのだが、
彼らを生きた人間として扱って良いのかどうかは未だに結論が出ていない。
完全に都市の外とは時間の流れが隔絶しており、社会から取り残されている。
ある日突然、王国内の地方都市から連絡が途絶えた。
調査に訪れた王都の役人は、そこで毎日同じ出来事が起きる不思議な街の姿を目の当たりにすることとなる。
結社の識者も交えた議論の結果、当地は既に都市としての機能を果たすことはできないとし、
『一日都市』と名付けた遺跡として調査対象とすることが決定した。
幾度にわたって行われた調査で、数々の特異な事象が明らかになった。
街中の物をいくら破壊しようが、人や動物を傷つけたり殺してしまおうが、
毎朝5時きっかりを境に全てが元通りになる。
住民を都市の外に連れ出した場合でも、5時になった瞬間その場から消滅し、自宅のベッドの中に再配置される。
夜行性動物や路地裏の住人、盛り場など明け方でも活動している場所では、
『5時になった瞬間』の動きが再現されることとなる。
鼠を追い回す猫は両者とも走った状態で復元され、
酔客が落として割ったはずのグラスは空中に出現してもう一度落ちて割れる。
雨や風などについても同様の現象が見られた。
都市から持ち出した物品もまた、5時を過ぎると消滅して元の場所に戻る。
都市内では飲食も可能だが、同様に胃袋から消えてしまい、調査員は空腹に襲われることとなった。
調査書を都市で購入したペンとインクで記述すると、やはり明け方には内容が消えてしまう。
一方で、完全に同じ出来事を繰り返すとは限らないことも分かっている。
例えば外部の調査員が街の住民と話せば、それは本来『かつての一日』には存在し得ない会話のはず。
しかし住人はにこやかに会話に応じ、調査員の忠告に従って起きるはずの事故すら回避して見せた。
もっとも、翌日にはやはり会話の内容も話した事実さえも忘れ、事故に遭ったのだが。
では、外部から持ち込んだ素材を都市内の設備で加工したらどうなるか。
外から調達した食材を都市の竈で煮込んだ料理は、日を跨いでも元に戻らなかった。
都市内の食材と外部の食材を組み合わせた料理は、持ち込んだ素材の部分だけが復元を免れた。
外部の調査員が都市内で得た情報は、夜が明けても頭の中から消えることはなかった。
前述の調査書も、外部から持ち込んだインクで記述すれば日を跨いで保存できた。
ある調査員は「住人を殺害した結果」を確認するために襲撃を強行した。
首尾よく住人を殺害するも、抵抗に遭ってこちらも死亡。両者相討ちとなった。
夜が明けると殺された住人は自宅のベッドに復元されたが、調査員が生き返ることはなかった。
調査員の遺体は5時を超えても消えることなく残り続け、調査団が撤去するまで住人に恐怖を抱かせた。
また同様に外部から何かを持ち込んで都市内に放置しても、リセットされずにその場に残っていた。
こうした調査・検証の結果から、
▽リセット対象となるのは住人を含む『都市内に元からあった物体や現象』であり、
記憶も同様にリセットされることで何が起きようが翌日には「何も起こらなかった」ことになる。
▽外部から手を加えることで、次のリセットまでループから外れた行動をとることも可能。
▽外部から持ち込んだ物体や生命は、加工や死といった因果も含めてリセットの影響を免れる。
――などの情報が得られた。
一方で原因については謎が多く、結局何でこの都市がループしているのかは不明のままだった。
聞き込みしようにもわずか一日ですべてが振り出しに戻り、
同じ相手に同じことを何度も聞き返さざるを得なかったがために、
調査が遅々として進まなかったのである。
都市が丸ごと消滅するような「何か」が朝5時に発生し、
滅びを免れるために何者かが時間を逆行してループさせることで食い止めているのだとか、
強大な力を持った魔術師が自身の死を悟り、死なないためにループしているなど諸説が挙がったが、
少なくとも街ひとつ分の時間を操れる大魔術師がこの地に住んでいたことは「確認されていない」。
一日都市を遺跡として保存するよう指示したのは当時の宮廷魔術師
『創世の』バロールであるが、
反逆後彼に関する資料は出生録も含めて殆どが閲覧不可となり、この地とどういった関係があるのか知る者は居ない。
この奇妙奇天烈にして不可解極まるループ現象は、今をもってなお不可解のままである。
そしてループを打開したとして、それが都市の住人らにとって幸福な結末なのかもわからない。
停滞し続けてきた時の流れを取り戻すには、もうあまりにも年月が経ちすぎてしまった。
ゲームでの扱い
朝5時というのは、多くのソシャゲにおけるログインボーナスの更新タイミング。
つまりはシステム上における日付変更ラインである。
ゲーム内では、設定通り同じ一日をループする遺跡として登場する。
システムでも街扱いになっていないが、都市内には各種施設があり宿屋に泊まれば回復もする。
ただし翌朝宿の主人に話しかけると不法侵入扱いされる。宿代は財布に返却されている。
「チェックインした事実」がリセットされたためだろう。
またこの街では買い物をしても日本標準時で05:00を過ぎると買ったものが消滅する。
同時に消費したはずの
ルピが手元に戻ってくるので、買い物自体がリセットされたと解釈できる。
このため事実上、都市のアイテムを外に持ち出すことは不可能である。
一方で、購入した食料やポーションなどで回復したHPは、日を跨いでも戻ることはない。
この仕様を利用すると、実質無料で回復を行うことが可能なのである!
……とはいえ、カルペディエムで購入できるのは回復やせいぜいがバフアイテム程度なので、
本当に回復をケチりたい時くらいにしか活用の機会はない。
一応高額な全体回復アイテムも売っているので、エリクサー症候群のリハビリには良いかもしれない。
購入アイテムが消滅するまで最大24時間の猶予があるので、ダンジョンや
レイド攻略になら十分使える。
変わり種としては、返却されることを前提に店で買える一番良い装備や消費アイテムを有り金はたいて購入し、
推奨レベル超過のコンテンツを装備とアイテムの力でゴリ押し攻略するといった使い方も出来る。
ちょっと背伸びしたダンジョンにどうしても挑戦したい時などに頼ってみるのも一つの手だろう。
都市内でアイテムを売り払って得た利益も翌朝には売ったアイテムと引き換えに消滅するが、
その利益をカルペディエム以外の場所で使い切り、一文無しになっていた場合、
なんと驚きの「所持金マイナス」という表示になる。借金という扱いだろうか。
これはブレモン全体で見ても稀有な数字であり、カルペディエム以外ではなかなかお目にかかれない。
当然ルピを利用するあらゆる施設が使えなくなるため不便極まる状態なのだが、
極まったやり込みプレイヤーの中にはマイナス所持金の数字をどこまでを膨らませられるか、
借金の多寡を競う「マイナス長者番付」なる謎のチャレンジに挑む者たちも居る。
高効率な換金アイテムを如何にして大量収集し、売却利益をたった一日でどうやって使い切るか、
無駄に洗練されたRTAチャートが考案され、何人もの挑戦者たちが私財を溶かしていった。
傍目に見れば愚者以外の何物でもないが、ブレモンプレイヤーはそういう連中である。
ついでに運営も悪ノリして借金王をランキング形式で公開した。運営もそういう連中である。
ある時有名配信者がトライしたことでマイナス長者番付のブームが巻き起こり、
誰でも入手できる換金アイテムが市場で軒並み高騰し、NPC販売価格の数百倍の価格で取引される事態が発生した。
相対的なルピの価値暴落によって国内サーバーは一時ハイパーを凌ぐウルトラインフレに突入。
アルメリア商工業協同組合が換金アイテムの流通調整を行うことで致命的な経済破綻は免れたが、
ある意味カルペディエムの性質を最も有効活用したのは、この時上手く特需を売り抜けて一財産築いた者たちかも知れない。
カルペディエムの謎はシナリオでも特に明らかになることはなく、
当地で発生するクエストをコンプリートしてもループが解決するわけではない。
街中には非売品かつ希少で強力な装備が隠されていたりするので、
これを永続的に持ち出す方法が何かしらあるはずだが、今のところ見つけ出した者はいない。
今後のパッチで解決編が実装されるとの噂もあるが、恐らく単に
開発が何も考えていないだけだろう。
開発はそういう連中である。
そんなわけで、本当に無意味に内部での行動がリセットされるというだけの遺跡なのだが、
プレイヤー間ではどうにかして悪用してやろうと検証が進められている。
前述の活用法もそうした試行錯誤の中で生み出されたものだが、開発の想定内かどうかは神のみぞ知る。
また、システム上「都市内で得たものは全て翌朝リセットされる」ことになっているためか、
カルペディエムの敷地内に居る間に行ったあらゆる取引が翌朝5時になかったことになる。
これはNPCとの取引に限らず、プレイヤー間取引や、果ては運営との取引(=課金)すら対象となった。
5時を境に課金額が払い戻され課金コンテンツを没収される、あからさまなバグなのだが、
間違いを認めないことに定評のある運営はあろうことかこれを「世界観を反映した仕様です」と主張。
常にバグの不正利用を目論む悪質プレイヤーたちに格好のエサを与えることとなった。
例えば高額な課金コンテンツを一日限定で無料で楽しむなど可愛いもので、
数百万の現金を投入してクリスタルを買い漁り、ガチャを引きまくってレア排出の確率を公表したり、
イベント特攻キャラを引いて24時間以内にイベントをクリアして報酬丸儲けなど、
運営にとっては非常に頭の痛い「活用」のされ方をした。
結局運営は早々に不具合であることを認め、詫び石を配布してバグを修正。
現在はNPC取引のみリセット対象となっている。
一連の事件は運営にとって思い出したくもない汚点となった為か、現在でもタブーとなっている。
フォーラムで「カルペディエム」と入力すると「******」と表示される。
マップの正式名称なのに放送禁止用語扱いの雑過ぎる言論統制は多くのプレイヤーの失笑を誘った。
最終更新:2020年07月01日 11:14