じゆうきょうレリジオ
あやつは千を超える戒めの呪具で総身を覆い、指一本動かせず、声を発することも能わぬ。
そんな状態を幾百年と続け、なおも不自由なく生を謳歌しておる。
束縛をものともしない振る舞いこそが、比類なき自由の証明なのじゃ。
……いや意味が分からんわ。ただの気合入った変態じゃろアイツ。
きもちわるぅ……
足先から頭頂部に至るまで拘束衣と目隠し、無数の鎖やベルトでギチギチに覆われており、
容姿はおろか体格や性別すら判然としない。辛うじて人型であることだけは分かる。
顔があるであろう部分にはボールギャグが嵌まっていて喋ることもできず、
コフーコフーという不気味な呼吸音だけが常に声の代わりに発せられている。
魔神でもあるが、特徴の魔法器官がどこなのか、翼や角の有無も誰も知らない。
一切合切の自由を封じられた姿をしているが、生活には支障がない。
というのも、レリジオの傍には常に配下の魔物が控えており、
移動は配下に抱えられて運ばれ、食事はドロドロのペーストを配下が口に注いでくれる。
声は出せないが、テレパシーのような
魔法を用いて脳内に直接語り掛けるため意思疎通も可能。
戦闘の際は、簀巻きになったレリジオを配下が掴んで振り回すことで攻撃を行う。
防御においても配下は容赦なくレリジオを盾にするが、
魔族を殺せる攻撃に幾度晒されてもその身体には傷ひとつ入らない。
純粋にあふれ出る魔力によって肉体強度が常軌を逸しているためである。
これら、生き物としての尊厳すら危ぶまれる扱いの全ては、
レリジオ本人が望んで行っているもの。
「真の自由とは束縛されないことではなく、束縛されてもなお自由であること」
という信条のもと、自らの自由の証明として敢えて束縛を受けている。
力自慢が膂力の証として担ぎ上げる荷物の重さを競う価値観と似ているかもしれない。
事実、数百年にわたって続けられるこの奇行は、配下の者たちに崇敬の念をもって受け入れられている。
しかしながらレリジオにとっては「配下に生殺与奪を握られる」ことも束縛のうちであるため、
妙なジレンマに囚われており、そのしがらみすらも束縛として受け入れている。
意味が不明である。
ミズガルズにおいても実は似たような概念が存在し、
古中世の大陸国家では「手を使えなくても配下に世話させるから問題ない」という、
権力と財力の顕示のために手の爪を邪魔になる程伸ばし、その長さを誇ったという。
魔族、特に魔神にはこのような自らのアイデンティティに命よりも重きを置く者が多い。
血で血を洗う魔族社会における存在証明とは、『比類なき』、『力』。
それは単純な暴力に留まらず、何者にも侵されぬ"我を通す力"を指す概念と言えよう。
……と、ここまでもっともらしい理屈をこねてきたわけだが、
レリジオ本人は十重二十重に自らを戒める束縛に、明らかに興奮している。
不気味な呼吸音も興奮のあまり息が上がっているためである。
レリジオはこうも語る。
「真のマゾヒストは単なる痛みや苦しみに快楽を見出さない。
求むるは、束縛され、地に仰臥し、他者の匙加減で容易く命を落とし得るという絶望感。
苦痛は踏みにじられた絶望を直接的に引き出すためのスパイスに過ぎない」
本当に気持ち悪いよ。
とまぁこのように、ありとあらゆる方法で自身の尊厳を自ら踏みつけ、
降りかかる絶望を甘露のごとく舌上で転がしているのである。
リスクを快楽に変換し、望んで破滅に身を投げる者はヒトにも居るが、
レリジオはその常軌を逸した肉体と精神の強度故に滅びることなく生存している、
稀有で先鋭化し切った異常性癖者と言えよう。
そんな性癖であるためか、ニヴルヘイムの諸侯であるにもかかわらず、
奇界“ウヴァーラ”のほぼすべての魔神と敵対している。
絶望感を高めるためにあえて四面楚歌の状況に身を置いていると思いきや、
シンプルに気持ち悪いから嫌われている。
ゲーム上では、ニヴルヘイムエリアに到達したブレイブ達に対し、
下等生物に踏みにじられる絶望を得るべく敵対する。
もちろん当人はまったく動けないため配下の魔族『鉄鎖のカルテナ』に抱えられて登場。
カルテナの剣であり盾となる『専用装備』という尊厳ぶん投げな扱いになっている。
極めて高いDEF(物理防御)・MND(魔法防御)を持った本人の肉体に加え、
防御ステータスをカルテナの攻撃力に変換する振り回しの一撃が強烈。
一方で、弱体化耐性が皆無であり、即死以外のどんなデバフも通る。
が、これは罠。
弱体効果の数に応じてべらぼうに攻撃力が上昇する『高揚』バフを勝手に獲得し、
デバフを重ねれば重ねるほど興奮して手の付けられない状態へ強化されていく。
カルテナを眠らせたり石化させても勝手に跳ね回って攻撃してくる。
攻略にはデバフの数を絞り、少ない弱体化で最大限攻撃の勢いを削ぐ戦略が必要になる。
また何も攻撃せず数ターン
ATBゲージのオーバーチャージを続けると、
目に見えて興奮の度合いが下がっていく。放置プレイは専門外なのだろう
勝利するとレリジオ統治下の土地における通行権を獲得できるほか、
『ヒトごときに好き勝手扱われる絶望』を楽しみたいとの本人の希望により、
大剣枠の武器として『自由卿レリジオ』が入手できる。
凄まじい防御力の補正値が得られるものの、
装備しているとフゴフゴうるさい上にテンションが下がるという謎のデバフが付与される。
エンチャントして炎とかを纏わせると悦びで豚のような悲鳴を上げる。
特に意味はないが、嫌な呪いの武器である。
テンションは物理攻撃力にしか影響しないため、
魔法型
ビルドにおいて最低限要求STRさえ満たせば盾代わりの武器として有用。
鉄壁の防御が得られるうえ、各種デバフを勝手に吸ってくれるので装備者はまず死ななくなる。
デバフ数依存で攻撃力を高める変態バフは健在で、混乱や行動不能にさえ気を付ければ無類の強さを誇る。
運用する際にはデバッファーと組ませ、パーティーアタックでわざとデバフを当ててやるのが良いだろう。
状態異常防止系のアクセサリーがほぼ必要なく(優先すべき耐性は混乱のみ)、
武器枠もレリジオが固定装備になっているのでパーティ内で装備を取り合う心配もない。
ビルドの完成までにほとんど投資の必要ない、お財布にやさしい優良パートナーと言えよう。
フィールド上でも常にフゴフゴ言っててマジでうるさいのが玉に瑕だが。
っていうか致命傷だが。
最終更新:2022年12月13日 03:49