SF百科図鑑
Year's Best Science Fiction
最終更新:
匿名ユーザー
-
view
September 09, 2004
Year's Best Science Fiction #16
正直言ってこのシリーズ、あまりに分厚くてとても全部読む気になれませんが、収録作のレベルの高さや網羅性に関してはこのシリーズを上回るものはないため、どうしても一目置かざるを得ません。
本第16巻は、他にもイーガン「祈りの海」スターリング「タクラマカン」スワンウィック「機械の鼓動」チャン「あなたの人生の物語」といった受賞作が収録されています。全部で24編、大きな判に小さめの活字で608ページ。
受賞作以外は、ぼちぼち暇なときに少しでも読みたいと思います。
本第16巻は、他にもイーガン「祈りの海」スターリング「タクラマカン」スワンウィック「機械の鼓動」チャン「あなたの人生の物語」といった受賞作が収録されています。全部で24編、大きな判に小さめの活字で608ページ。
受賞作以外は、ぼちぼち暇なときに少しでも読みたいと思います。
トラックバックURL
この記事へのコメント
1. Posted by SILVERING September 20, 2004
16:54
GWYNETH JONES "LA
CENERENTOLA"「シンデレラ」
英国協会賞受賞作、読了。
SFの舞台設定で書かれた教訓的な幻想小説。
遺伝子工学をはじめとする科学技術が異常に進歩し、魔法が現実となった未来で、遺伝子工学的に作った娘を連れたレスビアンのアメリカ人夫婦が、ヨーロッパ周遊中に、クローンの美人の双子娘とみにくい末娘を連れたイギリス人の女性と出会う。主人公は、この末娘に興味を惹かれるが、どうも虐げられているらしい。しかも、この娘には知り合った観光客によからぬ誘いかけをするという悪い噂があった&&。そしてある日、主人公は、双子の美人姉妹が文字通り消えてなくなるのを目撃する&&。
後で粗筋を挙げるが、ネタをばらすと、この消滅事件に関しては、結局合理的説明はないままに終わる。要するに、作者の意図は『SFミステリ』にはない。幻想は幻想のままで終わる。語り手の幻覚だったとの説明も捨て切れない。
次に、末娘の謎であるが、これについても明確な説明はない。主人公は、「母親が幼女愛好者で、双子姉妹に飽き、末娘に性的いたずらをするようになっており、だから末娘は観光客にも同じことを求めるのだ」と考えるが、何の証拠もない。単なる主人公の妄想の可能性も高い。
結局、作者は真相などどうでもよく、そのような極限設定の未来社会において、主人公が遭遇した出来事を契機として主人公の内面に生じる変化や思考を描くこと、それを通じて、シンデレラストーリーの皮肉な再話を行うことに主要な関心があったと解釈できる。そしてその主要な主張は、科学技術で魔法を実現しても、しょせん『カボチャの馬車』に過ぎず、結局どんなに醜くても自然なものが最も魅力的で価値が高い、という自然回帰主義に他ならない。
技法、着想は独創的なのだが、肝心の究極的主張がやや陳腐でひねりがないのは残念である。
テーマ性 ★★
奇想性 ★★★★
物語性 ★
一般性 ★
平均 2点
英国協会賞受賞作、読了。
SFの舞台設定で書かれた教訓的な幻想小説。
遺伝子工学をはじめとする科学技術が異常に進歩し、魔法が現実となった未来で、遺伝子工学的に作った娘を連れたレスビアンのアメリカ人夫婦が、ヨーロッパ周遊中に、クローンの美人の双子娘とみにくい末娘を連れたイギリス人の女性と出会う。主人公は、この末娘に興味を惹かれるが、どうも虐げられているらしい。しかも、この娘には知り合った観光客によからぬ誘いかけをするという悪い噂があった&&。そしてある日、主人公は、双子の美人姉妹が文字通り消えてなくなるのを目撃する&&。
後で粗筋を挙げるが、ネタをばらすと、この消滅事件に関しては、結局合理的説明はないままに終わる。要するに、作者の意図は『SFミステリ』にはない。幻想は幻想のままで終わる。語り手の幻覚だったとの説明も捨て切れない。
次に、末娘の謎であるが、これについても明確な説明はない。主人公は、「母親が幼女愛好者で、双子姉妹に飽き、末娘に性的いたずらをするようになっており、だから末娘は観光客にも同じことを求めるのだ」と考えるが、何の証拠もない。単なる主人公の妄想の可能性も高い。
結局、作者は真相などどうでもよく、そのような極限設定の未来社会において、主人公が遭遇した出来事を契機として主人公の内面に生じる変化や思考を描くこと、それを通じて、シンデレラストーリーの皮肉な再話を行うことに主要な関心があったと解釈できる。そしてその主要な主張は、科学技術で魔法を実現しても、しょせん『カボチャの馬車』に過ぎず、結局どんなに醜くても自然なものが最も魅力的で価値が高い、という自然回帰主義に他ならない。
技法、着想は独創的なのだが、肝心の究極的主張がやや陳腐でひねりがないのは残念である。
テーマ性 ★★
奇想性 ★★★★
物語性 ★
一般性 ★
平均 2点
2. Posted by silvering September 20, 2004
17:06
以下があらすじです。冒頭だけ訳しています。
あるシンデレラ・ストーリー グウェニス・ジョーンズ
(作者)
白い猫(ティプトリー賞)
7つの物語と一つのおとぎ話(世界幻想文学大賞)
他に長編「北風」「フラワーダスト」「逃亡計画」「聖なる忍耐」「フェニックス・カフェ」があり。
1幕 学者ジプシー
その姉妹を見たとき私が最初に考えたのは、彼らが単純に完璧すぎる、ということだった。寸分たがわぬ双子に違いない。年齢は十六歳ほど。背は高いが高すぎはせず、肌は日の光を受けて金色に輝き、手足は丸くかつ細長く、髪は長い金色、瞳は青。互いに腕をからめ、ささやきをかわしながら、弾むように歩いてきた。その優雅な身のこなしまでもが瓜二つだ。一人が髪をかきあげれば、もう一人が無垢の白いショーツから虫を払いのける。一つ一つの動作がもう一人の鏡像だった。ありえないほど完璧! それから私は母親が後ろを歩いているのを見て(彼女らの母親に違いない、他の関係ではありえないぐらいよく似ていたのだ)、理解できたような気がした。その更に古い原型──あるいは、オリジナルというべきか──は、とても見栄えのよい、脚の長いブロンドの美女で、平均的な肉体と少し日焼けした肌を持っていた。サングラスに隠れた瞳の色はまぎれもない青。だがもっと仔細にみると──やや薄い唇、角張った顎。スタイルも厳密には均整がとれていない──その事実が、傷一つない美にやや足りない程度の容姿に何かを付け加えていた。
私はなるべく見ないようにした。とはいえむろんこの娘たちは口をあんぐり開けて賞賛されることには慣れているに違いないが。それから私は、嬉しいことに、この三人が私のほうに近づいてきていると悟った。年上の女が話しかけようとした。私は歓迎の微笑を浮かべて上体を起こした。
スーズとボビと私は夏の間、ヨーロッパにいた。この数年来の私たちの生活パターンだった。冬にはニューメキシコに行き、私は哲学を教え、スーズはソフトウェアのエンジニアとして働くのだ。
夏のたびに私たちは大西洋を渡った。私たちはまだここに定住所を持たないものの、あちこち見歩いていた。私たちの旅行は一連のオーディションのようなものだった。今年の私たちは、地中海をわれらが夏の家と思い定めていた。だが私たちはコート・ダズアのあまりに混んだ村祭りから逃げ出してきていた。フランスのリヴィエラのトロップ・ドゥ・モンドへ。
(以下は要約)
私たちアメリカ人親子三人(ボビが私シアとスーズの娘)に、この三人のうち年長の女が話しかけてきた。ボビに興味を持ったらしい。女の名はローラ。姉妹はセリーヌとカルメン。イギリス人の親子だ。
彼女は私たちを夜の祭に誘って、去っていったが、その時、一人の少女が後をついていくのを見つけた。ローラの呼びかける声から、末娘のマリアナであることが分かった。
その夜、私たちは退屈し、結局、祭に出かけた。
セリーヌとカルメンは男たちとフラメンコを踊っていた。そこで、ローラの話から、私の予想通り、彼女のクローンだとわかった。彼女の夫が無精子症であったため、クローニングをし、胚を彼女自身の子宮で育てたそうだ。ちなみに、マリアナは離婚後、別の男との間に生んだ娘だそうだ。
何を隠そう、私は女である。ボビは女同士の遺伝子接合で作った子なのだ。ちなみに、胚を育てて生んだのは私のほうである。私がこの話をローラにすると、彼女はボビに興味を失ったようだった。彼女は要するにアメリカの遺伝子工学に興味があっただけらしい。
マリアナがいつのまにかいなくなっていた。ローラに尋ねると、子守のジャーメインのところに戻したと言うことだった。「あの子は祭りが嫌いなのよ」という。しかし、本当だろうか? 何かローラの機嫌を損ねて戻されたのではないか、と私は思った。
可愛そうなシンデレラ。私はマリアナの胸中を思った。
しばらくして、マリアナがシャンプーの瓶を持ってきて、忘れたでしょうと言った。本当は私ではなくほかの誰かを探しているようだ。それに彼女は風呂の反対側から来た。見え透いた嘘だ。私が誰を探しているのときくと、友達だと答えた。一緒にロケットを作っているんだと。そして私に近づいてきて、瓶に指を突っ込んで、粘液のついた指を突き出した。私が慌てて跳びすさると、マリアナは去っていった。マリアナのひわいな感じのする動作が私には耐えられなかった。
私はボビに科学について初歩的な問答をしながら、基礎的な素養をつけさせようと努力している。スーズはまだ早いと考えているようだが、ボビは興味を持っている。
私がワインを買いに行き、女主人と立ち話しているうちに、マリアナの話になった。マリアナについて彼女たちは「ラ・セネラントラ」つまりシンデレラと呼んでいるらしい。一人だけ不細工で、クローン技術の失敗だ、可哀想だと。そして、彼女がここにいるのは、山登りのカップルを探しているためらしい。彼女がカップルといるときに、あることをした、あるいは求めた、それを恐らくカップルの女性のほうが恥じて、逃げ出したようだ。
私はスーズとこのことを話し、マリアナが虐げられていることや何かおかしなところがあるのは間違いなさそうだが、どうすることもできないし、私たちは滞在する土地を探すために移動しなければならないので、それ以上かかわりあうことをやめて出発することになった。
2幕 シンデレラと姉妹たち
私たちはサンタマルガリタに移動した。ホテルの中庭を案内されているとき、私はマリアナの姿を見てびっくりした。
翌日、浜辺に出ていると、ブラウン一家の姿があった。私が近づいていくと&&突然、クローンの姉妹の姿が消えた! 私がそのことをローラにきいても、ローラはとぼけて取りつく島がなかった。
翌日、ブラウン一家はチェックアウトしようとしていたが、そこでも私は、クローン姉妹のからだが突然溶けて消えるのを目撃した。
私はブラウン一家が出た後、受付の女性に見たかときいた。しかし彼女は平然としている。二週間前にもホログラムの亡妻を連れた男が来たらしい。また、大病を遺伝子治療で治した少年を連れた一家が来るが、夜遠出して門限に遅れた少年は何らかの動物に変身しており、ジャンプして鼻でベルをならしたという。しかし、ブラウンがどういうトリックを使ったのか、それともクローンの娘が本当に消える能力があるのかは分からずじまいだった。
私は、スーズとボビが海に行っている間に、街に出かけた。そこでマリアナの姿を見かけ、追った。私はローマ宮殿の中で追いつき、問い詰めた。マリアナはローラの伝言を頼まれてきたと言う。「ほっといてくれ、追わないでくれ」と言っているそうだ。
私は直感的に悟った。ローラは大人を愛せない人間なのだと。そして二人の双子の姉妹が年を取るにつれ、密かな愛欲の対象がマリアナになったのだ。あたかも王子の目にシンデレラが魅力的に見えたように。
私はマリアナに、二人の姉は一緒に行くのかと尋ねる。マリアナは「あの二人はもう長くないわ」という。「元いたところに戻される」だろうと。それ以上、マリアナは語らずに去っていった。
挿入曲:哲学者の夢
私たちはイタリアに小さなホテルを見つけて滞在している。科学技術が進歩し、不可能なことがない現代。すべての魔法が可能になっている。私たちはきらびやかな科学技術の魔法にとりかこまれている。かぼちゃの馬車やきらびやかな衣装たちに。
しかし私はブラウン一家のことを考え、自分たちのことを考える。あの双子の姉妹に関するローラの話が真実かどうかは分からない。しかしいずれにしろ、彼女はあの完璧なお人形に飽き飽きしている。彼女たちも自分がとってかわられたことを知っている。だからあのとき、彼女たちは抵抗しながらも溶けて消えたではないか。あれこそ、シンデレラのマリアナの望んだことではなかったか。母と言うすべての子がまず求める王子を我が手にするために。そうして、マリアナは勝ったのだ。
フィナーレ
私たちはボビを愛しており、ボビに飽きることは考えられない。だが、この休暇で私たちの関係に変化が生まれたようだ。私がスーズに飽きたときどうなるだろう? スーズが少し遠くにいる感じがした&&そして一瞬、ボビが二人になったような気が&&。このまま私たちはそれぞれのボビを抱えて、それぞれの道を行くのだろうか? そうだとしてもこれ以上の幻影はもう要らない&&。
私たちは19世紀の幻影を撃退し、魔法を手に入れる代わりに、もっと危険なものを呼び戻したのではないか? このまま欲望に任せて世界に広がっていくうちに、私たちはあの姉妹のように消えてしまうのではないか? 舞踏会のドレスのように、かぼちゃの馬車のように&&もちろん、シンデレラのようにガラスの靴すら残すこともなく、跡形もなく&&。
あるシンデレラ・ストーリー グウェニス・ジョーンズ
(作者)
白い猫(ティプトリー賞)
7つの物語と一つのおとぎ話(世界幻想文学大賞)
他に長編「北風」「フラワーダスト」「逃亡計画」「聖なる忍耐」「フェニックス・カフェ」があり。
1幕 学者ジプシー
その姉妹を見たとき私が最初に考えたのは、彼らが単純に完璧すぎる、ということだった。寸分たがわぬ双子に違いない。年齢は十六歳ほど。背は高いが高すぎはせず、肌は日の光を受けて金色に輝き、手足は丸くかつ細長く、髪は長い金色、瞳は青。互いに腕をからめ、ささやきをかわしながら、弾むように歩いてきた。その優雅な身のこなしまでもが瓜二つだ。一人が髪をかきあげれば、もう一人が無垢の白いショーツから虫を払いのける。一つ一つの動作がもう一人の鏡像だった。ありえないほど完璧! それから私は母親が後ろを歩いているのを見て(彼女らの母親に違いない、他の関係ではありえないぐらいよく似ていたのだ)、理解できたような気がした。その更に古い原型──あるいは、オリジナルというべきか──は、とても見栄えのよい、脚の長いブロンドの美女で、平均的な肉体と少し日焼けした肌を持っていた。サングラスに隠れた瞳の色はまぎれもない青。だがもっと仔細にみると──やや薄い唇、角張った顎。スタイルも厳密には均整がとれていない──その事実が、傷一つない美にやや足りない程度の容姿に何かを付け加えていた。
私はなるべく見ないようにした。とはいえむろんこの娘たちは口をあんぐり開けて賞賛されることには慣れているに違いないが。それから私は、嬉しいことに、この三人が私のほうに近づいてきていると悟った。年上の女が話しかけようとした。私は歓迎の微笑を浮かべて上体を起こした。
スーズとボビと私は夏の間、ヨーロッパにいた。この数年来の私たちの生活パターンだった。冬にはニューメキシコに行き、私は哲学を教え、スーズはソフトウェアのエンジニアとして働くのだ。
夏のたびに私たちは大西洋を渡った。私たちはまだここに定住所を持たないものの、あちこち見歩いていた。私たちの旅行は一連のオーディションのようなものだった。今年の私たちは、地中海をわれらが夏の家と思い定めていた。だが私たちはコート・ダズアのあまりに混んだ村祭りから逃げ出してきていた。フランスのリヴィエラのトロップ・ドゥ・モンドへ。
(以下は要約)
私たちアメリカ人親子三人(ボビが私シアとスーズの娘)に、この三人のうち年長の女が話しかけてきた。ボビに興味を持ったらしい。女の名はローラ。姉妹はセリーヌとカルメン。イギリス人の親子だ。
彼女は私たちを夜の祭に誘って、去っていったが、その時、一人の少女が後をついていくのを見つけた。ローラの呼びかける声から、末娘のマリアナであることが分かった。
その夜、私たちは退屈し、結局、祭に出かけた。
セリーヌとカルメンは男たちとフラメンコを踊っていた。そこで、ローラの話から、私の予想通り、彼女のクローンだとわかった。彼女の夫が無精子症であったため、クローニングをし、胚を彼女自身の子宮で育てたそうだ。ちなみに、マリアナは離婚後、別の男との間に生んだ娘だそうだ。
何を隠そう、私は女である。ボビは女同士の遺伝子接合で作った子なのだ。ちなみに、胚を育てて生んだのは私のほうである。私がこの話をローラにすると、彼女はボビに興味を失ったようだった。彼女は要するにアメリカの遺伝子工学に興味があっただけらしい。
マリアナがいつのまにかいなくなっていた。ローラに尋ねると、子守のジャーメインのところに戻したと言うことだった。「あの子は祭りが嫌いなのよ」という。しかし、本当だろうか? 何かローラの機嫌を損ねて戻されたのではないか、と私は思った。
可愛そうなシンデレラ。私はマリアナの胸中を思った。
しばらくして、マリアナがシャンプーの瓶を持ってきて、忘れたでしょうと言った。本当は私ではなくほかの誰かを探しているようだ。それに彼女は風呂の反対側から来た。見え透いた嘘だ。私が誰を探しているのときくと、友達だと答えた。一緒にロケットを作っているんだと。そして私に近づいてきて、瓶に指を突っ込んで、粘液のついた指を突き出した。私が慌てて跳びすさると、マリアナは去っていった。マリアナのひわいな感じのする動作が私には耐えられなかった。
私はボビに科学について初歩的な問答をしながら、基礎的な素養をつけさせようと努力している。スーズはまだ早いと考えているようだが、ボビは興味を持っている。
私がワインを買いに行き、女主人と立ち話しているうちに、マリアナの話になった。マリアナについて彼女たちは「ラ・セネラントラ」つまりシンデレラと呼んでいるらしい。一人だけ不細工で、クローン技術の失敗だ、可哀想だと。そして、彼女がここにいるのは、山登りのカップルを探しているためらしい。彼女がカップルといるときに、あることをした、あるいは求めた、それを恐らくカップルの女性のほうが恥じて、逃げ出したようだ。
私はスーズとこのことを話し、マリアナが虐げられていることや何かおかしなところがあるのは間違いなさそうだが、どうすることもできないし、私たちは滞在する土地を探すために移動しなければならないので、それ以上かかわりあうことをやめて出発することになった。
2幕 シンデレラと姉妹たち
私たちはサンタマルガリタに移動した。ホテルの中庭を案内されているとき、私はマリアナの姿を見てびっくりした。
翌日、浜辺に出ていると、ブラウン一家の姿があった。私が近づいていくと&&突然、クローンの姉妹の姿が消えた! 私がそのことをローラにきいても、ローラはとぼけて取りつく島がなかった。
翌日、ブラウン一家はチェックアウトしようとしていたが、そこでも私は、クローン姉妹のからだが突然溶けて消えるのを目撃した。
私はブラウン一家が出た後、受付の女性に見たかときいた。しかし彼女は平然としている。二週間前にもホログラムの亡妻を連れた男が来たらしい。また、大病を遺伝子治療で治した少年を連れた一家が来るが、夜遠出して門限に遅れた少年は何らかの動物に変身しており、ジャンプして鼻でベルをならしたという。しかし、ブラウンがどういうトリックを使ったのか、それともクローンの娘が本当に消える能力があるのかは分からずじまいだった。
私は、スーズとボビが海に行っている間に、街に出かけた。そこでマリアナの姿を見かけ、追った。私はローマ宮殿の中で追いつき、問い詰めた。マリアナはローラの伝言を頼まれてきたと言う。「ほっといてくれ、追わないでくれ」と言っているそうだ。
私は直感的に悟った。ローラは大人を愛せない人間なのだと。そして二人の双子の姉妹が年を取るにつれ、密かな愛欲の対象がマリアナになったのだ。あたかも王子の目にシンデレラが魅力的に見えたように。
私はマリアナに、二人の姉は一緒に行くのかと尋ねる。マリアナは「あの二人はもう長くないわ」という。「元いたところに戻される」だろうと。それ以上、マリアナは語らずに去っていった。
挿入曲:哲学者の夢
私たちはイタリアに小さなホテルを見つけて滞在している。科学技術が進歩し、不可能なことがない現代。すべての魔法が可能になっている。私たちはきらびやかな科学技術の魔法にとりかこまれている。かぼちゃの馬車やきらびやかな衣装たちに。
しかし私はブラウン一家のことを考え、自分たちのことを考える。あの双子の姉妹に関するローラの話が真実かどうかは分からない。しかしいずれにしろ、彼女はあの完璧なお人形に飽き飽きしている。彼女たちも自分がとってかわられたことを知っている。だからあのとき、彼女たちは抵抗しながらも溶けて消えたではないか。あれこそ、シンデレラのマリアナの望んだことではなかったか。母と言うすべての子がまず求める王子を我が手にするために。そうして、マリアナは勝ったのだ。
フィナーレ
私たちはボビを愛しており、ボビに飽きることは考えられない。だが、この休暇で私たちの関係に変化が生まれたようだ。私がスーズに飽きたときどうなるだろう? スーズが少し遠くにいる感じがした&&そして一瞬、ボビが二人になったような気が&&。このまま私たちはそれぞれのボビを抱えて、それぞれの道を行くのだろうか? そうだとしてもこれ以上の幻影はもう要らない&&。
私たちは19世紀の幻影を撃退し、魔法を手に入れる代わりに、もっと危険なものを呼び戻したのではないか? このまま欲望に任せて世界に広がっていくうちに、私たちはあの姉妹のように消えてしまうのではないか? 舞踏会のドレスのように、かぼちゃの馬車のように&&もちろん、シンデレラのようにガラスの靴すら残すこともなく、跡形もなく&&。