SF百科図鑑

ケイト・ウィルヘルム『鳥の歌いまは絶え』サンリオSF文庫

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匿名ユーザー

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2000年


9/22
「鳥の歌いまは絶え」さすがに暗いですな、はんぱじゃなく(笑)。笑いがない。次々と人が死ぬし、それも自殺とか病死とか(^^;)。ルグィンと比べると文章は軽くて読み易いけど、なにしろ暗いので(笑)。
それとプロットは弱いかも、地球が急に環境汚染で破滅に向かう部分もいまひとつ説得力がないし、大体なんで急に人が死に始めるのかもよくわからない。あと、本筋と関係あるのかないのかわからないいとこ同士の恋物語とか(途中で従姉が死んじゃうし)。クローニングの説明も今一つ突っ込みが足りず、あまり説得力がない。ストーリーも前半起伏が少ない。結構、穴は多いんじゃないかな、この作品。
ただ、クローンの連中がだんだん気味悪くなり始めて、これってどっちかというとホラー色が強いかも。今から面白くなるか?

9/23
「鳥の歌いまは絶え」★★★★1/2。面白かったです。三部構成だがそれぞれ独立している。第2部も案の定悲劇で終わるが、第3部でクローンの谷を去ったマークが帰ってくるエピローグ、予想通りクローンの谷は壊滅しており、有性生殖で一から文明を再興するマークの谷の描写で終わる。とにかく平気で次々、人が死んだり「生殖要員」にされたりといった描写が淡々と続くところと、孤立した主人公の苦悩の描写がこの作品の大部分で、さすが暗い。技巧性はなく筆致は素朴なんだけど、前に読んだことのないタイプの小説。それと女性の登場人物の情念の描写が極めて個人的視点から語られる点が特徴か。たいてい、孤と全体の軋轢に悩み、ひとりで苦悩し堪えるというパターン。クローンの問題性についての切り込みはいささか表面的な感じがする。また破滅に至る過程の説得力もいまひとつ弱いので、1/2減点させていただいた。ストーリー自体は、2部、3部で十分盛り返したので、合格です。特に2部は秀逸な出来。

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