SF百科図鑑

シオドア・スタージョン『海を失った男』晶文社ミステリ

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December 05, 2004

シオドア・スタージョン『海を失った男』晶文社ミステリ

海を失った男でこっちは日本版オリジナル短編集。
(収録作)
ミュージック
ビアンカの手
成熟
シジジイじゃない
三の法則
そして私のおそれはつのる
墓読み
海を失った男
silvering at 17:58 │Comments(7)TrackBack(0)読書

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この記事へのコメント

1. Posted by slg   December 05, 2004 18:13
「ミュージック」
「一角獣・多角獣」が早川版になる際、カットされた幻の小品。音楽の魔力を扱った散文詩に近いものだが、魔術的に美しく不気味なイマジネーションを堪能できる。★★★1/2
「ビアンカの手」
スタージョンの奇想ファンタジーの真骨頂ともいうべき名作。短い美文の中に、不気味さと美しさが見事に結晶しており、一読忘れがたく、何度読んでも味わいがある。★★★★1/2
2. Posted by SLG   December 05, 2004 22:02
「成熟」
ホルモン異常で未成熟な精神と天才的才能を発揮する青年が異常を治療しようとするが、この青年に対して恋情を抱く女性医師と、この女性医師に恋情を抱く男性医師の三角関係に危機感を持ち中断。天才的な芸術的才能を発揮し一躍著名人となるが、突然消息をたつ。女性医師はこの青年を捜し出すが、青年は「芸術」を卒業し、成熟とは何かについて議論をめぐらしていた。女性医師はこの青年から屈辱的な質問をされ、逃げ戻る。数年後、この青年が末端肥大症の兆候を示している姿を偶然見た医師は、治療に赴く。青年は、成熟とは何かを自分なりに悟ったと語る&&。
一読びっくりの本格SFである。生物学的、精神医学的にかなり突っ込んだ議論が展開される。そして、成熟に関する結論が&&また、スタージョンらしく、完璧に決まっている。本格SFにして、人間性の本質をつく見事な純文学作品。巧いとしかいいようがない。★★★★★

「シジジイじゃない」
これまたぶっとんだ。後半の展開はディック的ともいいうるものだが、とにかくどうやったらこんな話を思いつくんだという発想の奇妙さ、見事さがスタージョン以外あり得ないものになっているのが凄い。驚天動地の大傑作。凄すぎる。★★★★★

&&しかし、これも「一角獣・多角獣」収録なのか。満点作品だらけじゃないか、なんて凄い本なんだ。


3. Posted by SLG   December 05, 2004 23:16
「三の法則」
3個体一組のエネルギー生物が再統合するために人間の3個体を結びつけようとするまでの四苦八苦をコミカルかつ純文学的に描いた怪作。とにかく着想が面白いし、SF部分の文体と純文学部分の文体の落差も効果的だ。スタージョンにしか書けない作品という点で他の作品と共通する。★★★★
4. Posted by SJG   December 05, 2004 23:17
この本を読んで初めて、何故作者が天才と呼ばれるのかが実感できた気がする。すげえわ、マジで。
5. Posted by slg   December 06, 2004 00:22
それでは、今から「そして私のおそれはつのる」を読みながら寝ます。
やっぱ若島先生、大学の授業に使うほどのスタージョニストだけあって、センスが違うわ。心底リスペクト。
6. Posted by SLG   December 06, 2004 02:16
「そして私のおそれはつのる」
何とも言い難い味のある作品。「ライ麦畑でつかまえて」の主人公を思わせるドンのキャラクターが何よりいい。ヨガもどきの手法による超能力をマスターし、主人公の少年を性を超越した心の交流のパートナーにしようとする老婦人。コンプレックスに苦しみながらこの老婦人を慕う少年。が、ある少女と恋に落ちたことから、この老婦人の嫉妬を買って&&という、オカルトネタを含みつつも極めて普通小説、青春小説色の濃い作品である。「ライ麦」と違い、この少年は最後に痛快に勝利する。スタージョンのモラル観、恋愛観のよく表れた作品だ。★★★★1/2
7. Posted by SLG   December 06, 2004 03:09
「墓読み」
スタージョン流奇想の精華ともいうべき佳編。オチがややあっさりし過ぎている気はするが、きれいにまとまっている。★★★★

「海を失った男」
集中では最も難解な作品だが、要するに火星で死を間近に迎えた遭難した宇宙飛行士の見る幻覚を描いた散文詩のような作品だろう。海に行く少年と宇宙に行く人類というアナロジーが渾然一体となって異様な迫力を生んでいる。バラードの60年代ニュ-ウェーヴ作品を先取りしたかのような作品だ。★★★★

読了。スタージョンは凄い。異様に読み応えのある充実の一冊。★★★★★
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