SF百科図鑑
マイクル・コニイ『カリスマ』サンリオSF文庫
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匿名ユーザー
1985.1.2
マイクル・コニイは七〇年代に現れたイギリスSF界で最高の小説家ではないだろうか。この小説を一夜で読み了え感動した今、僕は殆どコニイのミーハー的ファンになり変わってしまっている。すぐにでも『ハローサマー、グッドバイ』と『ブロントメク!』と『冬の子供たち』をまとめて買ってまとめて読みたい気分だ。すばらしいのだ。
しかも一人称小説なので感情移入しやすくかつ登場人物の心のひだまできめ細かに描かれているのですぐひきこまれてしまう。全くすばらしい。けなしたい所は一か所もない。ラストに不満があるがそれは小説技法上の問題ではなく作者の無慈悲さへの不満だ。これはもちろん読者に「ありえたかもしれぬもう一つの結末」を想像させ想いをかきたてる役割をはたす。現に僕はいま切ない想いでいっぱいだ。まったく心憎いばかりのテクニシャンであり非の打ち所がない。
まず、この作品中の「カリスマ」である女性スザンナにイカれてしまい、その死に打ちひしがれ、無実の罪に腹立たしさといらだちを覚え、異次元でのスザンナとの再会、実験の終了による再度の別れ、世界の均等化による再々会、そして世界の多岐化に伴うまたまたの別れ、で、結局スザンナは存在しなかったことになり、まったくハラハラドキドキでありスリルとサスペンスにひかれあっというまに読んでしまった。
苦い後味にマゾヒスティックな快感を覚える。絶対傑作だと思う。『逆転世界』そっくりの後味だ。青春の書だ。コレットの『青い麦』と同じぐらいの感動だ。ともあれ、コニイばんざ~い。
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2005.12.7コメント
乏しい表現力で必死に作品と作家への愛を語ろうとする初々しさが微笑ましい。