…なんかもう暑いので、なにか涼しげなネタをと書いてみましたが
色々とおかしくなりました。
色々とおかしくなりました。
★人外ネタ。
★小×政(おなご)ですが、厳密には本人ではない。
★エロなし。短いです。
★小×政(おなご)ですが、厳密には本人ではない。
★エロなし。短いです。
そんなでも許せる方はどうぞ。
ある日のこと。
竜の棲むという沼に、小十郎は大事にしていた畑仕事用の鎌を落としてしまった。
しばらくどうしたものかと途方にくれていたが、遠くから視線を感じてふと顔を上げる。
睡蓮の花の浮かぶ暗く澱んだ水面に、眼から上だけを浮かべてこちらを見る者がいた。
人の形をしてはいるが、一目で人ならざるものだと察しがつく。
大方、沼の主だろう。
この沼の主はここら一帯の水源を司る存在で、決して怒らせてはならないと
子供の頃から聞かされていた。
竜の棲むという沼に、小十郎は大事にしていた畑仕事用の鎌を落としてしまった。
しばらくどうしたものかと途方にくれていたが、遠くから視線を感じてふと顔を上げる。
睡蓮の花の浮かぶ暗く澱んだ水面に、眼から上だけを浮かべてこちらを見る者がいた。
人の形をしてはいるが、一目で人ならざるものだと察しがつく。
大方、沼の主だろう。
この沼の主はここら一帯の水源を司る存在で、決して怒らせてはならないと
子供の頃から聞かされていた。
「…お騒がせして申し訳ございませぬ。すぐに立ち去りますゆえ…」
沼のほとりで平伏する小十郎に、主はすいと近付くと、肩から上を水中から露し
白い手を伸べて何かを小十郎に差し出した。
見ると、それは落とした鎌だった。
白い手を伸べて何かを小十郎に差し出した。
見ると、それは落とした鎌だった。
「…!これは…かたじけのうござ…」
礼の言葉の途中で、小十郎は絶句する。
肩から上だけを水面からのぞかせている沼の主の顔は、彼の主君である
独眼竜と呼ばれる姫君…政宗にそっくりだった。
猫のように少し釣り上がった大きな瞳。対照的に、髪に覆われて見る事の適わない右目。
形のよい鼻と桜色の唇が、真っ白な顔に端正に並んでいる。
ほっそりとした首からつづく細い肩や薄い胸には翡翠色のうすい着物が水気を含んで
ぴたりと張り付き、少女らしいなだらかな線を際立たせていた。
肩から上だけを水面からのぞかせている沼の主の顔は、彼の主君である
独眼竜と呼ばれる姫君…政宗にそっくりだった。
猫のように少し釣り上がった大きな瞳。対照的に、髪に覆われて見る事の適わない右目。
形のよい鼻と桜色の唇が、真っ白な顔に端正に並んでいる。
ほっそりとした首からつづく細い肩や薄い胸には翡翠色のうすい着物が水気を含んで
ぴたりと張り付き、少女らしいなだらかな線を際立たせていた。
無礼も忘れて呆然と見入る小十郎を、沼の主も髪から水滴を滴らせながら
暫くじっと見詰めていたが、不意に翡翠色の袂を翻らせると、暗い水底に消えていった。
暫くじっと見詰めていたが、不意に翡翠色の袂を翻らせると、暗い水底に消えていった。
残された小十郎は、しばらく狐につままれたような心地だったが、
やがて気を取り直し帰路に着いた。
やがて気を取り直し帰路に着いた。
「政宗様!」
主が沼の奥底にある自らの城に帰ると、口うるさい副将の声が飛んで来た。
「なんだよ小十郎。散歩に行って来るってちゃんと言ったろ?」
「お帰りが遅過ぎます。…まさかまた水面まで上がったのでは無いでしょうな?」
「あー。今は蓮と睡蓮が見頃だから、少しだけな。いい天気だったぜ?」
「…まったく…人間に見付かったらいかがなさる御積もりか!
姿形こそ似てはいますが、我らの様な誇り高い竜の血族とは違い、
奴らは野蛮な猿の類いです。
近寄れば、どんな病気をうつされるか分かったもんじゃありませぬぞ!」
「ひでぇ言い様だな。」
「事実にございます。」
「…分かった分かった。気をつけるよ。」
「お帰りが遅過ぎます。…まさかまた水面まで上がったのでは無いでしょうな?」
「あー。今は蓮と睡蓮が見頃だから、少しだけな。いい天気だったぜ?」
「…まったく…人間に見付かったらいかがなさる御積もりか!
姿形こそ似てはいますが、我らの様な誇り高い竜の血族とは違い、
奴らは野蛮な猿の類いです。
近寄れば、どんな病気をうつされるか分かったもんじゃありませぬぞ!」
「ひでぇ言い様だな。」
「事実にございます。」
「…分かった分かった。気をつけるよ。」
ついさっき人間に出会った事も、その人間が小十郎にそっくりだった事も、
政宗は当然黙っておく事にした。
政宗は当然黙っておく事にした。
(しかしなんであの人間は、俺の顔見てあんなに驚いてたんだろうな…)
案外あの小十郎そっくりな人間には、自分にそっくりな主君がいて、それで驚いていたのかも知れない。
今ここらの陸を治めているのは、「独眼竜」と呼ばれる猛々しい若武者だと聞くが。
今ここらの陸を治めているのは、「独眼竜」と呼ばれる猛々しい若武者だと聞くが。
…彼らの棲む陸の上とはどんな世界なのだろう。
きっとこの穏やかな水の底よりも騒々しく、汚らしく…
そして熱く血が滾るものに違いない。
長い生涯を水の底だけで過ごす自分には知るべくもない世界だが…。
きっとこの穏やかな水の底よりも騒々しく、汚らしく…
そして熱く血が滾るものに違いない。
長い生涯を水の底だけで過ごす自分には知るべくもない世界だが…。
たゆたう梅花藻の白い花を眺めながら、沼の主・政宗はそんな物思いに耽っていたが、
不意に後ろから抱きすくめられ、短く驚きの声を上げる。
不意に後ろから抱きすくめられ、短く驚きの声を上げる。
「うわっ」
「背後の気配にまるでお気づきにならないとは…何か考え事でも。」
「小十郎…。いや、何でもねぇよ。」
「…もしや、体調が優れぬのでは…」
「大丈夫だよ!ホント心配性だなぁ、お前は!」
「背後の気配にまるでお気づきにならないとは…何か考え事でも。」
「小十郎…。いや、何でもねぇよ。」
「…もしや、体調が優れぬのでは…」
「大丈夫だよ!ホント心配性だなぁ、お前は!」
憎らしく口答えをしながらも、政宗は小十郎の逞しい腕に身を預け
その胸元に甘えるように頭をすり寄せた。
無骨な掌が、優しく髪を撫でるのを感じる。
その胸元に甘えるように頭をすり寄せた。
無骨な掌が、優しく髪を撫でるのを感じる。
「心配も致しましょう。…貴女の御身体は、もう貴女だけのものでは無いのですから。」
「Ah…そうだな。」
「Ah…そうだな。」
瑠璃色の帯に守られたまだ目立たない腹を、政宗は愛しげに撫でた。
「せっかく授かったお前とのBabyだ。流しちゃ堪らねぇからな。」
「…当分、水面に上がるのもお止め下され。」
「はいはい。分かったよ。」
「本当ですな。」
「本当だってば。…小十郎」
「はい」
「Kissしろ」
「…御意」
「…当分、水面に上がるのもお止め下され。」
「はいはい。分かったよ。」
「本当ですな。」
「本当だってば。…小十郎」
「はい」
「Kissしろ」
「…御意」
深い深い沼の底は、人間に知られる事もなく
澄んだ水と穏やかな光に満たされて、今日も平和だった。
澄んだ水と穏やかな光に満たされて、今日も平和だった。
おわり