2009年8月15日 朝刊
国民の暮らしを支える「雇用」が危機にひんしている。有権者の関心も高い。自民党は経済成長と国の財政支援を通じた雇用機会の確保を掲げ、民主党は非正規労働者の差別的な待遇改善を前面に据える。ただ、いずれの政権公約にも特効薬は見当たらない。
(花井勝規)
Q 雇用はいまどんな状況にあるの。
A 「泥沼」に近い状況だ。昨秋のリーマン・ショックに端を発した世界同時不況で電機などの大手輸出企業が人員削減に乗り出した。影響は下請けの中小企業や他産業にも及び、各地のハローワークは連日求職者でごった返している。
Q 総務省と厚生労働省が七月末に指標を発表しているね。
A 六月の完全失業率(季節調整値)は前月より0・2ポイント悪化して5・4%になった。ITバブルの崩壊直後の二〇〇二年から〇三年にかけて過去最悪を記録した5・5%に並ぶのは時間の問題だ。完全失業者数は三百四十八万人と、一年前の六月と比べて八十三万人も増えた。
一人の求職者に対して何件の求人があるかを示す有効求人倍率(季節調整値)も六月は前月比〇・〇一ポイントダウンの〇・四三倍と、過去最低を更新した。十三カ月連続で前月を下回る右肩下がりが続いている。
Q 今後、雇用はさらに悪くなるの。
A 景気の動向次第だ。膨らんでいた在庫の整理が進んで「景気は最悪期を脱した」との空気が漂っているが、油断は禁物だ。実態は、指標の数字以上に深刻とみられている。
Q その根拠は。
A 政労使が今春、ワークシェアリング(仕事の分かち合い)推進で合意。従業員の雇用維持に努める事業主に、休業手当や職業訓練中の賃金の一部を政府が助成する雇用調整助成金制度を大幅に拡充した。これに伴い、雇調金を申請する企業が続出して、支援対象者数が六月時点で二百三十八万人まで膨れ上がっているんだ。
雇調金のおかげで辛うじて失業を免れている“失業者予備軍”が多く、不況がさらに長期化すれば失業者数の膨張に歯止めが利かなくなる恐れがあるというのだ。
Q 自民の対応は。
A 三年間に四十兆から六十兆円の需要を創出し、約二百万人の雇用確保を打ちだしているが、実際に失業者防止効果の出ている雇調金制度を中心に、現行政策を維持しようという方向だ。目新しい政策では「七十歳はつらつ現役プラン」がある。六十五歳までの定年延長に加え、六十五歳以上も継続して雇用する企業を後押しする。
Q 民主の対応は。
A 派遣労働者などの非正規雇用対策に力を入れたプランだ。「製造現場への派遣を原則禁止」は昨年暮れに頻発した“派遣切り”問題に対処するもの。「最低賃金の全国平均千円を目指す」は、まじめに働いてもまともに生計を立てられない「ワーキングプア」に救いの手を差し伸べようというものだ。
Q 両党の政策で雇用は増えるの。
A 残念ながら即効性は期待できそうもない。また、民主の製造業派遣禁止が実現すると短期的には求人数は減るだろう。最低賃金を全国平均千円に引き上げれば中小企業の経営を直撃するのは必至で、経営者らは「そんな余裕はない」と猛反発している。
ソース:東京新聞(TOKYO Web) http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2009081502000076.html