朝食に誘われたアオは彼女たちと一緒に大きな食堂の部屋に通された。
一段とひろく大きなテーブルの上に、美味しそうな匂い漂わせる料理がたくさん用意されていた。
アオ「え……姫様、これ全部…?」(汗)
彼女に言われて、少し離れた空席に座りこむ。
目の前にはシーザーサラダやハンバーグ、スパゲッティにコーンスープなど、多種多様の料理がアオを迎える。
その豪華さと多さに圧倒されるが、よく見てみるとどの料理にもキノコが使われている。
サラダの中にキノコ、トーストのトッピングもキノコ、スライスされて中が見えるコロッケやミートボールの中にもキノコ。
そして、一度ゲームを通じて知った…キノコ王国の伝統料理「キノコいため」までもがある。
正直苦笑いしたが、せっかくこんなにも多く召し上がれて、その上タダなのだから満更贅沢を言う気にもならなかった。
小さく「いただきます。」と言って初めにハンバーグからつける。
う…美味い…っ!!
いつかの、
ウィルの料理を食べた時のことを思い出した。
そんな時、さっきから紅茶にしか口をつけていないピーチがアオの方に視線を向けた。
ピーチ「そう言えば…まだ貴方のお名前をお聞きしていませんでしたわ。」
アオ「ぁ…俺は、清辿 蒼っていいます。」
アオは料理を口に頬張りながら言った。
ピーチ「アオさんですね。先程は、庭に倒れ込んでいた事は記憶に無いとおっしゃいましたが……では、その前の事は、覚えていらっしゃるんですか?」
アオは温かいスープを喉に流し込んで一息つくと「はい。」と答え、夜に起こったあの出来ごとの一部始終を話した。
ピーチ「本に…よってですか?」
アオ「あくまで確信です。本当の事は…俺にもよく分からなくって…。」
ピーチ「…そうですか…。…しかしそのような事があったなんて…私たちも出来れば協力して差し上げたいですが、今までそういったケースは…この世界では未確認ですので。」
キノじい「ふむ…俗に言う、“タイムスリップ”という類ですかな。」
アオ「えっ…!?」
そんな馬鹿な…じゃあ俺たちは、あの変な本によって…過去へ飛ばされたって言うのか!?
いや、その可能性はある…。さっき姫は「そう言ったケースは未確認」と言っていたが、実はそれを体験している。
過去に「ライ」という同年齢の男子に出逢って、俺は(当時はユウという子もいた)ディアルガという時を司ると言われているポケモンによってタイムスリップに巻き込まれた事がある。
しかしあれはディアルガの能力で遭った事。今回は本、まあ一応…未確認だな。
そう思っている最中、食堂の出入り口が開き、一人のキノピオ兵が新聞を持って現れた。
キノピオ兵「じい様、今日の朝刊でございます。」
キノじい「うむ。」
キノじいは空席に座って新聞を広げ、「ふむふむ…」といいながら目を通している。
ピーチ「もう、じいったら…今はアオさんがお困りになっている時に。」
キノじい「ああ、失礼した。しかし最近は物騒な事件が続出しております故、記事の内容によっては城の防御体制もとらなければ…。」
何だかとんでもない事を聞いてしまったと、アオは冷や汗をかいてフォークを持った手が固まった。
ふとキノじいの見ている新聞の表紙を見た。
アオ「……あれ?すみません、ちょっといいですか…?」
アオはキノじいから新聞を借り、表紙の右上を見る。………【2010年 5月14日】……?
アオ「2010年っ!?5月っ!!?」(大汗)
アオは咄嗟に立ちあがった。
ピーチ「…どうか、なされましたか?」
間違いない。俺は……タイムスリップに遭ったんだ…。
キノじい「どうした若造!?日付がどうかしたのか?」
アオ「……姫様。」
ピーチ「…はい?」
アオ「俺……やっぱり、過去(ここ)へ来たっぽいです。」
ピーチ&キノじい『――――――――――!?』
その後俺は、俺のいた時代の事を二人に話した。
あの本に出逢ったのは【2012年 1月22日】だ。
さっきの朝刊の日付を見て、そっから約2年前にタイムスリップしたということになる。
なんてこったい……。
ピーチ「じゃあ…アオさんは、未来からやってきたという事になるんですよね…。」
キノじい「そういうことになりますじゃ、姫。いや、まさか的中するとはのぉ…。」
アオ「うわうわうわうわあああああっ!!!どうしてこうなったくぁwせdrftgyふじこlp(ry」
キノじい「落ち着け若造!と、とにかく…いや、ここは姫様がご決断を…。」
ピーチ「はい、じい。……アオさん、もしよろしければ…未来への帰還方法が分かるまで、我が城に移住してはいかがでしょうか?」
アオ「ゑ…?」(汗)
キノじい「それもそうですな。…どうするんじゃ、若造?」
アオ「え…えっと……いや、でも悪いっすよ。俺なんかの為にそこまでお気遣いしなくたって…。…!そ、それにこの時代にだって家がありますから、そこで住んじゃえばいいことですし。」
キノじい「この時代のお前に会う事になるのかもしれないんじゃぞ?」
アオ「……あ…。」(汗)
キノじい「未来のお前さんが、この時代のお前さんと会えば余計にパニックになってしまうのじゃ。ここは、我が城で過ごしていた方が無難なのじゃ。」
アオは無言で考え込んだ。
ピーチ「……じい、少し…アオさんに時間を上げましょう。いきなりですので、少々慌ててしまうこともありますので。」
キノじい「ふむ、そうですな。すまんかった、若造。」
アオ「あ…いや…。」
キノじいはもう一度新聞に目を通し、姫はやっと食事に口をつけた。
俺はもう一度座り直し、食事の続きと洒落込もうとしたが…今度は自然と食べ物が口を通らない。
…今回ばかりは、どうしようもないのかと思うと…ふと重くなった。
その時――――
キノピオ兵「バタンッ!! 姫様!!じい様!!一大事でございます!!!」
息を切らして扉を乱暴に開け、さっきの人とは別人の兵が入ってきた。
キノじい「何事じゃ…!?」
キノピオ兵「はぁ……はぁ……!たった今…“
クッパ軍団”が、我が城へ進行していると…キノコタウンで監視していた兵から通達がっ!!」
キノじい「何じゃとおっ!!?」
ピーチ「……!!そんな…」
アオ「ほえ…?」(唖然)
キノピオ兵「いえ、まさかだと思いますが……狙いは姫様だと!!」
キノじい「おのれ…奴め…!至急
マリオ殿の家に連絡をッ!!奴等を凌がせるにはあの人の力が必要じゃ!!」
キノピオ兵「いえ…それが……先程から何度も連絡をかけているのですが、生憎の留守の様で…。」
キノじい「ぬわにぃ!!?」
ピーチ「……マリオ…。」
え…何これ、すっごくヤバそーなフラグ立ってるんですけどー!?
寄宿舎に着いた二人、ロビーでアキラは圧倒されていた。
懐かしい香り、居心地……これらすべてが近い時期に無くなると考えると、
キルビスはいつの間に寂しさを感じた。
そう思い耽っていた時、背後から何者かが両手でキルビスの目を覆い隠した。
???「だーれ、だ♪」
キルビス「ちょ…!?……この声…。」
聞き覚えのある女の子の明るい声。
手をゆっくりと退かして振り返ると、そこには桃色のコートを着た…非常に見覚えのある
幼馴染、
ミオリが小首を傾げて笑っていた。
キルビス「み、ミオリ…!?」
???→ミオリ「やっほー、キー君♪こんな処で出逢うなんて…やっぱり私たち、結ばれているのかなー?」
アキラ「あ、ミオリさん!」
ミオリ「アッちゃん、久しぶりだね―――――えっ!?」
軽く手を振って挨拶するアキラを見てミオリは驚いた。
いや、無理はない。今の行動でよく分かったが、今目の前にいる幼馴染は…過去の人物だ。
このミオリは、アキラの右目が治ったことを知らないからだ。
ミオリ「えっ…どうして、アッちゃん?右の目…いつ治ったの?」
驚きを隠せない彼女に、キルビスは改まった表情で彼女を見た。
キルビス「ミオリ、お前に話したい事があるんだ。」
ミオリ「…え…?」
キルビス「二人とも、とりあえず座れよ。」
ロビーのソファに三人とも腰を降ろした。
キルビス「半信半疑になるかもしれないが……今から言う事を、出来れば信じて受け止めてほしいんだ、ミオリ。」
ミオリ「ど、どうしたの…キー君?」(汗)
キルビスは自分たちが過去に飛ばされてこの世界にやってきた事を彼女に話した。
未来でアキラの右目が治った事、その後の生活の事を単純明確に告げた。
大体13分程度の話を、ミオリは口を挟むことなく黙々と顔を逸らさず聞いていた。
キルビス「……そう言う訳なんだ。」
ミオリ「…信じるよ。」
アキラ「ミオリさん…。」
ミオリ「だって、キー君の言う事をいつも信じていたんだから。キー君が何を言おうと、私はそれを、いつも信じているんだよ。」
キルビス「ミオリ……。」
ミオリ「アッちゃんの目の傷のことも知れて、よかった。ちゃんと治ったんだね…。」
ミオリは嬉しそうにアキらに微笑んだ。
アキラ「ありがとう、ミオリさん。」
キルビス「そうだ、ミオリ。聞きたい事があるんだが…。」
ミオリ「私に出来る事なら何でも言って。」
キルビス「悪いな。……今のこの世界の状況を、教えてほしいんだが…。」
ミオリ「そっかぁ…キー君たち、未来からやってきたんだもんね。うん、いいよ、教えてあげる。でも…」
急に不安げな表情を見せたミオリを見て、二人は不思議に首を傾げる。
ミオリ「今この世界はね……とんでもない事が起ころうとしているんだ。」
ピーチとキノじいに仕え、城を徘徊するキノコ族の兵士。
主な武器は槍。
一人称:私
本名、清空 美緒理。
キルビスとは幼馴染な仲。
この物語では過去の人物としてキルビスとアキラの二人と出逢う。
最終更新:2012年03月20日 14:10