カタカタ……カタカカタカタ……
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石韮探偵事務所内。所員の女性……難波が叩くキーボードの音だけが響く、静かで平穏な時間…
難波「あー、こっち報告書作んの終わりましたー……いつも通り保存して置いときますねー…(事務所内にて、PCの前で慣れた手つきでキーボードを叩きながら) 」
森ノ宮「……しかしアレだなあ、色々落ち着いて……来たのは有難いとはいえ、それはそれで不安になっちまうもんだな……\TRRR!!TRRRRR!!/(同じく事務所内。ソファーに座り込んで雑誌を広げて居た所……突然鳴り響いた固定電話に手を伸ばし、受話器を手に取り)はいこちら石韮探偵事務所 」
―――石韮探偵事務所の……森ノ宮…さんだね?君達の噂は色々と聞いているよ……(エフェクターによって大きく歪められた電子音声が、受話器越しに響いている。合成音声の類だろうか…?)
森ノ宮「(PCの前に居る難波に軽く片手でサインし)……(……正体を明かしたくない…というより、正しくは声からアレコレ情報を掘られたくない、って所なんだろうな…)ああ、そうだ……まあ、随分と高く評価してくれてるみたいで… 」
では率直に言おうか……君達に探して貰いたいのは、とある"英雄の遺体"だ。昨日、中央で航空事故があったのは知っているかな?整備不良によるエンジン不良で、機体は無事に不時着したが……コンテナの幾つかが落下した様で、着地時にその機体から"遺体"が消えていたのだ(受話器からは相も変わらず無機質な音声で、異様な内容が淡々と続き)
森ノ宮「(記憶から飛行機事故を探り……机の上に置かれた今日付けの新聞……まさしく"中央空港で航空機エンジン事故"の見出しが目に入り)……報酬は? 」
二億払おう(電話口の向こうで、同じトーンで破格の報酬額を告げ)君達の事情は把握している。"訳有り"が多い君達は、"仕事が途切れない"程度では不安だろう?
難波「ブーッ(思わずコーヒーを噴き出し、コーヒー塗れの画面で再び逆探知ソフトウェアを動かすが……)(成果は無く、森ノ宮に向けて両手で×マークを作って肩をすくめ) 」
森ノ宮「(破格の報酬…余りにも法外な額に思わず息を呑み)……中々興味深いな、だが……俺達に依頼する理由は察しが付くからともかく、流石にあんたの正体も分からない上に、紹介者も無くこんなに荒唐無稽な依頼は受けにくい。分かるか?(難波に目を受けるが、×マークを見て諦めを顔に出し)
(相も変わらない合成音声ながら、多少の申し訳無さが混ざったトーン)これは失礼した、確かに最もな疑念だな、森ノ宮さん。残念だが、私の正体は明かせない。その代わり……紹介者というには語弊があるが、協力者として君の知り合いが一人向かっている筈だ。"彼女"の顔を立ててもやってくれるかね
森ノ宮「……協力者……?(この状況で?多分知り合いなんだろうが……)(難波に向かって机の下……そこに仕込んだ拳銃を指差し)それとだ、答え辛いとはいえもう少し頼む。公的機関でもあんたの私兵でも無く、俺達を指名した理由……それと……ん?(何かの気配を感じ、窓に目を向け) 」
ジャクリーヌ尾崎「(森ノ宮が窓に目を向けた次の瞬間、文字通り猛スピードで"飛んで"来て、事務所の窓ガラスを突き破り室内を散らかしながら転がり……事務所の内壁に強かに頭をぶつけ、ようやくその場で止まる)……ふ、ふふっ、普通にここに伺うつもりが……まさか浅野さんの"挨拶"で飛んでくる事になるとは…(輝く金髪と透き通る様な白い肌を真っ赤な血で染めた顔を上げ)……こ、こんにちは… 」
マルガリッタ斎藤「 バンッッッッ (尾崎に続き飛んでくるが窓枠下に衝突しヒキガエルのように潰れる) 」
ヒロ「おじゃk(事務所に飛び込もうとした瞬間に謎の
トラックにはねられ死亡) 」
エドガー「今日はちゃんとおっさんの方いるか。悪い、姪探しを依頼したいんだが……締め切りは一週間。前金は20万でどう……(切羽詰まっているのか事務所に入るなり早口でまくしたてつつデスクの森ノ宮へ声をかけるが、常ならぬ空気感、何より血まみれの尾崎を視界に入れ硬直。口元に指を立て難波に目配せ)あー……なんだ、依頼主と揉め事か 」
森ノ宮「(窓を突き破って来た面々を見ながら頭を抱え)……今来たよ、協力者…中々の慧眼をお持ちの様で 」
難波「(机の下の拳銃に手を伸ばしたまま、あまりにも凄惨な光景に硬直し)……あ、ああ、あの……色々あって…あっ森ノ宮さん今電話中です(必死に頭を働かせ、なんとかそれだけエドガーに返し) 」
(受話器越しに微かに笑い) 素敵な協力者だろう?さて、それはさて置き……君達を選んだ理由だが、捜索する物品が物品なだけに組織立って騒ぎを起こす訳には行かない。そして……今の君の周囲からも分かる様に、組織や国家の枠とは無関係な人脈を持つが故でもある。序に言うと"裏"の世界を知りつつも、その世界の住人という訳では無い…という点もだな
ジャクリーヌ尾崎「……その方の正体は、わたくしも分かりません……恐らくは高い地位にある人物である事、私達について多くの情報を持っている事…知っているのもその程度の漠然とした物ですわ、そして厄介なのが…"航空事故によって英雄の遺体が紛失した事"は紛れも無い、事実です(やけに大きなハンカチを取り出し、血をふき取りながら) 」
(先程の笑いも消え、真剣なトーンで)…さて、依頼を受けてくれるだろうか?受けてくれるならばある程度の情報提供と、経費として前金の支払いを行おう。当然成功報酬とは別枠だ 」
森ノ宮「……人脈を当てにしてるなら、色々頼らせてもらうぜ。流石に話は広げ過ぎない様にはするが……経費の額次第だな。幾らだ?(エドガーに向けて軽く平手を向け、"待て"のジェスチャー) 」
エドガー「(尾崎の証言、精巧に加工された音声、森ノ宮のジェスチャーと順に確認し、腕を組んで背を壁に預ける)…………スッ(それとなくLサイズのバンドエイド入り缶を取り出し尾崎にパス) 」
二千万払おう(事も投げに、あっさりと破格の値段を提示し…森ノ宮の返答も聞かずに次の言葉を紡ぎ)……今入金した。私の本気を示した行動だ…受けてくれるね? 」
難波「(僅かに席から離れ、落下した斎藤とヒロを確認し)……どうしようこれ…えっあれぇ!?(通知に気付き、慌ててPCの前に座り直し)うわあ!!もう入ってる!!!!(二千万入金の通知を目にし、思わず絶叫) 」
森ノ宮「(難波の絶叫を受け、思わず絶句)……分かった、受けよう。今後情報のやり取りは文章ベースで頼む。それと……(電話口の相手と二言三言交わし、受話器を元に戻し) ……えーと、皆様方…"英雄の遺体"探し、手伝ってくれ(やや重い口調で、その場の面々に向けて) 」
エドガー「乗った。多くは望まないがそれなりに分け前があると助かるよ。組織経由でない"個人依頼"はマージンを弾かれなくていいんだ(軽く頷き淡々と答る) 姪探しは……他を当たるよ 」
森ノ宮「ああ、待て、あんたの姪の件も急ぎなら並行する。(軽く考え込みながら)……"遺体"を運んでたのはケイオス東部空港発、ケイオス中央空港行きの18時15分発の便だ。かなり短距離の便だから、ある程度軌道を追って情報を探せる……(いそいそとホワイトボードを取り出し、マーカーで雑に絵を描き)事故が起きたのは、東と中央の境界線付近……そこから中央の空港に不時着してるから…(続いて極々簡単な地図の様な物を書き終え、最後に一本の線と丸を複数描き込み) 」
ジャクリーヌ尾崎「東部と中央の境目から、中央空港まで……確かにその辺りに絞り込めるとは言え、範囲が凄く広いと思いますわね……繁華街も学生街もありますし……虱潰しに探すという事でしょうか…(ホワイトボードを見ながら) 」
森ノ宮「……いや、寧ろこの辺り……人が多いエリアを通ってるのは有難い。"落下と事故の瞬間"を見た奴か、映像がどこかに有る筈だ……まずはそれを探す。飛行機のレコーダーのデータが手に入れば手っ取り早いけどな……まあ、つまりは……これから地味な聞き込みだな 」
エドガー「あれを探すのは片手間だとしんどいからな。稼ぎのいいデカい仕事が飛び込んで来たんだからそっちに集中して頂いて……(といっても胡散臭いけど)(ホワイトボード上で地図の線を目線だけで追い)ローラーするには人数が心許ないが、足を棒にするしかないか(うへぇと口をへの字に曲げながら) 」
最終更新:2022年07月09日 19:06