もはや名所と呼べる様な所ではないあの区域に、物質はなかった。
それでも……
愛国心、忠誠心溢れる一人の女性は、その地に足を運び、汗をかき、たった一人で必死になって復興作業を続けている。瓦礫と呼べるようなものすらない、無の世界を——
俺は作業し続ける彼女の背中を見ていると酷く心が痛み、喉に何か詰まる様な感覚に襲われた。
声をかけようか迷う。何故だかは分からない。いつもなら女性相手なら飛び込む勢いで話しかけるのに、この人に対しては何故か女性というよりも、同じマイテイ人として尊敬している。俺にとっては母さんのような存在だった。
気づいたら俺は彼女に声をかけていた。緊張している。女性相手に…初めてだった
が
全 力 で ス ル ー
……
……
……
念仏を唱えるかのように、彼女はずっとそればかり口にしていた。
一つの事に集中すると周りが見えないし聞こえもしなくなるんだろうか……
体向かせようとしたけど、それは彼女のあの世界を崩しちゃいそうで怖い。殴られるかもしれない。
復興作業、手伝います。言おうと思ったけど言えなかった。
果物や飲み物の入ったクールボックスを置き俺はその場を立ち去った
こんな俺があの人に出来る事、これぐらいだしな
最終更新:2024年04月11日 00:38