俺は、それを甘んじて受けた。
この世界に
レベッカが来てから、もう数週間が経過した。
家計はどうにかなっている、少々残業が増えた程度で毎日のやる事にも支障は出ていない。
俺は、これからどうするかを考えながら眠ったところ、夢の中であっちに居た時の
レベッカの夢を見ていた・・・。
俺の家には、本棚があった、ここまでは当たり前の事だ。
問題は、本棚の後ろに隠された部屋があった事だ、ご丁寧に本棚で全く違和感なく隠せるようになっている、動かした跡も残らないようにしている。
この程度のカモフラージュで、俺から
レベッカを隠し通していたつもりらしいが、俺はそんな浅ましい考えを小学校を卒業する頃には見破っていた。
俺は見ていた。
俺の部屋は、丁度その隠された部屋の隣なのだ。
俺は見ていた。
自らの部屋に穴を開けて、実の妹が父と母に八つ当たりされる姿を。
俺は見ていた。
妹が泣いているのを。
俺は見ていた。
妹が、「おにいちゃん」と助けを呼んで泣き叫ぶ姿を。
俺は見ていた。
次第に、殴られようと蹴られようと、何も言わなくなっていたのを・・・。
俺は見ていた。
妹が、おかしくなっていった過程を・・・。
俺は見ていただけだった。
俺は、父と母の、木偶だった。
生まれてからずっと、俺は操り人形だった。
ああ、何故、何故救ってやれなかったのか。
何故、行動する勇気が、無かったのか。
やれと言われなかったから?
俺に力が無いから?
どちらも、違った。
そんな事をすれば、本能的に、あの父と母に何をされるか想像が出来たからだ。
俺の父は世界にその名を轟かせるが、頭のネジが吹き飛んだ凄腕の医者、俺の母は、ただひたすらに痛めつける事に特化した拷問の
執行者。
そんな二人を敵に回したら、どういう結末を辿るか、解りきっていたからだ。
俺は、見ていた。
見ている、だけだった。
握られた手が、どうしても愛おしく思えた。
体は大人なのに、精神は、子供のまま時間が止まっている。
今度は、この世界では。
幸せに、してみせるからな。
最終更新:2024年04月11日 02:05