レイハイト「俺は見ていた」

レベッカ「ぉにぃちゃぁーん・・・むにゅ・・・。」

レベッカの手が、隣で寝ている俺の指を包み込む。

レイハイト「・・・。」

俺は、それを甘んじて受けた。


この世界にレベッカが来てから、もう数週間が経過した。

家計はどうにかなっている、少々残業が増えた程度で毎日のやる事にも支障は出ていない。

俺は、これからどうするかを考えながら眠ったところ、夢の中であっちに居た時のレベッカの夢を見ていた・・・。




父と母は俺からレベッカを頑なに隠していた。

俺の家には、本棚があった、ここまでは当たり前の事だ。

問題は、本棚の後ろに隠された部屋があった事だ、ご丁寧に本棚で全く違和感なく隠せるようになっている、動かした跡も残らないようにしている。

この程度のカモフラージュで、俺からレベッカを隠し通していたつもりらしいが、俺はそんな浅ましい考えを小学校を卒業する頃には見破っていた。



俺は見ていた。

俺の部屋は、丁度その隠された部屋の隣なのだ。

俺は見ていた。

自らの部屋に穴を開けて、実の妹が父と母に八つ当たりされる姿を。

俺は見ていた。

妹が泣いているのを。

俺は見ていた。

妹が、「おにいちゃん」と助けを呼んで泣き叫ぶ姿を。

俺は見ていた。

次第に、殴られようと蹴られようと、何も言わなくなっていたのを・・・。

俺は見ていた。

妹が、おかしくなっていった過程を・・・。

俺は見ていただけだった。

俺は、父と母の、木偶だった。

生まれてからずっと、俺は操り人形だった。

ああ、何故、何故救ってやれなかったのか。

何故、行動する勇気が、無かったのか。

やれと言われなかったから?

俺に力が無いから?

どちらも、違った。

そんな事をすれば、本能的に、あの父と母に何をされるか想像が出来たからだ。

俺の父は世界にその名を轟かせるが、頭のネジが吹き飛んだ凄腕の医者、俺の母は、ただひたすらに痛めつける事に特化した拷問の執行者

そんな二人を敵に回したら、どういう結末を辿るか、解りきっていたからだ。

俺は、見ていた。

見ている、だけだった。



レイハイト「ごめんな・・・。」

レベッカ「・・・ぇへへっ・・・。」

レベッカはぎゅっ、と俺の手を握っていた。

握られた手が、どうしても愛おしく思えた。

体は大人なのに、精神は、子供のまま時間が止まっている。

そんなレベッカが、どうしても、愛おしく思えた。

今度は、この世界では。

幸せに、してみせるからな。

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最終更新:2024年04月11日 02:05