Reina Hutaba Side op

──月見浜町?・アパート──

18:00

それは何の前触れもなく訪れる
虫の知らせという言葉があるが虫は愚か、何かが私に警報を鳴らして警戒を促すようなことは一度も無かった
仕事を上手い具合に切り上げ早めの帰宅をし、夫の帰りを待つだけ
今日はお互い給料日だったから、一緒に札束を数えて楽しみにしていた旅行の行き先でもゆっくりと語らうつもりだった

しかしながら、いくら早く終わったとはいえどそれがいつも以上に労力を費やしたからだとなれば話は別だ
私はボロ雑巾のようにくたびれ、一ヶ月継続して作業をし、
それを終えた結果までの時間を消し飛ばしたように溜まった疲労と睡魔に襲われ電気とラジオを点けたままソファに横たわる

腕で目を覆い耳を傾けると、丁度夕方のニュースが流れていた


『今回でこの怪奇事件は15件を超え、地元警察は軍の支援を政府に申請したとのことです
 連続して発生するこの事件は共通して不可解な血文字の記された一枚の封筒が……』

「途中経過をいちいち報告すんじゃないよ、犯人をとっ捕まえてから報道してくんないかね」

私はそうぼやいて徐にスイッチを切った
夫の帰りまでは時間がある、手持ち無沙汰になった私は、ポストに投函されていた高校時代の同期からの便りを眺めた
個人の宛名は無い、恐らく同窓会でもやるというのだろうな、この時期の恒例行事で、
私は結構楽しみにしている

浮気を心配するような夫じゃないし、私はその封筒の封を切る、

    中身は空だった






…………?

20:30

…?……!?

いつの間にこんな時間になったというのだろう
電気はいつの間にか消え、デスクライトのみが唯一、色彩を確認するための光源になっていた
そして何だこれは、私の手が真っ赤だ、さっきまで手にしていた封筒がない
代わりに………

私は血塗られた包丁を手にとって、冷たくなった夫の前に佇んでいる、ただそれだけ


「え……」

眠るような安らかな表情で横たわる夫の傍には一枚の封筒が落ちていた

「え?」

その封筒には、血文字でこう記されていた




──Avenger──

忘れるな、嘆きのクリスマスを

己の罪を告白しろ



「……ちが…う」

「違う、私じゃない」

「これも!あの時のことも!」

「私は何も悪くないッ!」

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最終更新:2025年01月21日 03:06