| 《 シルバームーン・ブレイド・トレイン・アンド・カオス 》 |
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「無印カオスドラマ」より 「シルバームーン・ブレイド・トレイン・アンド・カオス」#1
(これまでのあらすじ:カオスホール跡地近くの廃墟を占拠していたマイテイ人ギャング、「シルヴァ・ソル」の幹部、「トラバント・ヴォルフ」を撃破したノブヒコ。彼の遺したデータから図らずも新たなる標的となる「シャドウフレア」および「財団」の情報を一挙に得たノブヒコは、キュラリアへ向かうためカオス駅の列車を利用することを決めた。)
「キュラリア行CT154便は、定刻通り二時間後に発車します。パスポートとチケットをお忘れなく4番ゲートまで……(無機質な合成音声が、カオス・ステイションの待合ホールに響く。四本の、今では随分と塗装の剥がれた柱で支えられた高い丸天井には「おみやげ」「旅行」「遠征」などの旗が揺れていた。)」
ノブヒコ「…………(その中に佇む、ノブヒコの心に、一抹の不安がよぎる。雑多な種類の人間たちでごった返す廊下の中で不意に立ち止まり、背負ったリュックを開け、ツキカゲ名義の偽造旅券を再度確認する。自らが返り討ちにしたエージェントの内、フリーランスだった者の使っていた名義を乗っ取ったものだ) 」
ノブヒコ「…………フン(自分は今何者でもない。過去の記憶は曖昧。きっと人格も、過去の「自分」のうちどれでもない何かに成り果てているのだろう。このようなことを続けていれば、名前を偽っていれば、自分はいずれ今考えている自己すらも失い、自分自身の存在が酷く希薄な何かになってしまうのではないかという漠然とした恐れが彼の胸中に渦巻いていた) 」
しかしそれでも、ノブヒコは列車に乗らねばならぬ。キュラリアへと向かい、奴らの尻尾を掴み、皆殺しにし、宿敵の影を追うために。
ギゴンギゴンギゴン……。音を立てながら、ホームが重々しい防護壁で覆われる。鋼鉄と無骨な装甲板によって包まれた黒い列車の車体が、ゆっくりとホームへ滑り込んできた。見ると、ホームの外にはそれらが走ってきたレールは存在しない。カオス駅の列車は、線路すらも必要としない、空路を飛行し、地上をホバーで走行するエア・クラフトだからだ。
かの特別急行列車「グランカオス」ほどのものはそうそう目にはかかれないが、これら通常の運行車両も決して嘗められたものではない。水陸空全てを航行できる利便性に加え、最高速度はマッハ10を超える。尤も、通常の運行でそれほどの速度がお目にかかれることはないが。列車強盗に備えて設置された、固定式マシンガンやミサイルポッドが、ごうごうと燃える演出照明用の炎に照らされて、クローム色に光っていた。
キュラリア行CT154便の準備が整いましたので、一等客室の皆様からご乗車を願います……(再び合成音声がホームと出発ロビーに響く。普段ならば武装や装甲の存在もあり、殺伐とした物事には無縁な安全な列車の旅が約束されている、カオス駅の航空列車であるが、しかし。今日に限っては)
???「………………(物々しいガスマスクや装甲服で生身を隠した一団が、ぞろぞろとゲートをくぐる。肩には削られて隠滅されているが、ノブヒコが追っている組織のものだったと思われる数種類のエンブレムの名残が残っていた。彼らが引くスーツケースの中身には、おそらくカオス駅周辺で得たのだろう取引材料が詰め込まれている。荷物チェックを受けている様子はない。鉄道会社の者を買収しているのだろう) 」
彼らは一糸乱れぬ統一感を持って一等客室へと乗車していく。五十人はいるだろうか。皆が同じ装甲服。しかし、その中にフード付の黒いレザーロングコートを着た者たちが数名。明らかに他の面々とは異なる。
彼らの正体は、要するに、それら使い捨ての兵隊を率いる、高い戦闘力を持つ者による「実働部隊」であった。
???A「はぁーっ、疲れましたねえ!キュラリアできっちりとおやすみしたいところです!(一等客室に乗り込んだ者たちは、畳に座ってリラックスする) 」
???B「全くだ。だが、奴らのエージェントの捕獲には成功したし、これで…… 」
???C「ええ。昇格は間違いないですわ 」
???B「誰の? 」
???C「無論、我々のに決まっていますわ(彼ら、彼女らは快適な一等客室の席に腰をかけて、雑談を始めた) 」
???A「では、前祝いと行きましょう!(その内の一人、少女の声をした者が瞳を輝かせながら、壁に備え付けてある端末を使い、かなりの量のルームサービスを呼んだ) 」
???C「ちょっと高いのではなくって?(と、別の者) 」
???B「経費で落ちるだろう(また別のエージェントが、部屋の隅に置かれた高級布団の寝心地を確かめながら言った) 」
???B→ナインフォクス「しかし、我々は運がいい(重いフード付きコートを脱ぎながら、そのうちの一人、狐面の男……ナインフォクスが言った)最近噂の銀色の怪人に遭遇しなかったのは幸運であったことだ 」
???A→ソウルクラッシュ「まあ……(コートを脱ぎながら答える。鹿撃ち帽を被った、ロングコートの少女が顕になった。黄金の瞳が輝いている。名(コードネーム)はソウルクラッシュ)我々ならばその怪人に襲われても返り討ちにできたでしょうが! 」
???C→フリーフォール「ええ、全くですわ(と、三人目。紫の髪にウェーブをかけた、高貴な雰囲気の少女。フリーフォール。彼女は裏ルートの因子改造を受け、『フライセント』と呼ばれる浮遊能力を得た特殊体質の持ち主だ) 」
???D→レモネード「…………(四人目は、未だコートを脱ぎもせず、どこか不機嫌そうに自らの剣を研いでいる。小柄な自分に似合わぬ剣だ。この寡黙で殺伐とした戦士の名はレモネード。闘技場での役を終えて以降、彼らの所属する組織で長く働いている。それに対しナインフォクス、ソウルクラッシュ、フリーフォールの三人は実際歴が浅い。ゆえに、馴れ合う気はなかった) 」
「続いて二等・三等のお客様は乗車を願います……(再び合成音声が響く。多くの人々が動き出す中、ノブヒコもまた動き出した)」
ノブヒコ「……ままならぬものだ(無表情な音声を耳に入れながら、彼は席に座ることもなく吊り革を握った。人が思ったよりも多い。この状況でわざわざ空いた席を探して座るほど、彼は軟弱ではない) 」
プァーーーン……ズゴオオオオオオ……(外に耳を傾けると、轟音と共に列車が動き出したのが分かる。あらゆる躊躇や別れのセンチメントを切り捨てて、鋼鉄の弾丸は走り出した)
???「――――――ヘァァァァァ……!!(貨物車両の中。その中のコンテナの一つから、まるで唸るような声が聞こえた) 」
貨物車両の警備員の一人が、車両の隅に立て置かれた積荷をマグライトで照らし訝しんだが、それ以上追及することはなかった。唸り声は、外から聞こえるジェットエンジンの轟音にかき消され、消えていった。
「シルバームーン・ブレイド・トレイン・アンド・カオス」#1終わり #2へ続く
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「無印カオスドラマ」より 「シルバームーン・ブレイド・トレイン・アンド・カオス」#2
(あらすじ:カオスホール跡地近くの廃墟を占拠していたマイテイ人ギャング、「シルヴァ・ソル」の幹部、「トラバント・ヴォルフ」を撃破したノブヒコ。彼の遺したデータから図らずも新たなる標的となる「シャドウフレア」および「財団」の情報を一挙に得たノブヒコは、キュラリアへ向かうためカオス駅の列車を利用することを決めた。)
(しかし、彼は知らなかったがノブヒコの選んだ列車には彼の敵たるイリーガル組織の手のものが複数乗車していた。それに加え、彼らの手で捕獲されたという、コンテナ詰めされたエージェント。更には、それらを狙う影すらもこの列車に迫っていた。果たしてノブヒコの運命は如何に。)
カオス駅を離れた列車は、空を滑るように運行する。飛行機でもない、見た目は完全に列車でしかないものが、地面を見下ろしながら、重々しく疾走する。風が無慈悲な黒いボディに弾かれて後ろへと流れてゆく。
端的に言って、ケイオスでの列車強盗は、珍しいものではあるが不可能ではない。確かに高速で空中を走行する列車は通常の車両などでは追跡不可能だが、ここは何が起きてもおかしくない混沌の坩堝、ケイオスである。
武装も豊富な列車を襲うのはリターンが見合わない、などの理由で行われることは少ないが、一部車両は空中航行可能なビークル・空中戦艦などを使用した襲撃を受けることがある。
それほどの労力を費やしてまで通常車両が襲われることはほぼ無い。つまり、襲われるのはほとんどの場合、「きな臭い事情のある車両」である。それは即ち、この列車には襲われるだけの理由が存在する、ということになる。
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ノブヒコ「………………(向かうはキュラリア。その先の『裏街』に自らの求めるものがある。ここで立ち止まってはいられない。タフであろうと心掛けるノブヒコであったが、実際のところ疲れはあった。理由は、連戦であった)……クソ
ノブヒコがカオスホール近くで相手をしたマイテイ人ギャング『シルヴァ・ソル』は実際、ただの半グレ集団とは思えぬ戦力と、一部幹部のそれに見合った強い『意思』を感じさせるほどの集まりであった。
いわゆる蛇腹剣を使用し、変幻自在の剣閃で攻め立ててきた剣術型、『ヴェレ・シャカール』。ただ鞭のように振るうだけでなく、アンビションを込めた一撃は、まるで生き物のように軌道を変え、死角よりこちらを抉ってきた。だが殺した。
正体不明の原理で防御を貫通する徹しのような攻撃をしてきた格闘型、『ショック・ケングルー』。自らを覆う生体装甲をも無視して放たれる猛威は、彼の狂ったとも言い表せる執念を表していた。だが殺した。
『トルペード・トリロビート』。水中を自らのフィールドとし、腕にサイバネ移植した魚雷発射管より無慈悲なる爆撃を繰り返してきた、異色の射撃型マイテイ人。彼自身の強力さもさることながら、酸素とて無限には続かず、地の利で不利な戦いを強いられた。だが殺した。
そして、トラバント・ヴォルフ。『憧れの人』を真似して切り揃えたという白髪の奥には、酷く闇を湛えた赤い目が輝いていた。常軌を逸した精神力。それ故に人の社会には馴染めなかったのだろう、とノブヒコが推察するのは容易であった。
空間を移ろうような足取り、そしてケングルーの如き生体装甲が意味を成さない、正体不明の斬撃。彼女自身が『特化型』ということもあり、何度も死の予感がニューロンの裏を掠めた。
だが、殺した。
ノブヒコ「…………チッ(どれもこれも、全て一筋縄では行かぬ強敵であった。未だに残っている傷もある。だが、奴らとの戦いは無駄ではなかった。こうして情報を掴み、次の目的地へ向かっている。これはシルヴァ・ソルを倒せなければ得られなかったチャンスだ)
ノブヒコ「…………スゥ……(傷が深いのは間違いない。落ち着く必要がある。落ち着いて、傷の治りを早める必要がある。乱れた精神を安定させるために、ノブヒコが息を吸おうとした直後!)
戦闘車掌「戦闘態勢に入れ!(戦闘指令車両のコマンドルームにて、運転士や戦闘車掌たちが戦闘用コックピットに座る!全員がバイザー付きのヘルメットを被り、座席と一体化するように腰掛けてコンソールに手をかける。ブゥゥゥン、という低い機械音。壁に埋め込まれたインジケータ類のLEDが上昇し、全て赤に染まる!)
戦闘車掌「敵、列車強盗団、数およそ200!脅威ランク、B相当!(人機一体の如く列車と接続した車掌らは、非人間的な速度でコマンドを下す!)
列車強盗団「イヤッハァー!(そして後方から猛スピードで迫ってくる、列車強盗団のエア・バイクや飛空艇の群れ!空中を移動する列車もまた、空中を走るものでしか追跡できないのだ!まるで鯨をつけ狙う鮫のように、巨大な車体の側面にぴったりと張り付き、小型ロケット弾、マシンガン、弓、車載ビーム砲などで執拗な攻撃を繰り出してくる!
ズドドドドド……(列車の遠隔操作マシンガンが火を噴く!数台のバイクが被弾し、煙を上げながら高度を下げていく!強力!一部のバイクはそれら武装を破壊するためにマニューバを変えていた!)
列車強盗団「ブースト!(先頭を走っていた着流しのバイカーが叫ぶ!後続の無法者たちもこれに続く!エア・バイクの出力が急激にブーストされ、前方車両へと迫る!
ズォン!!(だがその瞬間、車両が鈍く振動し、白い硝煙が窓の外を覆った。消し飛ぶように吹き飛ばされる列車強盗団。列車の両側面に備わったキャノン砲列が、全砲門を開いてブロードサイド斉射を行ったのだ)
コウゲキ!? ヤダーッ ホアアアアアアア アブリボン!アブリボン! ヤメテクレエエエエエエ!!!! フナッシイナッシィィィィ!!!! チクショオオオオオ!!! アッ!フナッシーダ! テーマパークニキタミタイダゼ(列車内は早くもざわめき始める。本来ありえないはずの列車強盗。何も知らず居合わせてしまった者たちからすればたまったものではない!一部の気の弱い者はパニックすら起こしている!厚い装甲に覆われているとはいえ、攻撃を受けているという事実そのものが恐怖を呼び起こしているのは間違いない!)
……一方その頃、例の四人のエージェントが乗り込む一等車両では。
ソウルクラッシュ「しかし退屈ですね。ここらで一発列車内事件でも起きたりしませんかね!?(鹿撃ち帽の少女、ソウルクラッシュが持ち込んだ推理小説を片手に呟く。既に十周はした紙面は何度見ても飽きないものだが、新鮮な出来事に比べれば愉快さは劣る)
ナインフォクス「起きるわけがないだろう。到着まで何日も掛かる高級特急でもないのだから。それよりお前は甘味ばかり頼みすぎだ(不謹慎を話すソウルクラッシュに呆れたようにナインフォクスが零す。その視線の先にはソウルクラッシュが頼んだデザートが数多く並べられていた)
レモネード「………………(レモネードはそれらに興味を示さず、無言で剣を研いでいる。自分にはこれしかない。他の二人のように現を抜かしているわけにはいかない。何かあれば頼れるのはこの剣だけなのだ)
フリーフォール「>> こ つ ぜ ん <<(最後の一人、フリーフォールはそこには居なかった。心配性で用心深い彼女は外の様子を見に行っていた。フライセントを使用可能な彼女は空中でも不足なく機動可能だからだ)
ソウルクラッシュ「何か理由をつけてこの車両に何人か呼びましょう!後ろの座席の皆さんも一等客席に乗れてWIN-WINですよ!(ソウルクラッシュは満面の笑みを浮かべながら提案する。倫理観の欠如したミステリ・フリークである彼女は、自分から手を下すことはなくとも、確かに「事件」を欲していた)
KABOOOOM! (再び後方車両が大きく揺れる。いかに安全を考慮した列車とはいえ、全域を防備するのは現実的ではない。必然的に攻撃を受けやすい後方車両から悲鳴を上げていく)
御呼出しです。お客様の中に以下の特徴がある方がいらっしゃいましたら、警備員にお申し出ください(その時である。車両内に再び電子音声が鳴り響く。続いて読み上げられるのは警官、医者、実業家などの職業から、「お悩みがある方」などという大雑把なものまで……)
ソウルクラッシュ「一等客席のそれも先頭に乗りたい人は多いはずです。ここは我々の貸し切りですからね!(それら放送を流させた本人であるソウルクラッシュは楽し気に笑う)キャストを集めた後はナインフォクスさんの仕事です!
ナインフォクス「またあの遊びか。この前本当に死人が出たばかりだろう。あまりやりすぎるなよ(呆れたようにソウルクラッシュに返す。彼はソウルクラッシュの依頼で、自らの精神感傷を利用し居合わせた者たちの精神状態を不安定にし、何かしらのサスペンスを引き起こすリアル・マーダー・ミステリーめいた遊びに付き合わされているのだ。それも一度や二度ではなく)
ワー ワー(かくして混乱に駆られた者たちも多く搭乗している後部車両では我先にと手を挙げる。その末路がリアル・ミステリ用の小道具とも知らずに!)
…………だが、それら混乱状態にある乗客たちは気付かない。その騒乱とは別に、一人の乗客が忽然と列車内から姿を消していることを。
シャドウムーン「……………突然の列車強盗団の襲撃、それに不自然なアナウンス……この列車、何かある(上空を泳ぐ列車の上を、銀色の生体装甲に覆われた男は悠然と突き進む。かつて自らが纏っていたものとは大きく様子の異なる形状の姿にももう慣れた。マスクめいた装甲に覆われた口元、細く輝く緑色の目。そして、音速以上の速度で突き進む列車が受ける強風により吹き流される、マフラー状のボロ布。自らの身体より生成した生体装甲を纏い変身した、ノブヒコだ)
カオス駅からキュラリアへ向かうに辺り、列車はカッチコッチな森を通過し、左を見れば雄大な砂漠が見える。遥か前方にはケイオスを象徴する巨大山脈、天上山。右を見れば広く深い南の海だ。レサーティアやキュラリアもあそこにある。待ち受けるのは戦いばかり。だがノブヒコは歩を進めた。それら全てに挑戦を挑むかのように!
「シルバームーン・ブレイド・トレイン・アンド・カオス」#2終わり #3へ続く
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