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/mid point β:『Uroboros』
完全解放された蛇の固有結界。
月面と化した渋谷東部の一定割合、結界術の範囲としてはあまりに広大な面積が異形の心象具現によって閉ざされる。
レミュリンと赤坂亜切に対し見せたのは、あくまでこれのほんの片鱗でしかない。
だが今は違う。正真正銘、神寂縁が本気になった。
己を知る者、己を阻む者、ひとりたりとて逃がさぬと。
「流石だね大英雄。君は予想以上に面倒だった」
ルー・マク・エスリンは、蛇にとって目の上の瘤だった。
彼がいなければ蛇は蛇杖堂絵里としてもっと深くレミュリンの心を解し、よりつつがなく捕食できる手筈を整えられていた筈なのだ。
けれど神話の英雄は敏い。下手に色気を出せば、自分の正體に勘付かれる恐れがあった。
流石にこのレベルのサーヴァントと事を構えるのは骨が折れる。
よって腰を据えて付き合うことを選んだのだったが、それは本気を出さないならばの話。
『水子界・支配の蛇』。
蛇の胃袋、4423体の子供の魂を含有した異界を展開する固有結界。
胃袋の中では胃酸が滴る。誰もが気付かぬ内に、此処に囚われた時点で溶かされている。
結界内に存在する全魂魄を分け隔てなく溶解させ構造分解へ至らせる――蛇の本気の真髄とはそういうモノだ。
魂が完全に溶け落ちれば、蛇の養分として吸収される。
そこかしこで歌い遊ぶ子供達と同じように、白痴のまま永遠となって藪(エデン)の虜囚に成り果てる。
「まあ、僕をどこぞの雑魚と重ねて見てたのはいただけないね。ナルシストの気はないが、君らの神話程度と一緒にされるのは多少心外だ」
溶解は蛇に近付けば近付くほど加速する。
その上、蛇が己を無敵と誇るのにはもう一つ理由があった。
サーヴァントは肉の器を持たない。
彼らは成り立ちからして、魂という情報だけで成立している霊体だ。
故に現界した英霊は、蛇が敷く溶解の理に対して一切の防御力がないのである。
結界の端で隠れているならいざ知らず、蛇と対峙してしまえばすべての強度が零になる。
重度の虚弱体質者が丸裸で怪物退治に挑むようなものだ。
加減なしの全力を前提とする場合、彼はそもそも英霊達の絶対的天敵と化す。
これが蛇。
これが神寂縁。
祓葉ら恒星達に並び得る暴力の極鋒。
黒幕(フィクサー)、ニシキヘビ、そして。
「――――あ、あー、あーー」
支配の蛇(ナーハーシュ)。
「レミュリン、助けに来ましたよ。もう怖くないですからね」
粉塵の煙幕の中を進みながら、声を響かせる。
ジェームズ・アルトライズ・スタールはとても物腰柔らかな男性だった。
魔術師でありながら情に厚く、彼女のことは大事な姪として大層可愛がっていた。
「レミー、無事かい? 安心していい。さあ、僕と行こう。教会で匿ってあげる」
アンドレイ・ダヴィドフは誰からも愛される立派な聖職者だった。
見知らぬ国でひとり生きねばならなくなった彼女が、彼の存在にどれほど支えられていたかは語るに及ばない。
思い出が語りかけてくる。
知っている声なのに、知っている人じゃない。
その矛盾に、レミュリン・ウェルブレイシス・スタールは叫びたいほどの恐怖を抱いていた。
へたり込まずに済んでいたのは、ルーのことがあったからだ。
どんな時でもこんな自分に寄り添い、守ってくれた偉大な英雄(ひと)。
彼の笑顔を覚えているから、せり上がる恐怖に屈せずいられた。
もしレミュリンのサーヴァントが彼でなかったなら、人生で初めて味わう本物の悪意を前に容易く心がへし折れていたことだろう。
「行くよ」
「あ……!」
アギリに手を引かれ、ぱっと視界が開ける。
思うところも言いたいことも山程ある彼が、今のレミュリンには一面の闇の中でただひとつ輝く篝火に見えた。
「最悪の展開だがまだ詰みじゃない。心底忌々しいけど、僕が死ぬほど嫌いな野郎のおかげで首の皮一枚繋がってる状況だ」
「……ぇ。それって……」
「説明は後。とにかく急ぐよ、死にたくないならね」
心底苛立ったような顔なのは、蛇の本気が想像を超えたものであったというだけではない。
衛星達は惹かれ合う。彼らは不倶戴天であるが故に、互いの存在を他の何より強く認識し合っているのだ。
アギリも気付いているのだろう。大英雄と共に戦っていたのが、自分が八つ裂きにしてでも殺したい宿敵どもの一人であると。
兎にも角にも、蛇から離れなければすべてが終わる。
ルーを一蹴したような怪物だ、如何に嚇炎の悪鬼といえど無策に挑めば一矢報いることも叶うまい。
彼のその判断は実に賢明であったが。
「ふむ。じゃあ、こっちかな?」
蛇の悪意は、もっと遥かに上(した)を行く。
「痛い――いたい、いたい、痛いよう……! レミーちゃん、たすけて――痛いいたいいたいいたい……!!」
「っ……!?」
響いてきた声に、レミュリンは弾かれたように振り向いていた。
その声の主が、叔父や神父と同じで"そもそもこの世に存在しない人間"であることは分かっている。
さりとて理性と感情を切り離せないのが人間という生き物だ。
然程長い時間ではないが、確かに心を通わせ合った女の声――不安で不安で仕方なかった自分に寄り添ってくれた、姉のような人の声。
「エリさん――――、」
蛇杖堂絵里があげる悲鳴に無反応を貫けるほど、レミュリン・ウェルブレイシス・スタールは大人ではなかった。
後はアギリの手を取るだけというところで生じた一瞬の遅れ。
それが、極限の悪意を相手取る上では取り返しの付かない間隙になる。
「つかまえた」
「ッ……!」
アギリに伸ばしたのと逆の手。
虚空を泳ぐ左手が、白い掌に手繰られていた。
闇の中からぬらりと、知っているのに知らない誰かの微笑が這い出てくる。
絵里であり、ジェームズであり、ダヴィドフである異形の貌。
神寂縁。諸悪の根源。少女喰い、藪中の魔王。
「行きましょう、レミーちゃん」
女の声で男が嗤う。
全身が凍って息もできない。
「さあ。さあ。さあ」
接触により急進行する魂の溶解。
蛇は、レミュリン個人のことは性欲でしか見ていないが。
彼女が持つ、本人すら自覚していない素養については話が別だ。
かつて見過ごした究極の火時計。時の魔女の心臓を、支配の蛇は欲している。
「僕(わたし)と番おう、さあ――!」
「ひ――」
アギリが炎を燻らせるが、言うまでもなく無意味。
事実蛇は、レミュリンの回収と並行して彼の抹殺も敢行しようとしている。
決定的な詰み。
終焉(エンドポイント)への岐路。
蛇が王手を確定させるまで、あと一秒。
「――っ、づ。ぉ、おおおおおおおオオッ!!」
その一瞬を引き裂いて、沈黙した筈の雄々しい叫びが轟いた。
「……しぶといな。ゴキブリかよ君は」
蛇の腕が断ち切られ、気怠そうな声が不興を示す。
間に割って入ったのはルー・マク・エスリン。
大英雄を侮るなかれ。長腕の彼はまだ敗れ去ってなどいない。
「おう、おかげで目が覚めたぜ。気合い入れてくれてありがとうな、エニシ……!」
「強がるなよ。もう立ってるのもやっとなくせに」
されど、彼の霊核は大きく罅割れ損壊していた。
たったの一撃。それだけで蛇の悪意は、英雄の心臓に届いたのだ。
消滅に至るにはわずかに足りないが、相当な重傷であることは確か。
少なくともこの状態で蛇の前に立つのは、前述した極悪な相性差の存在もあり、自殺行為以外の何物でもない。
「――アギリ・アカサカ!」
だがそんなことは、彼自身が一番分かっている。
レミュリンの手を引いて蛇から引き剥がした彼に、ルーは叫んだ。
「信用していいんだな!?」
「今はね」
「ならよし! 話は後だ!!」
確定させねばならなかったのは、赤坂亜切が敵か味方かのその一点。
信を置ける相手では断じてないものの、今の言葉には信念が見えた。
だからこそルーも今はアギリへの全嫌疑を不問とする。
正直なところを言うとホッとした。
今此処で炎の悪鬼まで敵に回るとなると、いよいよ光明が見えなかったからだ。
「逃げるぞ。立て直しだ!」
抜き放つアラドヴァル。
魔力の消耗など、気にしている暇は今はない。
解き放たれた超熱量が、蛇を太陽風もかくやの勢いで苛むが。
「やってみろよ」
涼しげに髪をかきあげながら、悪神の比喩でなく総身が蠢く。
捕食対象はレミュリン・ウェルブレイシス・スタール。
殺害対象はルー・マク・エスリン、赤坂亜切、そしてもうひとり。
「――君もね、山越風夏」
「知ってるともさ。舐めるなよ、支配の蛇!」
〈脱出王〉・山越風夏。
いかなる幽閉をも前フリに変えてしまう奇術師の王が、さも当然みたいな顔でアギリの横を並走する。
この間合いまで踏み込まれている時点で、蛇から正攻法で逃げ切ることは不可能だ。
それでも正面戦闘を避けて立て直しの時間を稼ごうと思うなら、反則技に頼る必要がある。
最悪の蛇神相手にそんな真似を可能とするのは、針音都市の中でただひとりしかいない。
すなわち悪名高き〈脱出王〉。〈はじまりの聖杯戦争〉のすべてを翻弄した、空前絶後のトリックスターだけだ。
「なんで此処に居るんだよ手前。今度は本当に焼き殺すぞ」
「まずはありがとうが先じゃないの~? 君ら、私がいなかったら全員此処で詰んでたよ?」
「よし殺す。細かいことは殺してから考えるよ」
「ま、待って待ってアギリ!!! 殺す前に考えて!!!!!」
なし崩し的におぶったレミュリンに左右のほっぺを引っ張られて、ある意味とても悪鬼らしい形相になるアギリ。
一見するとコミカルだが、本人達は大真面目である。
〈はじまりの六人〉が轡を並べて戦うなど、天地がひっくり返りでもしない限りあり得ない。
「はぁ。いいかい、よく聞きなさいアギリ。聞けば君も納得するよ」
「へぇ。大きく出たな、言ってみろよ」
「あのロリコン野郎の協力者はノクト・サムスタンプだ。私はその敵対者として参入してる」
「……、……あのさあ」
しかし逆に言うなら、天地がひっくり返るような理由さえあるならば。
「それを早く言えよ」
不倶戴天の間柄の中でも、呉越同舟は成り立ち得る。
ノクト・サムスタンプに対してだけは、衛星達の不文律が崩れるのだ。
「一応確認するけど、本当にあのクソが噛んでるんだな? 嘘だったらこの場で八つ裂きにするぞ」
「誓うよ、確かに彼本人から打診された話だ。主従の数を減らしつつ、クライアント自体も潰したがってる様子だった。
そこが面白くて乗ってあげたんだが、やっぱりアレの商談は受けちゃダメだな! おかげでこのザマだよ、あっははははは!!」
かの悪辣な傭兵は〈はじまりの六人〉共通のトラウマだ。
蛇だけならばアギリは風夏への敵意を譲らなかったろう。
「面倒臭え……」
冗談でなく、彼は蛇と傭兵の間に脅威度の差を付けていない。
むしろ純粋な暴力という分かりやすい手段に訴えてきた辺り、まだ前者の方が理解の及ぶ範疇とさえ思っていた。
「で、アテはあるのか」
よって将来的な破綻を前提にした協力関係はつつがなく樹立される。
アギリにとっても排除の優先度は〈脱出王〉よりもノクト・サムスタンプだ。
不快ではあるが殺しには来ない生命体と、隙あらば背中を刺しに来る策士気取り。どちらが厄介かは言うに及ばない。
「ルートはもう割り出せてる。それに多分だけど、あの蛇さんはそんなに必死こいて追っかけてこないよ」
「根拠は?」
「彼の固有結界はただの殲滅手段じゃなく、内側に収めた全生命から逃げ場を奪うものだ。
多分結界の端まで行っても出られない。私なら時間さえあればどうにかできるかもしれないけど――まぁ、あまり現実的じゃないね」
そうと決まれば〈脱出王〉の御業に頼ることに躊躇はなかった。
蛇が頭抜けた脅威であることは事実。奴の追跡から逃れないことには何も始まらない。
風夏も揶揄うでもなく回答する。誇張でなく生命線となる"専門家の知見"だ。
固有結界の開帳を以って、此処は蛇の箱庭と化した。
来る者拒まず出る者許さぬ、まさしく悪意の檻である。
〈脱出王〉でお手上げならもう誰も頼れない。
彼女の答えは実質的に現状が詰みだと示しているようだったが、その表情がそれは違うと物語っていた。
「今の私達はまさに袋の鼠。どこにも行けないし、逃げられない。
つまり、あちらとしても焦る理由がなくなったってわけだ」
蛇は狡猾だが、それでいてひどく傲慢だ。
絶対的支配者であるがこその驕りを常に抱え続けている。
レミュリンに痺れを切らしたのがその証拠だ。
そもそもあの失策さえなければ、彼はとっくにルーを追い落とし本命を喰らえていたかもしれないのだから。
至純の光と、自分を追う遺族達と、小癪な雑音。
それらのすべてを胃袋に収めた彼は今、きっと安堵している筈。
「一度撒ければ時間ができる。悠長にはできなくても、作戦会議の時間くらいは工面できると思う」
「分かった。なら、とりあえずこの場を切り抜けるぞ」
「オーライ! 誘導するからレミュリンを頼むよ!」
「言われるまでもない。釘を刺しとくが、間違っても彼女に気安く触れるなよ」
故に今なら逃げられる。
逆に今で良かった。次はきっと逃げられない。
背後を振り向き、アギリは消耗を度外視して嚇炎を爆燃させる。
まともに通じるとは思っていない。蛇を燃やすには乱発禁物の"唯識"で最低ラインだろう。
目的は目眩まし。少しでも蛇の視線からレミュリンを隠し、時間を稼ぐ心算だ。
「レミュリン、大丈夫――!?」
「あ、う、うん……!」
「あはは、緊張しないで! 今は純度百パーの味方だから安心していいよ!」
唯一、状況に理解が追い付いていないのはまさにそのレミュリンである。
彼女にとって山越風夏とは、不意に現れて自分へ仇の名を告げたトリックスターだ。
己の運命を"加速"させた張本人。敵とも味方ともつかないマジシャンが突然現れ、自分達の味方を名乗っている。
ある意味ではアギリに感謝だった。彼で〈はじまりの六人〉のエキセントリックさに慣れていなければすぐには呑み込めなかったかもしれない。
「それにしても……」
「……、……?」
「大きくなったね、レミュリン・ウェルブレイシス・スタール。我ながら自分の慧眼に惚れ惚れするな」
彼女は、神寂祓葉と同じ恒星(ほし)なのか。
それともまったく違う、別な何かの原石なのか。
答えはまだ分からないが、〈脱出王〉はその背を押した過去の自分の選択に拍手喝采を送りたい気分だった。
「どうか、君には――自分の運命に勝ってほしい」
その完成が、必ずや未知のエンドロールへ繋がっていると信じて。
善悪彼岸のあわいに立つ道化師は、彼女にしか見えないどこかを見据えていた。
◇◇
〈脱出王〉の推測は当たっていた。
蛇の結界は脱出不可能。世界が閉じた今、彼の勝利は確定している。
変わり代があるのは詰み取るまでに要する手数のみ。
あまねく因縁に対し支配を完了させたことで、神寂縁は目に見えてレミュリンらへの追跡の手を緩めた。
「しくじったなぁ。本気を出すのは久しぶりだから、少し力加減を間違えちゃった」
その証拠に、彼が後悔しているのはルー・マク・エスリンを仕留め切れなかったことただひとつ。
レミュリンを守る邪魔者は多いが、真に脅威たり得るのはあの大英雄だけだ。
可能なら殺しておきたかった。そこで生を繋いだ辺りは流石の"長腕"と言うべきだろう。
「まあいいや。これを晒した以上、もう誰であろうと逃げられない」
とはいえ、もう誰にも結末は変えられない。
驕っているのは彼自身認めるところだが、それ以前にこれは単なる事実だ。
蛇の固有結界は範囲、質、その両方を兼ね備えた空前絶後の狩猟領域である。
外から入ることはできる。だが一度でも内に入れば、蛇を倒すまで出ることはできない。
己を暴く者を決して赦さぬという、殺人鬼の偏執的な執着が現出した大結界。
もはや蛇を追う者、視界に入った者、全員が彼の獲物と化した。
籠の中に放り込まれた鼠。いずれも、機嫌ひとつで丸呑みにされる下等生物でしかない。
無論時司る魔女の器、レミュリン・ウェルブレイシス・スタールもそのひとり。
蛇は総てを手に入れる。水子界の展開に伴い、それは確定事項となった。
「――それに、これだけ大々的にやれば"彼"も食いついてくるだろう。楽しみだなあ、今度は何を魅せてくれるのやら」
されど、価値のあるものはもうひとつ残っている。
蛇にとって彼の存在は愉楽の種でしかなかったが、レミュリンを除き最も期待を寄せる存在であることには違いなかった。
青く荒削りな正義の魂。
喪失という名の決定的挫折を与えてやっても、無様に不格好に立ち上がってきた可愛い後輩。
或いは彼は、この蛇が世界で唯一欲望以外の視座から見据える他人であるのやもしれない。
そう呼んでも差し支えないくらいには、蛇はその男に期待していた。
泥に塗れて惨めに足掻き、手を伸ばして、あと一歩まで来て結局何も成し遂げられない稀代の道化。
幼気とも雌の魅力とも違い、生き様で己を魅せてくれる"英雄のなり損ない"。
「雪村くん。僕はここにいるぞぉ」
雪村鉄志という男の登壇を、神寂縁は理屈なしに確信している。
『水子界・支配の蛇』は彼を囚うために拡げたものではなかったが、不思議なことにこの体内に彼の者の息吹を感じるのだ。
「来いよ。君、今は探偵なんだって? 暴いてみればいいじゃないか、応援してあげよう。妻子の仇はここにいるぞ、何も守れなかった雪村くんよ」
顔を完全に切り替える。
ジェームズ・アルトライズ・スタールから、蛇杖堂絵里へ。
鉄志に見せるために造った顔を貼り付けて、しかし彼の娘ではあり得ない邪悪な笑みを湛えた。
さあ、いつものように足掻いてみせろ。
さあ、この僕から尊い命を守ってみせろ。
さあ、〈ニシキヘビ〉の正體を突き止めてみせろ。
君ならできる。君にしかできない。
己の胸倉を掴もうと伸ばした手が空を切り、最高の娯楽を提供する役目は君だけのものだ。
雪村鉄志。初めて会った時から今に至るまで、君以上に愉快な玩具は他になかったとも。
「――――ふふ。ふふふふ。ああ素晴らしい、これで僕の望みは総て叶う」
お気に入りの玩具を壊れるまで遊び尽くし、ああ面白かったと満足しながら本命の彼女を食い尽くそう。
神寂縁は嗤う。他人の子の、あったかもしれない未来を象りながら嘲り笑う。
彼は常に驕っている。
傲慢という悪癖を抱えて歩き、時に失敗し、それでも蛇が陥穽を改めることはない。
改めようが改めまいが、結局何も変わらないからだ。
誰も神寂縁を止められない。〈この世界の神〉を産み落とした超越者の血脈から生まれ出でたもうひとつの凶星を抑えきれない。
この世が弱肉強食というのなら。彼は常にその最前線をひた走る、絶対にして圧倒的な窮極の捕食者である。
「総取りだ。さあ、喰らい尽くしてやろう」
よって全員が詰みをかけられた。
這いずる蛇は、あまねく命の生殺与奪権を握っている。
誰も藪の中を暴こうとしなければ、こんなことにはならなかったのに。
ただ白痴のように無関心でいられたなら、この悪意に行き遭わず済んだのに。
愚か、愚か。悪神は嗤う。神のようなヒトが――胃酸の滴る異界を見据え、期待に胸を躍らせていた。
◇◇
「ランサー。何が起きた……?」
「スケールがでかすぎて断言はできないが、恐らく神寂縁の固有結界だ。奴と俺達の居る此処ら一帯丸ごと、また別の異界に放り込まれたらしい」
入ることは許すが、踏み込んだなら決して逃がさない鼠返し式の狩り場。
エパメイノンダスの読み通り、渋谷のおよそ三割程度の土地が蛇の体内に呑み込まれた。
神寂縁を探し出そうという発想自体がズレていたのだと今では認めざるを得ない。
河二やナシロの意思決定に関わらず、相手は最初からその気だったというわけだ。
月の囁きが精神に作用する毒だとすれば、この結界はもっとダイレクトに生命を冒してくる類の毒素で満たされている。
現に英霊――魂で肉体を形成しているエパメイノンダスは既に不調を自覚していた。
ただ立っているだけで己の中身が抜けていく。溶けていく。長居すればどうなるか考えたくもない。
河二達がそこまで激烈な体調不良を訴えていない辺り、数分そこらで全滅することはないだろうが、だからといって影響がないとは考え難い。
まさしく最悪を超えた最悪の事態である。蛇という巨悪の討伐に、事実上のタイムリミットまで設けられてしまったのだから。
「アサシン、何か分かるか?」
「ん~~……分からないですけど、多分わたし達寄りの術理だと思います。慣れ親しんだ匂いがぷんぷんするので」
「……悪魔的、ってことか」
「ですねぇ。ただ、ちょ~っとこのままじゃヤバいかもです。
ナシロさん達はなんともないみたいですけど、なんかこう……めっちゃくちゃ気持ち悪いんですよね。
テンション上がって無茶な飛び方した後みたいな……気を抜くと胃の中のものを全部おえっとしちゃいそうな感じの……」
悪魔以上に悪魔らしい人間。そのなれ果て。
エパメイノンダスは蛇・神寂縁の脅威度を脳内で大きく上方修正する。
改めて確信した。かの殺人鬼は、誇張でも何でもなく自分達の生死の分水嶺となる巨壁であると。
「――で。どうだ、話に応じてくれるか?」
「元よりそのつもりでしたが、こうなっては否応ありませんね」
「感謝するよ。まあ見た所、そっちはただ巻き込まれただけって様子だが」
蠍甲冑の英霊が警戒を緩めたのを見て彼も安堵する。
この状況で他の火種なんて到底抱えていられない。
凶悪な捕食者がすぐそばにいるというのに、獲物同士で啀み合うほど不毛な話もあるまい。
「こっちの英霊は二騎だ。俺がランサーで、あの黒髪のちっこいのがアサシン」
「……、……」
「で、残り二人がマスターだな。正確な素性については、もうちょっと胸襟開ける仲になるまで伏せさせてくれ」
先んじての開示は、手負いらしい相手方に同情したわけではない。
友好の証明とは時に単なる善意だけでなく、敵方に圧力を掛ける為のチップにもなる。
「"この程度"でいい。礼には礼をってわけじゃねえが、其方にも戦力の開示を求めたい」
エパメイノンダスは歯を見せて笑い、告げた。
手札を先に見せることで場のイニシアチブを握る。
この手の状況の常套策である。敢えて上辺の情報だけに留めることで、敵の心理的抵抗を削ぐのも忘れない。
「見ての通り此方に敵意はない。それでも信用できないってんなら残念だが、どうせならお互い得るものの多い交流にしないか?」
テーバイの将軍は甘くない。彼はそれこそ、あの蛇の奸計を無意識に察知して挫いた手練れだ。
武勲のみならず政(まつりごと)においても冴え渡る才覚。
まさしく彼こそ、三主従同盟の屋台骨である。
「――解りました。お二人とも」
わずかな逡巡の後、蠍の娘――アンタレスが頷いて後方に合図を送る。
すると褐色肌の少女と、まるで野戦病院から抜け出してきたような風体の青年が歩み出てきた。
が、新たな英霊の姿はない。少女と青年、そのどちらの腕にも令呪が確認出来るのに、である。
出撃中?
それとも訳ありか――いやまさか。
エパメイノンダスの脳裏にある可能性が過ぎった瞬間。
「……待て。そっちのあんた、まさか……」
眉を顰めて、琴峯ナシロが傷だらけの青年を睥睨した。
「悪国征蹂郎か?」
口にした名前に、場の空気がそれまでとは違った張り詰め方をする。
ナシロだけではない。河二までもが、友好とは縁遠い剣呑な目つきで青年……悪国征蹂郎を見ていた。
名を当てられた征蹂郎も怪訝な顔をする。彼には、ナシロ達に認知されている心当たりがないらしい。
「――何処かで、会ったか……?」
「会ったかも何も……有名人だろ、あんたは」
警戒。
まるで危険人物を見るような四つの眼差しに、征蹂郎は遅れて事の仔細を理解した。
「……、……っ。そういうことか……」
――そう。悪国征蹂郎の名は、今や東京中に知れ渡っている。
新宿の街を地獄絵図に変えた二つの半グレ組織、刀凶聯合とデュラハンの血戦。
勝負自体は多くの犠牲を払いながらも征蹂郎が制したが、かの戦いで彼が払った代償は今も生き続けていた。
〈喚戦〉による狂化と、ある英霊の駆使する精神掌握宝具。
それによって誘導された国家権力の一団を、征蹂郎は宿敵・周鳳狩魔と共に鏖殺したのだ。
警官隊殺害、及び大量虐殺を働いた刀凶聯合の首魁。
凶悪犯・悪国征蹂郎の名はその人相と共に、全国ネットでウォンテッドをかけられている。
ナシロも河二も此処に来る前にそれを見ていた。ホムンクルスの悪意は気付かれぬままに巻き付いて、真綿でじわじわと彼の行く先を封じていた。
人命を尊び、無為な殺戮を否とする彼女達にとって悪国征蹂郎はまごうことなき危険人物。
順風満帆に運ぶかに見えた陣営間交流が、途端に雲行きを怪しくし始める。
「……待ってください。アグニさんは……」
「いい、アルマナ。自分で蒔いた種だ、ちゃんとこの口で説明する」
口を挟んだのはアルマナ・ラフィー。
王に叱責されるかもしれないと、踏み止まるのも忘れて征蹂郎を擁護しようとしたが、他でもない彼自身がそれを諌める。
第一、そもそも弁解のしようなど欠片もない。
己は己のために戦端を開き、災火で以って新宿を燃やした。
悪国征蹂郎が舵を取らなければ、ああも巨大な悲劇は生まれなかった。
巨大な混沌と散りゆく命を良しとして、それでも進むことを選んだのは征蹂郎。
そこを取り繕って誤魔化すのは、それこそ王の所業とは呼べないだろう。
デュラハンと共に聯合が事実上崩壊し、独りぼっちの野良犬となっても、悪国征蹂郎はまだその心に泥だらけの王冠を抱き続けている。
「確かに……出回っている風評は概ね事実だ。オレは刀凶――ある愚連隊のリーダーをやっていた。
新宿で大規模な抗争を起こしたのも、その過程で大勢の犠牲者を出したのも合っている」
「……悪いが、それが本当ならあんたと手は取り合えないぞ。個人的な心情を置いても信用が出来なすぎる」
「正確に言うなら……オレが出した被害は、もっと上だ……。
今の新宿の有様は知っているな? アレを招いたのはオレが使役していた……"前の"サーヴァントの仕業だ」
もはや隠し立てする意味もない。
赤騎士は聖騎士の十字軍により討滅された。
もう二度と、赤い軍靴の足音が響くことはないのだから。
「真名をレッドライダー。戦争という概念そのもの、とも言えるだろう」
「……! おい待て、それは……!」
「――やったこと、招いたことに申し開きをする気はない。
が、オレも譲れないものがあった。そのために戦ったことは後悔していないし、誰かに詫びるつもりもない……」
レッドライダー。黙示録の赤騎士。
ナシロの征蹂郎への猜疑心は天蓋を突破する。
道理で、あんなことになっているわけだ。
戦争を司る騎士を引き連れて、この男は大勢が暮らす街を蹂躙したというのだから。
いかなる理由があっても許される所業ではないし、恥じも悔いもせず語る姿にいち人間として憤慨を覚える。
征蹂郎としてもその反応は予想通り。彼が相手の立場だとしても、こんな輩に胸襟など開かないだろう。
「求めるならオレはこの場を退こう。ただ……この娘は違う」
それはいい。ただ、征蹂郎にはまだ守りたい仲間が残っていた。
すべてを失った自分に、生きてほしいと願ってくれた少女。
己と彼女が天秤に掛けられたなら、自分は一も二もなくその安寧を選ぶと決めている。
アルマナもまた聯合の一員。利害の一致が生んだ協力関係だろうが、少なくとも征蹂郎はそう信じているから。
「彼女に罪はない。オレの都合で随分と振り回してしまったが、あくまで主犯は悪国征蹂郎(オレ)だ」
「アグニさん――それは」
「いいんだ。君まで悪者になる必要はない」
くしゃりと白髪の上に手を置き、努めて優しい声で言う。
アルマナはただただ複雑そうに、何か言いかけては口籠る。
(……宜しいのですか。もしあちらが頷けば、貴重な同盟相手を失うことになりますが?)
(いい。これ以上……オレの都合にアルマナを付き合わせるのは、間違ってるからな)
アンタレスの念話にもそう応え、裁定を待つ罪人のように征蹂郎は眼前の同盟へと向き直った。
一触即発。どう転ぶにしろ、穏当な関係を築くのは難しいだろう。
そんな良くない流れを断ち切ったのは、やはりというべきかエパメイノンダス。
「そこのところは一旦置こう。嬢ちゃんもそう殺気立つな、まだ武器抜かれたわけでもねえだろう?
思うところあるのは分かるが、何事にも優先順位ってもんはある。今は啀み合ってる場合じゃないんだよ」
そもそも、この流れ自体が悪しき蛇の思う壺なのだ。
此処はとうに神寂縁の腹の中。
外に出ることが叶わず、内側に絶対的な悪が君臨している以上、"その他"の揉め事はすべて黒幕の背を押す形になる。
「敵同士なんだから折り合い付かないのなんて前提みたいなもんさ。
そこにどう妥協点を見出して、付き合いどころを探せるかってのが交渉だ」
「……すまん。つい熱くなった」
「いや、分かってくれて感謝する。実際難しい問題ではあるしな、そこは追々掘り下げよう」
よって此処で分断は、余程のことがない限りあり得ない。
それに、エパメイノンダス個人としては悪国征蹂郎はそこまでの警戒を払うべき男には見えなかった。
部外者からすれば不遜、開き直っているようにも聞こえる発言だが、倫理的なバイアスを捨てて聞けば一本芯は通っている。
蛇のような純粋な邪悪とは違う、信義を以って悪を為すと決めた手合い。
倫理的に考えれば確かに言語道断の相手だろうが、個人的にはこういう男は信用できる。
よって、乱れかけた盤面を一度フラットに戻し。
エパメイノンダスは、抱いた疑問を口にした。
「これは俺の推測なんだが。あんたら、もしかして杉並を目指してたんじゃねえか」
「――何故そう思うのです?」
「見てきたからだよ。渋谷がこうなる前から、杉並はある英霊の手で異界化されていた。
手負いの一団が逃げ込んで再起を測るには、これ以上ない安全地帯だろう」
――まして、その主人が身内にいるなら尚更な。
あえて踏み込んだ言葉を投げて反応を見る。
アルマナと呼ばれた少女が、微かに息を呑むのが分かった。
確定だ。込み上げる高揚で、こんな状況だというのに口角を歪めかける。
寝物語に聞かされた偉大な王。
数多の栄光の礎を築き、死後は楽園に招かれたという大英雄。
そうか。本当に、俺は"神話(かれ)"に会えるのか。
「俺は、あんたらを受け入れてもいいと思ってる。
見たところ相当な手負いだろ? 少なくともこの結界を何とかするまでは、持ちつ持たれつの関係ってヤツをやらないか」
「……ありがたい話ですが。其方は我々に何を求めるので?」
「この結界を張ったのは神寂縁って蛇野郎だ。
外に出られない云々を抜きにしても、野郎とは浅からぬ因縁があってな。出来る範囲でサポートするから、元凶の討伐に協力してほしい」
悪国征蹂郎という不穏分子を抱え込むのは確かにリスキー。
だが、皮肉にも逃げ場がなく、圧倒的上位者が存在する状況がそれを軽減する。
余程の狂人でもない限り、此処で蛇討伐の足並みを乱そうとはしない筈。
蛇の強さが結束を作る。たとえ偽りでも、神寂縁が倒れるまでは問題ない。
征蹂郎を道中で見極め、処断すべきと判断したなら後で幾らでもやりようはある。
兎にも角にも今は兵力。エパメイノンダスが流れを作って纏め上げることで、藪を焼き尽くす連合軍を作り出す。
期間は極めて短く、かつて彼が説いた同盟定員の原則にも抵触しない。
更に行動を各々の陣営で分ければ、もっとリスクを下げられるだろう。
「返事は……如何に?」
伝えるべきは伝え、問うべきことは問うた。
後はどっしりと構えて答えを待つのみ。
彼は最善を尽くした。
正義と悪の相克を宥め、中庸の灰色を提示して誘導した。
天晴なり、テーバイの不敗将軍。その武勇は針音の都市においても冴え渡り続けている。
「――解りました。我々は――」
だからこれは、本当に最悪の形でやって来た不運と言う他ないだろう。
「……待て。おい、ありゃ何だ?」
アンタレスが答えかけた、まさにそのタイミングで事は起こった。
上空に突然出現した、数十にもなる不明な魔力反応。
波長は英霊に近いが、しかし確実に違うナニカ。
『敵性分子を確認』
『非堕落因子〈ハードワーカー〉と特定』
『主神〈オーディン〉の入力を確認。宝具の解放へ移行』
背に翼を生やし、槍と盾を携えた乙女達が地上を俯瞰している。
エパメイノンダスには見覚えのある少女幻想。
何故、と思いかけて、此処が何処であるかを思い出して歯噛みした。
蛇の結界が展開されたとはいえ、座標は変わらず渋谷区の只中。
即ち、月の寝室。であれば、当然そういうことだって起こり得る。
「――月光の御遣いか!」
『照準完了。一斉殲滅を開始します』
かつては奇術王の近衛。
今は、月世界の白血球。
全能神を継いだ女神の"しあわせ"を護る魔の軍勢が、神話の大空爆を降らせた。
偽りの終末幻想(ラグナロク)、歪められた少女降臨(リーヴスラシル)。
偽なる大神宣言による、地を舐め尽くす神罰執行!
「ちィ――!」
咄嗟に神聖隊を展開。ナシロ達を優先しつつ、目配せでアンタレスにも迎撃を促す。
ウートガルズの幻術は際限がない。しかし、精神的抵抗力によって軽減可能な筈。
「怯むな、アレは幻だ! 死ぬほど痛いが分かっていればそこまででもねえ!」
問題は、渋谷の奇蹟/災厄の正体が、自分の予想通りだった場合だ。
ウートガルザ・ロキが落ちた。それもただ死んだのではなく、己が主に何か託して消えた。
だとすると、果たして奴の幻術は今まで通りの規格に収まっているのか?
疑念は残るが、だからと言って逡巡している暇はない。
盾を一斉展開。可能な限りの防御で天の落涙を受け止めんとする。
――その時彼は、確かに見た。
「あ……」
響く幼子の声。現出する、第四の英霊。
老いて尚一切の衰退を感じさせない、英雄の黄金率を体現して。
神の眷属を刺殺した剛槍を携え、かつん、と重々しい靴音をひとつ響かせる。
天から地に注がれる破滅の神罰に対し、その王が取った行動はわずかに一手。
槍の一閃のみで偽なる神槍の雨霰を阻み、一本残らず砕き散らした。
たかが幻、恐るるに足らず。無言の内にそう告げて、墜ちてきた天災の悉くを撃滅する。
会ったことはない。ある筈もない。
それでも分かる。かの国に生を受けた戦士として、理屈でなく本能が彼の真名を直感させる。
「おお……」
テーバイの子は、指揮を執るのも忘れて感嘆していた。
ただその視界に、眼前に立つ王者の威光を焼き付ける。
彼はこの時、己が築いてきた武勲のすべてを忘れた。
井の中で育った蛙が大海を知って矮小を実感するように、時を越えて拝謁を果たした偉大な父に心酔する。
「やはり――あんただったのか」
杉並に残されていた残滓など、一縷にも満たない残り香でしかなかったのだと理解させられる。
それほどまでに、強大。それほどまでに、勇壮。
畏ろしさすら抱かせる佇まいに隙はなく、将軍は少年のように見惚れながら、彼の名を紡いでいた。
「カドモス王……」
「何を腑抜けている。卑しくも万軍の統率者の名を与えられし我が仔よ」
英雄王、大国父。
栄光の国に連なるすべての英雄の原点(オリジン)。
震えさえしながら名を呼ぶ後進に、父は一瞥もくれず呟いた。
「備えろ。毒虫が動くぞ」
第一波を完璧に迎撃された戦乙女達が、より出力を上げて次のスコールを降らせる。
余波の風圧だけで地面が捲れ、大型台風並みの悪環境が現出する地獄絵図の中で。
カドモスはただ一人、上ではなく横を見ていた。
同じ大地で風に曝されながら、虎視眈々と悪意の牙を剥き出したある百足を警戒していた。
「――――よう。一同お揃いか、いやはや実に都合がいい」
響く、新手の声。
即座に反応したのは悪国征蹂郎とアルマナ・ラフィーだった。
それは致し方ないことだ。何故ならエパメイノンダス達は、この男を人伝てでしか知らないのだから。
空に瞬く破滅の槍衾など、まるで無いものかのように飄々と。
声を響かせ、物見遊山にでも来たみたいな足取りで、その男は逃げも隠れもせず現れた。
虎を思わせる厳しい容貌。刺青の走った褐色肌。黒より暗い闇色の鬣を靡かせて、もう一つの最悪がやって来た。
「ノクト・サムスタンプ……!」
〈はじまりの六人〉、策士傭兵ノクト・サムスタンプ。
仮想ではない現実の東京を、思うがままに蹂躙した数式の虎。
彼が舞台に上がってきた時点で、もうどうあっても順風満帆な門出など望めない。
まともな人間ならば蛇に与する選択肢など取るまいが、この男はとうに狂っている。
神寂縁の隠し玉。狂的な自負を持った者同士が、あろうことか逃げ場なき世界の中で結びついてしまった。
「暫くだなー大将。物は頼みなんだが、共に戦ったよしみだ。また宜しくやっちゃくれないかい?」
「ふざけるな。お前のような卑怯者、一体誰が信じるという」
「ま、だよな。ダメ元で聞いてみただけだよ、忘れてくれ」
征蹂郎も、今となっては分かっている。
この男の言葉はすべてが信用に値しない。
水面に釣り糸を垂らすようなものだ。当たりがあったらそれで良し、ないならないで場所を変えて同じことをするだけ。
不誠実。不真実。彼の中で形ある"本当"など、かの少女への恋慕を除いて他にはなく。
よって征蹂郎は学習した。
ノクト・サムスタンプは、敵としても味方としても、同じ世界を生きる隣人としてどこまでも論外なのだ。
信用には到底値せず、可能なら言葉を聞くことすら避けるべき害人。
アンタレスとのアイコンタクトは一瞬。蠍の槍兵が駆け出して、青銅槍の英雄王もひとりの人間に向け本気の殺意を押し放つ。
既に夜は明けている。
如何に場馴れしているとはいえ、日の光の下ではノクトは一般的な魔術師の範疇を出ない。
故に彼の末路は一秒としない内の挽き肉、惨死。それ以外あり得なかったが……
「令呪を以って命ずる。戻って来い、バーサーカー」
その運命を拒む、最後の役者がやってくる。
右腕の令呪の感光。
赤い光が軌跡を描くと共に、ノクトを引き裂かんとした二槍の刺突が阻まれた。
技も本来の用途もかなぐり捨てて力任せに振るわれたレイピアが、ガイアの尖兵と竜殺しの英雄を力ずくで押しのけたのである。
目も眩むような、美青年だった。
本来は淑やかに憂いを帯びる容貌が、今は鬼神の如き怒りに染まっている。
噴火一歩手前の活火山めいた存在感を放つ彼の英霊としての格は、恐らくこの場に居合わせた中で最下位。
しかしこの世にはいつの時代も、不変の不条理がひとつある。
「嗚呼、嗚呼、嗚呼――君達が今宵の恋の障害か。僕とジュリエットを引き離さんとする奴輩共か」
――恋は盲目。
――恋する男は、誰より強い。
そんな巫山戯た理屈が策士の奸計と共鳴し、予測の付かない幾何学模様を描き出す。
踏み込んだアンタレスの一撃を受け止め、震脚ひとつでその矮躯を浮き上がらせた。
無防備に浮いた身体に瞬の刺突を打ち、受け止めこそ出来たがあまりの剛力に蠍は吹き飛ばされる。
口角から垂れる血の雫が、もし直撃していればどうなっていたかを物語っていた。
次いでカドモス。死の宣告すらなく、王の眼前に踏み出た不遜者の誅伐を開始する。
白兵の能力はアンタレスより数段上を行く。ロミオの基礎性能では、本来影も踏めない相手だ。
しかし当然のように受け止める。小揺るぎもせず、それどころか鍔迫り合って押し返す。
老王の眉が僅かに動いた。狂戦士の膂力が、英雄王の想定を凌駕している証拠だった。
窮鼠と猫に匹敵する力量差に抗う美丈夫へ、神聖隊の槍々が殺到。
ロミオ及びノクトの排除を是としたエパメイノンダスの判断は正しい。
元より信用などとても置けない相手だが、このタイミングでの介入は確実にクロと断定。
タイミング、物言い、すべてが彼らが蛇側の協力者であると暗示している。
されどこれも――狂戦士・ロミオは一歩も退かず、未知の手札を出すこともせず、力と執念に物を言わせた剣舞で打ち払う。
「邪魔立てするなァ卑怯者共ォ! 僕らの恋路を阻むというならかかってこいッ!!」
一が十に勝ることはおろか、イコールになることもあり得ない。
なのに今、この狂戦士は現実にそれを実演していた。
先陣はカドモス。背後は復帰を果たしたアンタレス。
加えて、エパメイノンダスが駆使する数十もの槍と盾。
開幕数十秒と経たない間に無数の生傷を負っているのに、微塵も頓着せず獅子奮迅の戦いを続けている。
そして何が恐ろしいって、徐々に前線を押し上げ始めているのだ。
理解不能。意味不明。
戦の勘定に長ける者であればあるほど言葉を失う支離滅裂。
恐らくこの場でロミオが何故脅威たり得るか理解出来たのはエパメイノンダスだけだろう。
愛故に人は強くなる。
愛故に人は限界を超える。
愛故に、愛故に愛故に愛故に愛故に――。
友誼と信頼を貴び、愛することを愛したテーバイの仔。
王が嘆きを以って呪った国を、心から愛したエパメイノンダス。
よって彼だけは理解できる。カドモスでもない、彼だけが。
「……おい、皆の衆。警戒の値を引き上げてくれ」
――ロミオという狂人の、果てしない強さを識れる。
「強ぇぞ、こいつは……!」
恋とは、燃え上がるものだ。
困難に曝されるほど、恋する彼らは強くなる。
ましてやそれが、恋慕を向ける相手と理不尽にも引き離されてしまったとしたら?
論ずるまでもないだろう。その時盲人の恋情は殊更に激しく燃え上がり、大爆発を引き起こす。
「ショータイムの始まりだぜ」
調達し、慣らしを済ませた義手を不気味に蠢かせて傭兵が笑う。
舞台は蛇が整えた。役者は勝手に集まった。仕掛けは、誰とも知らない偽りの星が用立ててくれた。
となれば後は踊るのみ。いつものように自分らしく、そしてとびきり悪辣に。
「精々実りのある取引をしようじゃねえか。なあ、エキストラ共よ」
――幸い、契約に使えそうな素人は何人もいる。
容易な仕事だ。極星と事を構えるのに比べればずっと気が楽だ。
琴峯ナシロ。高乃河二。アルマナ・ラフィー。悪国征蹂郎。
四人の"取引相手候補"を順々に見つめ、虎は悪意の涎を滴らせる。
〈支配の蛇〉は藪の中。藪の側には決まって、獰猛な獣が彷徨くものだ。
◇◇
【月光夢幻神界〈渋谷〉・北東部/二日目・早朝】
【神寂縁】
[状態]:〈蛇杖堂絵里〉、固有結界解放
[令呪]:残り3画
[装備]:様々(偽る身分による)
[道具]:様々(偽る身分による)
[所持金]:潤沢
[思考・状況]
基本方針:この聖杯戦争を堪能する。
0:都市の全員を殺し、〈蛇〉を知る者を消し去る。
1:さあ、誰から行こうか?
2:レミュリンを喰う。
3:君も来るんだろう、雪村くん。
[備考]
※奪った身分を演じる際、無意識のうちに、認識阻害の魔術に近い能力を行使していることが確認されました。
とはいえ本来であれは察知も対策も困難です。
※神寂縁の化けの皮として、個人輸入代行業者、サーペントトレード有限会社社長・水池魅鳥(みずち・みどり)が追加されました。
裏社会ではカネ次第で銃器や麻薬、魔術関連の品々などなんでも用意する調達屋として知られています。
※楪依里朱について基本的な情報(名前、顔写真、高校名、住所等)を入手しました。
蛇杖堂寂句との間には、蛇杖堂一族に属する静寂暁美として、緊急連絡が可能なホットラインが結ばれています。
※赤坂亜切の存在を知ったため、広域指定暴力団烈帛會理事長『山本帝一』の顔を予選段階で捨てています。
山本帝一は赤坂亜切に依頼を行ったことがあるようです。
→赤坂亜切に『スタール一家』の殺害を依頼したようです。
※神寂縁の化けの皮として、マスター・蛇杖堂絵里(じゃじょうどう・えり)が追加されました。
雪村鉄志の娘・絵里の魂を用いており、外見は雪村絵里が成人した頃の姿かたちです。
設定:偶然〈古びた懐中時計〉を手にし、この都市に迷い込んだ非業の人。二十歳。
幸は薄く、しかし人並みの善性を忘れない。特定の願いよりも自分と、できるだけ多くの命の生存を選ぶ。
懐中時計により開花した魔術は……身体強化。四肢を柔軟に撓らせ、それそのものを武器として戦う。
蛇杖堂家の子であるが、その宿命を嫌った両親により市井に逃され、そのまま育った。ぜんぶ嘘ですけど。
→蛇杖堂絵里としての立ち回り方針は以下の通り。
・蝗害を追う集団に潜入し楪依里朱に行き着くならそれの捕食。
→これについては一旦アーチャーに任せる方針のようですが、詳細な指示は後続の書き手にお任せします。
・救済機構に行き着くならそれの破壊。
・更に隙があれば集団内の捕食対象(現在はレミュリン・ウェルブレイシス・スタールと琴峯ナシロ)を飲み込む。
※蛇の体内は異界化しています。彼はそこに数多の通信端末を呑み込み、体内で操作しつつ都度生成した疑似声帯を用いて通話することで『どこにでもいる』状態を成立させているようです。
この方法で発した声、および体内の音声は外に漏れません。
※スタール家の〈燃焼時計〉計画にジェームズ・アルトライズ・スタールとして関与していました。
蛇の最終目的は完成した〈燃焼時計〉で根源に到達、時を操る真理を得ることです。
――マテリアルが追加されました
『水子界・支配の蛇(ギャシュリークラム・ナーハーシュ)』
固有結界・変態型。
結界の内側を蛇の体内、4423体の子供の魂が蠢く胃の中に置換する。
結界内は魂を溶解させる毒素に満ちており、これは術師である神寂縁に近付けば近付くほど毒性が強まる。
人間はある程度抵抗可能だが、サーヴァントのように魂が剥き出しになった霊体は毒の影響をより強く受ける。
具体的には蛇による攻撃に対し、耐久値を適用することができない。この性質により彼は霊的存在の天敵となる。
溶解が完了し構造分解に至った魂は蛇に吸収され、彼が死なない限り抜け出すこと能わず。
【山越風夏(ハリー・フーディーニ)】
[状態]:疲労(中)、全身にダメージ(中)、腹部治療済
[令呪]:残り二画
[装備]:舞台衣装(レオタード)
[道具]:マジシャン道具、蛇杖堂邸で回収した幾らかの道具(薬あり)
[所持金]:潤沢(使い切れない程のマジシャンとしての収入)
[思考・状況]
基本方針:聖杯戦争を楽しく盛り上げた上で〈脱出〉を成功させる
0:ノってきた。任された役割、存分に果たそうか。
1:レミュリンはやはり原石だった。彼女は星であろうとなかろうと、素晴らしい未知を生み出す筈。
2:華村悠灯はもうひとりの私に任せることに決めた。ま、なるようになるでしょ。
3:他の主従に接触して聖杯戦争を加速させる。
4:華村悠灯がいい感じに化けた! 世界に孔を穿つための有力候補だ!
[備考]
準備の時間さえあれば、人払いの結界と同等の効果を、魔力を一切使わずに発揮できます。
〈世界の敵〉に目覚めました。この都市から人を脱出させる手段を探しています。
蛇杖堂寂句から赤坂亜切・楪依里朱について彼が知る限りの情報を受け取りました。
蛇杖堂邸で狙い通り癒しの薬を回収しました。
東京の全区に仕掛けを施しています。主に移動時間短縮用。
【赤坂亜切】
[状態]:疲労(大)、魔力消費(大)、眼球にダメージ、左手に肉腫跡、右耳欠損、妄信
[令呪]:残り三画
[装備]:『嚇炎の魔眼』、M360J「SAKURA」(残弾3発)
[道具]:魔眼殺しの眼鏡(模造品)
[所持金]:潤沢。殺し屋として働いた報酬がほぼ手つかずで残っている。
[思考・状況]
基本方針:優勝する。お姉(妹)ちゃんを手に入れる。
0:レミュリン・ウェルブレイシス・スタールを見極める。そのためにも、まずは蛇を撒く。
1:ノクト・サムスタンプを殺す。〈脱出王〉よりも優先順位は上だ。
2:適当に参加者を間引きながらお姉(妹)ちゃんを探す。
3:日中はある程度力を抑え、夜間に本格的な狩りを実行する。
4:他の〈はじまりの六人〉を警戒しつつ、情報を集める。
5:神寂縁。〈蛇〉。雪村のオッサン相手に使えそうなネタだが、さて。
6:〈恒星の資格者〉は実在する。忌まわしいことだが。
7:じゃあな、蛇杖堂寂句。あんたの英霊もすぐそっちに送ってやるよ。
8:渋谷をおかしくした元凶への激しい殺意。部外者が知った顔で何を囁いてやがる。焼き殺すぞ。
[備考]
※彼の所持する魔眼殺しの眼鏡は質の低い模造品であり、力を抑えるに十全な代物ではありません。
※香篤井希彦の連絡先を入手しました。
※ホムンクルス36号の見立てによると、自身の魂を燃やす彼の炎は無限ではなく、終わりが見えているようです。
具体的にどの程度の猶予があるかは後続の書き手にお任せします。
※一回目の聖杯戦争で組んでいたランサーは、鬼若(いわゆる武蔵坊弁慶)でした。
【レミュリン・ウェルブレイシス・スタール】
[状態]:疲労(中)、全身にダメージ(小)、吐き気、精神的動揺(大)、決意
[令呪]:残り三画
[装備]:
[道具]:
[所持金]:6万円程度(5月分の生活費)
[思考・状況]
基本方針:――進む。わたしの知りたい、答えのもとへ。
0:ランサー……!
1:胸を張ってランサーの隣に立てる、魔術師になりたい。
2:アギリ・アカサカと話す。そうでなくちゃ、わたしはあの日から抜け出せない。
3:コージさん達と合流できればいいんだけど……。
4:さっきみた、アレは……一体、なに……?
5:フーカさんを信用していいのか、よくないのか……。
[備考]
※自分の両親と姉の仇が赤坂亜切であること、彼がマスターとして聖杯戦争に参加していることを知りました。
※ルーン魔術の加護により物理・魔術攻撃への耐久力が上がっています。
またルーンを介することで指先から魔力を弾丸として放てますが、威力はそれほど高くないです。
※炎を操る術『赤紫燈(インボルク)』を体得しました。規模や応用の詳細、またどの程度制御できるのかは後のリレーにお任せします。
※アギリ以外の〈はじまりの六人〉に関する情報をイリスから与えられました。
※〈はじまりの聖杯戦争〉についての考察を高乃河二から聞きました。
※アギリがサーヴァントとして神霊スカディを従えているという情報を得ました。
※高乃河二、琴峯ナシロの連絡先を得ました。
※右腕にスタール家の魔術刻印のごく一部が継承されています(火傷痕のような文様)。
※刻印を通して姉の記憶の一部を観ています。
※アルロニカ家の魔術刻印と共鳴することで、世界の始点と終点の一部を観測しました。
※高乃河二に現況についての緊急連絡を送りました。
内容は彼伝てに雪村鉄志にも転送されています。
【ランサー(ルー・マク・エスリン)】
[状態]:疲労(大)、魔力消費(中)、胸部にダメージ(大)、全身にダメージ(小)、霊核損傷
[装備]:常勝の四秘宝・槍、ゲイ・アッサル、アラドヴァル
[道具]:緑のマント、ヒーロー風スーツ
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:英雄として、彼女の傍に立つ。
0:蛇を討つ。レミュリンは渡さない。
1:不覚を取ったが致命傷じゃねえ。この屈辱、働きで雪ぐぜ。
2:レミュリンをヒーローとして支える。共に戦う道を進む。
3:神寂祓葉についてはいずれだな。今は考えても仕方ねえ。
4:今更だが、馬鹿じゃねえのか今回の聖杯戦争?
5:渋谷の"神"は非常に危険。レミュリンの問題を片付けたら、早急にどうにかする必要がある。
[備考]
予選期間の一ヵ月の間に、3組の主従と交戦し、いずれも傷ひとつ負わずに圧勝し撃退しています。
レミュリンは交戦があった事実そのものを知らず、気づいていません。
ライダー(ハリー・フーディーニ)から、その3組がいずれも脱落したことを知らされました。
→上記の情報はレミュリンに共有されました。
【月光夢幻神界〈渋谷〉・西部/二日目・早朝】
【高乃河二】
[状態]:疲労(小)、魔力消費(小)、月の精神汚染(小)
[令呪]:残り三画
[装備]:『胎息木腕』
[道具]:なし
[所持金]:それなり(故郷からの仕送りという形でそれなりの軍資金がある)
[思考・状況]
基本方針:父の仇を探す。
0:〈ニシキヘビ〉を討つ。仇かどうかも見極める。
1:眼前の状況への対処。琴峯さんを守る。
2:同盟を利用し、状況の変化に介入する。
3:琴峯さんは善い人だ。善い報いがあって欲しいと思う。
4:ニシキヘビなる存在に強い関心。もしもそれが、我が父の仇ならば――
5:『ことちゃん』とは話ができる可能性がある。が、楪依里朱とライダー(カスター)のマスターには依然として警戒。
6:ノクト・サムスタンプ――その義手、は。
[備考]
※ロールとして『山梨からやってきた転校生』を与えられており、少なくとも琴峯ナシロとは同級生のようです。
※雪村鉄志から『赤坂亜切』、『蛇杖堂寂句』、『ホムンクルス36号』、『ノクト・サムスタンプ』並びに<一回目>に関する情報と推論を共有されています。
※レミュリンから『イリス』に関する情報を得ました。
※レミュリンと"蛇杖堂絵里"の連絡先を得ました。
※レミュリンによる連絡を受け、蛇の本名を知りました。
【ランサー(エパメイノンダス)】
[状態]:疲労(小)、全身にダメージや傷、多数の銃創
[装備]:槍と盾
[道具]:革ジャン
[所持金]:なし(彼が好んだピタゴラス教団の教義では財産を私有せず共有する)
[思考・状況]
基本方針:マスターを導く。
0:厄介なことになりやがったな……!
1:ノクト・サムスタンプの陣営は排除するしかない。対話そのものが危険と見た。
2:同盟を利用し、状況の変化に介入する。
3:〈蝗害〉とキャスター(ウートガルザ・ロキ)に最大級の警戒。キャスター(吉備真備)については、今度は直接会ってみたい。
4:琴峯ナシロは中々度胸があって面白い。気に入った。
5:――カドモス王。聞きしに勝る……いや……。
[備考]
※カドモスの存在を確信しました。杉並のテーバイ化にも気付いているようです。
【琴峯ナシロ】
[状態]:疲労(中)、月の精神汚染(中)、魔力消費(小)、複数箇所に切り傷
[令呪]:残り二画
[装備]:『杖』(3本)、『杖(信号弾)』(1本)
[道具]:修道服、ロザリオ
[所持金]:あまり余裕はない
[思考・状況]
基本方針:教会と信者と自分を守る。
0:蛇は倒す。父母の仇が本当に其奴だとしても、野放しにしておける道理はない。
1:一先ず生存を優先する。高乃と、……あとアルマナとかいう女の子は守りたい。
2:信者たちを、無辜の民を守る。そのために戦う。
3:楪及び〈蝗害〉に対して、もう一度話をする必要がある。
4:ダヴィドフ神父が危ない。
5:ニシキヘビ……。そんなモノが、本当にいるのか……?
6:アサシン……?
7:身の振り方、か。……確かに、考えるべきなのかもしれないな。
8:悪国征蹂郎には不信感。ランサーはああ言うけど、すんなり信じられる相手とは思えない。
[備考]
※少なくとも高乃河二とは同級生のようです。
※琴峯教会は現在、白鷺教会から派遣されたシスターに代理を任せています。
※雪村鉄志から『赤坂亜切』、『蛇杖堂寂句』、『ホムンクルス36号』、『ノクト・サムスタンプ』並びに<一回目>に関する情報と推論を共有されています。
※ナシロの両親は聖堂教会の代行者です。雪村鉄志との会話によってそれを知りました。
※レミュリンから『イリス』に関する情報を得ました。
※レミュリンと"蛇杖堂絵里"の連絡先を得ました。
※ナシロの投影魔術は一般的なものと性質が異なるようです。
黒鍵を原型とし、解析で読み取った属性をそこに混ぜ込むことができます。まだ先があるかもしれませんが、詳細は後にお任せします。
※レミュリンによる連絡を受け、蛇の本名を知りました。
【アサシン(ベルゼブブ/Tachinidae)】
[状態]:疲労(小)、脇腹に刀傷、各所に弾丸の擦り傷、ノスタルジー
[装備]:眷属(一体だけ)
[道具]:なし
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:聖杯を手に入れ本物の蝿王様になる!
0:やだ、あのバーサーカーイケメン……。まぁタイプじゃないんですけど。
1:ナシロさんが聖杯戦争にちょっと積極的になってくれて割とうれしい。
2:あんなチビっこ神霊には負けませんけど!眷属を手に入れた今の私にとってもはや相手にもなりませんけど!!
3:ウワーッ!!! せっかく作った眷属がほぼ死んだ!!!!!
4:ナシロさん、もっと頼ってくれていいんですよ。
5:守りたいもの……かぁ。
[備考]
※渋谷区の公園に残された飛蝗の死骸にスキル(産卵行動)及び宝具(Lord of the Flies)を行使しました。
少数ですが眷属を作り出すことに成功しています。
※代々木公園での戦闘で眷属はほぼ全滅しました。今残っているのは離脱用に残しておいた一体だけです。
※"蠅の王"の力の片鱗を引き出しました。どの程度操れるのか、今後どのような影響を齎すのかは不明です。
→渋谷の変貌を感じ取り、説明できない懐かしさを抱いています。
【悪国征蹂郎】
[状態]:疲労(中)、魔力消費(中)、出血(大)、全身に軽度の火傷、頭部と両腕にダメージ(応急処置済み)、右腕損壊(大)、腹部に銃創、〈喚戦〉、ランサー(アンタレス)と再契約、月の精神汚染(中)
[令呪]:残り一画
[装備]:レッドライダー製の極薄ガントレット(左腕のみ)
[道具]:なし
[所持金]:数万円程度。カード派。
[思考・状況]
基本方針:刀凶聯合という自分の居場所を守る。
0:生きる。死んだ皆と、まだ生きている仲間のために。
1:ノクト・サムスタンプを斃す。
2:アルマナは仲間だ。仲間が死ぬなと言うのなら、オレだけ一抜けはできない。
[備考]
異国で行った暗殺者としての最終試験の際に、アルマナ・ラフィーと遭遇しています。
聯合がアジトにしているビルは複数あり、今いるのはそのひとつに過ぎません。
養成所時代に、傭兵としてのノクト・サムスタンプの評判の一端を聞いています。
六本木でのレッドライダーVS祓葉・アンジェ組について記録した映像を所持しています。
アルマナから偵察の結果と、現在の覚明ゲンジについて聞きました。
千代田区内の聯合構成員に撤退命令を出しています。
ランサー(ギルタブリル/天蠍アンタレス)と再契約しました。
警官隊殺害・及び暴動主導の容疑で公開指名手配されています。
【ランサー(ギルタブリル/天蠍アンタレス)】
[状態]:疲労(大)、胴体に裂傷、全身にダメージ(大)、甲冑破損、無念と決意、寂句の令呪『神の箱庭を終わらせ、真の〈神殺し〉を成し遂げてみせよ』及び令呪による一時的な強化、悪国征蹂郎と再契約
[装備]:赤い槍
[道具]:なし
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:神寂祓葉を刺してヒトより上の段階に放逐する。
0:マスター・ジャックの遺命を果たす。たとえこの身が擦り切れようとも。
1:ノクト・サムスタンプの主従を滅ぼす。
2:これからよろしくお願いします。アグニ。
[備考]
※マスターを喪失しました。令呪の強化を受けていますが、このままでは半日は保たないでしょう。
→悪国征蹂郎と再契約しました。
【アルマナ・ラフィー】
[状態]:疲労(中)、魔力消費(大)、動揺(少し落ち着いてきた)、月の精神汚染(大)
[令呪]:残り一画
[装備]:
[道具]:なし
[所持金]:7千円程度(日本における両親からのお小遣い)。
[思考・状況]
基本方針:王さまの命令に従って戦う。
0:アグニさんには死んでほしくない。アルマナは、どうしてこうなってしまったのだろう。
1:もう、足は止めない。王さまの言う通りに。
2:傭兵(ノクト)に対して不信感。
[備考]
覚明ゲンジを目視、マスターとして認識しています。
故郷を襲った内戦のさなかに、悪国征蹂郎と遭遇しています。
新宿区を偵察、情報収集を行いました。
デュラハン側の陣形配置など、最新の情報を持ち帰っています。
カドモスに渡されたスパルトイは全滅しました。
【ランサー(カドモス)】
[状態]:疲労(中)、月の精神汚染(小)
[装備]:なし
[道具]:なし
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:いつかの悲劇に終焉を。
0:アーチャー(スカディ)から逃れる。
1:面倒なことになったものだ。頭が痛い。
2:傭兵(ノクト)に対して警戒。
3:事が済めば雪村鉄志とアルターエゴ(デウス・エクス・マキナ)を処刑。
[備考]
本体は拠点である杉並区・地下青銅洞窟に存在しています。
→青銅空間は発生地点の杉並区地下から仮想都市東京を徐々に侵略し、現在は杉並区全域を支配下に置いています。
放っておけば他の区にまで広がっていくでしょう。
カドモスの宝具『我が撒かれし肇国、青銅の七門(スパルトイ・ブロンズ・テーベ)』の影響下に置かれた地域は、世界の修正力を相殺することで、運営側(オルフィレウス)からの状況の把握を免れています。
【ノクト・サムスタンプ】
[状態]:疲労(小)、複数の打撲傷(処置済)、右腕欠損、恋
[令呪]:残り二画
[装備]:『胎息木腕(右腕分のみ。古いもの)』
[道具]:、蛇杖堂邸で回収した幾らかの道具
[所持金]:莫大。少なくとも生活に困ることはない
[思考・状況]
基本方針:聖杯を取り、祓葉を我が物とする
0:神寂縁を中心とする抗争に介入する。目指す結末は関わった全員の共倒れ。
1:眼前の中から契約相手を探し、駒に変えて利用する。
2:神寂縁に協力しつつ、奴が"追われる者達"と相討つように仕向けたい。
3:当面はサーヴァントなしの状態で、危険を避けつつ暗躍する。
4:ロミオは煌星満天とそのキャスターに預ける。が、今後直近で身が危うくなれば一時的に呼び戻すつもり。
5:煌星満天の能力の成長に期待。うまく行けば蛇杖堂寂句や神寂祓葉を出し抜ける可能性がある。
6:満天の悪魔化の詳細が分からない以上、急成長を促すのは危険と判断。まっとうなやり方でサポートするのが今は一番利口、か。
7:とはいえそれも満天が完成するまでだ。見通しが立ったなら、詐欺師野郎(ファウスト)はもう要らねえ。
8:何か違和感がある。何かを見落としている。
9:〈脱出王〉の危険度を格上げ。早急に排除しなければならない敵と認定。
10:祓葉。お前にも、まだ先があるんだろう?
11:渋谷の神は現状人に任せる。アレは多分俺と相性が悪い。
[備考]
東京中に使い魔を放っている他、一般人を契約魔術と暗示で無意識の協力者として独自の情報ネットワークを形成しています。
東京中のテレビ局のトップ陣を支配下に置いています。主に報道関係を支配しつつあります。
煌星満天&ファウストの主従と協力体制を築き、ロミオを貸し出しました。
蛇杖堂寂句から赤坂亜切・楪依里朱について彼が知る限りの情報を受け取りました。
神寂縁から雪村鉄志、琴峯ナシロ、高乃河二、赤坂亜切の現在の動向について連絡を受けました。
蛇杖堂邸で高乃家の礼装『胎息木腕』を回収しました。
これが高乃河二の装備している物と同じ性能かどうかはおまかせします。
山越風夏のサーヴァントの真名が「ハリー・フーディーニ」であろうことをうっすら察しました。
ファウストから蝗害調査のデータファイルを受け取りました。まだ中身は見れていないようです。
【バーサーカー(ロミオ)】
[状態]:恋、超絶大激怒
[装備]:無銘・レイピア
[道具]:なし
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:ジュリエット! 嗚呼、ジュリエット!!
0:――よくも、僕の恋路を邪魔立てしたな。
[備考]
現在、煌星満天を『ジュリエット』として認識しています。
ファウストと契約を結んでいます。
[全体備考]
※渋谷東部の一定割合が、固有結界『水子界・支配の蛇』によって取り込まれました。
※内部は『月光夢幻神界』の性質を維持したまま、蛇の固有結界の法則を帯びています。
※外から入ることは可能ですが、中から出ることは不可能に近いようです。
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最終更新:2026年04月08日 00:40